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【かげきしょうじょ!!】渡辺さらさと白川暁也は本当に恋人関係なのか?【考察】

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『かげきしょうじょ!!』第6巻

 

この記事で考察するのは、漫画/アニメ『かげきしょうじょ!!』における渡辺さらさと白川暁也の関係性です。

 

白川暁也と白川煌三郎の会話

漫画6巻19幕55頁以下(アニメ12話)のさらさの過去の回想によれば、白川暁也と白川煌三郎の間で以下のような会話がありました。

さらさが紅華音楽学校に合格し東京を離れることになったことを受けて、煌三郎は暁也に対して「じゃあyou付き合っちゃいなYO」と、さらさと暁也が恋人関係になることを提案します。その理由について、煌三郎は「私はさらささんの人生の大切な青春時代も見守っていたいんだよ。幼馴染だと距離で疎遠になるが、恋人なら努力するだろう?」と語っています。

このような提案を受けて暁也は「そういうのはご自分で何とかして下さいよ…」と、さらさと恋人関係になることに対して消極的・否定的な返答をします。

しかし、煌三郎は、「暁也、お前、このまますんなり16代目白川歌鷗になれると思うなよ。歌鷗さんはね、自分が認める逸材がでてきたら、反対を押し切ってでも芸養子にするだろうね。もしそういう場合が来た場合、それを止められるくらいの信頼を私は歌鷗さんから得ているつもりだよ」と暁也に言います。

ここで確認ですが、現状、15代目白川歌鷗の部屋子(幹部俳優の楽屋に預けられ芸を仕込まれる、幹部候補生的な立場の者〔2巻6幕43-44頁〕)であり、息子がいない15代目白川歌鷗の従兄弟の子にあたるため、暁也は16代目白川歌鷗の最有力候補となっています(『エピソード0』5幕135頁、6幕171頁)。しかし、15代目白川歌鷗がわざわざ血縁のない芸養子を迎えるとなれば、16代目白川歌鷗はその人に継がれるに間違いありません。

本当に15代目白川歌鷗が「反対を押し切ってでも芸養子にする」心づもりなのかは分かりません(煌三郎の勝手な推測の可能性が十分にあります)。とはいえ、いずれにせよ上記発言によって煌三郎は16代目白川歌鷗になるという暁也の夢を手玉に取るような形で半ばパワハラ的に暁也を追い込みます

 

渡辺さらさと白川暁也の関係性

上記の消極的・否定的な返答から伺えるように、暁也は、さらさに対して幼馴染としての好感は持てども、恋愛的な意味での好意は抱いていなかったため、恋人になるつもりはないように見受けられます。暁也は、16代目白川歌鷗になれないかもしれない可能性とさらさと本意ではない恋人関係になることの間で苦悩するのですが、結局、水族館では自分からさらさに告白することはできませんでした。

ところが、さらさは、煌三郎が暁也にさらさと恋人になるよう提案した会話を陰で聞いていました。そこで、さらさは暁也の苦悩を知り、16代目白川歌鷗になるという暁也の夢を応援するために、自分から暁也に「さらさの彼氏になってください」と提案したのです。

このような経緯があるために、さらさと暁也は、形式的には恋人関係ですが、その実質はあまり備わっていません。むしろ、奈良田愛が訝しむように(2巻8幕〔アニメ7話〕)、ライバルや同士のような関係と言えるでしょう。実際に二人のには、恋人のようなイチャイチャしたやり取りはなく、むしろ折に触れて真面目に芸事のアドバイスがなされています(2巻8幕〔アニメ7話〕、5巻15幕〔アニメ11話〕、8巻25幕など)。

 

作者の見解

作者の斉木先生も、さらさと暁也の関係性について同様のことを言及されています。

まず、『公式ガイドブック』(2021年7月発売)のインタビューでは以下のような発言がありました(感想記事はこちら)。

――恋と言えば、劇中でのさらさと暁也の恋も気になるところですが。

斉木 発展するのかしら(笑)。ふたりの関係も彼氏彼女と言っていますが、キスもしているんだかしていないんだか…という感じですよね。さらさは暁也のことが好きなんだけど、でもどこかおままごとっぽい感じがあるし、「彼氏彼女という響きが嬉しい」とか「恋愛に憧れている女の子」という感じかな。読者もふたりの関係のさきは望んでいないような気もしますし。

ここで斉木先生は「さらさは暁也のことが好きなんだけど」と語っています。この「好き」に、「ライバルや同士のような関係」に基づく好意だけでなく、恋愛対象に対する「好き」の感情も含まれているのかは微妙なところですが、その後に収録したと思われるリアルサウンドインタビュー記事では、以下のように語っています。

――本作には恋愛だけには留まらない、さまざまな男女の関係性も登場します。

斉木 『かげきしょうじょ!!』では、あまり恋愛には重きを置いていません。さらさと歌舞伎役者の白川暁也も一応恋人ではあるけれど、恋愛と友情の狭間、むしろ友情に近い感じの関係性です。ですが、「ジャンプ改」から「メロディ」に移った時、女性誌だから恋愛要素を入れなきゃいけないのかなと、盛り込もうとした時がありました。ところが当時の編集さんに、恋愛はいらないですと大反対されました。上層部の方にも群像劇で進めてよいと言っていただき、無理に恋愛を入れなくてもいいんだと、ほっとしながら進めた思い出があります。

ここで斉木先生は「恋愛と友情の狭間、むしろ友情に近い感じの関係性」と言及されており、先に考察した私の考えと同旨と言えるでしょう。

 

残された問題

さらさと暁也の関係性について、残された問題は二つあります(アニメ派の人はネタバレ注意!)。

一つ目は、恋人になったきっかけを暁也が知っているのか否かです。暁也と煌三郎の会話をさらさが陰で聞いていたことを暁也は知っているのでしょうか? さらさは暁也にそのことを明かしていないと思われますが、もし暁也が知っていればさらさに負い目を感じてしまうと思われます。

二つ目は、暁也とさらさを恋人関係にしてまで神戸に行ったさらさの動静を煌三郎が知りたがるの理由です。作中情報によれば、さらさは15代目白川歌鷗の隠し子であって、白川煌三郎とは妻の異母妹(義父の娘)の関係に過ぎず、煌三郎がさらさに執着すべきような血縁関係はありません

ここであり得る仮説としては、煌三郎はさらさが紅華に入学して東京を離れても彼女を見守るという実績を重ねることにより、15代目白川歌鷗に恩を売るというものです(詳細は第9巻の記事を参照)。しかし、それだけでは煌三郎の言動を説明するのに不十分な気がするんですよね。いずれにせよ、これからの展開が楽しみです!

 

 

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