小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

小説・ラノベ・アニメ・漫画・ドラマ・映画などについて感想を語ったり、おすすめを紹介したり、その他いろいろ書き記すブログです。

2020冬アニメで購入したOP・ED曲

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Mashumairesh!!「ヒロメネス/キミのラプソディー」

 

2020冬アニメもそろそろ終わりが近づいてきましたが、この記事では、冬アニメのOP曲・ED曲・挿入歌のうち、私が購入した曲、購入する予定の曲(全10曲)を紹介したいと思います。

※動画サイトへのリンクは公式のものしか貼っていません。

 

 

1.「映像研には手を出すな!」OP曲

曲名:Easy Breezy

歌手:chelmico

アニメのPVのBGMとして使われているのを聴いて、放送が始まる前から購入を決意していました。どうやらこの曲をきっかけにchelmicoが売れ始めているようで、MUSIC STATIONにも出演していましたね!

OP映像↓

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MV↓

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2.「ランウェイで笑って」OP曲

曲名:LION

歌手:坂口有望

シンガーソングライターの坂口有望による曲です。主人公の藤戸千雪や都村育人の境遇に寄り添った歌詞です。

MV↓

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3.「理系が恋に落ちたので証明してみた。」OP曲

曲名:PARADOX

歌手:雨宮天

氷室菖蒲のCVを担当する雨宮天さんが歌う曲です。「ルート」「0か1か」「グラフの右肩上がり続けて」などの理系用語が盛り込まれつつも、良質なラブソングになっています。

OP映像↓

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MV↓

www.youtube.com

 

 

4.「理系が恋に落ちたので証明してみた。」ED曲

曲名:チューリングラブ feat. Sou

歌手:ナナヲアカリ

OP曲と同様にこちらも、「なんでか教えてオイラー」「感想きかせてフェルマーなどの科学史の偉人の名前を織り込むなど理系要素満載ですが、良質なラブソングになっていますよ。

ED映像↓

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MV↓

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5.「空挺ドラゴンズ」OP曲

曲名:群青

歌手:神山羊

シンガーソングライターの神山羊さんによる曲です。ボカロ出身らしくメロディーがよく練られている感じがします。最後の「いつかこの人生の秘密を暴いたら迎えに行くから」という歌詞が頭に残ります。

MV↓

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6.「空挺ドラゴンズ」ED曲

曲名:絶対零度

歌手:赤い公園

Aメロの「泳いでみせてきやしゃんせ」という言葉遣いと、最後の「天と地を裏返してやれ」という歌詞が頭に残ります。サビはもちろん全編にわたってメロディーが癖になりますね。

ED↓

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7.「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」OP曲

曲名:ヒロメネス

歌手:Mashumairesh!!

第6話「ヒロメネス」を見た後だと、いろいろと考えますね。

試聴動画↓

www.youtube.com

 

 

8.「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」ED曲

曲名:キミのラプソディー

歌手:Mashumairesh!!

第1話を見終わった後、直ちに購入を決意した曲です。メロディーがかなり好きです。

ED映像↓

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9.「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」第6話挿入歌

曲名:十六夜ゐ雪洞唄(徒然なる操り霧幻庵)

歌手:マシマヒメコ(CV:夏吉ゆうこ)

Mashumairesh!!の中ではマシマヒメコの声質が一番好きなのですが、そんな彼女の歌唱力を堪能できる一曲です。こういう和テイストな曲は好みです。

試聴動画(1:49あたりから)↓

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10.「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」第1話挿入歌(4月1日発売)

曲名:エールアンドレスポンス

歌手:Mashumairesh!!

「キミのラプソディー」と同様に、第1話を見終わった後、直ちに購入を決意した曲です。リリース版でどうなるかは分かりませんが、アニメ第1話で披露された1番のヒメコのリードボーカルの声が好きです。

ゲームプレイ動画↓

www.youtube.com

 

 

 

これらの他にも、追加で購入するかもしれません!

 

 

 

アニメ「ランウェイで笑って」第9話の感想・考察――千雪流の本気の実行方法と育人の本気

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第9話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。

見逃した方は、毎翌月曜深夜26:55から最新話がTVer無料配信されています(https://tver.jp/anime)。その他の配信情報は公式HPを!

第8話の感想記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第9話「好敵手(ライバル)」

相当する原作のエピソード:第6巻第49話「まるで台風」、第50話「今日から君は」、第7巻第51話「本気でやらなきゃ」、第52話「嫌な性格」、第53話「ぶっ潰す」、第54話「タイムフライズ」

パリから帰国した千雪に「芸華祭で自分のショーに出てほしい」と誘う育人だったが、柳田との関係を修復するため、アトリエに連行されてしまう。そこで、モデルの仕事に向かおうとしていた心に出くわす。心が本気でデザイナーを目指していると知った千雪は、マネージャーの五十嵐と対峙するのだった。

 

 

1.弱っている千雪

第9話の冒頭は、育人が自分のショーに出てくださいと千雪を誘うシーンから始まります。第8話の記事でも書きましたが、ここの千雪の独白からの流れが良かったですよね!

「藤戸千雪というモデルを必要としてくれる場所はない。現場も、実の父親も、憧れの人からだって、一度見放された。それなのにどうして、どうして君は、いつだって……いてほしいときにそこに現れて……私はそんな君の言葉に救われちゃうんだ」の流れからの育人のオファーは最高です!

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涙を流す千雪

そんなことがあったものですから、千雪は思わず涙を流し、弱音をこぼしてしまいます。そんな千雪を育人は「しおらしくて可愛い」と形容します。アニメではここで千雪がビンタをしてこのシーンは終わったのですが、原作では千雪のもっと「調子が狂う」様子が見られます(第6巻第49話)。ここは是非読んでみてほしいところです!

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「しおらしくて可愛い……」

 

 

2.相変わらずの育人

育人にショーに出てほしいと言われた千雪ですが、他のモデルとのバランスを心配し、「他のモデルはどうするの?」と問いかけます。

これに対して育人は、「風ってコンセプトは千雪さんから連想したんですよ。台風の風は中心気圧の数字が小さいほど、強く吹くらしいんです。台風みたいに人の迷惑を考えずに突き進んだり、ときには背中を押されたり、暖かくて心地よかったり。ねっ? 千雪さんっぽくないですか? 僕のショーのメインは千雪さんです」と答えました。

100点満点の回答です。もちろん、ここには育人と千雪の支え合ってきた関係が基礎にあります。でも、この言葉は、相変わらずの女たらしです。

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「ねっ? 千雪さんっぽくないですか?」

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「僕のショーのメインは千雪さんです」

 

 

3.千雪流の本気の実行方法

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 修羅場……?

育人とともに柳田のスタジオに訪れた千雪は、長谷川心と出会い、育人が話していた人物は千雪が既に会っていたあのモデルであることが判明します。修羅場にこそなりませんでしたが、双方とても驚いたようです。

さて、再会したのも束の間、心は撮影の予定があるためすぐに出発しました。が、千雪は心を追いかけ、「本気なら、今、抵抗しろー!」と叫びます。

原作ではここに千雪の独白がありました(第6巻第50話)。

ムカつくな。わたしが望んでも手に入らないもの全部持つ才能も、それを全部捨てようとしている浅はかさも、本気とか言いながら中途半端に従ってるところも。……ただ、わたしも大概、たったひとつのために全てを捨ててる人間だからね。浅はかなバカは嫌いじゃないんだ。

ここから、千雪が自分と心と重ね合わせていることが分かります。

心は、初めて千雪に出会った撮影の帰りに、千雪のモデルに対する本気に触発され、「五十嵐さん、モデルを辞めさせてください!」「私は本気で服を作る人になりたいんです!」デザイナーになりたいという夢に対する本気を宣言しました。このときから千雪は、心が自分と同じく、本人の意思に反して境遇が夢を許してくれない状況にいることに気付いていたはずです。

千雪は、自分と同じ状況にいる心が五十嵐に押し流されて中途半端にモデルとデザイナーの両立をしていることにムカつきます。そして、そんな心に対して千雪は、「モデルに必要ないことはほとんど切り捨てちゃう」(第6話)という千雪流の本気を実行する方法を教えたのです。

そんな千雪の言葉に触発された心は、「低身長モデルの千雪というハンデを背負ってショーでトップを獲れば心はモデルを辞める、トップを獲れなければ心は大学を辞めてモデルに専念する」ことを五十嵐と約束しました。まさに千雪流の本気を実行する方法です。

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「私は、長谷川心のショーに出る!」

 

 

4.千雪と育人の関係――「好敵手(ライバル)」

同じ場面なんですが、千雪が「育人、いい?」と、心のショーに出ることについて育人にきちんと尋ねているのが何か良いですよね。千雪のキャラならこういうシーンなしに押し切れることもできたはずですが、きちんと描かれているのが嬉しいところです。

そして、心や五十嵐と別れた後、育人は千雪から「育人、負けてあげようとか変なこと考えてないよね。私は、本気の育人と戦いたい。育人は私の中で一番の好敵手(ライバル)だから。遠慮しないで」と言われます。

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「ありがとう、育人。次はライバルだ」

千雪が育人との関係性を育人に伝えたのは(たぶん)初めてです。今までは、独白であったり育人以外の人には言っていたりしていましたが、今度は本人に伝えました。

「都村君には負けたくないでしょ」(第3話)

「こんな仕掛けしちゃって。あいつめ、ヘタレのくせに。私が引っ張って助けなきゃ、心もとない男子のくせに」「都村君のくせに、君ってヤツは、ムカつくくらい私の窮地を救っちゃうんだ」(第3話)

「育人のこと、結構、尊敬してるんだ」(第6話)

「友達が作ってくれました」(第6話)

「どうして君は、いつだって……いてほしいときにそこに現れて……私はそんな君の言葉に救われちゃうんだ」(第9話)

「育人は私の中で一番の好敵手(ライバル)だから」(第9話)

千雪が育人に対して「好敵手(ライバル)」と伝えたのは、育人に手を抜いてほしくなかったためです。もちろん、育人のことを「友達」だと思っていない訳ではありません(実際そうであると言っていますし)。しかし、仮に2人の関係性が「友達」であると育人に伝えていれば、そこに馴れ合いが生じかねないからこそ、千雪は「好敵手(ライバル)」だと伝えたのです。千雪も心も夢に向かって本気だからこそ、「私は、本気の育人と戦いたい」からこそ、「好敵手(ライバル)」だと伝えたのです。

 

 

5.育人の本気

しかし、千雪が「好敵手(ライバル)」だと伝えたにもかかわらず――むしろ伝えた理由がそこにあったと言うべきですが――育人は(ある種良い意味で)本気でショーに挑めるような心理状態になっていませんでした。育人はこんなことを独り言ちていました。

「遠慮なんかじゃないんですよ。僕は最初から心さんに、千雪さんに、報われてほしいんです」

「綾野さんに才能ないって言われて、悔しいって思った。デザインを買わせてほしいの言葉に、もっともっとデザイナーになりたいって思った。『見返したい人いる?』『じゃあやってやろうよ』って問いかけに、ワクワクした。でもそのどれもが、心さんの将来と天秤にかけるには軽すぎる。だって今は無事にショーに出られるだけでこんなにも嬉しい」

 このように、ショーに挑むには優しすぎる、あるいは闘争心に欠ける育人は、母親から遺書を見せられます。そこには母が死ぬまでにしたいこととして、「育人のファッションショーを見に行きたい」と書いてありました。

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「家族みんな育人の応援に行くから」

これを見て、育人は「負けられないな。本気でやらなきゃ」と覚悟を決めました。この母親の言葉によって、育人は千雪や心の「好敵手(ライバル)」として戦う気持ちになれましたし、また、綾野遠に対して「僕は綾野さんにも勝つつもりでいますよ」と遠を見返す旨の宣言をし、さらには、遠とショーのテーマが被っても真っ向勝負する気になれたのでした。

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「負けられないな。本気でやらなきゃ」

 

 

6.育人の才能

実は、第9話では育人の非凡な才能が描かれていましたが、気付きましたか?

ファッションショーまでの流れは、以下のようになっています(原作第6巻第49話171頁以下参照)。

① テーマ決め

② 本番までの制作スケジュールの策定

③ デザイン画の作成

④ パターン作成、素材・付属物の考案

⑤ サンプル作成

(④~⑤の繰り返し)

⑥ 素材手配

⑦ 服完成

という感じになります。

しかし、育人は、江田龍之介に対して「僕とチームは組んでくれないんですよね?」と確認した上で、「一人で作るからデザイン画なんていらないっか!」とデザイン画を作らない旨の発言をしたのです。

普通なら、④デザイン画を基にパターンを作成し、⑤それに沿ってサンプルを作成する、を繰り返す試行錯誤が必要なはずです。しかし、育人は、このような試行錯誤は必要なく、あとは脳内デザイン/脳内パターンを基に、⑥素材を手配し、⑦服を完成させるだけだと言っているのです。試行錯誤に人手と時間を取られる必要が無いからこそ、育人はチームメイトがいなくても一人でショーに挑むことができたのです。とんでもない才能です。

 

 

 

さて、次回第10話「負けられない」は、いよいよ芸華祭ファッションショーの本番です。いったいどのようなショーになるのでしょうか?

 

 

 

『かげきしょうじょ!!』第9巻の感想・考察――渡辺さらさの因縁、奈良田愛の方針

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『かげきしょうじょ!!』第9巻

 

この記事は、斉木久美子『かげきしょうじょ!!』第9巻(2020年3月5日発売)感想・考察を書き連ねた記事です。ネタバレにはご注意ください!

 

『かげきしょうじょ!!』に関するその他の記事については、以下をご参照ください!

 

 

101期生が登場!

 

伊賀エレナ

 

運命の出会い?

注目すべき101期生の一人目は、財閥令嬢の伊賀エレナです。

初登場時、遅刻して焦るエレナは階段を踏み外し、あわや大怪我というところをさらさに助けてもらいました。あんな助けられ方されたら、異性同性問わず惚れてしまいますよね!

エレナとの別れ際、さらさは「それじゃっ、次に落ちる時は飛行石を忘れないで下さいね!」ラピュタネタを言いウインクして別れました(15頁)。さらさだけではありませんが、紅華乙女の生態なのか、彼女たちには日常にドラマtチック(歌劇的)な要素を取り入れたがるキザな部分がありますよね。しかし、一般人だったら似合わないようなキザな言動も、紅華歌劇音楽学校に入学できるような彼女たちがすると、また特に高身長に恵まれたさらさがすると、絵になります

というか、さらさはラピュタがかなり好きなようです。その後、伊賀エレナのことを「シータちゃん」と呼んだり(28幕43頁)、以前にはバルス並の眩しさでムスカっちゃいましたよ~!」なんて意味の分からないことを考えていたりもしていました(3巻9幕24頁)。もしかしたら、他のところにもラピュタネタがあるかもしれませんね。

 

遅刻した理由

エレナ初登場時の場面をよくよく振り返ってみると、エレナが遅刻した理由を不思議に思わなければなりません

紅華歌劇音楽学校の寮は基本的に相部屋のはずです。すべて二人部屋だと仮定すれば、101期生は全40名で余りが出ないので、エレナにもルームメイトがいるはずです。そうだとすれば、(ルームメイトと共に遅刻するのではなくエレナだけが遅刻したということは)エレナはルームメイトに起こしてもらえなかった、ということになります。

ルームメイトがエレナを起こさなかった理由としては、まず、財閥令嬢に気後れしてしまい起こせなかった、という可能性が考えられます。しかし、他人に興味がないルームメイトがわざわざエレナを起こさなかった、という可能性も考えられます。

前者の可能性については、むしろ、起こさなかったことに対する財閥令嬢の報復(?)を恐れるのが人の心理であるため、こちらはなさそうな気がします。その一方で、後者の可能性については、これにピッタリと当てはまりそうな101期生がいます。そうです。エレナのルームメイトは澄栖杏ではないでしょうか杏であれば、財閥令嬢であっても我関せずといった態度を貫き通しそうではありませんか? ただ、28幕36-37頁の伊賀エレナと澄栖杏の会話は、初対面のような感じで、あまりルームメイトっぽくないんですよね……。いずれにせよ、ルームメイトの情報は、第10巻以降で明らかになるかもしれません。

 

スリードには引っかかりましたか?

(キャラクター一覧は読み飛ばして)第28幕を初めて読んだとき、「こっちが伊賀エレナだったのか!」って思いませんでしたか?

28-29頁や36-37頁の凛とした雰囲気や周りの人に興味なさそうな様子の澄栖杏は「お嬢様然り」といった感じで、彼女こそが伊賀エレナだとスリードされてしまいました

でも、よくよく考えてみれば、伊賀エレナの丁寧な言葉遣いは、まさに良家のお嬢様として教育された感じがしますよね(ちなみに、さらさの丁寧な言葉遣いは、オスカル様になるためです〔8巻26幕100頁参照〕)。

 

澄栖杏

もう一人の注目すべき101期生は、澄栖杏(すみす・あん)です。

第28幕28頁以下の杏の様子を見れば、さらさとは過去に因縁があるようです。

たしかにさらさは100周年運動会で目立ったり文化祭のパンフレットに名前は載ったりしましたが、青田買いするファンや100期生の名前を全員覚えたエレナのように、先輩の名前をチェックするほど熱心ではない性格のようです。

だとすると、この場面で杏が「渡辺さらさ」とつぶやいたのは、やはり過去に何か因縁があったと見るべきではないでしょうか。もちろん、さらさの方は何も知らない様子ですが。

さて、第9巻の本編はいいところで幕切れとなってしまいましたね。年下の先輩、可愛らしいふわふわのツインテール、「さらさ」という一人称から、杏はさらさに幼さを感じてなれなれしい口のきき方をしいてしまったと弁明していました。

もちろん、先輩である以上は敬語を使うべきなのですが、本科生としては痛いところを突かれてしまったようです。でも、さらさのキャラクターだと、杏と親しくなりたいためにタメ口を許してしまいそうなんですよね~

ところで、本科生になった沢田姉妹は風紀委員キャラになってましたね笑(29幕82頁、30幕103頁)

 

指導担当の組み合わせ

 

嬉しい演出

第9巻ではついに101期生の予科生が登場し、100期生の本科生がそれぞれ指導担当につくことになりました。

本科生と予科生が指導担当を決めるときに顔合わせする場面の構図になんだか見覚えがありませんか? 実は、100期生が予科生だったときの『エピソード0』4幕105頁と、100期生が本科生になったときの9巻28幕29頁構図が一緒なのです! 嬉しい演出ですね!

 

組み合わせや如何に

気になる指導担当の組み合わせは、伊賀エレナには奈良田愛が、澄栖杏には渡辺さらさが担当することになりました。

キャラクターの系統でいえば、エレナとさらさ愛と杏という組み合わせが同系統でベストマッチな気がします。特にエレナは早い時期からさらさのことを慕っているようですから。それに、本科生と予科生が顔合わせをする前のガイダンスにおいて遅刻したのは、エレナだけではなく、一年前のさらさもでした(『エピソード0』3幕73頁、9巻28幕9頁)。

とはいえ、エレナと愛、杏とさらさという組み合わせは、今後間違いなく面白くなると言えます。対照的なさらさと愛がルームメイトで当初は上手くいかなかったけれど、今ではすっかり親友なのを見ると、過去の愛と同系統の杏がさらさと出会ってどのように変化するのか楽しみです! もちろん、杏とさらさの間には過去に因縁がありそうなので、そっちも楽しみですね!

 

 

奈良田愛の方針

 

男役か娘役か

文化祭後に安道先生から進路として男役も考えてみるよう提案された愛は悩んだ末、「男役も視野に入れてみる」ことにして(30幕99頁)、「オルフェウスとエウリュディケ」では、オルフェウス(男役)にもエウリュディケ(娘役)にも挑戦しようとします。

ところで、愛がショートカットに髪を切ってきて帰ってきたシーンの各々の反応が面白かったですね! ショートカットの愛を見た途端、誰もが「愛は男役を目指すのでは?」と考えたはずです。伏線はありました。文化祭でさらさの代役として愛が演じたのはティボルト(男役)だったのですから(8巻24幕)。

9巻30幕86頁以下において、男役志望の杉本紗和や星野薫は、真剣な眼差しでショートカットの愛を見つめていました。同期の男役のライバル(それも知名度抜群)が増えるので当然の反応です。それとは対照的に、娘役志望の山田彩子や沢田姉妹は、一瞬驚きはしたものの、すぐに立ち直って愛と会話していました

そして、おそらく他の誰よりも「ショック」を受けていたのは、さらさでした。

「さらさは嫌なの? 私が男役を目指す事」と愛に問われたさらさは、「……嫌っていうか……なんだかショックで……。でも、ごめんなさい愛ちゃん。さらさは、何がショックなんだか自分でもよく解らないんです」と答えました。

この「ショック」は、決してネガティブな意味ではありません。ショック(shock)は、時にネガティブな意味で使われることがありますが、もともとは「衝撃を受ける、驚く、動揺する」くらいの意味しか持っていない中立的な言葉です。

きっとさらさは愛が男役をするなんて微塵も想定していなかったのでしょう。「さらさ達〔さらさと愛〕はお互い男役と娘役を極めますので!」なんて無邪気に宣言もしていましたから(8巻27幕154頁)。

そもそも、愛は、紅華音楽学校に入学した理由が極めて消極的で(『エピソード0』6幕186頁以下)、特に演じてみたい役なんて本科生になってからも見つけられていません(9巻29幕58-59頁)。実技の授業(1巻)やオーディション(5巻)で、愛が娘役を演じてきたのだって、周りから「未来の娘役トップの有望株」などと言われ続けてきたのに流されていた節があります。

そのため、男役を提案する安道先生の言葉は、間違いなく愛にとって転機になりました。9巻30幕は、澄栖杏の問題発言で幕切れとなってしまいましたが、男役も視野に入れるようになった愛に対して、これからさらさは何を思い、何を語るのでしょうか? 気になりますね!

 

小園桃との関係性

愛とさらさの関係も要注目ですが、もう一つ注目すべきは愛と小園桃の関係です。小園桃はJPX48の現役メンバーにしてトップアイドル(グルーブで一番人気?)であり、愛はかつてこのグルーブに所属していたのでした。

小園桃の初出は、『エピソード0』4幕116頁でした。愛の指導担当であった野島聖の推しメンは、小園桃だったのでした(ちなみに、聖が桃を応援する様子は、第5巻スピンオフ「愛の指導役・野島聖編」123頁以下に描かれています)。

さて、9巻29幕における愛の様子を見る限り、愛はかなり小園桃のことを意識しているように見えます。実際、母親の奈良田君子から演技中の小園桃について「本番で全部、今の自分が持ってる物、全部出してぶつかって来たの」と聞いたり、インタビューされている小園桃が「イメージダウンになるって言われても、今はできる役は何でもやってみたいです。ダメでも次があるって信じます。失敗したら、またそこから考えればいいんだって、そう思ったんです」と語っているのを聞いたりして、その直後に、愛は男役への布石として髪を切ったのですから。つまり、愛は小園桃の言葉を聞いて、たとえ失敗したって今の自分が持っている物すべてを出して男役に挑戦してみようと思ったのです。

上記のように愛が小園桃を意識した理由は、小園桃の演技の迫力2人の間の過去の因縁の可能性も考えられますが、このほかに2つほど挙げられます。

理由の第一は、小園桃の「失敗したら、またそこから考えればいいんだって、そう思ったんです」というセリフ(9巻29幕80頁)が過去のさらさのセリフと似ていたことです。さらさは、文化祭で失敗した愛に対して、「失敗したって、何度でも、また蘇りましょう!」と励ましの言葉を送っていました(8巻27幕142頁)。この2つのセリフ、似ていませんか? 親友であるさらさの言葉と似ていたからこそ、小園桃の言葉は愛に響いたのかもしれません。

理由の第二は、小園桃の役どころです。小園桃の役どころは、主役男性の娘役で、この男性の愛人役である奈良田君子をトラブルから殺すというものでした。

よくよく考えてみると、この小園桃の役どころは、愛の幼少期と似通っているように見えませんか? この頃の奈良田君子には恋人がいて、幼少期の愛はこの男からわいせつ行為を受けているのです(『エピソード0』7幕参照)。

幼少期の愛は、母の恋人の男に対して特に反撃はできませんでした。それに対して、映画の中の小園桃は、父親の愛人役を殺しているのです。もしかしたら愛は幼少期の自分と小園桃を重ね合わせ比較し、それに触発された可能性があります。似通った境遇(役どころ)の小園桃の言葉だからこそ、愛の心に刺さったのだと思われます。

 

 

白川煌三郎は「計算高い

 

第9巻には「白川宗家の娘・丁嵐志織」と題された番外編が収録されていました。そこには白川家にまつわる興味深いエピソードが盛り込まれていましたね。

まずは、いろいろと書き連ねる前に、白川家・渡辺家の家系図を示しておきます。今までの情報を総合すれば、以下のような家系図が出来上がります。

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白川家・渡辺家の家系図

この番外編では、白川福二郎と志織の間で興味深い会話が交わされました(125-126頁)。

志織「そうだ、それでさ。煌三郎が居たんだよね。慣れた感じでチビ〔さらさ〕の相手しててさ。あれはさぁ、もしかしてウチの父さん〔白川歌鷗〕のスケープゴートになってんのかなぁ」

福二郎「やれやれ。お嬢は勘だけはいいんだね。あれ(煌三郎)は芸があっても血筋がないからね。計算高いんだよ。自分の欲望に忠実で、それをおくびにも出さず、いつもすました顔している抜け目のない男だよ」

さらさは、実際は15代目白川歌鷗の娘(隠し子)であるにもかかわらず、白川煌三郎の娘(隠し子)だと噂されています(2巻6幕69頁)。このような噂が立ったのは、単に煌三郎がイケメンでモテモテだからという訳だけではありません。上記の会話からすれば、煌三郎が意図的にさらさと親しくすることで自らの隠し子のように周りに見せていたこともあってそのような噂が立ったのです。

そして、上記の会話によれば、煌三郎がさらさと親しくしたのは、16代目白川歌鷗になるためです。煌三郎は、娘婿であっても白川宗家の15代目白川歌鷗とは血縁関係が薄いために16代目になれそうになく、16代目の最有力候補は15代目白川歌鷗のイトコの息子である白川暁也だと言われています(『エピソード0』5幕135頁、6幕171頁)。つまり、煌三郎は、スケープゴートになる(自らがさらさの父親だと噂される)ことで白川歌鷗に恩を売り、16代目を継ごうとしているのです。

福二郎や志織の見立てが正しいとすれば、煌三郎はかなり狡猾な男です。

さて、丁嵐志織の番外編は、「また次の機会に」と幕切れになってしまいました。志織とさらさの関係は次巻以降に持ち越しのようです。

しかし、第8巻の記事で書いた突飛な仮説が明確に肯定も否定もされませんでしたね。

 

 

第8巻・第10巻・第11巻・第12巻の記事はこちら!

 

 

 

追記

最近文庫化された小説が面白かったのでおすすめします。宮津大蔵『ヅカメン! お父ちゃんたちの宝塚』(祥伝社文庫は、宝塚歌劇団の男性関係者を主人公にした連作短編集です。

それまでは宝塚には興味のなかった男性たちが、生徒監、大道具、プロデューサー、演出、受験生の父兄という立場でそれぞれ宝塚に関わってゆくストーリーで、もちろん彼らが主人公なのですが、同時にタカラジェンヌの成長の物語でもあります。

宝塚ファンや『かげきしょうじょ!!』読者にはおすすの一冊です。

ヅカメン!  お父ちゃんたちの宝塚 (祥伝社文庫)

ヅカメン! お父ちゃんたちの宝塚 (祥伝社文庫)

  • 作者:宮津大蔵
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

 

劇場版SHIROBAKOを観てきたので感想を!【ネタバレ注意】

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劇場版SHIROBAKO

2020年2月29日に公開された「劇場版SHIROBAKOを観てきましたので、その感想を書き連ねたいと思います。ネタバレにはご注意ください。

とはいえ、メモを取りながら観た訳でも、何度も劇場に足を運んだ訳でも、手元に脚本がある訳でもないので、「この作品が伝えたかったのは~」「この作品のテーマは~」「あのシーンが象徴しているのは~」のようウェットな感想は止めておきます(というか、難しいので諦めました)。

こういった優れた感想については、たとえば、以下の記事を紹介しておきます。

www.club-typhoon.com

blog.monogatarukame.net

その代わり(?)と言っては何ですか、このブログでは、つまみ食い的な感想を述べてゆきたいと思います。

 

 

1.ストーリーの感想

 

1)全体的な感想

陰鬱、とまでは言いませんが、悲壮感の漂う前半でした。TVシリーズではお馴染みだったメンバーがムサニから離れていった状況はショックでした。

TVシリーズは前半も後半も「大変だけど何とかやってます!」感があってワクワクしながら観ていたのですが、劇場版は何とかできないレベルの悲壮感・不安感からスタートしました。

が、社長の渡辺から相談されたあおいの決断により「空中強襲揚陸艦SIVA」の制作が決まり、TVシリーズでお馴染みの人物たちがムサニに戻ってくる展開にはホッとしましたね

120分という枠内で新しいキャラを登場させる時間はないという理由から、新キャラの登場は最小限に抑えられ、TVシリーズでお馴染みの人物が再登場したという制作陣の裏話を目にしましたが、やはりこれで大正解だったと思います。

 

2)TVシリーズのオマージュが嬉しい

劇場版では数々のTVシリーズのオマージュがありましたが、印象に残ったものについて感想を述べておきます。

 

ア.カーレースと鑑賞会

劇場版の冒頭では、信号待ちしていたムサニの車が、TVシリーズと同じくカーレースをするかと思いきや、エンストしてしまいました。しかも、その車から降りてきたのは佐藤さんでした。

その直後は、TVシリーズと同じく会議室での鑑賞会のシーンでしたが、「やっぱりお馴染みの人たちがいる!」と思いきや、これはあおいの幻覚・妄想で、少人数しかいませんでした。

しかも、そこで放送されているのは、ムサニが制作した第1作とは似ても似つかぬお色気シーンたっぷりの「第三少女飛行隊2」のグロス請けエピソードでした(というか、あの気難しそうな野亀先生がお色気路線を認めたことは信じがたいのですが!)

 

イ.ミュージカルシーン

個人的な話をすれば、私は基本的にアニメでも実写でもミュージカルシーンは苦手です(スベっているようにしか見えないので)。

しかし、前半のハイライトである「アニメーションを作りましょう」のミュージカルシーンについては、キマりにキマったあおいの脳内での出来事だと理解できているので、むしろ楽しく見られました。エンゼル体操やプルテンもまさかここで登場しましたしね(笑)

 

ウ.ファンタジーなバトルシーン

あおいと宮井さんがげ~ぺ~う~(げ~べ~う~だったかも)に乗り込んだシーンは、TVシリーズにて夜鷹書房に木下監督が乗り込んだシーンのオマージュでしたね。

しかも劇場版なだけあって、作画に気合が入っていましたね。畳が抜ける和室を駆け抜けるシーンはかなり動いていました。

 

エ.制作陣は動物がお好き?

ムサニもP.A.WORKSもですが、制作陣は動物アニメがお好きなんでしょうか?

TVシリーズの劇中作「アンデスチャッキー」も、劇場版の劇中作「空中強襲揚陸艦SIVA」もですが、子供向けのようなキャラデザの動物がメインキャラとして登場していましたSHIROBAKOの視聴者の大半が大人であることを考えれば、制作陣が子供向けの動物キャラクターを好んで登場させるはやや不思議です。やっぱり人間より動き回る動物の方がアニメーションの醍醐味を引き出しやすいのでしょうか?

 

3)アニメ業界的なストーリー展開の振り返り

アニメ業界には詳しくないので、私自身のためにもアニメ業界的な観点からストーリーの振り返りをしておきます(間違っていたらごめんなさい)。

葛城さんや宮井さんの所属するエスタンエンターテインメントは、アニメメーカーです(現実の例としては、アニプレックスエイベックス・ピクチャーズハピネットブシロードポニーキャニオンなど。番組提供やCMで見かける企業ばかり!)。

アニメメーカーは、原作出版社や放送局と並んで製作委員会に参加してその企画に出資ししたり作品を販売・配給したりする立場にあり、アニメーション制作会社にアニメ制作を発注します(アニメメーカーとは異なりアニメーション制作会社の提供やCMは見ません。見かけるのはOPやEDのクレジット表記だけです)。

「空中強襲揚陸艦SIVA」を企画したウエスタンエンターテインメントは、この制作を当初はアニメーション制作会社「げ~ぺ~う~」に発注しましたが、公開予定10か月前になっても絵コンテが数枚しかできていないことが発覚しました

そこで葛城さんは、げ~ぺ~う~から、同じくアニメーション制作会社の武蔵野アニメーションに発注先を切り替えようとムサニに泣きつきました

社長の渡辺やあおいの決断によってムサニが「空中強襲揚陸艦SIVA」を元請けとして制作することになり、ムサニに人が戻ってきました。

しかし、ムサニが「空中強襲揚陸艦SIVA」を制作していることを知ったげ~ぺ~う~は、エスタンエンターテインメントとの契約関係は継続したままであるとして、げ~ぺ~う~が元請けムサニはその下請けとなるべきことを主張します。元請けの制作会社だけがアニメOP/EDやポスターや公式HPなどの各種クレジットで表記されます(あるいは下請けは表記されるとしても目立ちません)から、げ~ぺ~う~の主張は、ムサニへの評価はもちろんプライドにも関わる問題です。

そこであおいと宮井がげ~ぺ~う~に乗り込み、げ~ぺ~う~がウエスタンエンターテインメントと交わした契約書の解除条項に該当する行為を行ったとして、元請けの立場を主張するげ~ぺ~う~を黙らせた、という訳なのです。

 

 

2.キャラクターごとの感想

 

1)メインキャラクター

 

宮森あおい(制作デスク/チーフプロデューサー)

劇場版における設定は、制作デスクチーフプロデューサーということだったらしいのですが、やはりチーフプロデューサーとしての仕事が目立っていました。

社長の渡辺から相談されたあおいが「空中強襲揚陸艦SIVA」の元請け制作を決定したことは、ナベPの下で降りかかってくる仕事をこなしていたTVシリーズの頃とは異なり、あおいが責任と決定権のある立場になったことを意味しています。チーフプロデューサーとしてキャラデザ、作監、演出などのメインスタッフを決定する立場になったことにもこれは表れていましたね。

 

安原絵麻(アニメーター/作画監督

まさかの久乃木愛との同居生活でしたね。それなりの築年数の畳敷きの物件から、綺麗な物件への引っ越しが叶ったようで何よりです。「2人での同居じゃなかったら風呂トイレ別は無理だった」旨の発言が心に染みました。実力はあるはずなのに、やっぱりアニメーターの待遇ってあまり良くないんですね。

 

 

坂木しずか(声優)

TVシリーズでは最も不遇な境遇にいた人物でしたが、劇場版ではそれなりに仕事が貰えて、後輩もできていました。あの居酒屋のバイトを辞めているってことは、声優業(芸能の仕事)だけで食べていけるくらいにはなったってことですよね?

 

藤堂美沙(3DCG)

劇場版では頼れる先輩ポジションになっていました。先輩として後輩への指導方法に葛藤していました。信頼できる後輩に頼めるっていう環境は素晴らしいですよね。

 

今井みどり(脚本家)

初の脚本作品は上手くいかなかったようです。が、劇場版の最後の方で、「師匠」と仰いでいた舞茸さんから「商売敵」と呼ばれた展開にはゾクゾクしました。

 

宮井楓(アシスタントプロデューサー)

あおいの相棒的なポジションの人物でした。初登場時のおしとやかで凛とした雰囲気から一変して、あおいとサシ飲みしたときにはそれが崩れていましたね(笑)

 

 

2)劇場版で印象に残ったキャラクター

120分という短い尺にもかかわらず、劇場版で特に印象に残ったキャラクターの感想を述べてゆきます。

 

木下誠一(監督)

なよなよした気弱な部分情熱的でクリエイティブな部分とを併せ持ったあのキャラは健在でした。矢野さんにはモンブランを、佐藤さんには元嫁の飼い犬の写真を、安道さんには唐揚げを示されて、絵コンテを描き上げるよう誘導された様は、なんかもう飼い慣らされたオジサンと言うしかありません(笑)

 

葛城剛太郎(メーカープロデューサー)

たしかTVシリーズではこれといった見せ場はなかったはずですが、劇場版ではトラブルの発生源にいたために出番が多くありましたね。

 

山田昌志(演出/売れっ子?監督)

同じく演出の円さんはTVシリーズでは平岡とガチ喧嘩をしたために、よく印象に残っているのですが、山田さんは個人としての見せ場がなかった印象です。それとは対照的に、劇場版の山田さんはもしかしたら一番印象に残ったキャラかもしれません。

監督として「俺の名は。」などのヒット作を飛ばして売れっ子になったにもかかわらず、劇中後半ではスキャンダルによってムサニに舞い戻ってきて、ある意味ホッとしました(新海監督に許可はとっているのでしょうか?笑)

 

井口祐未(アニメーター/キャラデザ)

頼れる姐さんキャラは健在でした。初挑戦のキャラデザに苦戦したTVシリーズから4年が経って、ますます頼りがいが出てきましたね。

 

小笠原綸子(アニメーター/原画マン

出演時間は決して多くないのに、最も印象に残った人物の一人です。ジャージ姿を見られた際にすごく動揺している様子には、まさにあのゴスロリ服は戦闘服なんだなあと思いました。

小笠原さんは作画監督を固辞していましたが、やはりベテランのアニメーターといっても、作画監督やキャラデザといったメインスタッフになりたい人と、原画マンとしてアニメーションを作り続けたい人がいるんだなあと気付かされました。

 

遠藤亮介(アニメーター/メカデザ)

TVシリーズに引き続き劇場版でも、意固地なところは相変わらずでした。

Twitter上でP.A.WORKSの堀川社長らが、遠藤さんの妻について評価が分かれると語っていました。

 堀川社長は男性と女性とで評価が分かれると言っていますが、私はむしろ、「夫が大変な時には妻は黙って献身的に支える」といった夫婦像を理想とする昭和生まれ的な古い価値観と、必ずしもこのような夫婦像には賛同できない平成生まれ的な最近の価値観とで評価が分かれるのかなあと思います。たぶん、この脚本にGOサインを出した人は全員昭和生まれじゃないでしょうか?

 

瀬川美里(アニメーター/作画監督

TVシリーズでは遠藤は瀬川さんを苦手にしていましたが、劇場版では既に苦手意識はなくなっていたようですね。むしろ瀬川さんに気を遣わせていました(笑)

 

杉江茂(アニメーター)

やっぱり杉江さんのような年配の人が活躍できる作品は素敵です。劇場版では杉Gとして子供たち向けにアニメ教室を開催し、あおい達5人は子供たちから大きな触発を受けたようです。

 

佐藤沙羅(制作進行)

TVシリーズから4年を経てムサニから多くのお馴染みの人物が去っていましたが、佐藤さんが残っていたのには彼女の義理堅さを感じ、嬉しく思いました(義理堅いというよりも、自宅から近いためムサニに残っているという実利的な面もあるかもしれませんが)。劇場版では新人っぽさはなくなり、反対に頼れる制作進行になっていました。

 

安藤つばさ(制作進行)

ムサニから転職してしまっていたのは残念でしたが、SIVA制作ではムサニに出向してきてくれましたね。しかし、TVシリーズでも毒舌でグイグイしていたキャラが、劇場版ではさらに進化していましたね

 

高梨太郎(演出)

まさかタローがムサニから離れるとは! しかも演出!? タローがきちんと演出をこなせるのか、にわかには信じられません。監督と大喧嘩したらしいことは、すんなりと信じられたのですが。

 

平岡大輔(制作進行?)

タローと同じ職場に移籍したようですが、平岡のポジションは何なのでしょうか? 見逃してしまいました。が、演出である太郎の担当、と言っていたことからすれば、制作進行のままなのでしょうか?

それにしても、ムサニを離れてもタロー平岡コンビが健在なのは嬉しいですね!

 

渡辺隼(社長)

ナベPがまさかの社長に昇進です。TVシリーズ後半でも夜鷹書房の担当編集に変な話、振り回されて疲弊していましたが、劇場版ではさらにお疲れのようでした。

ちょっとグッときたのは、あおいと宮井さんがげ~ぺ~う~から契約解除を勝ち取ってきた際に、渡辺さんが葛城さんとともに頭を下げてお辞儀をして出迎えたシーンです。柄にもなく部下のあおいにお辞儀をするなんて、本当にあおいのことを信頼しているんだなあと感じました

 

丸川正人(元社長)

渡辺さんが社長になっていると知ったとき、最初は丸川さんは年齢を理由に円満に引退したのかなと想像していただけに、まさかの引責辞任には驚きました。

TVシリーズでは、丸川さんはアニメ制作に直接には関わらず、どういうポジションなのか分かりにくかったのですが、責任ある地位にいたことが劇場版で劇的に示されましたね。クリエイターたちがアニメを作る前提として、法的・社会的な責任を負う者が必要なことを痛感しました。

 

 

 

以上が劇場版SHIROBAKOの感想です。総じて大満足です。が、やはり良作なだけに観終わった後の喪失感は否めません。

そんなことを感じていたら、なんだか、同じくP.A.WORKSお仕事シリーズ第3弾のサクラクエストを見たくなりました(Amazon prime videoで見られるみたいです)。宮森あおいと木春由乃のキャラデザが似ているせいでしょうか?――――と思ったら、キャラデザは両方とも関口可奈味さんが担当しているようです。

P.A.WORKSには、SHIROBAKOも含めて、お仕事シリーズの新作(続編でも新シリーズでも)を作って欲しいですね!!

 

 

 

アニメ「ランウェイで笑って」第8話の感想・考察――本気が大事なものを奪う

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第8話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。

第7話の感想記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第8話「デザイナーの器」

相当する原作のエピソード:第6巻第45話「母からの手紙」、第46話「天秤」、第47話「最適解」、第48話「当然の報い」

母親の容態が悪化したという報せを受け、病院に駆けつける育人。さらには滞納していた治療費がのしかかり、育人はバイトを増やすため苦渋の思いで柳田と遠に「仕事を辞めさせてほしい」と伝える。そんな育人の元に、心のマネージャー・五十嵐がやってきてある提案を持ちかけるのだが……。

 

 

1.手術の先延ばしの理由

育人の母親は、手術の先延ばしを希望していました。これは、デザイナーになりたいという夢を持つ育人のためにほかありません。

もし、芸華祭までに手術をすれば、その時点で手術費用が発生します。そうすれば、育人は金策に走らなければならなくなり、デザイナーになるための好機として逃せない芸華祭に集中できません(それどころか辞退さえもあり得ます)。母親は、息子の夢を応援するからこそ、手術を先延ばしにしていたのです。

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「母さん、僕、ファッションデザイナーになりたいんだ」

しかし、現実は非情で、芸華祭まで2か月前ほどのタイミングで緊急手術という結果になってしまいました。

 

 

2.長男としての責任

病院に駆け付けた育人は、取り乱すほのかをなだめ、今後の対応を示しました。しかし、彼女が帰宅した後は、深く自省し、母親の遺書を読んで動揺して涙まで流してしまいます。

若干高校生に過ぎない育人ですが、ほのかの前では、ギリギリのところで長男(長子)としての責任を果たした、というのが伝わってきます。

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ほのかを抱きしめる育人

 

 

3.育人が辞めた理由

育人は、結局、柳田のスタジオも綾野遠のスタジオも辞めてしまいました。どちらも給料がもらえるにもかかわらず、わざわざ辞めたのは、割りの良いバイトをするためです(原作第6巻110頁)。

これを踏まえ、少々無駄な勘繰りをしてみます(読み飛ばし推奨)。

そもそも育人は高校生なので、どこで働いても一般的には、アルバイトの時給は最低賃金かそれを少し上回る程度しかもらえないと思われます(時給の良い深夜帯については18歳未満が働くことは法律で禁止されています)。

となると、高校生でも雇ってくれる時給の良いバイトを探すのは困難なはずです。実際、育人が行ったバイトは、引っ越し、コンビニ、清掃、工場、新聞配達と、ありふれたバイト先でした。これらの業種は外資系ではないと思われるので、時給は最低賃金程度だと思われます。

すると、ここで一つ疑問が浮かびます。割りの良いバイトを探すために柳田や遠のスタジオを辞めたということは、育人はここで最低賃金を下回る時給しかもらえていなかったのではないのでしょうか?

しかし、それでは雇用主である柳田や遠が法律違反をしていることになってしまいます。そうでない可能性を考えるとなると、そもそも育人は雇用契約を結んでいなかった、という仮説が立てられます。つまり、柳田や遠とは雇用関係にない育人は、最低賃金の適用対象たる労働者の地位にいなかったのです。

それでは、育人はどのような身分で柳田や遠の「お手伝い」をしてお金をおもらっていたのでしょうか? 考えられるのは、育人は徒弟制度類似の発想の下で「お手伝い」し、「お給金」としてお金をもらっていた可能性です。

そもそも、育人は、労働力提供(とその対価の獲得)という目的もありましたが、デザイナーになるための技能習得という目的を持って柳田や遠のスタジオで働いていました。このような専門職においては、弟子が師匠に技を教えてもらうことを目的とした徒弟制度がよく似合いますし、師匠の側も弟子の側もその発想になっていてもおかしくありません。弟子の側からすれば、「師匠に迷惑をかけながら弟子にしてらっている」という考えなのでしょう。

このような徒弟制度の下では、「労働力提供の当然の対価として使用者は労働者に給料を支払わなければならない」という労使関係の原則が通用しません。むしろ、「弟子は当然にタダ働き」が原則で、「師匠からの恩恵として弟子にお給金が支給される」ことが例外なのです(そもそも、私は詳しくないので確定的なことは言えないのですが、現在の日本において無給や最低賃金以下の徒弟制度が合法なのかは相当に疑わしいです)。

とまあ、色々述べてきましたが、要するに、柳田や遠のところで「お手伝い」をしていた育人は、それなりに安いお給金しかもらえていなかった可能性があるのです。

 

 

4.本気が大事なものを奪う

 

(1)綾野遠の本気

スタジオを辞めたいと言ってきた育人から事情を聞き出した遠は、育人に対してパタンナーとして遠のチームに入れば、母親の入院費用は遠が負担する」ことを提案します。

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「育人、悪いことは言わない。僕のチームに入りなよ。そしたら、育人の親御さんの入院費は僕が払うから」

しかし、遠のチームに入って芸華祭のショーに出場するということは、育人は自分自身の出場を辞退しなければならないことを意味します。

入院費を捻出するために多数のバイトをこなしながら芸華祭に出場しようとする育人に対して、遠は「24時間、頭も身体も全て作品に捧げている人間の前で、あんまり舐めたこと言わないでよ」と厳しい言葉を投げかけます。さらには、育人にはデザイナーになれるほどの才能はない、とまで言います。

このように遠の言動を振り返って見ると、彼が嫌なヤツに見えるかもしれません。が、遠は“本気”なのです「24時間、頭も身体も全て作品に捧げている」綾野遠は、芸華祭のショーで綾野麻衣を超えるために本気なのです

そのためには、彼は手段を選ばない人間のようです。ベストな布陣で芸華祭に挑みたいからこそ、育人のパタンナーのとしての才能を評価しているからこそ、遠は育人を自分のチームに引き入れたいのです。たとえそれが育人のデザイナーになりたいという夢を壊すようなことがあっても

前回第7話にてモデルに対して本気な千雪が心に怒ったのと同様に、綾野遠もデザイナーに対して本気なのです。

 

(2)五十嵐優の本気

綾野遠から厳しい選択を突き付けられた育人に、今度は長谷川心のマネージャーの五十嵐が襲来します。五十嵐は、育人に対し、「心にデザイナーを諦めるよう説得すれば、お金(100万円程?)をあげる」と提案します。

遠と同じく、五十嵐もただの嫌なヤツではありません。五十嵐も“本気”なのです五十嵐は「長谷川の将来に責任を持つ立場にある」からこそ本気なのです

そして、五十嵐もそのためには手段を選ばない人間のようです。「人は才のある場所で活躍すれば幸せになれる」(第7話)という信条を持つからこそ、心のモデルとしての才能を評価しているからこそ、五十嵐は心にデザイナーを諦めさせたいのです。たとえそれが本心とは裏腹に心にデザイナーを諦めるよう説得させるような状況に育人を追い込んだとしても

デザイナーに対して本気な綾野遠と同じく、五十嵐も心のマネージャーとして本気なのです。

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「こう言えば全員幸せだ。『僕のショーにモデルとして出てください』って」

 

(3)理想主義と現実主義

母親の入院・手術のために金欠の育人には、これ幸いとばかりに手段を選ばない遠と五十嵐の“本気”が襲ってきました。

育人はこの状況を「なんで、みんなそうやって、僕の大事なものと大事なものを天秤にかけて奪おうとするんだ」と憤っていました。

遠は、「育人の母親(入院費)」「育人のデザイナーになりたいという夢」を天秤にかけました。五十嵐は、「育人の母親(入院費)」「心のデザイナーになりたいという夢」を天秤にかけました。いずれも育人にとっては大事なものです。大事なものだからこそ、奪われるわけにはいかないのです。

ところで、この状況は第6話における千雪による育人の評価を思い出します。

育人のこと、結構、尊敬してるんだ。

私はさ、本気でハイパーモデルになるつもりだから、モデルに必要ないことはほとんど切り捨てちゃうの。でもね、育人は違う。捨てない。全部捨てないの。

きっと私の方が夢に向き合っている時間は長い。それでも育人が頑張っていないって、欠片も思えないのは、きっとそこに何も捨てない、両立するって覚悟があるから。

千雪が尊敬していた育人の「全部捨てない」という努力手法が、危機に晒されているのです。

しかし、こうして育人の心情を慮ってみると、彼は多分に理想主義的です。「全部捨てない」という生き方は、おそらく誰もが目指すところですが、簡単には実現できません。実際、育人には母親の入院・手術による金欠という非情な現実が襲い、育人はそれに上手く対処できませんでした。

そんな育人に対して、遠や五十嵐は現実主義的です。遠は育人に対してデザイナーよりもパタンナーとしての方が将来性があると説き、五十嵐は心にはデザイナーなんかよりもモデルとしての才能があると確信しています。遠や五十嵐からしてみれば、育人や心(それに千雪)の夢は子供っぽい理想に過ぎず、大人として現実的な方向に進路を転換して欲しいのです

しかも、遠や五十嵐は現実主義的なだけでなく、狡猾でもありました。遠は、厳しい言葉も言いましたが、育人のパタンナーとしての才能を評価し、そこに逃げ道(進路転換の余地)を用意しているのです。五十嵐は、育人に対して、心にデザイナーを諦めるよう説得する際には、心の育人に対する信頼を利用して、「僕のショーにモデルとして出てください」と言うように提案するのです。「こう言えば全員幸せだ」と。

育人の窮地を利用して自らの利益を最大化しつつ、育人も母親も心もそれなりの幸せを掴める余地を提案する手法は、狡猾というほかはありません。

 

 

5.長谷川心の支え

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「先輩が……カラメル?」

育人がスタジオを辞めることを柳田から聞いた心は、「私で先輩の力になれるの?」「助けられてばっかなのに」「あんなに強い先輩が辞めたがるってことは、それくらい大きな問題で」と躊躇します。

しかし、今度は心が育人を支える番であると心は決心しました。芸華祭のショーに出ると決心したとき(第5話)、柳田のスタジオを追い出されそうになったとき(第7話)など、育人は心を支えてくれたのでした。

今の育人には支えてくれる人はいません(千雪はパリです)。だからこそ、心は柳田や遠に働きかけ、ひいては藤戸社長にまで心の想いが届いたのです。

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「千雪に作った服のデザインを買い取らせてほしい」

 

 

6.育人に対する評価

第8話ではファッションデザイナーを目指す育人に対して2人の人物から評価が下されました。

一方では、綾野遠は、「育人にそこまでの才能はない。この際だから勘違いしないように事実を告げるけど、育人のデザイナーとしての才能は、並か、並以下だよ。デザイナーになれたところで、食っていける器じゃない。これを機に諦めてパタンナーを目指した方がいい」と言いました。

他方では、「僕、ファッションデザイナーになれると思いますか?」と育人に問われた藤戸社長は「私からしたら、ならない方が驚きだよ」と答えました。

この2人の発言をどう評価するのかは難しいところです。

一見すると、遠の言葉の厳しさと藤戸社長の言葉の優しさが対比されます。しかし、藤戸社長の言葉も、「並程度のデザイナーにならなれる」というように解釈すれば、遠の言葉と変わりません。

とはいえ、2人の言葉は相当に文脈依存的です。つまり、遠には育人にパタンナーとして自分のチームに入って欲しいという下心があったので、わざと厳しい言葉を言ったという可能性も考えられますし、藤戸社長には息子ほどの年代の少年が涙を流しているのを見て同情で優しい言葉を言ったという可能性も考えられるのです。

しかし、いずれにせよ育人が藤戸社長の言葉に救われたのは間違いありません。

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「私からしたら、ならない方が驚きだよ」

 

 

7.ラストの千雪の独白がグッとくる

この部分はもしかしたら次回第9話の冒頭に使われるかもしれないのでネタバレみたいになってしまうかもしれないのですが、第8話のラストシーンで、育人に「僕のショーに出てくれませんか?」と聞かれた千雪が「もう、しょうがないなぁ」と言った場面のことです。

この千雪のセリフの前には、原作では独白があって、これがグッときたので以下に引用します(原作第6巻第48話)。

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パリでのオーディションが上手くいかず失意の表情の千雪

ファッションウィークは、パリだろうがミラノだろうが、誰でも受けられるオーディションを開くブランドが多い。極端なことを言えば、デザイナーに認められれば素人だって出られる。でも、それが重要なのは“身長(スタイル)”だから。

オーディションは10mくらいの距離をデザイナーの前で往復するだけ。私は数十社受けて、結局1mも歩かせてもらえなかった。

藤戸千雪というモデルを必要としてくれる場所はない。現場も、実の父親も、憧れの人からだって、一度見放された。

それなのにどうして、どうして君は、いつだって、いてほしい時に現れて、わたしは君の言葉に救われちゃうんだ。

 このような独白があってからの、「僕のショーに出てくれませんか?」「もう、しょうがないなぁ」なのです。最高の流れじゃないですか?

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「もう、しょうがないなぁ」

 

 

 

第9話の記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

アニメ「ランウェイで笑って」第7話の感想・考察――千雪の本気、心の本気

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第7話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。

第6話の感想記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#新衣装登場!)

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第7話「存在感(オーラ)」

相当する原作のエピソード:第4巻第25話「心の支え」、第26話「弱虫の決意」、第5巻第37話「存在感(オーラ)」、第38話「業界の宝」、第39話「大人の仕事」、第40話「憧れと才能と手段と」、第6巻第41話「忍び寄る魔の手」、第42話「君は何になりたいの?」、第43話「頑張り屋さん」、第44話「優先順位のお話」

ようやく勝ち取った雑誌撮影の仕事に訪れた千雪は、そこで出会った高身長のモデルの存在感に圧倒されてしまう。それは、本当はデザイナー志望であり、嫌々ながらモデルの仕事をこなす心だった。打ちひしがれた千雪は帰り道、マネージャーに「モデルを辞めたい」と訴える心の姿を見てしまい……。

 

 

1.「存在感(オーラ)」について

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心に挨拶をする千雪

ついに、藤戸千雪と長谷川心が邂逅しました。初見こそ圧倒された千雪は、すぐに立ち直り自信を持って撮影に臨むことになります。しかし、撮影衣装に着替えた心に千雪は再び圧倒されたのでした。

アニメではやや足りないところがあったので、ここでは原作ベースで「存在感(オーラ)」について解説してゆきたいと思います。

まず、千雪の回想場面にて雫さんは千雪とこのような会話をします。

「胸を張りなさい。千雪、モデルに必要なものって何?」

千雪「身ちょ――」

「違う。〔モデルに必要なのは〕『存在感(オーラ)』。身長はあくまで“オーラ”を放つ最大のツールでしかない。だから千雪、胸を張って! 手の先、足の先まで神経集中! 瞳に魂込めなさい! 腑抜けたオーラで相手できるほど高身長モデルは甘くないわよ!」

 これを思い出した千雪は、雫さんの教え通りに姿勢を正して心に挨拶を行い、細かなところまで気を配って撮影の準備に取り掛かります。

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爪を磨く千雪

そんな中、他のモデルたちが心に対する妬み嫉みを話しているのが千雪の耳に入ります(モデルにしては肉が多いとか、事務所社長と枕営業してるとか……)。ここで千雪はもう一度雫さんの言葉を思い出します。

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「“存在感(オーラ)”が出る2つの場所、どこか分かる?」

「千雪……じゃあ“存在感(オーラ)”が出る2つの場所、どこか分かる? ひとつは身体(スタイル)。姿勢、仕草、身長から放出される」

千雪「もうひとつって何……雫さん?」

「もうひとつは……ね、〔胸に手をあてながら〕“ここ”。自信っていう“気持ち(ハート)”から滲み出るの。心から溢れ出るの。だからね、千雪。当たり前だけど、何かに挑戦してたら悔しいことも辛いこともある。ましてやモデルの世界。いじめや足の引っ張り合いだって珍しくない。だからこそ相手を貶めない。相手をけなすことで安心する、そんな自分を正当化するための貶めからは自信は生まれない。そんなモデルの心からは存在感(オーラ)は出ない」

雫さんの言葉を胸に、千雪は「自信」を持って、つまり心を貶めていた周りのモデルとは違うんだという気概を持って撮影に臨みました。ところが……長谷川心の登場で場の空気は一変しました

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オーラを出そうとする千雪に降りかかる長谷川心のオーラ

撮影後に千雪は長谷川心のオーラについてこう振り返っています(原作第5巻第38話)。

すごいモデルっているもんだなぁ。今まで何人か見てきたけど……でも、あの人は異質……。目が、何というか……冷たい。心を閉ざしているみたいな、魂が宿らない瞳。逆にそれが異質な空気になってる。

また、カメラマンの美和さんは、長谷川心についてこう表現しています(原作第5巻第39話)。

長谷川心ちゃんは、スイッチが入ると、空気が止まるんだよね。喉元に刃物を突き付けられて、「今、この瞬間は音を立てるな。動くな。」って言われてる気分に私はなった。バチバチの激しい存在感(オーラ)を出す子は結構いるんだけどね、ああいう静かで鋭いのは初めてだったかも。

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長谷川心のオーラ

この2人の感想からは次のことが言えそうです。すなわち、他人を貶めることではオーラは生まれないが、しかし、長谷川心は自分自身を貶めることによってオーラを生み出している、と。デザイナーになりたいという夢を持ったままモデルの仕事をしている負い目が彼女のオーラを生み出しているのです。まさに「負のオーラ」です。

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他を圧するオーラ

そして、高身長と負のオーラを持った長谷川心の強い存在感に、低身長かつ長谷川心のような独特のオーラも出せなかった千雪は圧倒されてしまった上、撮影から外されたのです。

そんな失意の千雪は、「貶めからは自信は生まれない」という雫さんの教えにもかかわらず、思わず「わたしは心のどこかでまだ――思ってたんだ。同じ舞台に立ちさえすれば戦えるって。東京ファッションウィークで拍手をもらえたから、相手がどれだけスタイルが良かろうが勝負はできるって。――ちがった。わたしじゃ――同じ舞台にすら上げてもらえない」「身体に傷を作らないのはモデルの初歩の初歩でしょ。本気でやってよ。真面目にやってよ。あなたの場所に立ちたいモデルは山ほどいるのに、立ちたくても立てないモデルがいるのに、立たせて……もらえないモデル……だって。なのに、なんで、なんで、なんで――」と泣きそうになってしまいました。

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涙をこらえる千雪

 

 

2.千雪の本気、心の本気

撮影後、心はマネージャーの五十嵐にお願いをしました。

「こういうの、もうやめてください」

五十嵐「気にしなくていい。才能あるやつが勝って、ないやつが負ける」

「嫌なんです。私のせいで辛い思いする人がいるの。お願いします! モデルを辞めさせてください!」

五十嵐「それは、『自分のせいで蹴落とされる人間がいる』ということに耐えられないって意味か?」

「そういう……わけじゃ……」

ここで2人の会話を聞いていた千雪が心を問い質します。

千雪「それって、私のせい? 私を見て可哀そうだと思ったってこと? ふざけないでよ! あなたに同情される筋合いはない! あなたがどんな思いでモデルをやってるかなんて知らないけど、こっちは本気でやってる! なのに、私の覚悟をなんだと……!」

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涙をこぼしてしまった千雪

「私のせいで辛い思いする人がいるのが嫌」という心の言葉は、たしかに千雪の本気を軽んじる発言でした。千雪は本気でモデルをやっているからこそ、“落とされる”ことも“外される”ことも、覚悟しているのです。本気でモデルをやっているなら自身の責任として千雪が背負うべきことを、心がまるで自分の責任のように感じ、モデルを辞めるための口実に使うのは、千雪としては許せないのです。

そんな「千雪の本気」に触発された心は、五十嵐にこう宣言します。「五十嵐さん、モデルを辞めさせてください!」「私は本気で服を作る人になりたいんです!」と。「千雪の本気」によって、心は「デザイナーになるという夢」についての本気を思い起こしたのです。しかし、五十嵐はそれを認めず……。

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「五十嵐さん、モデルを辞めさせてください」

 

 

3.五十嵐優について

ここでは、原作を織り交ぜながら、心のマネージャーである五十嵐優について掘り下げてゆきたいと思います。

さて、長谷川心の決意にもかかわらず、五十嵐は「ダメだ。人は才のある場所で活躍すれば幸せになれる。何度だって言う。お前の体はモデル界の宝。服飾界で腐らせるのは私が許さん」と返します。

その後、五十嵐はバーにて過去を振り返ります。

向いていない人間が選べる選択肢は3つだけ。諦めるか、正々堂々ぶつかって砕け散るか、しがみついて手段を選ばず夢をつかむか。〔私は〕そうして手に入れた。

嬉しい……。あこがれ続けたラーレフォーン〔イギリスの老舗ブランド〕のショーなんだ。嬉しいに決まってる。そのはずだったのに……

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「そのはずだったのに……」

モデル時代に168cmまでしか身長が伸びなかった五十嵐は、後ろ暗い手段で憧れのショーに出ましたが、そこの景色は奇麗だとは思えませんでした。結局、彼女は、「“向いている場所”で居場所を見つけるしか幸せはなかったんだよ」と結論づけ、マネージャーに転職しました。

そして五十嵐は、現在の長谷川心が選択の分岐に立っていると吐露します。「妥協して服飾界の小さなところに収まる……なら、もっと早い段階で妥協してモデル界に来るべきだ」「だってヤツはモデルとして天才だ。同じ不幸なら最も幸せなところで不幸になればいい」とまで言うのです。

それに比して千雪については、「千雪の向いていない世界でかむしゃらに頑張ってる姿が、昔の自分とかぶる?」と問われると、五十嵐は「あれは向いていないんじゃない、終わってるんだ! 私は、手段を選ばず夢をつかんで幸せになれなかった。結局、自分が向いている場所で居場所を見つけるしかなかったんだよ」「人はやれることしかやれないんだ。お前もあのチビに引導を渡してやれ」と雫に言うのです。

以上のことから五十嵐優の人生観が分かります。要約すれば、「人が幸せになれるのは向いている場所だけ。向いていない人は早々に諦め、別のところで向いている場所を見つけるべきだ」というものです。五十嵐はこの人生観に従って、マネージャーとして彼女に厳しく接し、また千雪はモデルを諦めるべきだと雫に言うのです。彼女の人生観は、一理あるどころか現実主義的で説得力があります。五十嵐はただの嫌な人なんかではありません。

ちなみに、アニメでは省略された五十嵐と雫の過去(モデル時代)については、原作第5巻第40話をご覧ください。

 

 

4.支えてくれる人

柳田に最終チェックを頼まれた心は、失敗をしてしまいました。チェックしたにもかかわらず、まち針が2本も残っていたのです。「こんなガキでもできるような作業でミスりやがって」「さっさと帰れ! 迷惑だ!」と柳田に言われた心は玄関に向かいます。

しかし、そんな心を育人は引き止めます。ここで育人が行動を起こしたのは、自分にも同じ経験があったからです。

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心を引き止める育人

初めて柳田のアトリエに訪れた際、育人も柳田に追い出されそうになりました(第2話)。そこで帰りそうになった育人を引き止め背中を押してくれたのは千雪でした。育人には支えてくれる人がいたのです。

しかし、今回の心には支えてくれる人はいません。育人を除いていないのです。だから、今度は自分が支える番だと気付いた育人は心を引き止めたのです(原作第4巻第25話参照)。

育人に支えられて戻ってきた心による謝罪と、育人による説得によって、柳田はようやく許してくれました。それどころか、「実力がない人間がやらなきゃいけないことは2つだけだ。実力を上げることと、できる仕事を全力でやること。それと2次予選ちゃんと通過しろ。じゃなきゃお前を使ってる俺が恥をかく」と、アドレスと激励までくれたのです。オジサンのツンデレも良いものです。

ちなみに、柳田がデザイン専門で自分では縫えず、厚手の手袋をしてまち針を抜いたのは、初めてのミシンで指に縫い目ができたトラウマからです(笑)

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わざわざ厚手の手袋をしてまち針を抜いた柳田

 

 

5.デザイナーとパタンナー

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「僕のチームに入らないか? パタンナーとして」

綾野遠は、芸華祭のショーに挑む自身のチームに、パタンナーとして育人を招こうとしました。

ここで、柳田の言葉を借りながら、パタンナーの仕事について振り返りをしておきます(原作第6巻第41話)。

パタンナーは、簡単に言うと“デザインを作れる服にする”仕事だ。

デザイナーのデザインは基本的に“絵”で上がってくる。作り方なんか考えずにな。コレクションに出すようなブランドだと、「は? これどうやって作んだ」なんてもんもザラだ。それをパタンナーは自身の経験と知識をフル活用し、素材選び、縫い方、糸の種類、アイロンのかけ方、ひとつでもずれれば再現できない独創的なデザインを、パズルのようにひとつひとつ繋ぎ合わせて現物化する。一流のパタンナーは一流のデザイナーよりも貴重。そう言われるほど価値がある存在だ。

ただ、おかっぱ。パタンナーはどこまで行ってもパタンナーだ。デザイナー主導は変わらん。お前が前に言った野望、その野望を果たせるのはどっちだ? ブレるな。

 こうした柳田の教えのおかげもあってか、育人はきちんと遠の誘いを断ることができました。

ちなみに、育人のパタンナーとしての才能は既に第4話にて言及されていましたね。

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6.長谷川心の2次予選の合否について

実は、原作では、長谷川心は2次予選に通過できませんでした(第6巻第43話~第44話)。

こう書くと、「まさかここに来てオリジナル展開か?」と思われるかもしれませんが、そういう訳ではありません

心が2次予選で落ちたことを知った後、彼女の頑張りが報われてほしいと思った育人は心に対して、自分のチームに加わって一緒に本選に出ないかと提案します。

このとき2人は、「2次予選に合格しても別の予選通過者とチームを組む人が何人かいるため、その人が辞退した分だけ枠が余り、心にも追加合格の可能性がある」と遠から教えられます。

育人の誘いと追加合格の可能性の間で揺れる心でしたが、彼女の下した結論は厳しい方でした。育人と一緒ではマネージャーは自分の“本気”を認めてくれないと考え、育人の誘いを断ったのです。そしてその後、心はその枠に見事追加合格したのです!

このような原作の流れを見ると、なんとも迂遠なような気がするかもしれませんが、しかし長谷川心の“本気”が試された展開だったのです。

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共に本選に進むことになった育人と心

 

 

 

さて、次回は、第8話「デザイナーの器」です。容体の悪化した育人の母親はいったいどうなるのでしょうか? 育人は手術費用を工面できるのでしょうか?

 

第8話の記事はこちらからどうぞ!

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アニメ「ランウェイで笑って」第6話の感想・考察――デザイナーの資質とは?

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第6話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。

第5話の感想記事はこちらから!

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0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第6話「優越感と劣等感」

相当する原作のエピソード:第4巻第30話「等価交換」、第31話「コンセプト」、第5巻第32話「自分を信じろ」、第33話「優越感と劣等感」、第34話「甘美な誘い」、第35話「Just a moment」、第36話「私の“利(メリット)”」

参加者が自分でデザインした服を披露する芸華祭一次予選。育人が選んだモチーフは審査員の予想を大きく裏切るものだった。審査員たちの育人への評価は……!? 一方、夢に向かって突き進む育人に感化された千雪も、自分の力で道を切り開こうと片っ端からモデルの仕事先へ自らを売り込んでいた。

 

 

1.千雪の尊敬する人

同級生との会話の中で、千雪は育人のことをこう評します。

育人のこと、結構、尊敬してるんだ。

私はさ、本気でハイパーモデルになるつもりだから、モデルに必要ないことはほとんど切り捨てちゃうの。でもね、育人は違う。捨てない。全部捨てないの。

きっと私の方が夢に向き合っている時間は長い。それでも育人が頑張っていないって、欠片も思えないのは、きっとそこに何も捨てない、両立するって覚悟があるから。

私にはできない。できないから感心するし、尊敬するし、負けたくないって思うの。

だからね、育人。勝って。勝たないとその努力は証明できない。

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「私にはできない。できないから感心するし、尊敬するし、負けたくないって思うの」

この千雪の言葉に表れているように、育人と千雪の努力の方法は対照的です。

そして「勝たないとその努力は証明できない」という言葉は、千雪自身にも向けられたものでもあります。だって、「私でもパリコレに出るのは無理じゃない、君でもデザイナーになるのは無理じゃないって、私のためにも証明したいんだよ」(第2話)と、千雪は自身も育人も結果がすべての世界に身を置くことを覚悟しているのですから。

ところで、「育人のことを尊敬している」というこの千雪の発言は、前回(第5話)の育人の発言と対になるものです。そこでは育人は、心に対してこのように言葉をかけていました。

えっと、うまく言えないんですけど、やりたいことはやるべきで、認めてもらうには自分から一歩踏み出す。そう、尊敬する人から学びました。

育人のいう「尊敬する人」とは千雪のことです。このように育人と千雪は、叶えたい夢や努力の方法は異なりますが、互いを尊敬し高め合っているのです。

 

 

2.デザイナーの資質――オシャレの問題

一次予選の合格発表の場面がアニメではやや分かりにくかったと思うので、原作ベースで解説してゆきたいと思います(原作第5巻第32話~第33話)。

(1)手直しをすべきか否か

まず、全員の審査が終わった後、予選参加者らは教員から次のように指示されました。

これから私と学園長で二次予選に進む通過者を決める……前に、今から2時間の手直しの時間を与える。審査の段階で散々言われたヤツもいるだろう。挽回するチャンスだ。

デザイナーは、モデルをランウェイに送り出すギリギリまで手直しをする。それは自分が生み出すものに誇りと責任を持ってるからだ。諦めるな!! 自分を信じろ!! それはデザイナーの立派な資質だ!!

手直しをする者は残って作業! しない者は多目的教室Aに移動して作品を提出するように!

このように言われた学生たちの相当数は、布を買い足すために財布を手に教室を出てゆきます(この点、アニメにおける学生らの歩く姿勢からは、手直しをせずにドールを持って多目的教室に移動したように見えます)。

周りの学生らが行動を起こす中、育人は悩みます。そこで育人の頭に思い浮かんだのは、千雪に言われた「欲しいなぁって思って。好きだよ、これ」という言葉でした。この言葉に勇気をもらった育人は、手直しをせずに、当初の状態のままで提出することを決意します。

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「欲しいなぁって思って。好きだよ、これ」

(2)真のテーマ

育人が提出のために向かった先の教室で待っていたのは、学園長の衝撃の言葉でした。少々長いですが、アニメより分かりやすいので原作のセリフをそのまま引用します。

じゃあ審査会で色々言われても自分を信じて“直さず”作品を提出しにきたみんな! これから、がくえんちょーの私から大事なお話と、この予選の本当の審査基準のお話をします。

さて、みんな! 今回の課題「セイラちゃんに似合うオシャレな服」をテーマに服を作りましたね。そして中には、「ダサい」って言われた人もいる。“オシャレ”がテーマなら、非難の言葉は“ダサい”だよね~。でもみんな、思わなかった? 「オシャレってなんだよ」「漠然としすぎだろ」……って。

実を言うとね、オシャレかどうかなんてことほど主観的なことはないんだよ。

だって、そうでしょ? ちょっと昔にメンズのショートパンツが流行して、最近は「タックイン」がトレンドになってる。流行だからさ! “オシャレ”が好きは人は注目するわけじゃない。……でもこの中でもいるでしょ? 「ダサい」って思ってる人。そんなもんなのよ。派手なのが“奇抜無理”って言う人もいれば、シンプルなのを“地味つまらない”って言う人もいる。

パリに並ぶトップブランドの服全部をオシャレだと思う人なんていない。あのトップブランド「CHANEL」の創始者、ココ・シャネルは、当時女性の必需品だった“コルセット”を使わないジャージー生地の着やすい服を作り続けた。最初は世間からの苦い言葉の連続だったけど、今では“男性に魅せるための女性服”から、“女性のための女性服”へと女性服の常識を変えた。

日本を代表するブランド「COMME des GARÇONS(コムデギャルソン)」や「Yohji Yamamoto」は、当時タブーとされていた“黒”の服をパリコレで発表。賛否両論降り注いだけど……現在、数多くの黒い服がパリのランウェイを歩いてる。

他人の“好み”に振り回されてはダメ。“ダサい”“タブー”に怯えて70億人に嫌われない服を作るくらいなら、69億人に嫌われても、1億人が「大好き!」って言う服を作りなさい。

ここに集まったみんなは、他人の意見に振り回されず自分の中の個性(オシャレ)を完遂したみんな! そしてそれこそがこの課題の真の合格条件(テーマ)。

デザイナーが服を作る基準に“オシャレかどうか”……なんかよりもっと適した言葉がある。“面白い”か“面白くない”か。よってこの場に来たみーんな! “面白い服”をありがとう! 一次予選突破です!!

さて、これから学園長の言葉を解きほぐしていきます。

ア.デザイナーの資質とは

まず、「オシャレ」「ダサい」の話は分かりやすかったですね。具体例が提示され、「オシャレとは主観的なものであって評価の基準にはならない」ということが説明されました。

そしてデザイナーの資質として大事なのは、「他人の“好み”に振り回されてはダメ」「他人の意見に振り回されず自分の中の個性(オシャレ)を完遂」すること、なのでした。

ただし同時に、学園長は「“ダサい”“タブー”に怯えて70億人に嫌われない服を作るくらいなら、69億人に嫌われても、1億人が「大好き!」って言う服を作りなさい」とも言います。自分自身ではない以上、この1億人だって「他人」のはずです。このままでは矛盾に満ちた発言になってしまいます。

しかし、これを整合的に解釈するならば、「デザイナーは、自分自身のオシャレを、そしてそれを好きだと言ってくれる人のことを信じろ」ということになるでしょう。自分自身のオシャレの基準で作り上げたパジャマに対する自信が揺らいだ際に、千雪の「これ好きだよ」という言葉に励まされた育人は、まさにデザイナーの資質を試されたのでした

イ.学生審査員の役割

ところで、「他人の意見に振り回されず自分の中のオシャレを完遂すること」が真のテーマだったことから、学生審査員の役割が明らかになります。

学生たちは「審査員」という肩書から「オシャレさを審査すること」だと自身の役割を解釈し、競争相手である他人の作品には辛辣な評価を下します。が、真のテーマは「オシャレさ」ではない以上、この評価の内容は関係ありません。もちろん、「審査する側が審査されている」という訳でもありません(したがって、育人が審査員として行った好意的な評価も審査の上では特に意味はありません。人間関係にとっては大事ですが)。

要するに、学生が互いに審査員になるという形式のために「審査会は蹴落とし合いである」という心理状態に陥った上で辛辣な評価を下し、審査される側の「自分の中のオシャレ」を揺らがせることこそが学生審査員の役割だったのです。

ウ.面白い服

上記の発言の最後の方で、学園長は、「デザイナーが服を作る基準に“オシャレかどうか”……なんかよりもっと適した言葉がある。“面白い”か“面白くない”か」と言っています。

同じく「69億人に嫌われても、1億人が「大好き!」って言う服を作りなさい」との発言の中で「好き」という基準も言及されているので、「好き」と「面白い」の違いが気になるところです。

ところで、先ほどの解釈によれば、「自分自身のオシャレを、そしてそれを好きだと言ってくれる人のことを信じること」がデザイナーの資質でした。「オシャレ」主観的なものである以上、それについて「好き」と言うことも主観的なはずです

そうすると、「オシャレ」や「好き」の内容が主観的である以上は評価の基準になり得ません。しかし、それとは裏腹に、教師陣は18名の中から1~3位の順位付けを行っているのです。ということは、順位付けには何らかの客観的な基準があったはずであることからすれば、この順位付けは「面白い」の程度によって決められたものだったのです。

そう考えてみると、学生審査員の役割審査される側の「自分の中のオシャレ」を攻撃してそれを揺らがせること教員審査員の役割「面白い」の順位を付けること、ということになります(遠は両方を兼ねていましたね)。

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育人は3位に

(3)育人の資質

育人は、手直しをせずに他の一次予選通過者と同じく「自分の中のオシャレ」を貫いた点、そして育人の「オシャレ」を「好き」と言ってくれた千雪を信じた点において、デザイナーの資質を持っていることが評価された訳ですが、学園長は彼についてこう言っていました。

セイラちゃん、ストライプ好きなのよねぇ。だから、もし狙ってたとしたら、彼、着る相手の嗜好を読み取る素晴らしいものがあると思うの。

 

 

3.デザイナーの資質――お金の問題

ところが、デザイナーの資質について、育人は綾野遠から厳しい言葉を投げかけられてもいます。

「ねぇ、育人はさ、予選の結果、満足してる?」

育人「どう……なんですかね。満足はしてないと思います。でも……」

「甘いよ。材料費、なんでちゃんと使わなかった? そんなの生地を見ればすぐに分かるよ。だから育人は負けたのが仕方がないって思ってる?」

育人「それは絶対違います!」

「仮に違ったとしても、よろしくないね。個人の都合でデザインを最高の状態で再現することを後回しにしたのは、服を作る者として真摯じゃない。はっきり言う。今回の敗因は、生地選びを渋ったからだ。そこにたとえどんな理由があったって、客には一切関係ない」

育人「仕方ないじゃないですか。だって、あのお金は妹たちの……。僕は長男だ! 妹たちのお金に手を付けなきゃならないくらいなら、僕は……!!」

「『僕は』ね。その続きを言わないところは偉いよ。ごめんね。こんな説教をするつもりじゃなかったんだ」

(1)遠の言葉の意図

このようにデザイナーの資質について育人を責める遠の意図は、もちろん自身が立ち上げるブランドに育人をリクルートするためということもあるはずですが、やはりそれ以上に、育人に対して発破を掛けることにあったはずです。

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「負けちゃった、か……」

育人は、順位が発表されたとき「負けちゃった、か……」とつぶやき、心に「おめでとうございます!」と祝われた際には、「ですよね。こんなにいい結果になるなんて思ってもみませんでした」と、あまり悔しそうな様子ではありませんでした。木崎香留や江田龍之介が順位発表の際に感情を露わにしたのとは対照的です。

きっとこのような悔しさや向上心があまり見られない育人を見て、遠は上記のようにデザイナーの資質を説き、育人から悔しさと向上心を引き出したのだと思われます。

(2)「僕は……!!」の続き

育人の「僕は……!!」の続きが気になるところです。「妹たちのお金に手を付けなきゃならないくらいなら」という前からの続きを踏まえれば、「僕はデザイナーになることを諦める!」みたいな感じになるのでしょうか。

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「『僕は』ね。その続きを言わないところは偉いよ」

しかし、その後の「『僕は』ね。その続きを言わないところは偉いよ」という遠の言葉との繋がりが難しいところです。いったい何が「偉い」のでしょうか? 「育人自身の夢であるデザイナーという職業を否定することはしなかった」ことが「偉い」ということなのでしょうか

あるいは、言霊信仰の観点から言えば、「妹たちのお金に手を付けなきゃならないくらいなら、僕はデザイナーになることを諦める!」と言葉に出してしまえば、「たとえ妹たちが許してくれても、そういう状況に陥ったときにデザイナーになることを諦めなければならなくなる」と自分自身を縛る言葉を育人が言わなかったことが、デザイナーになるためならば何でもする遠にとっては「偉い」ということだったのでしょうか

皆さんはどう解釈しましたか?

(3)柳田の回答

ところで、第4話の最後で、遠が育人の引き抜きを柳田に提案していましたね。どうやらアニメでは省略されたようなので、ここで原作の柳田の回答を紹介すると、以下のような返答でした。

あいつはあいつだ。俺の物でも……ましてやテメェの物にもならん。

 

 

4.千雪の努力

前回(第5話)では、室内でヒールを履いたりストレッチをするなど千雪が家で努力を重ねる様が見られましたが、今回は、宣材写真を撮ったり営業を掛けたりする様が見られました。

宣材写真の費用が自分持ちというのは(モデルをしているとはいえ)高校生にとってなかなか厳しい世界です。

また更に凄いのが、書類審査に全落ちしても直営業を行い、ようやく取り付けたアポでも、新沼の代わりの赤坂から「向けられない視線、冷たい言葉」を浴び、それでも自己アピール攻勢を続ける千雪のメンタルの強さには脱帽するしかありません

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「向けられない視線、冷たい言葉……いつも通り……引き締めろ!」

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身体を傷つける可能性があるためにモデルが忌避する場所であっても、自分なら撮影できることをアピールする千雪

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「また電話してください」

 

 

5.「友達」

宣材写真を撮る際、千雪は衣装の一つとして、育人がミルネージュのオーディションを受ける千雪のために作った服を着ます。

「その服、どうしたの?」と問われた千雪は、それまでの撮影時とは異なり、モデルらしからぬ笑顔を浮かべて「友達が作ってくれました」と答えました。やはりこれは「ランウェイで笑って」に通じる笑顔ですよね。

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「友達が作ってくれました」

さて、この笑顔もですが、「友達が作ってくれました」という言葉も興味深いところです。第6話の冒頭で、千雪は同級生に対して育人のことを「友達ではないけど」と説明していました。おそらくこの矛盾は、千雪の同級生に対する変な意地ないしはプライドのためです(そのわりには育人は「尊敬する人」であるなどと、わりと恥ずかしいことを言っていましたが)。

アニメでは省略されたのですが、原作では、カメラマン(美和っち)に「その服、どうしたの?」と問われた千雪は、「なんて答えよう。宿敵? 戦友? 〔同級生の〕2人には否定しちゃったしなぁ。でも、美和っちだし、変な伝え方できないし――まぁいっか」と考えをめぐらせた後、「友達が作ってくれました」と答えたのでした。

ここからは、千雪が育人との関係をどう捉えているのかを伺えます。すなわち、千雪にとって育人は、「宿敵」でも「戦友」でもなく、「友達」なのです。とはいえ、重要なのは、千雪がこの「友達」の中にどのような意味を込めているかです。たとえば、

「都村君には負けたくないでしょ」(第3話)

「こんな仕掛けしちゃって。あいつめ、ヘタレのくせに。私が引っ張って助けなきゃ、心もとない男子のくせに」「都村君のくせに、君ってヤツは、ムカつくくらい私の窮地を救っちゃうんだ」(第3話)

「育人のこと、結構、尊敬してるんだ」(第6話)

など、千雪による育人評はそれなりにあります。これを見ると、やはり「友達」の中にはその言葉以上に豊かな意味合いが込められていそうです。これからの千雪による育人評、そして育人による千雪評が気になるところです。

 

 

 

さて、次回は、第7話「存在感(オーラ)」です。ついに藤戸千雪と長谷川心が邂逅することになりました! 果たして、撮影はいったいどうなるのでしょうか?

 

第7話の記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

ブログを始めてから半年の分析と感想――各種データとともに振り返る

 

 

2020年2月9日をもって、2019年8月9日に当ブログを始めてから半年が経過しました。ということで、この半年を振り返りたいと思います。

ちなみに、ブログを始めてから1か月の感想・分析については、以前に書いた記事があります。

irohat.hatenablog.com

 

 

1.各種データ

結論から言えば、半年間の公開記事数は77本(この記事を除く)、登録読者数は162人、総アクセス数は約36,000アクセスということになります。が、この数字には一種のカラクがあるので、以下、読んでみてください。

 

(1)記事数

この記事を除けば、現在、半年で77本の記事を書きました(一旦公開した後、翻意して削除した記事はありません)。月ごとの内訳は以下の通りです。

2019年8月:24本

2019年9月:10本

2019年10月:8本

2019年11月:10本

2019年12月:10本

2020年1月:12本

2020年2月:3本(2月8日まで)

最初の一月は1日1本の記事をアップしていましたから、これを例外とすれば、おおよそ月に10本程度が限界のようです。

ちなみに、ちゃんと計算すると、

77本÷6月=月に約12.8本

約12.8本÷4週=週に約3.2本

となりますが、現在の月に10本程度のペースだと、週に2本、調子の良いときに週3本くらいになります。

記事を書くには、ネタがあるかどうかも重要ですが、記事を書くための時間ややる気も不可欠なので、毎日のように記事をアップしている方に対しては、まったく尊敬するしかありません。

 

(2)登録読者数とアクセス元

このブログに登録された読者数については、いちいちその経過を記録していないのでザックリとした数字になりますが、開始1か月で96人、半年で162人になりました

最近は「〇〇さんが読者になりました」という通知をあまり見ないので、これくらいで頭打ちなのかなぁと思っています。

そもそも、後述のように、ブログに書く記事の内容が変遷している(つまり、雑多なテーマの記事を集めたブログである)ので、読者になろうとする人が少ないと思います。

さらに言えば、どちらかといえば検索からブログにアクセスしてくる人を念頭に置いた記事を書くつもりのブログなので、登録読者数の頭打ち感は気にしてもしょうがないと割り切っています(もちろん、はてな登録読者数が増えるに越したことはないのですが)。

実際、アクセス元の約7割がGoogle検索、約2割がYahoo!検索、約1割がはてな関連やTwitterなので(Twitterはもう少し増やしたいところです:https://twitter.com/irohat1)。

 

(3)スター数

スター数については、これも、はてなアカウント保持者しか付けられないので、評価に迷うところです。とはいえ、数字は明らかです。

8月中旬から10月上旬にかけては何故かほとんど恒常的に二桁に達していたのですが(最高で78個:茅原クレセ『ヒマチの嬢王』――「キャバクラ」×「地域振興」のお仕事マンガ! - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ )、最近は10に達せば万々といったところでしょうか。

 

(4)アクセス数

半年間の総アクセス数は、約36,000アクセスです。1月あたり約6,000アクセス1日あたり約200アクセスという計算になります。

しかし、この数字には注意が必要です。というのも、半年間の合計約36,000アクセスのうち、約18,000アクセスは始めてから1か月の間の数字なのです(詳しい経緯はこちら:ブログを始めて1か月の感想 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ )。

ということで、一時的な例外状況を除外して考えると、

(36,000-18,000)÷5月=1月あたり約3,600アクセス

約3,600アクセス÷30日=1日あたり約120アクセス

ということになります。最近は平均してこれをやや下回るくらいです。もっと増やしたいですね。

 

(5)アクセス先――人気記事は?

私のブログのアクセス数の多い人気記事には、4つの種類があります。適当にネーミングすれば、ラノベジャンル論記事タイミング型記事保存版型記事マイナー記事の3つです。

ア.ラノベジャンル論記事

ラノベのジャンル論についての記事は鬼門で、炎上気味にアクセスが増えました(リンク先で紹介しているような記事のことです:ブログを始めて1か月の感想 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ )。

最近はこれらの記事へアクセスする人も少なくなくなりましたが、再びこの手のジャンルの記事を書けばアクセスは増えると思います(が、あまりその気にはなれませんね)。

イ.タイミング型記事

アニメの放送直後や漫画・ラノベの発売直後に公開した感想記事は、アクセス数が増える傾向にあります。が、基本的に時期モノなので、時期が過ぎればアクセス数は減少します

漫画やラノベの感想記事もそれなりですが、やはり、アニメの感想記事は競争が激しい(同種の記事が多い)ので、基本的には、「〇〇 △話 感想」と検索したときに、検索上位(特に検索1ページ目)に入り込むには、なるべく早く記事を書いて公開しなければなりません(たとえば、「ランウェイで笑って △話 感想」とGoogle検索したときに、5chやTwitterの実況のまとめといった、執筆・編集の時間が少なくて済みそうな記事、あるいは読むのが手軽な記事が検索上位に並んでいます)。

タイミング型記事は、労多くして功少なし、といったところでしょうか。

ウ.保存版型記事

保存版型記事というのは、「〇〇のおすすめ10選」「△△の理由とは」みたいな、公開から期間が経過してもその内容が時代遅れになりにくく、持続的にアクセスされる記事のことです。私のブログの場合、以下の記事が人気のようです。

女性が主人公のライトノベルはおもしろい!――おすすめすべき理由を考察してみた - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

女の子が主人公のアニメおすすめ10選‼ - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

どちらも、「女性が主人公」という点で共通しています。おそらく、「女性が主人公」という切り口で書かれた競合記事が少ないからだと思われます。「女性が主人公のおすすめラノベ10選」とか「百合ライト文芸おすすめ10選」みたいな記事を書きたいなあ~とずっと思っているのですが、まだ書けていません(というか、これを書けるほど読めていません)。

エ.マイナー記事

マイナー記事というのは、本来ならばタイミング型記事に分類されてしかるべき内容だが、競合する相手があまりにも少なく検索1位となってしまったために、アクセスを集めるようになった記事のことです。

私の場合、漫画『かげきしょうじょ!!』の第8巻の感想・考察記事がこれに該当します。この記事を公開してからずっと、基本的にアクセス数トップの地位にいます。

『かげきしょうじょ!!』第8巻の感想・考察――渡辺さらさの出生の秘密に迫る! - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

Googleで検索すると、「かげきしょうじょ 8巻 感想」ならば3位ですが(1位、2位は「読書メーター」)、「かげきしょうじょ 8巻 考察」1位、さらに「かげきしょうじょ 考察」「かげきしょうじょ ネタバレ」でも1位になっています。

この『かげきしょうじょ!!』という漫画は大変面白いのですが(紹介記事はこちら:斉木久美子『かげきしょうじょ!!』――歌劇に夢見る少女たちの青春を目撃せよ! - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ)、白泉社の「MELODY」という隔月刊の少女向け漫画雑誌に掲載されており、「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年マガジン」はもちろんその他の少年誌・青年誌に掲載の漫画に比べると、やはり残念ながら知名度・読者数という点で劣ります。そして、「漫画の読者数が少ない=記事を書く人が少ない」ということになるので、結果的に、このような人気のマイナー記事になったのだと思います。

 

 

2.記事の内容の変遷

記事の内容は変遷しています。 ただし、「小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ」というブログ名の範囲内に収めています(そう考えると、この広範なブログ名は何とも覚悟がありませんね)。

 

(1)ラノベ・漫画

ラノベや漫画についての紹介・感想・雑考を記した記事は、ブログを始めて2か月間(8月~9月)に集中しています。最近はほとんどラノベや漫画の記事をアップできていなくて心苦しいところです。

ライトノベル カテゴリーの記事一覧 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

漫画 カテゴリーの記事一覧 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

 

(2)アニメ

ラノベや漫画に取って代わって増えたのがアニメの感想記事です。

アニメ カテゴリーの記事一覧 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

ア.総評系の感想記事

1話を見た感想、前半(6話まで)を見た感想、最終話までを見た感想など、視聴したアニメすべてについて一言ずつ程度の感想を書いた記事は、手軽なので毎クール書くようにしています。

2019夏アニメ総評①――マイベスト5選 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2019夏アニメ総評②――ひとことコメント - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2019秋アニメ1話目一言コメント - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2019秋アニメ前半一言コメント - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2019秋アニメ総評①――ひとことコメント - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2019秋アニメ総評②――マイベスト5選 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2020冬アニメ1話目ひとことコメント - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

イ.単発的な感想記事

毎話の感想は大変なので書けないのですが、書きたいという気持ちが高ぶって、単発的に書いた記事はいくつかあります。

アニメ「荒ぶる季節の乙女どもよ。」11話の感想・考察 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

アニメ「荒ぶる季節の乙女どもよ。」12話の感想・考察 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

アニメ「俺を好きなのはお前だけかよ」第9話のちょっとした感想 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

アニメ「バビロン」第9話を見てちょっと興奮した件 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

ウ.紹介・まとめ記事

初期のころはアニメそれ自体の紹介・まとめ記事を書いていました。

女の子が主人公のアニメおすすめ10選‼ - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2019年秋に放送予定のラノベ原作アニメ一覧――女性が主人公のアニメは2本! - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

これから放送される予定の「女性が主人公」のラノベ原作アニメ一覧――秋2本、冬1本、時期未定3本 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

最近は、アニメに関する動画やキャプチャを紹介したりまとめた記事が多いです。

2019夏アニメで購入したOP・ED曲 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

アニメ「女子高生の無駄づかい」の各話予告動画は見ましたか? - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2019秋アニメで購入したOP・ED曲 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2019アニメのOP・ED曲の年間マイベスト10選 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

アニメ「戦×恋(ヴァルラヴ)」全12話のミッション(デート)一覧【画像付き】 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

「荒野のコトブキ飛行隊」の第1話&外伝が無料公開されているのはご存知ですか? - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

エ.毎話の感想記事

毎話の感想記事を書くのは、結構大変なので最初のころはやっていなかったのですが、最近はしています。

2019秋クールは、いきなり感想を書くのは難しいのかなと思ったので、ソフトテニス経験者ということで、アニメ「星合の空」について、ソフトテニスの解説記事を書いていました。

星合の空 カテゴリーの記事一覧 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

同クールに、アニメではないですが、漫画原作ドラマのあおざくら 防衛大学校物語についても記事を書いていました。同時期に2本並行は大変でした。1クールに1本が限界だと悟りました。

あおざくら 防衛大学校物語 カテゴリーの記事一覧 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

現在、2020冬クールでは、アニメ「ランウェイで笑って」の各話の感想記事を書いています。

ランウェイで笑って カテゴリーの記事一覧 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

 

(3)ドラマ・映画・小説の記事は少ない

アニメに比して、ドラマ・映画・小説の記事は少ないです。

ドラマは、前掲の「あおざくら」のほかには書いていません。本当は、2019秋クールに見たドラマの感想をまとめた記事を途中まで書いていたのですが、結局書ききれず、またタイミングも逃してしまったのでボツにしました。

映画については、そもそもこのブログを始めてから映画館で見たのは1本だけです。しかし、ちゃんと記事にしました。

今さらながら映画「屍人荘の殺人」を観てきたので感想を - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

小説(ラノベ除く)については、このブログを始めてからあまり読めていません。去年の11月くらいに石持浅海作品をまとめて読んだので記事を書きたかったのですが、結局書かずじまいです。が、別の作者の作品についてはなんとか記事にしました。

彩藤アザミ『昭和少女探偵團』――戦前昭和レトロで百合なミステリーはいかがですか? - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

 

(4)その他の記事

その他、節目に記事を書いたり気まぐれに記事を書いたりしています。

ご挨拶とブログの運営方針について - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

ブログを始めて1か月の感想 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

新年のご挨拶と抱負――2020年の楽しみにしているアニメ・映画・ドラマ - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

2020年のうちに映像化が決定されるのではないかと期待している5作品 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

私の好きなイラストレーター - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

 

 

3.今後の方針

 

(1)全体的な方針

記事の公開頻度については、最低週1本が適正かなあと考えています。まったくの趣味で始めたものなのに、心労になるようなノルマを課すなんて笑えませんからね。アクセス数も、あまり気にしても精神衛生上良くないですし。

あと、関連して言えば、はてなブログを無料版からPro版に移行する予定はありません。料金を払うほど、特に不便はしていないので(読者の方に不便があったらごめんなさい)。

 

(2)個別的な方針

アニメについては、良い作品があれば、毎クール1作品に限定して、各話の感想記事を書いていきたいです。

ブログ名に反しないよう、ラノベ、漫画、小説については、もっと記事を書きたいのですが……(アニメを見る本数を減らすべきなのかもしれません)。そもそも、積読を消化していかなければなりません。

 

いずれにせよ、なんとか半年間続けることができています!

読者の皆様のおかげです! 今後ともよろしくお願いします!!

 

 

アニメ「ランウェイで笑って」第5話の感想・考察――長谷川心の夢・才能・需要をめぐる葛藤

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第5話の感想・考察記事です。

第4話の記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#(第5弾登場!)

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第5話「それぞれの流儀」

相当する原作のエピソード:第4巻第23話「コンプレックス」、第27話「アイデンティティー」、第28話「其々の流儀」、第29話「お宅訪問」(第25話「心の支え」、第26話「弱虫の決意」のほとんどのエピソードは、省略もしくは次話以降へと後回しにされています)

日本一の服飾大学・芸華大のファッションショーの予選に挑戦することになった育人。予選をくぐり抜けた者だけがショーに参加する資格を得られる。育人は共に柳田の元で働く長谷川 心が複雑な事情を抱えていることを知り、「一緒に予選に挑戦しないか」と誘う。二人で参加した予選当日、発表された課題は育人にとって不利な課題で…!?

 

 

1.引き抜きはどうなった?

第4話は、綾野遠が育人の引き抜きを柳田に提案したところで幕切れとなりましたが、第5話ではその続きが描かれていませんでしたね! 芸華祭予選の行方も気になりますが、こっちも気になりますね!

 

 

2.綾野麻衣の言葉

長谷川心が初めてファッションショーにて綾野麻衣にかけられた言葉は、「いつも街を歩くように普通に足を動かしなさい。あとは勝手に私の服が歩かせてくれるから」でした。この言葉は、「服は人を変えられる」という育人の信条に共通するところがありますね。

そういえば、ふと思ったのですが、モデルをしていなくても、服によって気持ちが変わることは皆さん経験していますよね? 私服(カジュアル・ウェア)だと実感することはあまりないかもしれませんが、各種の制服(ユニフォーム)スーツ(フォーマル・ウェア)だと、特に実感できます。

皆さんの多くが腕を通した経験のある学校の制服は、その学校の一員としての実感を持たせるという機能を持つ、ということが学校の制服の必要性を語る際には言及されています。また、入学式や卒業式あるいは成人式で、スーツや振り袖を着ることは、着た人に節目の行事であることの自覚と緊張感をもたらします(派手な着物を着て成人式でやんちゃする人たちは、それこそあの服装によって気が大きくなっているという一面もあるのでしょうね)。裁判官・警察・自衛隊・医者・看護師・CAなどの職業上の制服は、周りの人が一見して判別しやすいという機能はもちろんですが、きっと着た人にその職責の自覚を持たせるという機能も持っているはずです。

この作品を通して、服を見る目に新たな視点が加わりました!

 

 

3.長谷川心の葛藤と育人

心はマネージャーから手痛い言葉を投げかけられました。

そいつはうちの事務所のホープ。身長181cm、股下93cm。うちの事務所の宝だ。それが気の迷いでこんな所に逃げられても困る。無理だよ。お前はデザイナーになんかなれない。お前はモデルをやりたくない当てつけに、デザイナーに憧れているフリをしているだけだから。失礼だろ? 本気でデザイナーを目指している人間に。

「無理だよ」という――千雪が言われた、そして千雪が育人に言ってしまった――この言葉に、心はまともに反論できませんでした。この言葉に動揺した心は、「マネージャーの言ったこと、モデルが嫌じゃなかったら、デザイナーになりたかったか分かんないもん」とまで言ってしまいます。

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「マネージャーの言ったこと、モデルが嫌じゃなかったら、デザイナーになりたかったか分かんないもん」

しかし、育人は、服飾についてあれこれ書かれた心のノートを見て、服飾にあふれた室内を見て、デザイナーになりたいという心の夢が真摯なもので、彼女がそれに向かって努力していることに気付きます。

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心の部屋

そして心に芸華祭のファッションショーに出ることを提案します。その際、育人はこう言っていました。

えっと、うまく言えないんですけど、やりたいことはやるべきで、認めてもらうには自分から一歩踏み出す。そう、尊敬する人から学びました。

一見すると、この尊敬する人が誰だか分かりにくいですが、これは千雪のことです。「やりたいことはやるべきで、認めてもらうには自分から一歩踏み出す」ということは、パリコレモデルになるためにウォーキングの練習をしたりオーディションを受け続けたりなど、千雪が実践してきたことですし、藤戸社長に雇ってもらうために「ここで動かなかったら何も変わらないよ」「デザイナーになることを諦めてほしくない」と千雪に言われた育人自身が実践してきたことでもありました。

このようにしてみると、どんな困難があっても夢を追い続ける千雪の信念が、育人に伝わり、そして心に伝わっていることが分かります。

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「やります! 私も出ます、芸華祭!」

ところで、原作の第25話~第26話に相当するエピソードが省略されていました。ここでも心の葛藤が描かれているのでぜひ原作第3巻をご覧になってください!

  

 

4.長谷川心と藤戸千雪

(1)天職

「やりたいこと(夢)」「できること(才能)」「求められること(需要)」の3つが重なり合うところが「天職」、なんて言われることがあります。

育人にこれを当てはめてみると、現段階の育人は、おおよそこの全てを兼ね備えており、プロのファッションデザイナーになるべく邁進していますね。

それでは、これをに当てはめてみます。心は、デザイナーになりたいけれど、(少なくとも現段階では)デザイナーの才能は見られず、反面、身長181cmという生まれ持った才能によってモデルの仕事ができ、またそれを求められています。モデルという仕事に対して、「才能」「需要」はあるけれど、それは「夢」ではない、ということになります(反面、デザイナーという仕事に対しては、「夢」はあるけれど、「才能」も「需要」も不確かです)。

そして、今度はこれを千雪に当てはめてみます。千雪は、パリコレモデルになることが夢だけれども、158cmという生まれ持った低身長には、モデルとしての才能も需要もありません。モデルという仕事に対して、「夢」はあるけれど、「才能」も「需要」もない、ということになります。

こうしてみると、千雪と心は対照的な存在です。モデルを「夢」として掲げている千雪が欲しくても手に入れられなかった「才能」「需要」を心は生まれ持っていますが、モデルは心の「夢」ではないのです。今後、この2人が「夢」と「才能」「需要」の相克にそれぞれどう向き合ってゆくのか楽しみですね!

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身長181cm、股下93cm。

(2)罪な男

「ランウェイで笑って」は、基本的にお仕事漫画(アニメ)なのですが、長谷川心の登場によって、(メインキャラクターの男女比が不均等という意味で)少しだけ恋愛的な要素が入りました。育人は、千雪にも心にも熱い言葉を投げかけて彼女らの心を動かしてきた女たらしな一面がありますからね(笑)

恋愛的要素を抜きにしても、千雪と心は、それぞれ育人のことをパートナー的存在だと思っていますから、育人に浮気相手がいると知ったときどうなるんでしょうか? しかも、片や158cmのモデル志望、片や181cmのデザイナー志望ですから……。そのうち2人は邂逅することになります。お楽しみに!

 

 

5.セイラについて

セイラが長々と喋っているところを初めて見ましたが、あの喋り方、ローラさんっぽくないですか? というか、彼女の性格も含めて原作者はローラを念頭にキャラ設計したのではないでしょうか?

ところで、この前、「モニタリング」にローラさんが出演していて、マスク姿に女子高生の制服を着ていたのですが、その小顔っぷりとスタイルの良さ(特に股下の長さ)に驚きました。ちょっと調べてみると、あんなに知名度・人気があっても、身長が165cmしかないために、パリコレや東京コレクションへ出演したことはないようでした。改めてモデル業界の厳しさが分かります。

ちなみに、パリコレに出たことがある日本人女性の著名タレントの身長は、たとえば、山田優さんは169cm森泉さんは173cmさんは174cm冨永愛さんは179cm(!)だそうです。

 

 

6.「それぞれの流儀」

東京コレクションでフィッターとして柳田のチームに参加し、千雪らに怒っていたあの女性が再登場しました!

木崎香留は、「あいつの足を引っ張るとか、そういうことをしたいわけではない。ただただ真正面からねじ伏せたいだけ」と、

江田龍之介は、「ここにいる奴ら全員、敵だぞ。なのに平気でお礼言える能天気な神経とか。甘いんだよ、あんた」と、

育人は、「馴れ合いと感謝は違う」「ただ、『かわいそう』って言葉だけは言わせっぱなしにさせない」と、

芸華祭ファッションショーの予選に挑む姿勢は、まさにサブタイトル通り、「それぞれの流儀」でした。予選の結果がどうなるか気になりますね!

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木崎香留と江田龍之介

 

 

7.再会

実は、生地探しの際、原作では育人はある人と再会します。気になる方は原作第3巻第28話をご覧になってください!

 

 

8.千雪の努力

健全な思春期の男子にとって千雪の薄着姿は目に毒だったようですが、千雪の家での過ごし方には彼女の努力が溢れていました。室内でのヒール、日課のトレーニングなど、千雪の努力する姿が具体的な形で見れたのは嬉しかったですね!

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室内でヒールを履く千雪

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目のやり場に困る育人

そして千雪は自身の目指すべき姿について語りました。

デザイナーには作った服を“こういう人が着る”って理想の人物像があって、それをランウェイ上で演じるのがモデルの仕事。もちろん、圧倒的個性で勝負するモデルもいれば、歩幅、手の振り、腰の入り、肩の揺らぎ、場合によっては頭の動きまでコントロールして、デザイナーの理想に近づこうとするモデルもいる。

でもね、セイラさんが本当に凄いのは、その演技をどんな高さのヒールでも全く同じように歩けることなの。山ほどトレーニングして身に着けたんだって。なんでか分かる? 171cm。ショーモデルとしては小柄な身長だからだって。小柄で世界に通用してる。私が目指すべき道はセイラさんにあると思うの。

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「私が目指すべき道はセイラさんにあると思うの」

そう言って千雪が見せたウォーキングを、育人は次のように表現しています。

廊下から伸びた絨毯の中央、何度も刻まれた直線のくぼみを寸分も違わずなぞって行く。モニターに映る一流のモデルと目の前で躍動する158cmのモデルの演技に違いを……見つけられなかった……

このシーンは、オーディションやファッションショーといった特別な場ではなく、また物語上のターニングポイントという訳でもないのですが、このような千雪の努力、そしてそれに感化される育人を見ると、なんだかゾクゾクしました! 

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「違いを……見つけられなかった……」



9.「顔、疲れてる。仕事頑張り過ぎじゃない?」の意図を探る

藤戸家からの帰り際、育人は顔に手を添えられて「顔、疲れてる。仕事、頑張り過ぎなんじゃない?」と千雪に言われました。

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「顔、疲れてる。仕事、頑張り過ぎなんじゃない?」

なんだか見覚え、聞き覚えはありませんか? 実は、それに先立つ病院の場面で、育人は顔に手を添えられて「顔、疲れてる。仕事頑張り過ぎじゃない?」同じセリフを母親に言われていたのです!

ところが、原作では、この母親のセリフは、「育人……クマできてる」でした。ということは、アニメ制作者は何かの意図があって原作のセリフを改変した訳です。しかも、アニメ化に際しては省略が多いのに、特にストーリー展開の上では残す必要性がない病院の場面を省略しなかったという点も指摘できます。この改変の意図は探らねばなりません。

色々な解釈が可能だと断った上で、自分なりの見解を示すとすれば、千雪と母親の言動の共通性からは、千雪にとっての育人との距離感が推し量れます。すなわち、「千雪にとって育人は家族みたいな存在である」と千雪は考えているように思います。これは、薄着で育人と接しても千雪自身は気にしていない様子だったことと整合的です。つまり、千雪は育人のことを男兄弟のごとき存在だと考えているのでしょうか。

しかし、一口に「家族みたいな存在」といっても、「夫婦」という性差に基づく関係性と、「親子」「兄弟姉妹」といった性差に関係のない関係性とがあります。千雪の見せた言動が、「夫婦」のような距離感を示唆しているという解釈も可能なのです。つまり、相手のことを異性として見ているけれども、夫/妻のように当たり前の存在だからあのように接した、とも捉えられるのです(それとは対照的に、育人は薄着姿の千雪を「当たり前」とは思えず、かなり異性として意識していました)。

難しい問題です。皆さんはどう考えますか?

 

 

 

さて、次回は、第6話「優越感と劣等感」です。育人が思いついたアイデアとは? 予選の結果やいかに?

 

第6話の感想記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

「荒野のコトブキ飛行隊」の第1話&外伝が無料公開されているのはご存知ですか?

 

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荒野のコトブキ飛行隊

2019年冬に放送されたアニメ「荒野のコトブキ飛行隊」ですが、実は、第1話特別編YouTube上で無料公開されています。

特別編は、本編の解説動画、外伝「大空のハルカゼ飛行隊」「ナツオ整備班長の戦闘機講座」の3種類あります。

放送を見てない人は、まずは第1話から! 以下、あらすじ。

一面に広がる荒れ果てた大地で、 人々は物流・交易を行い、助け合いながら生きていた。 雇われ用心棒の“コトブキ飛行隊”は、 厳しいが美しい女社長、頼りない現場の指揮官、職人気質の整備班長など 個性的な仲間とともに、空賊相手に大立ち回り! 今日も“コトブキ飛行隊”は 隼のエンジン音を響かせて、 大空へと翔けてゆく――。

TVアニメ『荒野のコトブキ飛行隊』公式サイト

 

 

1.第1話

www.youtube.com

 

 

2.解説動画

イジツ見聞録~世界編~

www.youtube.com

 

イジツ見聞録~戦闘機編①~

www.youtube.com

 

イジツ見聞録~戦闘機編②~

www.youtube.com

 

 

 

3.「大空のハルカゼ飛行隊」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座」

「大空のハルカゼ飛行隊01」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座12」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊02」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座13」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊03」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座14」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊04」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座15」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊05」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座16」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊06」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座17」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊07」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座18」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊08」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座19」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊09」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座20」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊10」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座21」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊11」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座22」

www.youtube.com

 

「大空のハルカゼ飛行隊12」&「ナツオ整備班長の戦闘機講座23」

www.youtube.com

 

 

その他、公式チャンネルは動画が充実しているみたいです!

『荒野のコトブキ飛行隊』公式YouTubeチャンネル コトブキちゃんねる - YouTube

 

スマホゲーム「荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ」も配信中!

荒野のコトブキ飛行隊 大空のテイクオフガールズ!(コトブキ) | バンダイナムコエンターテインメント公式サイト

 

そして、つい先日発表されたところによれば、2020年秋「荒野のコトブキ飛行隊 完全版」劇場公開されるそうです!! 「TVアニメ全12話を再構成した総集編に、新作エピソードを加えた完全版」だそうです! 楽しみです!!

https://kotobuki-anime.com/news/detail/?p=1345