斉木久美子『かげきしょうじょ!!』――歌劇に夢見る少女たちの青春を目撃せよ!
1.基本情報
『かげきしょうじょ!!』
著者:斉木久美子
掲載誌:Melody
レーベル:花とゆめCOMICSスペシャル(2020年3月現在既刊9巻+前日譚1冊)
ジャンル:「歌劇」「青春」「学園」「百合」
紅華歌劇団――
大正時代に創設され、未婚の女性だけで構成された歌劇団。
このお話は、そこに入団する人材を育成する音楽学校の創立100年目に入学した、二人の奇才とその仲間たちの青春を描く物語です。
〔第1巻4頁より〕
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2.あらすじ
あらすじ紹介の前に、まずは読む順番についてアドバイスを。
『かげきしょうじょ!!』は、2020年3月現在、白泉社の「花とゆめCOMICSスペシャル」レーベルより1~9巻が刊行されていますが、これとは別に、同レーベルから前日譚として『かげきしょうじょ!! シーズンゼロ』も発売されています。
この『シーズンゼロ』は元々「ジャンプ改」(集英社)に掲載されていたエピソードなのですが、同誌の休刊に伴い、『かげきしょうじょ!!』は隔月刊誌の「Melody」(白泉社)に移籍連載することになったのです。
ですので、『シーズンゼロ』は白泉社からすれば「前日譚」なのですが、実質においては第1巻と連続した内容となっています(『シーズンゼロ』の内容は入試~7月、第1巻は7月~です)。
したがって、「第1巻より先に『シーズンゼロ』を読むべし」と言い切りたいところですが、『シーズンゼロ』は通常の2倍の厚さ(価格は1.5倍くらい)はあるので、もしかしたら最初に手に取る巻としては手を出しにくいかもしれません。
そこで、「第1巻から読む」という手もアリだと思います(もちろん、『シーズンゼロ』から読む方が王道ですが)。『シーズンゼロ』ではまだまだ助走といった感じなのですが、第1巻では、歌劇や主人公の魅力がビシビシ伝わってくるので、最初に読む方としてはより適しているのかもしれません。また、『シーズンゼロ』を読まなくても、第1巻の内容はおおよそ把握できます。第1巻から読み始める場合は、第1巻→『シーズンゼロ』→第2巻~と読み進めてはいかがでしょうか?
さて、いよいよあらすじ紹介です(ここでは、『シーズンゼロ』ではなく、第1巻の内容を紹介します)。
この物語の舞台は、紅華歌劇団という未婚の女性だけで構成された歌劇団に入団する人材を育成する音楽学校です(より直截に言えば、宝塚音楽学校がモデルとなっています)。
この物語の主人公は、この音楽学校に100期生として入学した渡辺さらさと奈良田愛の二人。
この2年制の音楽学校における演技の授業は、1年生(予科生)は座学のみで、実技を行うのは2年生(本科生)になってからとなっています。
それに対して異を唱えたさらさ達予科生の働きかけにより、実技の授業が実施されることになるのですが、そこでのお題は「4人組になって『ロミオとジュリエット』の一場面を演じる」というものでした。
紅華歌劇団に4つある組の頂点にそれぞれ君臨する「トップスター」(男役のトップ)になると常日頃から豪語するさらさですが、初回練習時に見せたその演技は下手くそそのものでした。
しかし、発表時になると、さらさは奇才とでも言うべきある種の才能を存分に見せつけることになり、生徒たちの度肝を抜きます。
本文の言葉を借りるならば、「渡辺さらさは一夜にして生まれ変わった。それは蛹(さなぎ)から蝶などというものではなく、例えるならば一晩で幼虫から蝶への変化に等しく」、なのです(第1巻141-143頁)。
が、その演技を講評する教師はさらさの才能を認めるものの、「お前、トップにはなれないよ」とさらさに言い放ちます。いったいなぜ――? そしてさらさはこの壁をどう乗り越えるのか――?
3.おすすめポイント――誰もが楽しめる少女たちの青春歌劇物語!
(1)宝塚ファンでもなくても楽しめる!
この作品は明らかに宝塚歌劇団を題材にしていますが、宝塚に詳しくない人でも楽しめます!(私がそうでした!)
とはいえ、宝塚ファンであったり、作中で何度も言及される『ベルサイユのばら』や『ロミオとジュリエット』を読んだ(観た)ことがある人の方がより楽しめるというのも間違いないと思います!
いずれにせよ、この作品の面白さはどのような読者に対してであれ伝わってきます!!
(2)男女問わず楽しめる!
『かげきしょうじょ!!』は、女性漫画誌で連載されている作品ではありますが、多くの女性向け漫画とは異なり恋愛要素もあまりなく、夢に向かって努力する少女たちを描いた青春物語なので、男性でも親しみやすい内容となっているかと思います。
少年誌の定番であるスポーツ漫画の一種と言えば、分かりやすいでしょうか? (あるいは、とても荒い言い方をすれば「ラブライブの歌劇版」でしょうか?)
(3)登場人物が魅力的!
一般的に、フィクションにおける才能ある主人公は、「努力型」と「天才型」に大別できると思いますが、渡辺さらさは「天才型」の人間です。
さらさは入試を最下位合格した天然娘ですが、彼女には、178cmの恵まれた身長と長い手足、強靭な体幹、それに奇才とでも言うべきある種の演技の才能があります。
しかし、あらすじ紹介でも触れた通り、彼女は彼女なりの壁にぶち当たりますし、同期たちも数十倍の倍率をくぐり抜けて入試を突破しただけに、さらさの周りには逸材ぞろいのライバルだらけです。天性の才能でライバルを易々と駆逐できるほど甘くはない世界でさらさは自分自身と向き合うことになるのです。
もう一人の主人公である奈良田愛も魅力的な才能を有しています。アイドル出身の彼女には、舞台慣れという他の生徒には得難い経験値と、人気アイドルになれるほどに整った容姿があります。しかし、彼女だって挫折なしという訳にはいきません。
特に、『シーズンゼロ』で描かれているのですが、彼女の過去と入学の経緯、それに渡辺さらさとの出会いは一癖も二癖もありました。第5巻以降で描かれるオーディションも一筋縄ではいきません。
また、その他の主要登場人物に対してもスポットライトがあたるのも『かげきしょうじょ!!』の魅力です。
主人公であるさらさや愛のライバルとなるべき人物の過去や心情が掘り下げられ、その覚悟や苦悩が読者にまざまざと見せつけられるだけに、読む側としてはその度に心揺さぶられます。少女たちの青春が彼女らそれぞれにとって痛みと喜びを伴う物語であることを我々読者は痛感させられるのです。
いかがでしょうか? ここまで読んで『かげきしょうじょ!!』は気になりましたか? 気になった方は、下記サイトから試し読みを!
また、第2巻の登場人物を整理する記事も書いております。『エピソードゼロ』、第1巻、第2巻を読む際はぜひご活用ください!
さらに、第8巻以降の感想・考察記事では、より突っ込んだ(=妄想全開の)考察を行っています!
4.関連おすすめ作品
こちらは漫画ではないのですが、アニメ「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」も青春歌劇物語としておすすめです(逆に、こちらを観たことがある人には、『かげきしょうじょ!!』をおすすめします)。
「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」にはファンタジー要素が多々あるのですが、それでも少女たちの歌劇にかける情熱を描いた王道的なストーリーとなっています。見どころはやはり、各話後半パートで繰り広げられるレヴューオーディション(歌劇バトル)でしょう。そこでは、各キャラクターが劇中歌を歌い、踊り、闘う様が描かれ、また、アニメならではの(つまり現実の舞台ではおそらく不可能な)殺陣と舞台装置がこれに花を添えています。
5.テレビアニメ化決定!(追記)
2021年7月からテレビアニメ放送開始です!