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劇場版SHIROBAKOを観てきたので感想を!【ネタバレ注意】

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劇場版SHIROBAKO

2020年2月29日に公開された「劇場版SHIROBAKOを観てきましたので、その感想を書き連ねたいと思います。ネタバレにはご注意ください。

とはいえ、メモを取りながら観た訳でも、何度も劇場に足を運んだ訳でも、手元に脚本がある訳でもないので、「この作品が伝えたかったのは~」「この作品のテーマは~」「あのシーンが象徴しているのは~」のようウェットな感想は止めておきます(というか、難しいので諦めました)。

こういった優れた感想については、たとえば、以下の記事を紹介しておきます。

www.club-typhoon.com

blog.monogatarukame.net

その代わり(?)と言っては何ですか、このブログでは、つまみ食い的な感想を述べてゆきたいと思います。

 

 

1.ストーリーの感想

 

1)全体的な感想

陰鬱、とまでは言いませんが、悲壮感の漂う前半でした。TVシリーズではお馴染みだったメンバーがムサニから離れていった状況はショックでした。

TVシリーズは前半も後半も「大変だけど何とかやってます!」感があってワクワクしながら観ていたのですが、劇場版は何とかできないレベルの悲壮感・不安感からスタートしました。

が、社長の渡辺から相談されたあおいの決断により「空中強襲揚陸艦SIVA」の制作が決まり、TVシリーズでお馴染みの人物たちがムサニに戻ってくる展開にはホッとしましたね

120分という枠内で新しいキャラを登場させる時間はないという理由から、新キャラの登場は最小限に抑えられ、TVシリーズでお馴染みの人物が再登場したという制作陣の裏話を目にしましたが、やはりこれで大正解だったと思います。

 

2)TVシリーズのオマージュが嬉しい

劇場版では数々のTVシリーズのオマージュがありましたが、印象に残ったものについて感想を述べておきます。

 

ア.カーレースと鑑賞会

劇場版の冒頭では、信号待ちしていたムサニの車が、TVシリーズと同じくカーレースをするかと思いきや、エンストしてしまいました。しかも、その車から降りてきたのは佐藤さんでした。

その直後は、TVシリーズと同じく会議室での鑑賞会のシーンでしたが、「やっぱりお馴染みの人たちがいる!」と思いきや、これはあおいの幻覚・妄想で、少人数しかいませんでした。

しかも、そこで放送されているのは、ムサニが制作した第1作とは似ても似つかぬお色気シーンたっぷりの「第三少女飛行隊2」のグロス請けエピソードでした(というか、あの気難しそうな野亀先生がお色気路線を認めたことは信じがたいのですが!)

 

イ.ミュージカルシーン

個人的な話をすれば、私は基本的にアニメでも実写でもミュージカルシーンは苦手です(スベっているようにしか見えないので)。

しかし、前半のハイライトである「アニメーションを作りましょう」のミュージカルシーンについては、キマりにキマったあおいの脳内での出来事だと理解できているので、むしろ楽しく見られました。エンゼル体操やプルテンもまさかここで登場しましたしね(笑)

 

ウ.ファンタジーなバトルシーン

あおいと宮井さんがげ~ぺ~う~(げ~べ~う~だったかも)に乗り込んだシーンは、TVシリーズにて夜鷹書房に木下監督が乗り込んだシーンのオマージュでしたね。

しかも劇場版なだけあって、作画に気合が入っていましたね。畳が抜ける和室を駆け抜けるシーンはかなり動いていました。

 

エ.制作陣は動物がお好き?

ムサニもP.A.WORKSもですが、制作陣は動物アニメがお好きなんでしょうか?

TVシリーズの劇中作「アンデスチャッキー」も、劇場版の劇中作「空中強襲揚陸艦SIVA」もですが、子供向けのようなキャラデザの動物がメインキャラとして登場していましたSHIROBAKOの視聴者の大半が大人であることを考えれば、制作陣が子供向けの動物キャラクターを好んで登場させるはやや不思議です。やっぱり人間より動き回る動物の方がアニメーションの醍醐味を引き出しやすいのでしょうか?

 

3)アニメ業界的なストーリー展開の振り返り

アニメ業界には詳しくないので、私自身のためにもアニメ業界的な観点からストーリーの振り返りをしておきます(間違っていたらごめんなさい)。

葛城さんや宮井さんの所属するエスタンエンターテインメントは、アニメメーカーです(現実の例としては、アニプレックスエイベックス・ピクチャーズハピネットブシロードポニーキャニオンなど。番組提供やCMで見かける企業ばかり!)。

アニメメーカーは、原作出版社や放送局と並んで製作委員会に参加してその企画に出資ししたり作品を販売・配給したりする立場にあり、アニメーション制作会社にアニメ制作を発注します(アニメメーカーとは異なりアニメーション制作会社の提供やCMは見ません。見かけるのはOPやEDのクレジット表記だけです)。

「空中強襲揚陸艦SIVA」を企画したウエスタンエンターテインメントは、この制作を当初はアニメーション制作会社「げ~ぺ~う~」に発注しましたが、公開予定10か月前になっても絵コンテが数枚しかできていないことが発覚しました

そこで葛城さんは、げ~ぺ~う~から、同じくアニメーション制作会社の武蔵野アニメーションに発注先を切り替えようとムサニに泣きつきました

社長の渡辺やあおいの決断によってムサニが「空中強襲揚陸艦SIVA」を元請けとして制作することになり、ムサニに人が戻ってきました。

しかし、ムサニが「空中強襲揚陸艦SIVA」を制作していることを知ったげ~ぺ~う~は、エスタンエンターテインメントとの契約関係は継続したままであるとして、げ~ぺ~う~が元請けムサニはその下請けとなるべきことを主張します。元請けの制作会社だけがアニメOP/EDやポスターや公式HPなどの各種クレジットで表記されます(あるいは下請けは表記されるとしても目立ちません)から、げ~ぺ~う~の主張は、ムサニへの評価はもちろんプライドにも関わる問題です。

そこであおいと宮井がげ~ぺ~う~に乗り込み、げ~ぺ~う~がウエスタンエンターテインメントと交わした契約書の解除条項に該当する行為を行ったとして、元請けの立場を主張するげ~ぺ~う~を黙らせた、という訳なのです。

 

 

2.キャラクターごとの感想

 

1)メインキャラクター

 

宮森あおい(制作デスク/チーフプロデューサー)

劇場版における設定は、制作デスクチーフプロデューサーということだったらしいのですが、やはりチーフプロデューサーとしての仕事が目立っていました。

社長の渡辺から相談されたあおいが「空中強襲揚陸艦SIVA」の元請け制作を決定したことは、ナベPの下で降りかかってくる仕事をこなしていたTVシリーズの頃とは異なり、あおいが責任と決定権のある立場になったことを意味しています。チーフプロデューサーとしてキャラデザ、作監、演出などのメインスタッフを決定する立場になったことにもこれは表れていましたね。

 

安原絵麻(アニメーター/作画監督

まさかの久乃木愛との同居生活でしたね。それなりの築年数の畳敷きの物件から、綺麗な物件への引っ越しが叶ったようで何よりです。「2人での同居じゃなかったら風呂トイレ別は無理だった」旨の発言が心に染みました。実力はあるはずなのに、やっぱりアニメーターの待遇ってあまり良くないんですね。

 

 

坂木しずか(声優)

TVシリーズでは最も不遇な境遇にいた人物でしたが、劇場版ではそれなりに仕事が貰えて、後輩もできていました。あの居酒屋のバイトを辞めているってことは、声優業(芸能の仕事)だけで食べていけるくらいにはなったってことですよね?

 

藤堂美沙(3DCG)

劇場版では頼れる先輩ポジションになっていました。先輩として後輩への指導方法に葛藤していました。信頼できる後輩に頼めるっていう環境は素晴らしいですよね。

 

今井みどり(脚本家)

初の脚本作品は上手くいかなかったようです。が、劇場版の最後の方で、「師匠」と仰いでいた舞茸さんから「商売敵」と呼ばれた展開にはゾクゾクしました。

 

宮井楓(アシスタントプロデューサー)

あおいの相棒的なポジションの人物でした。初登場時のおしとやかで凛とした雰囲気から一変して、あおいとサシ飲みしたときにはそれが崩れていましたね(笑)

 

 

2)劇場版で印象に残ったキャラクター

120分という短い尺にもかかわらず、劇場版で特に印象に残ったキャラクターの感想を述べてゆきます。

 

木下誠一(監督)

なよなよした気弱な部分情熱的でクリエイティブな部分とを併せ持ったあのキャラは健在でした。矢野さんにはモンブランを、佐藤さんには元嫁の飼い犬の写真を、安道さんには唐揚げを示されて、絵コンテを描き上げるよう誘導された様は、なんかもう飼い慣らされたオジサンと言うしかありません(笑)

 

葛城剛太郎(メーカープロデューサー)

たしかTVシリーズではこれといった見せ場はなかったはずですが、劇場版ではトラブルの発生源にいたために出番が多くありましたね。

 

山田昌志(演出/売れっ子?監督)

同じく演出の円さんはTVシリーズでは平岡とガチ喧嘩をしたために、よく印象に残っているのですが、山田さんは個人としての見せ場がなかった印象です。それとは対照的に、劇場版の山田さんはもしかしたら一番印象に残ったキャラかもしれません。

監督として「俺の名は。」などのヒット作を飛ばして売れっ子になったにもかかわらず、劇中後半ではスキャンダルによってムサニに舞い戻ってきて、ある意味ホッとしました(新海監督に許可はとっているのでしょうか?笑)

 

井口祐未(アニメーター/キャラデザ)

頼れる姐さんキャラは健在でした。初挑戦のキャラデザに苦戦したTVシリーズから4年が経って、ますます頼りがいが出てきましたね。

 

小笠原綸子(アニメーター/原画マン

出演時間は決して多くないのに、最も印象に残った人物の一人です。ジャージ姿を見られた際にすごく動揺している様子には、まさにあのゴスロリ服は戦闘服なんだなあと思いました。

小笠原さんは作画監督を固辞していましたが、やはりベテランのアニメーターといっても、作画監督やキャラデザといったメインスタッフになりたい人と、原画マンとしてアニメーションを作り続けたい人がいるんだなあと気付かされました。

 

遠藤亮介(アニメーター/メカデザ)

TVシリーズに引き続き劇場版でも、意固地なところは相変わらずでした。

Twitter上でP.A.WORKSの堀川社長らが、遠藤さんの妻について評価が分かれると語っていました。

 堀川社長は男性と女性とで評価が分かれると言っていますが、私はむしろ、「夫が大変な時には妻は黙って献身的に支える」といった夫婦像を理想とする昭和生まれ的な古い価値観と、必ずしもこのような夫婦像には賛同できない平成生まれ的な最近の価値観とで評価が分かれるのかなあと思います。たぶん、この脚本にGOサインを出した人は全員昭和生まれじゃないでしょうか?

 

瀬川美里(アニメーター/作画監督

TVシリーズでは遠藤は瀬川さんを苦手にしていましたが、劇場版では既に苦手意識はなくなっていたようですね。むしろ瀬川さんに気を遣わせていました(笑)

 

杉江茂(アニメーター)

やっぱり杉江さんのような年配の人が活躍できる作品は素敵です。劇場版では杉Gとして子供たち向けにアニメ教室を開催し、あおい達5人は子供たちから大きな触発を受けたようです。

 

佐藤沙羅(制作進行)

TVシリーズから4年を経てムサニから多くのお馴染みの人物が去っていましたが、佐藤さんが残っていたのには彼女の義理堅さを感じ、嬉しく思いました(義理堅いというよりも、自宅から近いためムサニに残っているという実利的な面もあるかもしれませんが)。劇場版では新人っぽさはなくなり、反対に頼れる制作進行になっていました。

 

安藤つばさ(制作進行)

ムサニから転職してしまっていたのは残念でしたが、SIVA制作ではムサニに出向してきてくれましたね。しかし、TVシリーズでも毒舌でグイグイしていたキャラが、劇場版ではさらに進化していましたね

 

高梨太郎(演出)

まさかタローがムサニから離れるとは! しかも演出!? タローがきちんと演出をこなせるのか、にわかには信じられません。監督と大喧嘩したらしいことは、すんなりと信じられたのですが。

 

平岡大輔(制作進行?)

タローと同じ職場に移籍したようですが、平岡のポジションは何なのでしょうか? 見逃してしまいました。が、演出である太郎の担当、と言っていたことからすれば、制作進行のままなのでしょうか?

それにしても、ムサニを離れてもタロー平岡コンビが健在なのは嬉しいですね!

 

渡辺隼(社長)

ナベPがまさかの社長に昇進です。TVシリーズ後半でも夜鷹書房の担当編集に変な話、振り回されて疲弊していましたが、劇場版ではさらにお疲れのようでした。

ちょっとグッときたのは、あおいと宮井さんがげ~ぺ~う~から契約解除を勝ち取ってきた際に、渡辺さんが葛城さんとともに頭を下げてお辞儀をして出迎えたシーンです。柄にもなく部下のあおいにお辞儀をするなんて、本当にあおいのことを信頼しているんだなあと感じました

 

丸川正人(元社長)

渡辺さんが社長になっていると知ったとき、最初は丸川さんは年齢を理由に円満に引退したのかなと想像していただけに、まさかの引責辞任には驚きました。

TVシリーズでは、丸川さんはアニメ制作に直接には関わらず、どういうポジションなのか分かりにくかったのですが、責任ある地位にいたことが劇場版で劇的に示されましたね。クリエイターたちがアニメを作る前提として、法的・社会的な責任を負う者が必要なことを痛感しました。

 

 

 

以上が劇場版SHIROBAKOの感想です。総じて大満足です。が、やはり良作なだけに観終わった後の喪失感は否めません。

そんなことを感じていたら、なんだか、同じくP.A.WORKSお仕事シリーズ第3弾のサクラクエストを見たくなりました(Amazon prime videoで見られるみたいです)。宮森あおいと木春由乃のキャラデザが似ているせいでしょうか?――――と思ったら、キャラデザは両方とも関口可奈味さんが担当しているようです。

P.A.WORKSには、SHIROBAKOも含めて、お仕事シリーズの新作(続編でも新シリーズでも)を作って欲しいですね!!