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アニメ「ランウェイで笑って」第5話の感想・考察――長谷川心の夢・才能・需要をめぐる葛藤

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第5話の感想・考察記事です。

第4話の記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#(第5弾登場!)

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第5話「それぞれの流儀」

相当する原作のエピソード:第4巻第23話「コンプレックス」、第27話「アイデンティティー」、第28話「其々の流儀」、第29話「お宅訪問」(第25話「心の支え」、第26話「弱虫の決意」のほとんどのエピソードは、省略もしくは次話以降へと後回しにされています)

日本一の服飾大学・芸華大のファッションショーの予選に挑戦することになった育人。予選をくぐり抜けた者だけがショーに参加する資格を得られる。育人は共に柳田の元で働く長谷川 心が複雑な事情を抱えていることを知り、「一緒に予選に挑戦しないか」と誘う。二人で参加した予選当日、発表された課題は育人にとって不利な課題で…!?

 

 

1.引き抜きはどうなった?

第4話は、綾野遠が育人の引き抜きを柳田に提案したところで幕切れとなりましたが、第5話ではその続きが描かれていませんでしたね! 芸華祭予選の行方も気になりますが、こっちも気になりますね!

 

 

2.綾野麻衣の言葉

長谷川心が初めてファッションショーにて綾野麻衣にかけられた言葉は、「いつも街を歩くように普通に足を動かしなさい。あとは勝手に私の服が歩かせてくれるから」でした。この言葉は、「服は人を変えられる」という育人の信条に共通するところがありますね。

そういえば、ふと思ったのですが、モデルをしていなくても、服によって気持ちが変わることは皆さん経験していますよね? 私服(カジュアル・ウェア)だと実感することはあまりないかもしれませんが、各種の制服(ユニフォーム)スーツ(フォーマル・ウェア)だと、特に実感できます。

皆さんの多くが腕を通した経験のある学校の制服は、その学校の一員としての実感を持たせるという機能を持つ、ということが学校の制服の必要性を語る際には言及されています。また、入学式や卒業式あるいは成人式で、スーツや振り袖を着ることは、着た人に節目の行事であることの自覚と緊張感をもたらします(派手な着物を着て成人式でやんちゃする人たちは、それこそあの服装によって気が大きくなっているという一面もあるのでしょうね)。裁判官・警察・自衛隊・医者・看護師・CAなどの職業上の制服は、周りの人が一見して判別しやすいという機能はもちろんですが、きっと着た人にその職責の自覚を持たせるという機能も持っているはずです。

この作品を通して、服を見る目に新たな視点が加わりました!

 

 

3.長谷川心の葛藤と育人

心はマネージャーから手痛い言葉を投げかけられました。

そいつはうちの事務所のホープ。身長181cm、股下93cm。うちの事務所の宝だ。それが気の迷いでこんな所に逃げられても困る。無理だよ。お前はデザイナーになんかなれない。お前はモデルをやりたくない当てつけに、デザイナーに憧れているフリをしているだけだから。失礼だろ? 本気でデザイナーを目指している人間に。

「無理だよ」という――千雪が言われた、そして千雪が育人に言ってしまった――この言葉に、心はまともに反論できませんでした。この言葉に動揺した心は、「マネージャーの言ったこと、モデルが嫌じゃなかったら、デザイナーになりたかったか分かんないもん」とまで言ってしまいます。

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「マネージャーの言ったこと、モデルが嫌じゃなかったら、デザイナーになりたかったか分かんないもん」

しかし、育人は、服飾についてあれこれ書かれた心のノートを見て、服飾にあふれた室内を見て、デザイナーになりたいという心の夢が真摯なもので、彼女がそれに向かって努力していることに気付きます。

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心の部屋

そして心に芸華祭のファッションショーに出ることを提案します。その際、育人はこう言っていました。

えっと、うまく言えないんですけど、やりたいことはやるべきで、認めてもらうには自分から一歩踏み出す。そう、尊敬する人から学びました。

一見すると、この尊敬する人が誰だか分かりにくいですが、これは千雪のことです。「やりたいことはやるべきで、認めてもらうには自分から一歩踏み出す」ということは、パリコレモデルになるためにウォーキングの練習をしたりオーディションを受け続けたりなど、千雪が実践してきたことですし、藤戸社長に雇ってもらうために「ここで動かなかったら何も変わらないよ」「デザイナーになることを諦めてほしくない」と千雪に言われた育人自身が実践してきたことでもありました。

このようにしてみると、どんな困難があっても夢を追い続ける千雪の信念が、育人に伝わり、そして心に伝わっていることが分かります。

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「やります! 私も出ます、芸華祭!」

ところで、原作の第25話~第26話に相当するエピソードが省略されていました。ここでも心の葛藤が描かれているのでぜひ原作第3巻をご覧になってください!

  

 

4.長谷川心と藤戸千雪

(1)天職

「やりたいこと(夢)」「できること(才能)」「求められること(需要)」の3つが重なり合うところが「天職」、なんて言われることがあります。

育人にこれを当てはめてみると、現段階の育人は、おおよそこの全てを兼ね備えており、プロのファッションデザイナーになるべく邁進していますね。

それでは、これをに当てはめてみます。心は、デザイナーになりたいけれど、(少なくとも現段階では)デザイナーの才能は見られず、反面、身長181cmという生まれ持った才能によってモデルの仕事ができ、またそれを求められています。モデルという仕事に対して、「才能」「需要」はあるけれど、それは「夢」ではない、ということになります(反面、デザイナーという仕事に対しては、「夢」はあるけれど、「才能」も「需要」も不確かです)。

そして、今度はこれを千雪に当てはめてみます。千雪は、パリコレモデルになることが夢だけれども、158cmという生まれ持った低身長には、モデルとしての才能も需要もありません。モデルという仕事に対して、「夢」はあるけれど、「才能」も「需要」もない、ということになります。

こうしてみると、千雪と心は対照的な存在です。モデルを「夢」として掲げている千雪が欲しくても手に入れられなかった「才能」「需要」を心は生まれ持っていますが、モデルは心の「夢」ではないのです。今後、この2人が「夢」と「才能」「需要」の相克にそれぞれどう向き合ってゆくのか楽しみですね!

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身長181cm、股下93cm。

(2)罪な男

「ランウェイで笑って」は、基本的にお仕事漫画(アニメ)なのですが、長谷川心の登場によって、(メインキャラクターの男女比が不均等という意味で)少しだけ恋愛的な要素が入りました。育人は、千雪にも心にも熱い言葉を投げかけて彼女らの心を動かしてきた女たらしな一面がありますからね(笑)

恋愛的要素を抜きにしても、千雪と心は、それぞれ育人のことをパートナー的存在だと思っていますから、育人に浮気相手がいると知ったときどうなるんでしょうか? しかも、片や158cmのモデル志望、片や181cmのデザイナー志望ですから……。そのうち2人は邂逅することになります。お楽しみに!

 

 

5.セイラについて

セイラが長々と喋っているところを初めて見ましたが、あの喋り方、ローラさんっぽくないですか? というか、彼女の性格も含めて原作者はローラを念頭にキャラ設計したのではないでしょうか?

ところで、この前、「モニタリング」にローラさんが出演していて、マスク姿に女子高生の制服を着ていたのですが、その小顔っぷりとスタイルの良さ(特に股下の長さ)に驚きました。ちょっと調べてみると、あんなに知名度・人気があっても、身長が165cmしかないために、パリコレや東京コレクションへ出演したことはないようでした。改めてモデル業界の厳しさが分かります。

ちなみに、パリコレに出たことがある日本人女性の著名タレントの身長は、たとえば、山田優さんは169cm森泉さんは173cmさんは174cm冨永愛さんは179cm(!)だそうです。

 

 

6.「それぞれの流儀」

東京コレクションでフィッターとして柳田のチームに参加し、千雪らに怒っていたあの女性が再登場しました!

木崎香留は、「あいつの足を引っ張るとか、そういうことをしたいわけではない。ただただ真正面からねじ伏せたいだけ」と、

江田龍之介は、「ここにいる奴ら全員、敵だぞ。なのに平気でお礼言える能天気な神経とか。甘いんだよ、あんた」と、

育人は、「馴れ合いと感謝は違う」「ただ、『かわいそう』って言葉だけは言わせっぱなしにさせない」と、

芸華祭ファッションショーの予選に挑む姿勢は、まさにサブタイトル通り、「それぞれの流儀」でした。予選の結果がどうなるか気になりますね!

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木崎香留と江田龍之介

 

 

7.再会

実は、生地探しの際、原作では育人はある人と再会します。気になる方は原作第3巻第28話をご覧になってください!

 

 

8.千雪の努力

健全な思春期の男子にとって千雪の薄着姿は目に毒だったようですが、千雪の家での過ごし方には彼女の努力が溢れていました。室内でのヒール、日課のトレーニングなど、千雪の努力する姿が具体的な形で見れたのは嬉しかったですね!

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室内でヒールを履く千雪

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目のやり場に困る育人

そして千雪は自身の目指すべき姿について語りました。

デザイナーには作った服を“こういう人が着る”って理想の人物像があって、それをランウェイ上で演じるのがモデルの仕事。もちろん、圧倒的個性で勝負するモデルもいれば、歩幅、手の振り、腰の入り、肩の揺らぎ、場合によっては頭の動きまでコントロールして、デザイナーの理想に近づこうとするモデルもいる。

でもね、セイラさんが本当に凄いのは、その演技をどんな高さのヒールでも全く同じように歩けることなの。山ほどトレーニングして身に着けたんだって。なんでか分かる? 171cm。ショーモデルとしては小柄な身長だからだって。小柄で世界に通用してる。私が目指すべき道はセイラさんにあると思うの。

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「私が目指すべき道はセイラさんにあると思うの」

そう言って千雪が見せたウォーキングを、育人は次のように表現しています。

廊下から伸びた絨毯の中央、何度も刻まれた直線のくぼみを寸分も違わずなぞって行く。モニターに映る一流のモデルと目の前で躍動する158cmのモデルの演技に違いを……見つけられなかった……

このシーンは、オーディションやファッションショーといった特別な場ではなく、また物語上のターニングポイントという訳でもないのですが、このような千雪の努力、そしてそれに感化される育人を見ると、なんだかゾクゾクしました! 

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「違いを……見つけられなかった……」



9.「顔、疲れてる。仕事頑張り過ぎじゃない?」の意図を探る

藤戸家からの帰り際、育人は顔に手を添えられて「顔、疲れてる。仕事、頑張り過ぎなんじゃない?」と千雪に言われました。

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「顔、疲れてる。仕事、頑張り過ぎなんじゃない?」

なんだか見覚え、聞き覚えはありませんか? 実は、それに先立つ病院の場面で、育人は顔に手を添えられて「顔、疲れてる。仕事頑張り過ぎじゃない?」同じセリフを母親に言われていたのです!

ところが、原作では、この母親のセリフは、「育人……クマできてる」でした。ということは、アニメ制作者は何かの意図があって原作のセリフを改変した訳です。しかも、アニメ化に際しては省略が多いのに、特にストーリー展開の上では残す必要性がない病院の場面を省略しなかったという点も指摘できます。この改変の意図は探らねばなりません。

色々な解釈が可能だと断った上で、自分なりの見解を示すとすれば、千雪と母親の言動の共通性からは、千雪にとっての育人との距離感が推し量れます。すなわち、「千雪にとって育人は家族みたいな存在である」と千雪は考えているように思います。これは、薄着で育人と接しても千雪自身は気にしていない様子だったことと整合的です。つまり、千雪は育人のことを男兄弟のごとき存在だと考えているのでしょうか。

しかし、一口に「家族みたいな存在」といっても、「夫婦」という性差に基づく関係性と、「親子」「兄弟姉妹」といった性差に関係のない関係性とがあります。千雪の見せた言動が、「夫婦」のような距離感を示唆しているという解釈も可能なのです。つまり、相手のことを異性として見ているけれども、夫/妻のように当たり前の存在だからあのように接した、とも捉えられるのです(それとは対照的に、育人は薄着姿の千雪を「当たり前」とは思えず、かなり異性として意識していました)。

難しい問題です。皆さんはどう考えますか?

 

 

 

さて、次回は、第6話「優越感と劣等感」です。育人が思いついたアイデアとは? 予選の結果やいかに?

 

第6話の感想記事はこちらから!

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