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2021春ドラマの感想――6作品に対するコメントあれこれ

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イチケイのカラス

 

 2021春ドラマを視聴し終わったので、私の視聴した6作品について適当に感想をコメントしたいと思います!(五十音順)

 

 

イチケイのカラス(フジテレビ系列、月曜21時)

 まずは(記憶が曖昧ですが)原作との相違について触れざるを得ません。3年くらい前に原作漫画(全4巻)を読んだのですが、坂間裁判官に相当する人物は原作では男性であり、全話を通じてもっとお堅い印象でしたし、もっと真面目な雰囲気でした。ドラマ化に際する新要素として、性別が転換したり日高最高裁判事が登場したりしたのは、多様性の観点から好ましい改変だったと思います。裁判所の重要な構成要素である書記官・事務官も目立つように工夫されていたのも良かったです。全体としてドラマ脚本の凄さを感じました。 

 幾点かについてリアリティがないと専門家から指摘されていましたが、私はリアリティの不足を批判的に捉えるべきものではないと思います。これは、もちろんエンタメ要素を盛り込んだ結果でもあるのですが、なにより国民の司法に対する期待が表れているのだと思います。ドラマを視聴した法曹関係者は、ドラマのリアリティについて単に論難するのではなく、そこに込められた司法に対する国民の信頼を読み取ってこれに応えてほしいものです。

 ところで、法学に触れたことがある身としては(新書で司法について気軽に学べますよ!)、最高裁事務総局や判事再任の問題といったネタに触れていたのは個人的に嬉しかったです。裁判員裁判もテーマにしていた(第9話)のも良かったですね!

 第7話は、それまで示唆してきた日高最高裁判事とみちおの過去の因縁を清算するクライマックスのようなエピソードでした。なにしろ、最高裁判事や検察上層部を相手にしているのですから。しかし、あそこで司法の矜持と胆力を見せたのは、イチケイの面々というよりは日高最高裁判事と城島検事でしたから、よくよく見れば最終話っぽくありません。そもそも、1話完結型のドラマで、軸となるストーリーを各話でチラチラ示唆して最終話まで引っ張るお決まりの方法は、個人的にはあまり好きではありせんね。最終話を盛り上げたいのならば、どちらかというと最終話で重厚なエピソードを見せてほしいものです。

 そして本作品の最終話は、裁判官の再任拒否がテーマとなっていました。政治が司法を自らの影響のもとに置こうとする政治と司法の病理的関係は、戦後日本司法史でたびたび問題となってきた重要なテーマです。

 とはいえ、少々粗い部分もあったともいます。下級裁判所の裁判官の再任については、たしかに最高裁事務総局が影響力を持っていると言われており、事務総局の案に基づいて最高裁が候補者を指名し、内閣が任命します。しかし、実際には、これらの不透明な過程を克服すべく、最高裁の下に「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」が設置されおり、裁判官の再任の是非について最高裁に答申を行っています(参照)。そもそも、任期終了10日前までに再任の可否が決まっていないのは現実的ではないでしょう。

 視聴率も良かったみたいですし、続編を期待しています!!(映画化の噂があるようですね) 続編では、みちおが分限裁判(懲戒処分に相当)にかけられたり、国会に置かれる裁判官訴追委員会弾劾裁判所で採り上げられたりしても良いですし、裁判官の僻地への左遷問題をテーマにしても良いですね!(ちなみに、現在、岡口基一判事という有名裁判官が弾劾裁判へと訴追されています。ツイッター投稿の仙台高裁 岡口裁判官の訴追決定 裁判官訴追委 | IT・ネット | NHKニュース) 舞台を高等裁判所に移しても面白そうですね!

 

 

今ここにある危機とぼくの好感度について(NHK総合、土曜21時)

 大学職員を主人公に、大学運営を真正面に据えるドラマは斬新でした。大学運営のあり方には個人的な関心があるので、ピッタリのドラマでした! ちなみに、脚本は、京都大学吉田寮の存続問題をテーマとするドラマ・映画「ワンダーウォール」も手掛けた渡辺あや氏が担当しています。

 役者陣も豪華でした。主演の松坂桃李さんはもちろん、脇を固めたのは、松重豊さん、渡辺いっけいさん、國村隼さん、温水洋一さんなど、渋い名バイプレーヤーたちでした! (ちなみに、ハライチの岩井さんも出演されているのですが、撮影裏話をラジオで語っていましたね)

 役者に触れたならば、その男性の多さについても触れておかなければなりません。ドラマにおいて理事と主要教員がすべて男性でした。女性理事が一人もいない国立大学なんて今どき存在するのでしょうか? (学生・教員の女性比率が低いことで有名な東京大学は今年から女性理事が半数を占めるようになりました。藤井新総長、新役員ら就任 理事の過半数が女性に | 東大新聞オンライン ) 中高年男性に対して既得権益固執する役割を担わせ、それに対して若き男性主人公を対置させる固定観念がこのドラマでも存在しているのかとやや辟易したものですが、この点、興味深い指摘がありました(笑うべきか泣くべきか、それが問題だ 土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」 |NHK_PR|NHKオンライン)。

涙といえばこのドラマでは、非常におもしろいジェンダーの逆転のようなものが起きていて、男たちがとにかくよく泣く(また、神崎は「女子力」だけで世を渡ろうとしているし、彼は「分かっていない人」という「女性的」ポジションを与えられている)。

 ところで、帝都大学という名門国立大学が舞台となっているのですが、どこがモデルになっているのでしょうか? 名門の国立大学といえばまず旧帝国大学が思い浮かびますし、そもそもドラマのように国立大学でトップが学長ではなく総長と名乗っているのは旧帝大だけです。国から国立大学に配分される運営費交付金が減額される心配するということは、配分額が頭一つ飛び抜けている東大ではなさそうですし、多少の不祥事があっても東大のブランドイメージは確固たるままです。しかし、帝都という名前からして、その他の地方にある旧帝大ではなさそうです。その意味で、この作品で舞台となった帝都大学は、東京にあるもう一つの旧帝大のような雰囲気を醸していますね。

 さて、このドラマで特筆すべきは、大学の現実をリアルに描いていることです。とある大学教員は「大学が現在抱えている問題を見事に風刺」していると述べています。詳細は、リンク先の記事に譲るとして(笑うべきか泣くべきか、それが問題だ 土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」 |NHK_PR|NHKオンライン)、運営費交付金ポスドクの問題など大学の抱えるもはや恒常的と言ってよい「危機」が視聴者に伝わったのではないかと思います。

 このドラマは、研究不正編(1~2話)、爆破予告編(3話)、蚊の健康被害編(4~5話)で構成されていますが、大学執行部の隠蔽体質のリアリティは高い順に、爆破予告編、蚊の健康被害編、研究不正編ではないかと思います。各大学は研究不正の疑い場ある場合の対応プロトコルを備えており、適正な手続で調査・公表が行われますが、真理探究を使命とする大学人であれば隠蔽は行わないはずです(そう信じています)。たとえば実際も、京都大学では世界的権威と呼ばれる教員が懲戒解雇されています(チンパンジー研究の世界的権威らが陥った不正経理の温床(1/2ページ) - 産経ニュース)。その一方で、大学執行部が「表現の自由」を低く見積もったり説明不足な傾向にあるのは、すごくリアルだと感じました。たとえば、同じく京都大学では、「タテカン」と呼ばれる学生が作る立て看板の設置・撤去をめぐって、学生と大学当局の間に紛争が生じています(京都大学の立て看板 - Wikipedia)。

 さて、ナレーションで何度も言及されていましたが、世界の複雑さ――このドラマでは特に大学運営の困難さ――は、簡単に割り切れるものでもありませんよね。その意味で、複雑な世界の理を解明することを使命とする大学という場において、最終話の最後で、正義を重んじる三芳総長がリアリストの須田理事を留任させたのは、まさに世界の複雑さとその対応の難しさを象徴するエンディングだったと感じました。

 それに対して、主人公の神崎真は、最後の最後まで、世界の複雑さをあまり理解できていないようでした。しかし、あのように「好感度」を気にしたり、思考停止に陥ったり、事大主義になったり、かと思えば突然正義心に目覚めたりするのは、非常に人間的でした。主人公らしからぬ信念のなさは、リアリティのあふれた人間像だったと思います。

 

 

クロシンリ 彼女が教える禁断の心理術(カンテレ系列、木曜25:30)

 タイトル通り、人を操る心理術をテーマとするドラマでした。この心理術は面白いし実生活に役立てたらいいなあと思う一方で、記憶しておくほどの興味、実際に使いこなす能力、継続する胆力、裏目に出てしてしまう懸念、心理術を使用していることを見抜かれる不安などを考慮すれば、実際には使用できませんよね。とはいえ、心理術というよりマナーや処世術にも分類できる要素もあったので、そちらは自覚的にできたらと思います(ワンポイントブラック心理術 | クロシンリ | 関西テレビ放送 カンテレ)。

 ストーリーとしては、各章が前後編2話構成で、前編が後編によって覆され得る緊張感のある展開となっていました。

 各章でメインとなる出演俳優にとっては、演技力が試されるドラマだったのではないでしょうか。心理術の使用・不使用にかかわらず、登場人物が心理術を使っているのではないかと視聴者はその言動を事細かにチェックしてしまうのですから。

 ところで、このドラマで主役を務めた久保史緒里さんは、先日観劇した舞台「夜は短し歩けよ乙女」でも主役(「黒髪の乙女」役)を務めていました。彼女のことは全く知らなかったので、このドラマは舞台前にちょうど良いタイミングでした!

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桜の塔(テレ朝系列、木曜21時)

 警察ドラマでありながら、事件捜査ではなく警視庁内の権力闘争が主題となっていました。こういう政治的なパワーゲームは大好きなので、この手のドラマはどんどん増えていってほしいですね。

 ところで、こういったパワーゲーム的要素を捉えて、このドラマを半沢直樹的」と形容する意見もあるようです。たしかに、ドラマ「半沢直樹」も、銀行内の権力闘争が主題となっていました。

 しかし、正義の描かれ方については、「半沢直樹」とやや温度差があったような気がします。たとえば「半沢直樹」シーズン1の最後に、功労者の半沢が東京セントラル証券に出向させられ、不正の黒幕の大和田常務が取締役に残留したように、勧善懲悪を特徴とする「半沢直樹」では完全に(ナイーブな)正義が貫かれた訳ではありません。しかし、それより露骨な形で、「桜の塔」では、千堂の野望を挫くために手段を選ばない「サッチョウの悪魔」が描かれました。つまり、両ドラマではどちらでも、「実体的正義(悪しきを挫くという目的)」のための「手続的不正義(違法・不当な手段)」が描かれるのですが、どちらかと言えば「半沢直樹」は手続的不正義が不正義に見えないように(専門家の視聴者でなければ気付かないように)描写されていたのに対して、「桜の塔」では手続的不正義は不正義であると登場人物により何度も自己言及されていました(加えて言えば、作中で良心的存在のように描かれていた水樹(演:広末涼子)でさえ、上條に向けて拳銃を撃つという懲戒解雇レベルのことをやらかしています)。

 さて、「桜の塔」にはもう一つ「半沢直樹的」なところがありました。というのは、このドラマで描かれた権力闘争がまさしく「男たちの戦い」であったことです。メインキャストの水樹(演:広末涼子)や千堂優愛(演:仲里依紗)、あるいはクラブのママ(演:高岡早紀)は、権力闘争の主人公にはなれず、主役を支える役どころに過ぎませんでした。今の時代にこれはどうなんだろうと、(ポリティカル・コレクトネス的な規範論というより)事実に即していないのではないか、と思ったのです。しかし調べてみると、警視庁の現実は想像以上に男社会でした(警察でも広がる女性活躍 警視庁で初の警視正が誕生(1/2ページ) - 産経ニュース)。官公庁でこの少なさは衝撃です。

 役者について言えば、調べて驚いたことがあります。上條(演:玉木宏)の上司であり義理の父親の千堂大善(演:椎名桔平)を見たとき、あまり年齢差がないように見え違和感を感じました。しかし、調べてみると、玉木さんは41歳、椎名さんは56歳でした! 椎名さんが若く見え過ぎていたのです!!

 ところで、「薩摩派」「東大派」「外様派」「千堂派」「改革派」という名称には違和感を覚えました。もちろん、他称としてこれを使用するのには違和感ないのですが、自称(正式名称)でこれらの呼称を使うのは不自然なような気がします(たとえば、上條が千堂に対して「我々は改革派を立ち上げます」と宣言したシーンなど)。例として自民党の派閥については、岸田派は「宏池会」、細田派は「清和政策研究会」などの正式名称があります。他称と正式名称の2つを使用して視聴者に混乱を招くことを避けたためだと思いますが、「○○派」をグループの正式名称にするのは、あまり格好良くないのではと感じた次第です。

 

 

ドラゴン桜 シーズン2(TBS系列、「日曜劇場」日曜20時)

 放送開始前にTVerでシーズン1(2005年)が配信されていたので視聴したのですが、最初の数話で見るのをやめてしました。なんというべきか、放送当時はウケていたかもしれませんが、ドラマのノリを寒く感じてしまったからです。映像技術や演出の古さもありますが、時代に特有の演技のクセないしはクサさを感じてしまったのです。

 それとは打って変わって、シーズン2は終始楽しく見られました。各所で指摘されているように、たしかに「日曜劇場的」「半沢直樹的」でした。実際この作品は、日曜劇場枠で放送されていますし、キャストも日曜劇場的ですし、演出を担当したのは、同枠で「半沢直樹」「ルーズヴェルト・ゲーム」「下町ロケット」「陸王」「ブラックペアン」「ノーサイド・ゲーム」などを担当した福澤克雄氏です。やはり、私に合っているというか、今の時代に合っているのは、シーズン2の方です(もっとも、20年後くらいには今の日曜劇場的なドラマも、同様に視聴に耐えなくなる可能性もありますが)。

 とはいえ、ストーリーの主軸は、日曜劇場的な権力ゲームではなく、シーズン1と同じく東大合格メソッドでした。私は東大に合格したことも受験したこともありませんが、一応(地方の自称)進学校で受験勉強をしたことのある身としては、頷ける内容が多々ありました。「受験は団体戦」なんて言葉は高校在学中に教師から何度も言われました。そのほか、現代文の解き方や家庭環境の重要性など、当時は自覚していなかったものの、今になって振り返ると頷けることもありました。また、高学歴者にいる発達障害について触れたり、多様性を重視する校風を断固として実行する理事長など、現代的な要素も高く評価したいと思います!(特に健太が東大専科に入る第5話が良かったですね) 旧作と今作の比較については、16年で激変!新旧「ドラゴン桜」で見る日本の変化 | ドラマな日常、日常にドラマ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準を参照。

 ところで、ドラマ後半では、まさかのあの人物の裏切りが判明しましたね! 半沢直樹的」的を逆手にとった上手い脚本だったと思います!

 役者陣も良かったですね! 生徒役は全体的に良かったのですが、個人的に特に印象に残ったは、前半でとにかく嫌なヤツを演じた鈴鹿央士さん(役:藤井遼)発達障害という難しい役どころを演じた細田佳央太さん(役:原健太)最初の憎むべきキャラから桜木の子分になって憎めないキャラになった西垣匠さん(役:岩井)と西山潤さん(役:小橋)ですね! あと、ラジオリスナー的には、三四郎の二人がそれぞれ出演していたのが嬉しかったですね!

 

 

ネメシス(日テレ系列、日曜22:30)

 主役が広瀬すずさん&櫻井翔さん、そして途中から橋本環奈さんが参戦するなど、キャスト陣が非常に豪華でしたが、個人的には、5名のミステリ作家が脚本協力していた点に注目していました(これら5名とは別に脚本家もいます)。

 しかし、終わってみれば、あまり期待通りではありませんでした。ミステリ的なトリックの厳密さが疑わしいところがあった点、謎解きのロジックよりも映像映えが優先されていると見受けられる点、後半はミステリーというよりもサスペンスであった点は、肩透かしな感じがありました。この点、脚本協力した作家の一人によれば、ドラマと小説版にはストーリーの差異があるようです。

 私は小説版を読んでいないのですが、ここから伺える限りでは、言葉の論理を重視する展開は、ドラマ化に際して映像映えするように改変されたようですね。事前の期待が高すぎたようです(ちなみに、(キャラ設定の改変はありましたが)トリックやロジックが原作読者の期待通りに再現されたドラマ「アリバイ崩し承ります」はかなりおすすめです)。

 全体として「ネメシス」は、本格ミステリ的なトリック&ロジックによる事件解決よりは、(特に後半になるにつれて)天才やコンピューターによる高い演算能力、あるいは身体的特技による事件解決の方が目立っていたような印象です。

 

 以上が2021春ドラマの感想です。

 

 

夏ドラマは何を視聴する?

 2021夏ドラマは、とりあえず、「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日テレ系、7月7日(水)スタート)は視聴予定です。原作漫画を何巻か読んだことがあるのですが、面白かったですよ!

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 「武士スタント逢坂くん!」(日テレ系、7月26日(月)スタート)も、原作漫画を数話読んだことがあるのですが、江戸時代から現代にタイムスリップした春画師の武士がエロ漫画のアシスタントになるという突飛な設定が面白かったです。

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 「IP サイバー捜査班」(テレ朝系、7月1日(木)スタート)では、佐々木蔵之介さんがまたご自身の地元の京都でドラマをやっていますね。

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 「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(TBS系、7月4日(日)スタート)も、医療×日曜劇場ということで手堅いのかなと思っています。

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 夏ドラマも楽しみですね!