2019秋アニメ総評②――マイベスト5選
先日は、私の視聴した2019秋アニメについて一言コメントを書きましたが、この記事では、個人的なベスト5作品について感想を書き連ねたいと思います(五十音順)。
※放送が終了していない作品も選出対象です。
※シリーズの続編作品(「僕たちは勉強ができない!」など)や2クール目の作品(「Dr. STONE」など)は選出対象外です。
1.「アズールレーン」(第10話まで放送)
艦船擬人化アニメなだけあって、世界観の把握が大変でしたが、意外にもかなり楽しめました。
その楽しさの要因の一つが、キャラデザの良さです。数え切れないほどキャラクターが登場しましたが、特に重桜のキャラデザの良さが際立っていたと思います。獣人化ということは抜きにしても、空母らの和装や、重巡らが着る戦前将校風の軍服などはかなり格好良かったです。また、赤城、加賀、翔鶴、瑞鶴らの目元に朱色が差してあったのは、個人的にはかなり好みです。
マイベストエピソード:第8話「【交錯】 抱きしめて離さない」 アズールレーンとレッドアクシズの決戦においてエンタープライズが暴走した後のことです。行方不明の赤城の捜索を主張して止まない加賀、姉妹を持つ身として加賀の痛みに寄り添う瑞鶴、瑞鶴と共に殿を務め妹を守り抜く翔鶴など、姉妹愛が光るエピソードでした。あと、寄りのカットの色彩・陰影が好みでしたね。
2.「慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~」
最初は「この素晴らしい世界に祝福を!」のようにギャグに振り切った異世界転生ファンタジーなのかなと思って見てみたら、ハードな展開&シリアス要素が相当ありました。
まったくの個人的な偏見なのですが、「薄っぺらいギャグ要素」&「転生特典のチート能力で切り抜けられるほどのソフトな展開」&「申し訳程度のシリアス要素」&「とにかくハーレム」という組み合わせの異世界転生ファンタジーが少なくない中、互いに高いレベルにあるギャグとシリアスを見事に融合させた「慎重勇者」はまさにこれに対する痛烈なアンチテーゼのような作品でした。こういった作品がもっと増えれば良いなと思います。ぜひとも2期が見たいですね!!
マイベストエピソード:第11話「その真実は重すぎる」 聖哉とリスタ(とアリア)の隠された過去と因縁が明らかになったエピソードでした。聖哉がありえないくらい慎重な理由、リスタが聖哉に執着するほど好きな理由、なんだかんだ聖哉がリスタ・マッシュ・エルルを大切にしていた理由などの伏線が回収されていく様は感心してしまいました(たとえば、ヘルズファイアの重ね掛けは、敵の命が二つあるかもしれないことへの対策でした)。「聖哉とリスタが実は前世において会っていた」というのはベタと言えばベタかもしれませんが、しかし王道で感動できるものでした。そういえば、リスタルテ(Ristarte)はリスタート(Restart)のもじりという指摘もありますね。
3.「厨病激発ボーイ」
このアニメの特筆すべき点は、①女性が主人公で、②メインキャラクターは女性だけ、あるいは男性だけ、という極端な設定でないにもかかわらず、③また、スポーツものでもないにもかかわらず、④恋愛要素が(ほとんど)なく、⑤泥臭くも爽やかな学園青春モノに仕上がっていた点です。
学園青春モノと言えば、ラブコメ、スポーツ、アイドル(音楽)系、美少女萌え系が蔓延しているような気がしますが、恋愛(百合含む)要素やスポーツ要素のない学園青春モノは意外に少ない気がします。上記の①~⑤の要素を兼ね備えたアニメが再び登場して欲しいものです!(というか、2期を希望します!)
マイベストエピソード:第9話「おかけになった電話は」 文化祭を成功させるべく瑞姫や二葉らが東奔西走するエピソードでした。文化祭と言えば学校生活を代表する行事で、文化祭への参加度=青春の充実度と言っても過言ではありません。もちろん、これはまったく個人的な感覚ですが、ともかく、自分が高校生のときに学園祭を成功させるべく奔走した思い出がこのエピソードと重なって懐かしくなりました。
4.「バビロン」(第8話まで放送)
このアニメにおいて特筆すべきは、「不思議な誘引力」がテーマとなっている点です。
まず、「不思議な誘引力のある思想」について、(推奨こそしていないですが)アニメにおいてここまで過激な思想を主題化して前面に打ち出したのは珍しいことではないでしょうか。このアニメは間違いなく、(それが悪かどうかはさておき)自殺に関する議論や自殺それ自体を忌避しがちな社会に生きる我々視聴者に対して、「自殺は悪いことではない」という発想を激烈に見せつけました。もちろん、このアニメを見たからと言って自殺を前向きに考えることにはなりません。が、しかし、今後、自殺や安楽死に関する議論に接する場面において、この作品のことを間違いなく思い出すことになりそうです。
また、曲世愛も、「不思議な誘引力のある人物」です。第5話の坂部医師や第7話の九字院が語ったように、曲世愛には危険な魅力があるようです。曲世愛と面前した二人はその感覚を「性」になぞらえて語っていましたが、もしこんな人物がいたとしたら会ってみたいと思う自分がここにいるのです。男女を問わず人を誘引する魅力――危険だとは知りつつも体感してみたいものです。
マイベストエピソード:第7話「最悪」 このサブタイトルの通り、まさに「最悪」な展開ばかりのエピソードでした。アニメにおいて主人公以外の仲間が殺されるハードな展開はただでさえ多くないのに、さらに残虐な描写までありました。数話にわたって味方サイドの人間として描かれてきた瀬黒陽麻には、視聴者側も親しみを覚えていただけに、第7話のラストはまさに「最悪」でした。あのシーンを初めて見たときは、曲世愛の話がまったく頭に入ってきませんでした。視聴者が親しみを覚えた登場人物が残虐に殺されるなんて、滅多にないストーリー展開です。こんな展開のアニメが増えてほしいとは思いませんが、ご都合主義・優しい世界が少なくないアニメの世界においては、強烈な一撃となる作品です。
5.「本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません」(第13話まで放送)
剣と魔法の物語=バトルばかりの異世界転生ファンタジーがあふれる昨今の状況の中において、「本を読みたい」という一貫したテーマの下で、派手なアクションシーンこそありませんが、しかし丁寧かつ綿密なストーリーが描かれています。
また、ファンタジー作品らしく、魔法も登場するには登場するのですが、むしろ主人公は魔法を自由自在に操るような存在としては描かれていません。この点も他の異世界転生ファンタジーとは一線を画しています。
こういった、魔法も剣技も格闘も得意でない「知識チートのみ」の異世界転生ファンタジー作品は、アニメ・ラノベともに少ないのではないかと思います。しかも、「本好きの下剋上」では、転生先の人々が特異な知識を持つマインを囲い込み利用しようとするので、「知識チート転生者」もややもすれば「Googleに買収されたYouTube」「Facebookに買収されたInstagram」のようになってしまうかもしれません。「本好きの下剋上」がきっかけとなって、このような作風のファンタジーが興隆してほしいものです!
ところで、もう何度も宣伝していますが、女性が主人公の異世界転生ファンタジーの作品としては、唐澤和希『転生少女の履歴書』(ヒーロー文庫、2019年12月現在既刊9巻)がかなり面白いですよ! 詳しくは下記リンクの紹介記事をどうぞ!
2019年12月31日時点では、ここに挙げた5作品のうち、3作品はまだ放送が終了していません。首を長くして放送を待っています!