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【かげきしょうじょ!!】公式ガイドブックの感想・考察――さらさの出生についてアレコレ、作品のテーマやタイトルについて等々

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『かげきしょうじょ!! 公式ガイドブック オンステージ!』

 

現在テレビアニメが絶賛放送中の「かげきしょうじょ!!」ですが、この記事では、最近発売された『かげきしょうじょ!! 公式ガイドブック オンステージ!』の感想・考察を書き連ねます。11巻までの内容に触れますのでネタバレにはご注意ください。

なお、この記事では、公式ガイドブック(企画・構成・編集は樹想社)の情報は、作者の斉木久美子先生によってすべて確認済みの真正な公式情報であることを前提としています。

 

 

全体の感想

公式ガイドブックに先んじて白川家・渡辺家の家系図を勝手に作る私のような読者にとっても、新情報は多々ありました。脇役たちの本名、紅華音楽学校の時間割や年間スケジュールなどは本編からでは知り得ない情報でした。

また、特に、斉木先生のロングインタビューや里美星役の七海ひろきさん(元宝塚男役)との対談は、種明かし的なお話もたくさんあって、かなり楽しめました。

もちろん、本誌に掲載されたカラーページが収録されているのも見どころです。

 

 

さらさの出生の秘密について

以前、第8巻の記事で、以下のような仮説を立てたことがありました。

それでは、さらさの母親はいったい誰なのでしょうか?

ここで一つの(突飛な)仮説が立てられます。それは、さらさの母親は女優・奈良田君子(奈良田愛の母親)ではないか、という説です。つまり、さらさと愛は姉妹ではないか、ということです。

 

このように考えるようになったのには、以下の理由があります。

  • さらさと愛は1歳差であり、姉妹でもおかしくないこと(3巻11幕85頁によれば、入学時の年齢は、さらさは15歳で中3受験合格、愛は16歳で高1年代受験合格)。
  • さらさの祖母が亡くなった時期=さらさの幼少時代(2巻7幕91頁以下)と、愛の祖母が亡くなった時期=愛が9歳の頃(『エピソードゼロ』193頁の「おばあちゃんは私達に沢山の財産と美貌を残して、七年前にこの世を去りました」)が符合しており、両者は同一人物の可能性がある

しかし、公式ガイドブックによれば、愛とさらさは1歳差ではありますが、愛は11月14日が誕生日さらさは7月1日が誕生日ということが明らかになりました(14頁、20頁)。愛とさらさの誕生日の差は7.5ヵ月ほどしかありません!

さらさが早産児だった可能性も捨て切れませんが、やはり、7.5ヵ月という妊娠・出産の間隔は短すぎるので、愛とさらさが姉妹という仮説は捨てざるを得ないでしょう。

 

 

さらさの母親と父親について

第8巻の記事では、以下のような考察も行っていました。

そもそも、さらさの母親は生きているのでしょうか? それとも亡くなっているのでしょうか?

さらさが2巻5幕22頁以下の墓前や8巻26幕98頁の仏壇で故人の祖母だけに挨拶していることからすれば、おそらく、さらさの母親は生きていると思われます。おそらく彼女は、15代目白川歌鷗との間に生まれたさらさを父母(さらさの祖父母)に預け、渡辺家を出て行ったのではないでしょうか。

この点について、公式ガイドブックは肯定も否定もしていませんでした(99頁)。

また、公式ガイドブックには、白川煌三郎がさらさから実父ではないかと疑われている旨の記述がありました(91頁)。

たしかに、白川煌三郎が度々、匿名でさらさに対して赤い薔薇を贈ることに対して、さらさは「その薔薇を見ていると、さらさの会ったことのないお父さんに…見守られている気分になるんですよ」と語っています(8巻26幕118-119頁)。

しかし、我々読者は薔薇の送り主が煌三郎であることを知っていますが、さらさはそれを知りません(そのような描写はありません)。私が読んだ限りでは、煌三郎が父親ではないかとさらさが疑っていることを直接明白に読み取れるシーンはないのです。

この点、公式ガイドブック91頁は、8巻25幕のさらさと煌三郎の会話のシーンを添えつつ、明示的にその旨を記しています。

 

 

さらさと暁也の関係について

以前、第8巻の記事にて、第6巻で描写されたさらさと暁也の関係について、以下のような考察を行ったことがありました。

奈良田愛が訝しんでいるように、渡辺さらさと白川暁也の関係は、恋人というより、ライバルや同士のような関係です。

6巻19幕60頁以下で明らかになった過去によれば、白川煌三郎は、16代目白川歌鷗=助六になるという暁也の夢(2巻7幕114頁以下)を手玉にとるような形で、暁也がさらさと付き合うことを提案したのです

さらさに幼馴染としての好感は持てども恋人になる気はなかった暁也は煌三郎の(半ばパワハラ的な)提案を受け入れるかどうか悩みますが、煌三郎と暁也の会話を陰で聞いていたさらさは、彼女の方から「さらさの彼氏になってください」と提案します。きっとさらさは暁也の夢を応援するためにこのような提案を行ったのでしょう。

そのため、さらさと暁也は、周りから見れば恋人関係ですが、本人同士にとってみればライバルや同士のような関係なのです(恋人になったきっかけについて暁也が気付いているのかは分かりませんが)。

このような二人の関係について、斉木先生はインタビューで以下のように語っています(155頁)。

――恋と言えば、劇中でのさらさと暁也の恋も気になるところですが。

斉木 発展するのかしら(笑)。ふたりの関係も彼氏彼女と言っていますが、キスもしているんだかしていないんだか…という感じですよね。さらさは暁也のことが好きなんだけど、でもどこかおままごとっぽい感じがあるし、「彼氏彼女という響きが嬉しい」とか「恋愛に憧れている女の子」という感じかな。読者もふたりの関係のさきは望んでいないような気もしますし。

ここで斉木先生は「さらさは暁也のことが好きなんだけど」と語っています。斉木先生も言及しているように、この「好き」には一定のニュアンスがあります。この点、ここの「好き」には、以前私が考察した「ライバルや同士のような関係」に基づく好意だけでなく、恋愛的意味の「好き」の感情も少なからず含まれているようなニュアンスで斉木先生は語っています。これについては、漫画本編から私は読み取れませんでしたので、新情報でした。

(追記:さらさと暁也の関係については、こちらの記事でまとめています)

 

野島聖について

紅華音楽学校を卒業後、紅華歌劇団に入団しなかった野島聖(第7巻スピンオフ)について、斉木先生からある種明かしがありました(138頁)。「7巻以前の劇中でもじつは『この子は辞める』という雰囲気の種は少しまいてあったりするんですよ」と斉木先生は七海さんとの対談で語っています!

驚きの情報です。急いで確認しました。読み返してみると、たしかに1つだけそのようなシーンが見つかったのです(他にもあるかもしれませんが)。

6巻20幕148頁にて、聖とさらさが会話するシーンです。さらさが「文化祭が終わったらいよいよデビューですね!」と語りかけるのですが、「そうね」と返事した聖は物憂げな表情をしているのです。第7巻を読んだ後でも気づきませんでした!

 

 

『かげきしょうじょ!!』のテーマについて

以前、第10巻の記事で、以下のように考察したことがありました。

31幕には、高木先生の印象的な言葉がありましたね!

Reborn.毎公演、役とともに生き、そして新たに生き返れ」

ここで思い出すのは紅華乙女の魂です。第8巻の記事でも書きましたが、過去にも似たようなセリフが登場しているのです。

一つ目の熱いセリフは、ティボルト役を失敗した愛に向けてさらさが言った「失敗したって、また何度でも蘇りましょう!」です(8巻27幕142頁)。

そして、このセリフに勇気づけられた愛は、文化祭の失敗を気遣う安道先生に対して、「大丈夫です。失敗しても何度でも蘇りますんで」と宣言します(8巻27幕147頁)。

ところで、このセリフ、なんだか見覚えがありませんか? それもそのはず、第1巻に同様のセリフが登場しているのです!!

さらさと出会った国広先生が少年時代を回想したときのことです(1巻2幕73頁以下)。空襲で大劇場も台本もすべてが燃えて無くなってしまったとき、国広少年に対して「白薔薇のプリンス」こと櫻丘みやじが語った言葉です。

「全てが無くなってしまった。でもね少年よ。紅華は死なない、私が死なせない」

「何時の世も人々には夢が必要だ。この焼け野原を超えて行けるよう私はまた皆に夢をみせよう。皆がそう望むのなら、私達は死なない。私たちは何度でも蘇るだろう」

このセリフのことを国広先生はさらさに伝えていません。しかし、それにもかかわらず、さらさは同様のセリフを放ったのです! まさに紅華乙女の魂が隠然と受け継がれているのを感じませんか?

ここまで繰り返して「生まれ変わる」ことが強調されると、紅華乙女のあり方ひいては本作品のテーマの核心がここにあるのではないかと感じてしまいます。

そして、公式ガイドブックの七海さんとの対談にて、斉木先生は「じつは『あきらめない』『何度でも生まれ変わる』『挫折からの再生』…、それは『かげきしょうじょ!!』のテーマでもあるんですよ」と語っているのです!(137頁) どうやら私の見方は間違っていなかったようです。

(追記:こちらのインタビュー記事でも斉木先生が同様のことを語っています)

 

 

『かげきしょうじょ!!』のタイトルについて

斉木先生がインタビューで明かしたことによれば、『かげきしょうじょ!!』というタイトルには「歌劇」と「過激」の二つのニュアンスが込められているそうです(155頁)。当然のように「歌劇少女」と変換して読んでいた私からしてみれば、驚きの情報でした!

さらに驚くべきことに、「恋に過激な少女」と勘違いして「エッチなマンガだと思っていた方も少なからずいらっしゃったみたいで」とも笑

 

 

以上が公式ガイドブックの感想・考察です。おそらく漫画をわりと読み込んでいる読者に分類される私からしても(だからこそ?)、新情報もそれなりにあり、かなり楽しめる内容でした!

気になる方は、まずは試し読みを! そして是非ご購入を!

 

 

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