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今話題の漫画版『薬屋のひとりごと』――次にくるマンガ大賞1位のこの作品をおすすめする理由とは?

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薬屋のひとりごと


去る8月22日、漫画版『薬屋のひとりごと次にくるマンガ大賞2019」コミックス部門第1位を獲得しましたね。おめでとうございます!! 本作を継続購入している読者としては、嬉しい限りです!

 

そもそも、原作小説の扱いが良かったのですよ。

書店に行けば表紙が見えるように置かれ(ヒーロー文庫の筆頭扱いです)、なぜかコミカライズは2誌で並行して展開されるし(ビッグガンガン版とサンデーGX版。今回受賞したのは前者)、古本屋に行けば強化買取中なんです。

 

個人的には、映像化のオファーも来ているのではないかと思っています。アニメ化ももちろん良いですが、一般ウケする内容なのでNHKあたりが潤沢な予算を使って実写ドラマ化するというのもアリではないでしょうか?

 

さて、前置きが長くなりましたが、この記事では、『薬屋のひとりごと』のあらすじとおすすめポイントを紹介します!

 

 

(1)基本情報

 

薬屋のひとりごと

原作:日向夏ヒーロー文庫、2019年8月現在既刊8巻)

キャラクター原案:しのとうこ(原作イラスト)

構成:七緒一綺

作画:ねこクラゲ

掲載誌:月刊ビッグガンガン

レーベル:ビッグガンガンコミックス(2019年8月現在既刊5巻)

ジャンル:「ミステリー」「毒」「中国王宮」「ラブコメ

中世の宮中で下働きをする少女・猫猫(マオマオ)。花街で薬師をやっていた彼女が、帝の御子たちが皆短命であるという噂を聞いてしまったところから、物語は動き始める。持ち前の好奇心と知識欲に突き動かされ、興味本位でその原因を調べ始める猫猫の運命は――…!?

 

この時点で気になった方は下記サイトより試し読みしてみてください!

https://magazine.jp.square-enix.com/biggangan/introduction/kusuriya/

 

 

(2)あらすじ

 

物語の舞台は、どこかの時代のどこかの国の王宮。作中で言及こそされてはいませんが、中国の王宮が舞台であると見てもらって構いません。

 

主人公は17歳の少女、猫猫(マオマオ)。元は花街(高級風俗街)にある薬屋の娘だったのですが、薬草採取に出かけた森で人攫いに誘拐され、後宮で働くことになります。

後宮とは、宮廷の中の一区画を指しており、帝の子を成すための女の園です。猫猫はここで下女(女官)として働いています。皇帝の相手をする妃とは違い、下女は妃の世話や後宮の雑務をこなします。

 

そこで働いてから3か月、猫猫はとある事件を知ることになります。その名も後宮で生まれるお世継ぎの連続死」。現在までに現皇帝がもうけた子は5人。うち3人はすべて乳幼児のころに亡くなっているのというのです。

現在は、梨花(リファひ)との間に生まれた生後3か月の男児の宮「東宮(とうぐう)」と、皇帝の寵愛が注がれている玉葉(ギョクヨウひ)との間に生まれた生後6か月の女児の宮「公主(こうしゅ)」の2人が存命中。しかし、2人の宮と梨花妃は、体調を崩しているようなのです。

 

後宮中で皆が「これは呪いに違いない!」と噂する中、薬屋にいた猫猫は考えます。

「幼児の死亡」「頭痛」「腹痛」「吐き気」「げっそりとした様子」……これらの情報から原因を特定した猫猫は匿名で文を書き、2人の妃に情報提供をします

 

しかし、その1か月後、東宮は亡くなってしまいました梨花妃も以前の面影がない程に憔悴しきっているそうです。どうやら猫猫の警告は無視されたようなのです。その一方で、玉葉妃の方では警告が聞き入れられ、公主は体調を回復してきました

その情報を仕入れた後宮を取り仕切る壬氏(ジンシ)は、一計を案じて警告をしたのは猫猫だと見抜きます

 

結局、正体を見破られてしまった猫猫は、その功績が認められ、玉葉妃の侍女となりました。そこでの猫猫の役割は毒見役でした。が、猫猫にとってこれは天職なのです! 薬屋の実家にいた頃は、実験と称しその身を実験体としていたほど、猫猫は毒(と薬)が大好きなのです!!

 

玉葉妃の侍女になれた一方で、猫猫は壬氏にも目を付けられてしまいました。壬氏は、後宮に出入りする以上は、宦官――生殖機能を失った元男性――なのですが、その中性的美貌から女性からも男性からもモテモテなのです(普通、性欲を無くした宦官は欲が食欲に向かい、小太りなおばさん体型になってしまいます)。

しかし、猫猫は壬氏の溢れ出る色気には魅力を感じません。むしろちょっと苦手に感じているくらいです(心の中で「変態宦官」と呼んでいます)。そんな猫猫を壬氏はいたく気に入ってしまいます。曰く、「あれは思った以上に仕える。本人は上手く隠しているつもりなんだろうが、あの毛虫でも見るような目。欲情してこない人間もいくらか見てきたが、あんな目で見られたのは初めてだ。被虐嗜好者(マゾヒスト)ではないのだが妙に面白い。新しい玩具(おもちゃ)を手に入れた気分だ」、と。

 

こうして猫猫は壬氏に振り回されながら、宮中で次々と起こる謎をその薬の知識を持って解決してゆくのです!

 

以下に、これから起こる出来事を記しておきます。

「モテモテのあの宦官が媚薬をご所望!?」(第1巻)

後宮の城壁で踊る幽霊!?」(第1巻)

「体調の回復しない梨花妃を救え!」(第2巻)

園遊会で妃の皿にが盛られた!!」(第2巻+第3巻)

「里帰り中に妓楼で自殺騒ぎ!」(第3巻)

「エリート官僚が宴席で酒を飲み過ぎて死んだ!?」(第3巻)

「自殺?他殺?女官はなぜ堀で死んでのか?」(第4巻)

「阿多妃・里樹妃の秘密と過去とは?」(第4巻)

「猫猫が後宮解雇された!?」(第4巻)

「講師は猫猫!上級妃への後宮授業は女の園の他言無用の秘術!?」(第5巻)

「外廷の食糧庫でボヤ騒ぎ!?」(第5巻)

「毒が薄いはずのフグの皮身を食べた官僚が昏睡状態に!なぜ?」(第5巻)

「彫金細工師の遺言を解読せよ!」(第5巻)

 

 

(3)おすすめポイント――「ミステリー」「中国王朝」「宦官とのラブコメ」……魅力を語りきれない!

 

さて、本作品は、小説家になろう」に投稿された作品ライトノベルとして書籍化されたものを原作としています。

しかし、上記のあらすじを読んできた方はもうお気づきではないでしょうか? 小説家になろう発って異世界転生ばかりでしょ?」「ラノベって異世界ファンタジーか学園青春モノしかないんじゃない?」という固定観念はとっくに裏切られたのではないでしょうか?

 

本作品には様々な魅力があるのですが、ここでは「ミステリー」「中国王宮」「宦官とのラブコメの3つに絞ってその魅力を語ります!

 

1つ目の魅力は、この作品は「きちんとミステリーをしている」ところです。

猫猫が探偵役として、事件が起こった際に、「誰が」「何のために」「どのようにしてやったのか」をきちんと解き明かしているのです。ミステリーファンも大絶賛」という売り文句に偽りありません!

私の個人的お気に入りは、園遊会での毒混入事件と、里帰り中の妓楼での自殺騒ぎです。一見関係ないように見える出来事が実は複雑に絡み合っており、その接点を見出して猫猫が解き明かしてゆく様は見事としか言いようがありません。

 

2つ目の魅力は、「中国っぽい王宮を舞台としている」点です。

現代日本を舞台としないライトノベル(やそのコミカライズ)と言えば、その大部分が中世ヨーロッパっぽいところを舞台とするファンタジー作品だと思われます。

しかし、本作品は、東洋風・中華風の異国情緒あふれる宮廷を舞台とするミステリーなのです(魔法や魔物は登場しないのでファンタジーではありません)。原作イラストもそうですが、コミカライズにあたっては、衣装や建築、調度品など、細やかな点まで配慮が行き届いており、本作品の中国王宮風の世界観がよく伝わってきます!

時代小説の読者層ならともかく、ラノベや漫画の読者層ならば、きっと目新しい世界観となっていると思います!

 

3つ目の魅力は、「宦官とのラブコメです!

宦官、つまり生殖機能を失った元男性がラブコメの相手方なんですよ!? しかも、女性も男性も魅了されてしまう美貌の持ち主ですよ!! たった2つだけなのに、ちょっと属性を盛り過ぎに感じませんか!?

ともかく、本作品は中国王宮を舞台とすることで、「宦官」という属性を持った魅力的な人物を登場させることに成功しましたが、この人物が物語において猫猫を大いに翻弄します。彼は猫猫を相当に気に入っているのです。猫猫に言わせれば彼女に粘着しているのです。

しかし、彼の行動は、猫猫のことを「面白いおもちゃ」だと思っているからなのでしょうか、それとも……?

 

以上を読んで気になった方は、まずは下記サイトから試し読みを!

https://magazine.jp.square-enix.com/biggangan/introduction/kusuriya/

 

 

(4)関連おすすめ作品

 

既に言及していますが、本作品はコミカライズ作品ですので、原作があります。日向夏薬屋のひとりごと』(ヒーロー文庫、2019年8月現在既刊8巻)が原作です。原作2巻の序盤までしかコミカライズされていませんので、漫画版を待てない!という方は是非こちらの原作を手に取ってみてください!

薬屋のひとりごと | ヒーロー文庫

 

また、理由は分かりませんが、ビッグガンガン版と並行して、サンデーGX倉田三ノ路〔作画〕『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』(サンデーGXコミックス、2019年8月現在既刊5巻)も同時に連載・刊行されています。読み比べも良いかもしれませんね!

裏サンデー | 薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜

 

茅原クレセ『ヒマチの嬢王』――「キャバクラ」×「地域振興」のお仕事マンガ!

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ヒマチの嬢王

 

(1)基本情報

 

『ヒマチの嬢王

著者:茅原クレセ

掲載誌:裏サンデー

レーベル:裏サンデーコミックス(2019年8月現在既刊3巻)

ジャンル:「キャバクラ」「地域振興」「お仕事マンガ」

 ここは鳥取県米子市朝日町。都会の喧噪に嫌気がさし、実家でグウタラ生活を送る歌舞伎町“元”No.1キャバ嬢・アヤネ。

 母の一喝により、実家の「スナック」をしぶしぶ手伝うことになるが、流石は元No.1。圧倒的な活躍を見せ、店内は飲めや歌えやの大騒ぎ。そんな中、元カレを名乗る同級生ジュンが現れて…

 「夜の街」での二人の出会いは、朝日町を、米子市を、ひいては鳥取全体を活性化させることになる。 【第1巻裏表紙より】

 

この時点で気になった方は下記サイトより試し読みしてみてください!

www.urasunday.com

 

 

(2)あらすじ

 

2日間のバースデーイベントで1億円を売り上げたという伝説を持つ歌舞伎町の元・キャバ嬢アヤネは、突然、地元の鳥取県に帰ってきました。そこでダラダラと過ごしていると、母から実家にいたいなら生活費として月5万円を払えと言われてしまいます。

 

そこでアヤネは、鳥取県米子市朝日町(通称:ヒマチ)に店を構える母親の経営するスナックで働くことにしました。

 

さっそくアヤネは、サラリーマン3人組を連れて来店します。まず彼らに注文させたのは、1本4万円するヘネシーXO! この時点で彼女は生活費の半分近くを稼いでいます

 

アヤネの快進撃は止まりません。今度はドンペリピンク3本を頼ませたのです。ここで、ママはアヤネに、彼らはツケなしで払える客なのか、と注意します。しかし、アヤネは彼らの服装・腕時計・仕草から払える客――パイロット――だということを見抜いていたのです。

 

結局、アヤネの評判が広まり、その日だけで店の通常営業3か月分の売り上げ(!)を記録することになりました。

 

その日、アヤネは、彼女の元カレを自称する男・ジュンと出会います。彼女の活躍っぷりを見たジュンは、アヤネに自分の経営する店のキャバ嬢になって欲しいと頼み込みます。

 

一度は断ったアヤネですが、偶然再会した中学時代の同級生のユリナがお金に困ってジュンのお店で働くというので、心配したアヤネはその店でエスコート(女性版ボーイ)をすることになります。そして結局、アヤネはその店の店長になる(ジュンは降格)という条件で働くことになります。

 

そんなアヤネの目標は、この店をヒマチで一番のキャバクラにすること? それとも鳥取で一番のキャバクラ? いいえ、目標は全国1位なんです!!

 

この『ヒマチの嬢王』は、そんなアヤネたちの成り上がりを描く熱いお仕事マンガなんです!

 

 

(3)おすすめポイント――勉強になるキャバクラお仕事マンガ!

 

もしかしたら、表紙やタイトルから、成人誌的な雰囲気を感じ取った方もいるかもしれません。しかし、それは全くの誤解です! 『ヒマチの嬢王』はかなり真面目なキャバクラお仕事マンガ(青年誌)なのです! (そもそも、地元行政ともコラボしているらしいので、過激な内容は無理でしょうね)

 

まずは、キャバクラとスナックの違いや、キャバクラの仕組みなどが勉強になります。キャバクラ未経験の人でも、キャバクラがどんな感じなのか分かるようになります!

 

キャバクラに行ったことがない人が予習するために読むのも良し! キャバクラで話のタネにするのも良し! キャバクラに行く予定がなくても読むだけでも良し!

 

また、お店の経営方法、地域振興の方法などについても参考になることが多いかと思います いかにして従業員のパフォーマンスを上げるのかいかにして客に店を認知してもらい実際に来てもらうのか、など、ためになる情報満載です!

 

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うおやま『ヤンキー君と白杖ガール』――障害者のイメージを覆すラブコメここにあり!

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ヤンキー君と白杖ガール

 

次にくるマンガ大賞2019」Webマンガ部門で第14位を獲得した人気作品です! 

 

(1)基本情報

 

『ヤンキー君と白杖ガール』

著者:うおやま

掲載誌:WEB掲載

レーベル:メディアファクトリーコミックス(2019年8月現在既刊2巻)

ジャンル:「ラブコメ」「ヤンキー」「障害者」「四コマ漫画

「最恐ヤンキー」×「弱視女子高生」ラブコメディ!

街を牛耳る最恐ヤンキー・黒川森生(18)と盲学校高等部に通う「弱視」の赤座ユキコ(16)。出会ってしまった運命のふたり――!

 この時点で気になった方は下記サイトより試し読みしてみてください!

www.kadokawa.co.jp

  

 

(2)あらすじ

 

本作のヒロインは、赤座ユキコ(16歳)。盲学校高等部2年生で、「光は感じる」「色はボンヤリわかる」「常に真っ白い霧の中にいる」くらいの弱視を持つ、いわゆる「障害者」です。そのため、常に白杖を携帯しています。

 

そんなユキコが白杖を持って点字ブロックの上を歩いていると、ある男がその上を邪魔しており、彼女はその男のケツに白杖をぶっさします

 

こうしてユキコがぶちのめした相手は、「黒ヒョウのモリ」という通り名を持つ黒川森生(18歳)というヤンキーでした。しかし、ユキコは相手の顔が見えないため、彼の見た目なんか気にしようがありません。むしろ、そのコワモテの顔について「じゃあ口で説明しろ。想像するから」と言ってのけます。これに対して森生は、「顔にキズがあるぜ。隣町のボスとタイマン張った時の刀キズだ!!」と言って、左目の下の傷跡を示します。

 

するとユキコは、「顔にケガ!?大変じゃん。ここ?ここか?」と言って、森生の顔を掴んで触りまくります。そうなのです。ほとんど目が見えない彼女にとって、その情報は手で感じ取るしかないのです

 

女慣れしていない森生は、そんな積極的(?)な彼女に惚れてしまいます。そこから恋愛にウブな二人のラブコメが始まるのです。

 

ユキコはユキコの方で、歩行誘導のために森生の腕に抱き着いたり、食べ物を森生に食べさせるために森生の顔を掴んだり、雨降る中森生の声色をよく聞いてその感情を読み取るために森生の顔に近づいたりして、森生を動揺させます。

 

森生は森生の方で、ユキコが認識しやすいように蛍光色の服を着たり、自分の声を聴きやすくするためユキコにハイヒールをプレゼントしたりして、ユキコに気に入られようとします。

 

そんな二人のラブコメ漫画なのです!!

 

 

(3)おすすめポイント――障害者のイメージを覆すラブコメここにあり!

 

障害者がメインの登場人物となる漫画と言えば、京都アニメーションによってアニメ映画化もされた大今良時聲の形』(週刊少年マガジン、全7巻)が真っ先に思い浮かびます。

この作品に対しては、「社会派」「シリアス」「涙々の感動」という印象が強いと思います。これは『聲の形』に限らず、障害者が登場する作品一般について言えることでしょう(ちなみに、このようなイメージに対するアンチテーゼとして、NHKEテレで「バリバラ~障害者バラエティー~」という番組が放送されています)。

 

しかし、『ヤンキー君と白杖ガール』は、障害を扱った作品のそのようなイメージを覆してくれる漫画です。

 

全編を通じてコメディー要素が盛り込まれたラブコメ漫画ですので、シリアスが苦手という方にもおすすめできます。他方で、この漫画を通じて、弱視という障害について理解を深めることができるという点においては社会派な部分もあります。

 

『ヤンキー君と白杖ガール』を読めば、障害者のイメージが変わるのではないかと思います! まずは下記サイトから試し読みをどうぞ!

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福田晋一『その着せ替え人形は恋をする』――ギャルがコスプレする王道ラブコメ漫画!

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その着せ替え人形は恋をする

 

次にくるマンガ大賞2019」コミックス部門で第6位を獲得した人気作品です!

 

(1)基本情報

 

『その着せ替え人形は恋をする』

著者:福田晋一

掲載誌:ヤングガンガン

レーベル:ヤングガンガンコミックス(2019年8月現在既刊3巻)

ジャンル:「ラブコメ」「ギャル」「コスプレ」

いつも友人の輪の中心にいるギャル系美少女、喜多川海夢。クラスメートの五条新菜は、彼女を“別世界の人間”だと思っていた。雛人形の頭師を目指す新菜が、放課後被服室で作業をしていると、そこに現れたのは…まさかの…!? 「あたしにコス衣装作ってくれないかな……!?」 二人のドキドキ山盛りコスプレ・スクールライフが始まる!! 【第1巻裏表紙より】

 

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(2)あらすじ

 

主人公は、五条新菜(ごじょう・わかな)という高校1年生の男子。彼の家は雛人形を製作することを家業としており、新菜自身の夢は雛人形の顔を描く頭師になること。それ系統の趣味しか持たない彼は友達はおらず、学校ではぼっちでした。

 

とある放課後。自宅のミシンの調子が悪いため、新菜は学校の被服室でミシンを使って雛人形の衣装作りを行っていました。すると、彼しかいない被服室の扉が開きます。この学校には手芸部がないのに放課後の被服室に用事があるなんて誰なんでしょう?

 

そこに現れたのは、本作品のヒロイン、喜多川海夢(きたがわ・まりん)です。いわゆるギャルの海夢は明るくて友達も多くて、新菜にとっては「住む世界の違う住人」でした。

 

そんな海夢は、自分の趣味を見られてしまって動揺する新菜を見てこう言います。

 

「すっごーーーーーーい!! ごじょー君、ミシンできる人なの!? えっマジで凄いんだけど!! なんで!?」(第1巻34頁)

 

新菜の雛人形趣味を聞き出した海夢は、彼に頼み事をします。コスプレ衣装の製作を手伝ってほしい、と。

 

なんと海夢は、ギャルにもかかわらず(?)、オタクで「ヌル女2」の雫というキャラクターのコスプレをしたいと思っていたのです。しかし、彼女の技術力では、衣装作りは上手く進んでいませんでした。海夢の情熱に心動かされた新菜は、彼女のコスプレ衣装作りに協力することになります。

 

以上が『その着せ替え人形は恋をする』のストーリーの基本線となります。

 

ここからは、コスプレ衣装製作のための採寸、お買い物、コスプレイベントデビューなど、イベント満載でラブコメが展開してゆきます。

 

その中でも第1巻のハイライトは、採寸イベントでしょう(2.5話分が費やされています!)。新菜の家に海夢が乗り込んできて彼の部屋で採寸を行うことになります。しかし、採寸のためには海夢に下着姿になってもらう必要があるのですが、彼女はためらいもなく服を脱ぎ始めて……!?

 

 

(3)おすすめポイント――「ギャル×コスプレ」の綺麗でちょっとエロい王道ラブコメ

 

まずは、作画・絵柄をおすすめポイントとして挙げるべきでしょうか。コスプレ漫画ということもあって、人や衣装の作画はかなり綺麗です。あと、女性の描き方がちょっとエロいですね。クセになるエロティシズムを感じます(少年誌のギャル漫画に比べてこの点のこだわりが強いと思われます)。

 

もう一つのおすすめポイントは、「ギャル」と「コスプレ」という要素を上手く練り上げて、王道ラブコメ漫画に落とし込んだところです。

 

「オタク」なのに「ギャル」というヒロインの魅力を伝える手法は、漫画やライトノベルではそれなりにあります。しかし、この『その着せ替え人形は恋をする』は、そういったジャンルの基本を押さえつつ、「コスプレ」というまさに見た目を通じたオタク性の発露という手法でヒロインの魅力を引き出し、また綺麗な作画の漫画でさらにヒロインの魅力を分かりやすく読者に伝えてくれています! 

 

しかし、私がどう魅力を語っても、実物を読むことにはかないません。まずは下記サイトから試し読みしてはいかがでしょうか?

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「異世界ファンタジー」の下位ジャンルの必要性――ゲーム的でない異世界ファンタジーを何と呼びますか?

 

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ハリー・ポッターと賢者の石

2019年8月30日追記:この「『異世界ファンタジー』の下位ジャンルの必要性」という記事に対して、「ファンタジーのジャンル論・再考」という下記記事を書いたのでぜひご覧ください! 下記記事はこの記事の訂正版のような形になっております。

irohat.hatenablog.com

以下、本来の記事へ――

 

 

皆さんは、ライトノベルの文脈において時折語られる異世界」系と「ファンタジー」系の違いは分かりますか? 正直、あまりよく分かってはいないのではないでしょうか? あるいは、自分なりに区別しているとしても、それはラノベ界隈で広くコンセンサスを得られているのでしょうか?

 

そんな疑問に対する回答の一助になればと思い、この記事では、ライトノベルの文脈における「ファンタジー」や「異世界」といったジャンル分けの方法について考察・提案を行いたいと思います。

 

とはいえ、まずは本論に入る前に、私のジャンル分け理解の全体像を見て頂ければと思います(下図参照)。

 

ファンタジー

 ├─本格ファンタジー

 │  ├─ハイ・ファンタジー

 │  └─ロー・ファンタジー

 └─異世界ファンタジー

    ├─ゲーム的異世界ファンタジー

    └─非ゲーム的異世界ファンタジー

 

 

(1)伝統的なファンタジーラノベ的な異世界ファンタジーの区別の必要性

 

最初に、「ファンタジー」の定義を確認しておかなければなりません。アカデミアの世界では歓迎されませんが、このブログはそういう場所ではないのでひとまずWikipediaの記載を引用しておきます。

 

ファンタジーとは、超自然的、幻想的、空想的な事象をプロットの主要な要素、あるいは主題や設定に用いるフィクション作品のジャンルである。

ファンタジー - Wikipedia

 

要するに、典型的には、魔法や魔物などが登場する物語をファンタジーと呼ぶのです。

そして、ファンタジーにはさらに下位ジャンルが存在します。様々な下位ジャンルがありますが、最も重要なものとして「ハイ・ファンタジー」と「ロー・ファンタジー」の区別を挙げなければなりません。

 

ファンタジー

 ├─ハイ・ファンタジー

 └─ロー・ファンタジー

 

両者の定義について、ここでもWikipediaを引用させてもらいます。

 

ハイ・ファンタジーとは、現実の世界ではなく、架空の世界のファンタジーとして定義される。その架空の世界は(架空世界内では)一貫しているが、現実の世界とは異なる「法則」で成り立っている。逆にロー・ファンタジーは、現実の世界に魔法の要素が含まれていたり、架空の世界であっても(現実の世界として)合理的で親しみのある世界に魔法の要素が含まれている。

ハイ・ファンタジー - Wikipedia

 

ハイ・ファンタジーの代表例としては、指輪物語』(ロード・オブ・ザ・リングが挙げられます。(両者の区別は時に難しいと言われていますが)ロー・ファンタジーの例としては、ハリー・ポッター」シリーズが挙げられるでしょう。たしかに作中の魔法世界は高度に完成されていますが、主人公のハリーは魔法学校に入学する前は魔法界があることを知りませんでしたし、作中世界の非魔法族(マグル)はこの世に魔法なんてものがあるとは信じていません。その意味で、この作品はロー・ファンタジーに位置づけられるでしょう。

 

しかし、同じく魔法や魔物が登場するファンタジーだとしても、指輪物語ハリー・ポッターなどの作品群と、ライトノベルにおいてよくある異世界ファンタジー作品群とを一緒くたにするのは直感的に違和感を覚えませんか?

 

それもそのはず、後者については、①ここ30年くらいに、②日本において、③ライトノベル小説投稿サイトという媒体を通じて発展した、④現実世界から異世界(ゲーム世界も含む)への転生・転移・(ゲームについては)没入を特徴とするジャンルなのです。

①~③については説明は不要でしょう。④については、ロー・ファンタジーとの共通性があります。しかし、このジャンルについては、ハリー・ポッターなどの伝統的なファンタジーとの違いを認識できるほどに「型」がある程度完成されているため、むしろ伝統的にロー・ファンタジーとして語られているジャンルからは切り離した方が適当でしょう

 

そこで、私としては、まず、ファンタジーの下位ジャンルとして、「本格ファンタジー異世界ファンタジーの区別を提案したいと思います(既に提案されているかもしれませんが)。

 

ファンタジー

 ├─本格ファンタジー

 └─異世界ファンタジー

 

ここでいう「本格ファンタジーとは、主にヨーロッパの作家によって、ヨーロッパの神話・歴史等に基づいて作られた伝統的なファンタジーのことを指します(もちろん、日本人作家であっても、その影響を強く受けていればこちらに分類されます。たとえば、ラノベですが、ハリポタの影響が見られる『七つの魔剣が支配する』は本格ファンタジーに分類されるでしょう)。ライトノベルを読まない層がファンタジーと聞いて思い浮かべる作品群が属するジャンルと言えば、分かりやすいでしょうか?

なお、「本格」という用語は、異世界ファンタジーは本格的な=一流のファンタジーではない」という意味が込められている訳ではありません。適当な用語が思いつかなく、(サスペンスや警察小説などを含む広い意味の)ミステリーの下位ジャンルの一つである本格ミステリ」(昔ながらの言い方では探偵小説)から「本格」という言葉を拝借しただけなのです。もしかしたら、「伝統的ファンタジー「世界標準的ファンタジーなどと呼んでも良いのかもしれません。

 

さて、「本格ファンタジーの対には異世界ファンタジーが据えられます。既に説明したように、異世界ファンタジーは、ここ30年くらいに日本において、ライトノベルや小説投稿サイトという媒体を通じて発展したジャンルで、現実世界から異世界(ゲーム世界も含む)への転生・転移・(ゲームについては)没入を特徴としています。

たしかに初期の異世界ファンタジーは本格ファンタジーから影響を受けていたかもしれませんが、日本の文芸界において一つの流行を作り出すほどに興隆しています。ここにおいては、一定の「型」が作られるほどジャンル内での相互影響が強いため、本格ファンタジーから異世界ファンタジーを分離独立させるべきでしょう。

ところで、この異世界ファンタジーの発展により、「異世界」という言葉はこのジャンルの特徴を表す言葉となったため、本格ファンタジーにおける作中世界を「異世界」と呼ぶことは混乱の元凶となってしまいます。無用な混乱を避けるために、本格ファンタジーにおける作中世界は、「架空世界」や「別世界」などと呼んだ方が良い気がします。

なお、異世界ファンタジーの下位ジャンルにおいては、「ハイ・ファンタジー」と「ロー・ファンタジー」の区別を導入する必要はないと思われます。というのも、このジャンルは、「現実世界から異世界(ゲーム世界も含む)への転生・転移・(ゲームについては)没入」を特徴としているので、いわばロー・ファンタジーであることが前提なのです。したがって、「ハイ・ファンタジー」と「ロー・ファンタジー」の区別は、もっぱら本格ファンタジーの下位ジャンルにおいて使われるべきでしょう。

 

ファンタジー

 ├─本格ファンタジー

 │  ├─ハイ・ファンタジー

 │  └─ロー・ファンタジー

 └─異世界ファンタジー

 

 

(2)異世界ファンタジーにおける下位ジャンルの必要性

 

以上のように本格ファンタジーラノベ的な異世界ファンタジーとを切り離したのですが、後者についてはさらなる下位ジャンルが必要だと思われます。

 

というのも、異世界ファンタジーにおいては、ゲーム的(ドラクエ的・MMORPG的)な要素が含まれているもの(ゲーム的異世界ファンタジーと、そういった要素が(ほとんど)ないもの(非ゲーム的異世界ファンタジーとがあるからです。

 

異世界ファンタジー

 ├─ゲーム的異世界ファンタジー

 └─非ゲーム的異世界ファンタジー

 

まったくの余談ですが、私がこの区分の必要性に思い至ったのは、非ゲーム的異世界ファンタジーの方に対して相対的に親しみを覚えているものの、このジャンルを探すための用語がないことに気が付いたからです。

実は私はコンピューターゲームを全くやったことがなく、ゲーム的異世界ファンタジーについてはは苦手意識みたいなものがあります。冒険者って何?」「勇者って職業なの?」「HPって何?これが無くなると死ぬの?というか何の略?」「クラスアップとは?」「スキルツリー?なにそれおいしいの?」みたいな感じなのです。

つまり、ゲーム的異世界ファンタジーにおいては、作者・読者の間で一定のゲーム的世界観が共有されているため、その前提を十分に理解できていない読者にとってはあまり「ライト」(手軽)に読めないのです。その一方で、非ゲーム的異世界ファンタジーにおいては、本格ファンタジーと同様に比較的丁寧に世界観の説明がなされる傾向にあると思われます。

 

さて、私の個人的事情は措いておくとしても、「ゲーム的異世界ファンタジー「非ゲーム的異世界ファンタジーの区別は必要だと思います。というのも、「異世界への転生・転移・没入」という一定の「型」を有する「異世界ファンタジー」のうち、「ゲーム的である」という点においてさらに強固な「型」を有する「ゲーム的異世界ファンタジーと、異世界転生・転移」という手法は使うものの、むしろその他の世界観設定は自由度が高かったり、あるいは本格ファンタジーに似通っていたりする「非ゲーム的異世界ファンタジーとは、明らかに異なる特徴を有しているからです。

 

ここで「ゲーム的異世界ファンタジーというジャンルへのラベリング方法を提案したいと思います。以下のいずれかの条件に該当すれば「ゲーム的異世界ファンタジーに分類されるということにします(かなり緩やかな条件なので、相当数の作品がこちらに分類されると思います)。

 

①その異世界がゲーム世界だと明言されている場合

②その異世界の様子を見て登場人物が「まるでゲームみたいだ」と言及する場合

③以下のように明らかにゲームに影響された要素が登場する場合

a)冒険者・勇者といった職業・名称。冒険者の仕事紹介所としてのギルドの存在。冒険者の仕事としてのクエストの存在。

b)HP、経験値、スキル、ランク、レベル、クラスなどのステータス制度の存在。ステータスを管理する上で便利すぎる(つまりコンピューター端末のような)カード、バーチャル画面、音声などの存在。

 

それでは、「非ゲーム的異世界ファンタジーには、どのような特徴があるのでしょうか?

上で「非ゲーム的異世界ファンタジーは「『異世界転生・転移』という手法は使うものの、むしろその他の世界観設定は自由度が高かったり、あるいは本格ファンタジーに似通っていたりする」と書きましたが、これは異世界ファンタジー」との比較の上での話です。

「ゲーム的異世界ファンタジー」は「ゲーム的である」という点において積極的に特徴を見出せますが、「非ゲーム的異世界ファンタジー」の場合はどうでしょうか? 積極的な形で特徴を見出すことができるのでしょうか?

しかし、私が考えた限りでは、そのジャンル名が示す通り、「ゲーム的でない」というように消極的・控除的にしか定義できないと思います。ですが、これでは可哀そうではありませんか!? このままではこのジャンルを盛り立てようがありません!

ここで、この記事のサブタイトル「ゲーム的でない異世界ファンタジーを何と呼びますか?」に話が戻るのです。皆さんであれば、このジャンルに何と名前を付けますか? あるいは何と呼ぶべきか知っていますか? これこそが私がこの記事で問いたかったことなのです。もし回答をお持ちの方がいるのなら、教えていただければ幸いです。

 

最後に、もう一度、ファンタジーの下位ジャンルについての私の理解の全体像を再掲しておきます。

 

ファンタジー

 ├─本格ファンタジー

 │  ├─ハイ・ファンタジー

 │  └─ロー・ファンタジー

 └─異世界ファンタジー

    ├─ゲーム的異世界ファンタジー

    └─非ゲーム的異世界ファンタジー

 

 

2019年8月29日追記:ジャンル論について別記事を書いたので是非ご参照ください!

irohat.hatenablog.com

 

2019年8月30日追記:この「『異世界ファンタジー』の下位ジャンルの必要性」という記事と、すぐ上に掲げた「『異世界転生しないのにゲーム的な要素が登場するファンタジー』はアリなのか?」という記事に対しては、「ファンタジーのジャンル論・再考」という下記記事を書いたのでぜひご覧ください! 下記記事はこの2つの記事の訂正版のような形になっております。 

irohat.hatenablog.com

 

 

(3)非ゲーム的異世界ファンタジーのおすすめ作品

 

ここまでの記述の節々から分かると思いますが、私のお気に入りジャンルは「非ゲーム的異世界ファンタジーです。そこで、このジャンルに分類される作品を2つ、ここでおすすめしておきたいと思います。どちらも「異世界転生」という手法を使っていますが、まったくゲーム的ではありません

 

1つ目は、私のいち推し、唐澤和希『転生少女の履歴書』(ヒーロー文庫、2019年8月現在既刊8巻)です。紹介記事を書いているので詳しくはそちらをご覧ください。

irohat.hatenablog.com

 

2つ目は、小山恭平『我が姫にささぐダーティープレイ』(講談社ラノベ文庫、2019年8月現在既刊2巻)です。こちらに至っては、亜人種こそ登場しますが、魔法や魔物はほとんど皆無と言って良いほど登場しません。まさに非ゲーム的異世界ファンタジーの設定の自由度の高さを示す作品です。この作品についても紹介記事を書いているので詳しくはこちらをご覧ください

irohat.hatenablog.com

 

久追遥希『ライアー・ライアー』――最新の本格的頭脳戦ラノベここにあり!

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ライアー・ライアー


(1)基本情報

 

『ライアー・ライアー』(MF文庫J、2019年8月現在既刊2巻)

著者:久追遥希

イラスト:konomi(きのこのみ)

ジャンル:「頭脳戦」「嘘」「学園」「ラブコメ

mfbunkoj.jp

 学生同士がランクを決める決闘〈ゲーム〉を繰り広げる学園島〈アカデミー〉。俺、篠原緋呂斗は国内最難関の学園島編入試験で歴代トップの成績を叩き出し、昨年度の絶対王者・彩園寺更紗を転校初日で陥落させ、学園島史上最速で頂点に君臨する“7ツ星〈セブンスター〉”に成り上がった。

 ――ああ、もちろん、そんなのは全部嘘だ。

 大事をやらかした俺が学園島〈アカデミー〉で目的を果たすためには、嘘でもトップに君臨し続けなきゃいけない。そのためならば、俺を主人として補佐する美少女メイド 姫路のイカサマも、実は偽お嬢様だった彩園寺との共犯関係も何でも使ってやる。では、世界を制する嘘〈ゲーム〉を始めよう。 【第1巻裏表紙より】

 

 

(2)あらすじ

 

以下ではあらすじを紹介しますが、第1巻中盤あたりまでの設定と人間関係を少し詳しめに説明しますので、これを重大なネタバレと感じる方は注意してください!(もちろん、この記事を読んだ方が本作品を初めて読んでも楽しめるようには配慮するつもりですが)

 

まず、舞台となるのは学園島〈アカデミー〉。ここでは「真のエリートの養成」が掲げられ、生徒同士の決闘〈ゲーム〉が推奨されています。

この島の高校生は「星制度」の下にあり、全員が1ツ星~7ツ星のいずれかに分類されています。星が多いほど島内生活において良い待遇が受けられるため、生徒たちは星の数に執着します。この星を増やす最もメジャーな手段は、生徒同士が相手の星を奪うために仕掛ける決闘〈ゲーム〉です。

 

とある4月、島内に20ある学区のうちの四番区の高校に転校してきた主人公・篠原緋呂斗――転入試験の成績に基づき編入時に与える予定の星は1ツ星――は、入島初日、ひょんなことから同学年の少女・彩園寺更紗――島内唯一の7ツ星!――と出会い、なんやかんやで決闘〈ゲーム〉を行うことになります。

二人が行うのは「ターン制睨めっこ・強化版」片方がアタッカーとなり1分の間に相手に何かしらの感情を顔に出させたら負けとなる睨めっこを交互に繰り返すゲームです。しかし、この島の星制度は「より星の多い者により多くの特権を与える」ものです。決闘〈ゲーム〉においてもこれは例外ではありません。

ここで彩園寺は、「数値管理:Lv7」というアビリティを使い、「相手の攻撃ターンを十分の一に制限」します。つまり、彼女の攻撃ターンは1分にもかかわらず、彼の攻撃ターンは6秒しかないのです。さらに彼女は「創造:Ex」というアビリティを起動し、そこで創り出したを繰り出し彼から表情の変化を引き出そうとします。内心の感情と表情を完全に切り離すことができるという特技を持つ彼ですが、いくらなんでも絶体絶命―――――と思いきや、棚ぼた的に彼は勝利を獲得します

その結果、彩園寺は7ツ星から6ツ星に陥落し、彩園寺から星を奪った彼は(編入手続の前に決闘を行ったので星ゼロから)1ツ星、しかも色付き星〈ユニークスター〉持ちになります。この色付き星とは、島内に十数個しか存在が確認されていない星で、一つひとつに特殊効果が付与されています。

 

ところで、篠原が転校初日に負かした彩園寺は、島内唯一の7ツ星――入学以来全戦全勝の「女帝」――というだけではありませんでした。彼女は学園島の創始者の家系のご令嬢であり、学園島総責任者の孫娘なのでした。そんな彼女を1ツ星に過ぎない篠原が転校初日に負かしたのですから、彩園寺家の面目は丸潰れです。社会的影響の絶大な彩園寺家ですから、篠原は社会的に抹殺されかねません

そこで、篠原を利用してとある野望を叶えるために彼を転入させた四番区の学長は、ある提案をします。彩園寺から奪った赤の色付き星――データ上での嘘を成立させる効果を持つ――を使って、「実は篠原緋呂斗は編入試験で最高得点を叩き出した異端の天才の7ツ星だった」と嘘をつくのです。そうすれば、彩園寺家のメンツも保たれますから、彼はこの島を去らずに済みます。とある目的のために学園島に転入してきた彼は、この提案を受け入れることになります。こうして彼は、1ツ星にもかかわらず7ツ星を名乗る嘘つき〈ライアー〉となりました。そして彼は、この嘘を貫き通すために、赤の星を奪われないために、島内の人間を騙し続けることを決意するのです。

 

さて、その翌日、なぜか彩園寺が篠原に接触してきます。曰く、「私の弱みを握ってどうするつもりなのか? なぜまだ秘密をバラしていないのか?」と。篠原には何のことかわかりません。しかし、彼女は自爆します。「知っているんでしょう――あたしが、本当は○○って!!」(○○は作品を読んでからのお楽しみ!)。どういうことかというと、「赤の星」を奪われた者は、ついていた嘘が星を奪った者に対してバレるというのです。彼女もまた嘘つき〈ライアー〉だったのです。

 

期せずして彩園寺の秘密を知ってしまった篠原は、彼女と秘密裏に共同戦線を張ることになります。なぜなら、篠原が負ければ彩園寺の嘘がバレる(赤の星が他人に渡れば篠原の嘘も彩園寺の嘘もバレてしまう)、その結果、「彩園寺が実は○○」という嘘がバレれば四番区学長が篠原を守る理由がなくなり彼は島にいられなくなる、というように、2人の嘘が奇妙に絡み合ってしまったからです。

 

こうして篠原は彩園寺と裏で協力しつつ、また学長の用意した〈カンパニー〉と呼ばれるイカサマ工作補佐チームの補助を得て、次々と挑まれる決闘〈ゲーム〉に臨むことになります。

しかし、いくら〈カンパニー〉の補佐を得ても、彼の戦いは困難を極めます。なぜなら、彼はデータ上は7ツ星ですが、権限上は1ツ星なのです。つまり、決闘においてはある程度の健全性を確保するために、決闘の申請者――ランクの低い側――がその決闘内容を決めるのですが、彼はデータ上は最上位の7ツ星なので決闘内容を決められません。さらに、高ランクであればあるほど決闘に際して相手に優位に立てるアビリティについては、彼の権限は1ツ星なので、1ツ星相当のアビリティしか使えないのです。しかも嘘を貫き通すためには一敗も許されません。こんな状況は、彼曰く、クソゲーなのです。

 

『ライアー・ライアー』は、そんな彼が、彩園寺や〈カンパニー〉と協力しつつ、また彼の持ち前の演技力(と後々に発揮される発想力)で嘘を貫き通そうと奮闘する本格的頭脳戦(+ラブコメラノベなのです!!

 

 

(3)おすすめポイント――最新の本格的頭脳戦ラノベここにあり!

 

すでに上のあらすじ紹介で分かったと思いますが、『ライアー・ライアー』のおすすめポイントは、本格的頭脳戦をテーマとしている点です。その考え抜かれたゲーム設定(敵味方問わず)登場人物の鮮やかな戦い方には感嘆してしまいます!

 

もしかしたら、上記のあらすじを読んだ人の中には、イカサマをしてルール内で戦わないのなら、本格的頭脳戦の看板倒れじゃん」と思う方もいるかもしれません。

が、ご安心ください。なぜなら、特に高ランクな相手ほどイカサマが通用しなくなり、そのような状況下において、実質は1ツ星の篠原はむしろ苦戦を強いられる構造となるからです。ここで演技力をはじめとする彼の才能が発揮され、本格的頭脳戦が繰り広げられるのです!!

 

【追記】第2巻の感想記事を書いたのでぜひご覧ください! 未読の方が読んでも大丈夫なように配慮したつもりです!

irohat.hatenablog.com

 

 

(4)関連おすすめ作品

 

もしかしなくとも、『ライアー・ライアー』の読者は既に読了済みかもしれませんが、関連おすすめ作品として、同レーベルの衣笠彰悟『ようこそ実力至上主義の教室へ』(MF文庫J、2019年8月現在既刊11巻)を紹介します。こちらも高校を舞台に本格的頭脳戦が繰り広げられる熱いストーリーとなっております! ようこそ実力至上主義の教室へ』が好きな人は『ライアー・ライアー』も好きであり、逆もまた然り、というのは間違いありません! どちらかしか読んでない方はもう一方の作品も手に取ってみることを是非お勧めします!! なお、ようこそ実力至上主義の教室へ』は、2019年9月25日に番外編となる第11.5巻が発売されます!

youkosozitsuryoku.com

 

石之宮カント『始まりの魔法使い』――原始の時代で魔法の仕組みを解明しろ!

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始まりの魔法使い

 

(1)基本情報

 

『始まりの魔法使い』(富士見ファンタジア文庫、2019年8月現在既刊5巻)

著者:石之宮カント

イラスト:ファルまろ

ジャンル:異世界転生ファンタジー」「魔法」「ドラゴン」

fantasiabunko.jp

 かつて神話の時代に、ひとりの魔術師がいました。彼は、“先生”と呼ばれ、言葉と文化を伝え、魔法を教えました。そんな彼を人々はこう呼びました――始まりの魔法使い、と。

 そんな大層な存在ではないのだ――「だから火を吹かないで!」「ごめんごめん。私にとってはただの息だからさ」竜として転生した“私”は、エルフの少女・ニナとともに、この世界の魔法の理を解き明かすべく、魔法学校を建てることにした。そこで“私”は、初めての人間の生徒・アイと運命の出会いを果たし――。これは、永き時を生きる竜の魔法使いが、魔術や、国や、歴史を創りあげる、ファンタジークロニクル。 【第1巻裏表紙より】

 

 

(2)あらすじ

 

主人公は天寿を全うした後、異世界に転生します。が、そこでの姿はドラゴンでした。

 

母竜に育てられ10年、巣を追い出された彼は独り立ちをします。そこで出会ったのは、木々を魔法で操るエルフ・ニナ、そして文字も言葉もない原始的な生活をする村から生贄として捧げられた人間の少女・アイ

 

前世で魔法を研究しつくした(そしてそんなものはないと結論付けた)オカルト研究家であった彼は、木々を操るエルフの魔法や、ドラゴンである自身の口から炎が出る現象に興味を持ちます。その結果、この原始の世界で、魔法と文明を研究・教育し普及させるために学校を作ることになるのですが、魔法を操るエルフでさえもその体系化はなしておらず、彼はほとんど一から魔法の仕組みを解明してゆくことになります

 

個人的に面白かったのが魔法陣に関するエピソードです(第2巻)。皆さんは何のために魔法陣が描かれると思いますか? なんとなく、召喚魔法の際に使われるヤツというイメージではありませんか? しかし『始まりの魔法使い』では、魔法陣の効用について、なるほどと思わせる再解釈がなされています

 

 

(3)おすすめポイント――あなたは「ドラゴン」になったことがありますか?

 

ドラゴンに転生した主人公は、ほとんど永遠とも言えるほどの寿命を有することになります。その一方で、家族も同然の人間の教え子たちはせいぜい数十年しか生きられません。章や巻が変わるごとに数年~数百年とテンポよくストーリーは進みますが、人間の方は目まぐるしく世代が交代してゆき、彼は数多の出会いと別れを経験することになります。

 

主人公の彼は、姿かたちこそドラゴンですが、心は前世からの人格を引き継いでいます。それゆえに、かつて人間だっただけに、彼は人間との関わり方に苦悩することになります。

 

この物語の半分が「ドラゴンにして始まりの魔法使い」としての彼の英雄譚であるとすれば、もう半分は「人間」としての喜びと苦悩に溢れた人間らしいストーリーとなっております。

 

このほろ苦さは、もしあなたが人間のまま普通に生活していれば経験することはできません。この作品を読んで、もし自分だったら、と考えてみてください。意外と深淵な問題がそこにあるのかもしれません。

 

 

(4)関連おすすめ作品

 

その世界においてある程度は魔法が体系化されているものの、試行錯誤しながら「未発見」の魔法の仕組みを解明してゆく異世界転生ファンタジーという点において、唐澤和希『転生少女の履歴書』(ヒーロー文庫、2019年8月現在既刊8巻)を関連おすすめ作品として挙げさせてもらいます。この作品については過去に紹介記事を書いたのでそちらも参照してみてください!

irohat.hatenablog.com

 

女の子が主人公のアニメおすすめ10選‼

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花咲くいろは


この記事では、選りすぐりの「女の子が主人公のアニメ」10作品紹介したいと思います。オリジナル多め最近の作品多め青春系多めお仕事系多めアイドル系なし萌え系(たぶん)なし、となっております。前置きはこのくらいにして、早速ご覧ください!!

 

 

1.花咲くいろは(2011年)2クール

P. A. WORKSのお仕事シリーズの第一弾で、シリーズ構成は岡田磨里さんです。主人公の女子高生、緒花(おはな)は、母の夜逃げにともなって祖母が女将を務める実家の旅館に引っ越しここで働くことになります。そこで彼女は新たな人に出会い、また過去・未来と向き合うことになります。友情、恋、仕事、将来に悩む16歳の少女たちの青春の痛みと成長の物語は、きっとあなたの心をつかんで離さないはず。

原作:オリジナル

制作:P. A. WORKS

あらすじ 突然の夜逃げ、突然の告白、そして突然の別れ――。今までとは違う自分になりたかったという夢は、急に現実となりました。私、松前緒花の平凡な日常は1日にしてドラマチックな展開を迎えたのです。通い慣れた、それでいてあまり愛着のない街を出て、話したことや会ったこともない祖母の元で暮らすのです。

 大正浪漫あふれる温泉旅館・喜翆荘(きっすいそう)。そこで出会う人たち。花の芽が地上に出て新たな世界を知るように、私も、今までとはまったく違う、新しい生活を始めます。それは辛いことかもしれません。でも、めげても、くじけても、泣きじゃくっても明日は来るんです。だからこそ私は頑張りたいんです、そして輝きたいんです。太陽に導かれるよう咲く花のように、いつか大輪の花を咲かせられるように……。

  「TVシリーズ 花咲くいろは」公式サイト

 

 

2.新世界より(2012年)2クール

悪の教典』などで有名な貴志祐介さんが原作者で、原作小説『新世界より』は日本SF大賞を受賞するほど大変評価の高いサイエンス・ファンタジーです。舞台は現在の文明が崩壊してから1000年後の日本、人々が念動力を使えるようになった時代です。最初の数話は不可思議で説明のない出来事が起こるかもしれません。しかし物語は加速度的に面白くなってゆきます。すべてを見終わった後、番組トップページを見れば愕然とします。そういうことだったのか、と。

原作:貴志祐介講談社文庫、全3冊)

制作:A-1 Pictures

あらすじ 舞台は未来。主人公は5人の少年少女たち。物語は、彼らが“呪力”と呼ばれる念動力を学ぶ上級学級へと進む12歳の幼少期から始まる。5人はそこで、人類の血塗られた歴史を知ると共に、命を賭けた壮絶な冒険へと駆り立てられることになる。やがて14歳という青春時代を迎えた彼らには、より過酷な試練、胸を焦がす衝撃的な出来事が待ち受けている。そして、26歳の夏。予想だにしなかった未曾有の惨劇が人類を襲い…!?

 呪力という神の力を手に入れた人間、人間に劣らぬ知性を持った異種族=バケネズミ、さらには歪んだ進化を遂げた異業の怪物たち。様々な勢力や思惑が入り乱れる先の読めないストーリーは、主人公たちが12歳、14歳、そして26歳と時を重ねていく姿を描き、3部作という壮大なスケールで展開していく。さらに、スリリングな物語の奥には、生命の根源に関わる深遠なテーマも潜んでいる。

 新世界より|テレビ朝日

 

 

3.SHIROBAKO(2014年)2クール

P. A. WORKSのお仕事シリーズ第二弾で、監督は水島努さん、P. A. WORKSの代表作と名高い作品です。アニメーション制作会社を舞台とするお仕事アニメで、アニメはいかにして作られているのかを知ることができるという点で勉強にもなります。SHIROBAKOは5人の女の子がメインキャラクターとして据えられていますが、それに劣らないくらい出番があるおじさんキャラ達も魅力的です。特に、木下監督は、期限も守れず逃げ出そうとするくらいの軟弱っぷりですが、アニメーション制作にかける情熱は人一倍で、その姿を見れば心が動かされるはず。2020年春に完全新作映画が公開予定。

原作:オリジナル

制作:P. A. WORKS

あらすじ シロバコとは映像業界で使われる白い箱に入ったビデオテープのことでありひとつの作品が完成した際に、制作者が最初に手にすることが出来る成果物である。イラストや写真等で華やかに作られている販売用パッケージと比べれば、白い箱に入っただけのテープは地味かもしれない。しかし、そこにはクリエイター達の想いが詰まっている。

 この物語は、5人の夢追う女の子たちを中心に、シロバコの完成を目指し奮闘するアニメ業界にスポットを当て日々起こるトラブルや、クリエイティブな仕事ゆえに起こる葛藤や挫折、集団で作るからこそ起こる結束や衝突といったアニメ業界の日常を描いた群像劇作品である。

 そして、5人が共に目指した夢への挑戦。その先に見出す希望へと続くサクセスストーリー。そう、アニメの今がここにある・・・

  TVアニメ「SHIROBAKO」公式サイト

 

 

4.サクラクエスト(2017年)2クール

P. A. WORKSのお仕事シリーズ第三弾です。舞台はさびれた観光地を有する間野山市。主人公の20歳女子、よそ者の木春由乃(こはるよしの)がここにやって来て町おこしに取り組みます。SHIROBAKOもでそうでしたが、メインキャラクターとなる女の子たちの年齢設定が20歳そこそこと絶妙です。少し年齢を下げて女子高生をメインキャラクターに据えれば必ずと言って良いほど恋愛要素が絡みがちですが、このサクラクエストは社会人としてお仕事一筋で、それでいて若者ならではの葛藤を抱えつつ、地域の課題、自分の課題と向き合ってゆきます。

原作:オリジナル

制作:P. A. WORKS

あらすじ 主人公、木春由乃(こはるよしの)は、田舎から上京し、短大の卒業を間近に控えた、いわゆる普通の20歳の女の子。東京には何でもあって、きっと特別な何かになれるのではないかと夢みて、30社以上の面接を受けるも、未だに内定はない。銀行の残高は980円。このままでは、田舎に帰って普通のおばさんになってしまう・・・と葛藤していたそんなある日、以前、一度だけ働いたことがある派遣事務所から、「地域の町おこしの一環で国王をやってほしい」との依頼がある。よくわからないが軽い気持ちで依頼先の間野山市に向かうことにした。一時的に日本中でブームになるも、バブル崩壊に合わせて今ではほとんど見ることの無くなったミニ独立国。間野山市は、今なおミニ独立国を続けている、廃れた残念観光地だった。そんなこんなで、由乃の“普通じゃない”お仕事生活がはじまった。

TVアニメ「サクラクエスト」公式

 

 

5.宇宙よりも遠い場所(2018年)

この作品は2018年で最も評価の高いアニメではないでしょうか。このアニメは「宇宙(そら)よりも遠い場所」、すなわち南極に行こうとする4人の女子高生たちの物語です。女子高生が南極を目指すなんて非現実的なストーリーかもしれませんが、ここで描かれるキャラクターはリアルな女子高生たちばかりです。「お手々を繋いで踊ればみんな仲良し」なんてものは幻想だとこのアニメは教えてくれます。彼女たちはそれぞれに、青春時代ゆえの不安感や親子関係・友人関係における葛藤を抱えており、物語を通じて少しずつ成長と変化を重ねてゆきます。優れた物語と演出があなたを待っています。ハンカチを用意して視聴することをお勧めします!

原作:オリジナル

制作:マッドハウス

あらすじ そこは、宇宙よりも遠い場所――。何かを始めたいと思いながら、中々一歩を踏み出すことのできないまま高校2年生になってしまった少女・玉木マリことキマリは、とあることをきっかけに南極を目指す少女・小淵沢報瀬(こぶちざわしらせ)と出会う。高校生が南極になんて行けるわけがないと言われても、絶対にあきらめようとしない報瀬の姿に心を動かされたキマリは、報瀬と共に南極を目指すことを誓うのだが……。

TVアニメ「宇宙よりも遠い場所」公式サイト

 

 

6.ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン(2018年)

このアニメは、川原礫ソードアート・オンライン」シリーズのスピンオフ作品に位置づけられますが、このSAOシリーズを読んだり見たりしたことがない人でも楽しめます。主人公の女子大生・小比類巻香蓮は、180cmを超える長身にコンプレックスを持っていましたが、VRMMORPG「ガンゲイル・オンライン」の中で念願の低身長アバターを手に入れました。このゲームは、銃器で戦う世界をテーマとしており、彼女はここで低身長を活かした凄腕プレーヤーとして活躍してゆきます。メインとなるストーリーは「スクワッド・ジャム」と呼ばれるチーム戦の模様となるのですが、これには思わず手に汗握らずにはいられません! 銃での戦いに魅了されます!

原作:時雨沢恵一電撃文庫、2019年8月現在既刊7巻)

制作:Studio 3Hz

あらすじ 銃と鋼鉄の世界《ガンゲイル・オンライン》でソロプレイを満喫している女性プレイヤー・レン。可愛いものが大好きな彼女は全身をピンクの装備で統一し、コツコツと地道にプレイを重ね、実力をつけていた。そしてとあることからPK――プレイヤー狩りの面白さに目覚めたレンはPKにのめり込み、ついには「ピンクの悪魔」と呼ばれるまでになる。そんなレンは美人でミステリアスなプレイヤー・ピトフーイと出会い、意気投合。彼女に言われるがまま、チーム戦イベント《スクワッド・ジャム》に参加することになる。

TVアニメ ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン

 

 

7.ハッピーシュガーライフ(2018年)

本作品のキャッチコピーは「戦慄の純愛サイコホラー」ですが、この看板に間違いはありません。主人公の女子高生、さとうは8歳の少女、しおと出会ってから変わりました。しおを愛し、二人の甘い生活を守ることがさとうのすべてなのです。この「ハッピーシュガーライフ」を脅かす者にさとうは容赦しません。たとえ人を殺めようとも……。さとうはもちろんですが、この作品には変人・変態が数多く登場し、見ていて飽きません。今度は誰がさとうの毒牙に掛かるのか毎話ゾクゾクしながら見ることができます。最終話のあの目にはゾクッとします……

原作:鍵空とみやき(ガンガンコミックスJOKER、全10巻)

制作:Ezo’la

あらすじ 誰も愛したことがなかった少女・松坂さとう。そんなさとうが初めて愛した少女・神戸しお。寄り添う二人の少女、甘く幸せな生活。それを脅かすものを――松坂さとうは許さない。愛のためなら脅迫も監禁も殺人さえも。甘くて痛い、真実の純愛サイコホラー。

TVアニメ「ハッピーシュガーライフ」公式サイト

 

 

8.やがて君になる(2018年)

いわゆる百合作品です。しかも当代随一の呼び声もあります。百合作品なだけあって「異性を好きになる」ことの当然さからは距離が置かれ、反対に、登場人物のセリフや独白による心情描写の丁寧さに目が惹かれます。サブタイトルの秀逸さにも唸ってしまいます。また、このアニメは、心情描写や未来暗示などの演出がかなり優れているため、いろいろ考察しながら楽しめます(アニメ感想(2018秋)-やがて君になる カテゴリーの記事一覧 - アニメのおすすめなどを語るブログ 各話視聴ごとにこの考察サイトも参考にしてみてください)。どこか歪んだ「好き」や「特別」を抱える登場人物たちの心理を読み解いてみてください。

原作:仲谷鳰(電撃コミックスNEXT、2019年8月現在既刊7巻)

制作:TROYCA

あらすじ 人に恋する気持ちがわからず悩みを抱える小糸侑は、中学卒業の時に仲の良い男子に告白された返事をできずにいた。そんな折に出会った生徒会役員の七海燈子は、誰に告白されても相手のことを好きになれないという。燈子に共感を覚えた侑は自分の悩みを打ち明けるが、逆に燈子から思わぬ言葉を告げられる――「私、君のこと好きになりそう」

TVアニメ「やがて君になる」公式サイト

 

 

9.RELEASE THE SPYCE(2018年)

キャラクター原案は「ゆるゆり」のなもりさん、原案・シリーズ構成は「結城友奈は勇者である」のタカヒロさんが務めています。「師匠と弟子の絆」「人から人に受け継がれていくもの」をテーマとする女子高生スパイアクションです。鬱展開で有名なタカヒロさんですが、やはりと言うべきか、第10話放送終了後に、Twitter上で「#おのれタカヒロ」が話題になりました。第1話から内通者の影がチラつきますが推理しながら見てみてください!

原作:オリジナル

制作:Lay-duce

あらすじ 源モモは空崎市に住む女子高生。平凡な日々を過ごしていた彼女はとある事から私設情報機関「ツキカゲ」にスカウトされる。ツキカゲはどこの国にも属さず平和を影から守る正義のスパイ組織だった。若い女性にしか効かないが能力を上昇させる特製スパイスをはじめ数々の秘密道具、鍛え上げた心身を武器に彼女達は戦う。素人だったモモの面倒を見るのは高校の先輩でもある半蔵門雪。ツキカゲは師弟制度があり先輩が後輩を鍛えて技術を継承していくのだ。今、大都市である空崎には犯罪組織「モウリョウ」がその魔手を伸ばしていた。モモは自分を取り巻く家族や友人、商店街の人達を守るため、仲間たちと力をあわせて悪を討つ。

TVアニメ「RELEASE THE SPYCE」公式サイト

 

 

10.荒野のコトブキ飛行隊(2019年)

監督は水島努さんで、いわゆる3DCGアニメです。女の子がレシプロ機第二次世界大戦期の戦闘機をイメージしてもらえば大丈夫です)に乗って戦闘を行う本格空戦アクションです。戦闘機のモデリングや作動音、飛びっぷりにはかなり力が入れられています。レシプロ機マニア向けアニメでもありますが、まったく知らないという人でも楽しめます。特にキャラクター同士のテンポの良い会話や、主人公キリエを始めとする登場人物のキャラはかなり魅力的です!

原作:オリジナル

制作:GEMBA

あらすじ 一面荒野が広がる世界、“イジツ”――。ある日、世界の底が抜け、色々なものが降ってきた。中でも“ユーハング”がもたらしたものの影響は大きく、とりわけ飛行機の存在によって人々の生活は激変。以降、世界の潮流は空へと移っていった。時は流れ――、空には商船とその用心棒、荒くれ者の空賊など、さまざまな人々が飛び交っていた。オウニ商会の雇われ用心棒“コトブキ飛行隊”は、空を飛ぶことが大好きな、女の子だけのスゴ腕パイロット集団。彼女たちはお客様の大事な積み荷を守るため、今日も隼とともに大空を翔けてゆく。

TVアニメ『荒野のコトブキ飛行隊』公式サイト

 

 

以上が私のおすすめする女の子が主人公のアニメです! ぜひご覧ください!!

 

なお、2019年秋以降に放送予定女性が主人公のライトノベル原作アニメをまとめた記事もありますので併せてご覧ください!

irohat.hatenablog.com

 

光源氏計画エンディングの倫理的許容性を考える――「養父と養娘の結婚」問題

 

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若紫

(1)そもそも「光源氏計画」とは?

 

そもそも「光源氏計画」とは?について、以下のサイトが上手くまとめてあったので引用します。

自分が慕う年下の人物を自分にとって理想的な「大人の女性」に育てようとする計画のこと。そんな思惑や様子を描いた作品に付けられるタグ。 元ネタは世界最古の長編小説と言われる紫式部の古典『源氏物語』。 義母の藤壺を愛していた光源氏が、藤壺と似ていた美少女・若紫に惚れ、彼女を自ら養育して美しい女性に成長させた。そしてある夜、二人は結ばれ、光源氏の妻「紫の上」となった。 〔中略〕現代では主に自分を慕う子供や後輩を、自分の理想の立派な大人に育てる意味で使われる。 その慕う相手は自分にとって年下で、ほとんどが男が年下の女子に対してすることに使われ、年上女性が年下男子に対しての場合、「逆光源氏計画」と呼ぶ。

 光源氏計画 (ひかるげんじけいかく)とは【ピクシブ百科事典】

 

なお、便宜上、ここからは光源氏計画における年上男性を「養父」、年下の女子を「養娘」と呼ぶことにします。

 

ところで、光源氏の場合は、そもそも若紫と結婚することを意図として彼女を養育し始めたのですが、そうではなく、養娘と結婚することを当初から意図しなくても、結果的に結婚した場合もこの記事においては光源氏計画エンディング」に含め、これら両方を考察対象にしたいと思います。

 

さて、ライトノベルや漫画などのフィクションにおいては、この手の光源氏計画エンディングが散見されますが、私自身はこの手の作品を読んだとき直感的にどう思ったのかというと、「う~ん。せいぜいセカンドベストかなあ」でした。つまり、ベストなエンディングは「養娘が同世代の他の男と結婚するのを涙ながらに見送る」であり、光源氏計画エンディングはそれに及ぶことはない、と考えています。とはいえ、「こんなのありえない!!作者は頭がおかしい!!」とまで強く否定するつもりはありません。「エンディングの一つとしてはアリっちゃアリなのかなあ」みたいな気持ちなのです。

 

そこで、このような中途半端な気持ちを分析するために、この記事を書こうと思ったのです。

 

 

(2)法律から考える光源氏計画の社会的許容性

 

光源氏計画エンディングに対して一定の忌避感が生まれるのは、そこに何らかの道徳的・倫理的な問題があるのではないか?と直感的に感じてしまうからだと思います。

 

それでは、ここでいう道徳・倫理とはいったいなんなのでしょうか? これを特定・定義する作業は本来難しいことなのかもしれませんが、今回は法律という道具が使えそうです。

 

「法は倫理の最小限」という言葉があるように、社会に数ある規範(ルール)のうち、最低限度の倫理規範を国家権力によって強制的に守らせようとする手段が法律である、という考え方があります。言い換えれば、法律はその社会で広く合意が得られている倫理規範なのです。たとえば、「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」と殺人罪について定める刑法199条は、「人を殺してはならない」という社会倫理規範の現れだと言えます。

 

翻って光源氏計画エンディングについて考えてみましょう。

 

まず、実の親子については、法律は当然に結婚を禁じています。民法734条1項は、「直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない」と定めています(太字部分が関係する箇所です)。要するに、この規定の太字部分は、親子間や祖父母孫間といった上下に血のつながりのある者同士の結婚を禁じています。なぜこのような規定があるのかと言うと、優生学上の理由社会倫理上の理由があると言われています。

 

それでは、血縁上(生物学上)のつながりのない養親子ではどうでしょうか? この場合、養父と養娘が結婚して子供をもうけたとしても優生学上の問題は生じません。しかし、「生みの親と育ての親」という言葉があるように、親子関係は、血縁関係のみならず養育関係によっても特徴づけられます

 

この点、民法736条は、「養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない」と定めています(太字部分が関係する箇所です)。要するに、この規定は、養親子関係にある者同士は結婚してはならない、と言っているのです。この養親子間には血縁上のつながりはありませんから、この禁止理由は社会倫理上の理由のみに求められます。とすると、この社会においては、「(血縁関係の有無にかかわらず)親子関係=養育関係にある者同士は結婚してはならない」という倫理規範があると言えそうです

 

以上をまとめると、この日本社会においては、光源氏計画エンディングに対するアンチテーゼとしての社会倫理規範が存在することが分かりました。

 

 

(3)それでも光源氏計画エンディングは擁護可能か?

 

ここまでの一応の結論は、「光源氏計画エンディングは反倫理的である」というものでしたが、それでもなおこれを擁護すべき理由はあるのでしょうか?

 

私としては、いくつかの観点からこれを擁護できる可能性があると思います(擁護すべき、とまでは強く言える自信はありませんが)。

 

第一に、現実における社会倫理規範の存在を認めつつ、光源氏計画エンディングはあくまでフィクションだとして割り切る方法があります。しかし、この方法では、創作上のことだから放っておいてくれと社会に主張できる一方、社会の側からは社会倫理規範に反する作品だとラベリングされてしまいます。そこで、第二の方法が考えられます。

 

第二は、光源氏計画エンディングに対するアンチテーゼとしての社会倫理規範の強度や実在性に疑義を呈する方法です。

光源氏計画エンディングは賛否の分かれる方法ですが、たしかに一定数の賛成派もいるのです。そこで、「一定の賛成を集められるとすれば、そもそも問題となる社会倫理規範は存在しないのではないか? 存在するとしても強い確証をもってそれを主張することはできないのではないか?」という疑問が生まれるのは当然です。

そもそも社会倫理規範は流動的ですし、同様に法律の内容も一定不変ではありません(たとえば、戦前戦後で家族制度は大きく変わりましたし、最近では同性婚の実現可能性だってあります)。

また、「親子は結婚してはならない」という規範の中核として想定されているのは実親子であって、規範の周辺部である養親子(疑似親子)については流動的であり得るとも言えそうです(たとえば、近親婚のうち、いとこ婚の可否は国・地域や時代によって変わります)。

 

 

(4)おわりに

 

ここまでは、光源氏計画エンディングの許容性について、その形式的理由――この社会にそれを禁止する規範はあるのか――しか考察できませんでした。その規範の背景にある実質的理由――その規範はなぜ存在するのか――にまでは踏み込めませんでした(むしろ多くの読者はこちらの議論を期待してこの記事を読み始めたのではないかと思います)。が、このような論法もあるのだということを知って頂ければ、(賛否どちらの立場にせよ)光源氏計画エンディングに対する視点が一つ増えたのではないかと思います。

 

異世界転生系ラノベのアイデアを考えたので誰か書きませんか?(後編)――「宗教」で型を破れ!!

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セカイ系

 

この記事は、昨日公開した記事の続編となっています。異世界転生系ラノベのアイデアを考えたので誰か書きませんか?」の前後編あわせた全体の目次は以下の通りです。

(1)異世界転生ファンタジーにおける「型」と「その破り方」

(2)メタ方面における「型破り」の可能性

(3)具体的アイデア

(4)おわりに

 

(1)(2)前編の記事(下記リンク参照)に、(3)(4)後編の記事に載せています。前編を読まなくても後編の趣旨は理解できると思いますが、読んで頂ければ管理人は喜びます!!

irohat.hatenablog.com

 

 

(3)具体的アイデア

 

さて、(1)(2)と、前置きが長くなりましたが、ここで提案して誰かに小説化してもらいたい異世界転生系ラノベのアイデアとは、この「メタ方面への型破り」に属するものです。

 

しかし、「作家である主人公が小説世界に入り込み、その世界を書き直してゆく」という手法は『異セカイ系』で既に使われてしまいました。そのため、(異なるキャラ設定やストーリー展開であっても)同じ手法で書いたとしたら、二番煎じとなってしまいます。

 

そこで私が提案したいのは、異世界転生ファンタジー宗教視する現実世界」を舞台とする方法です。

 

とはいえ、これはまったく独自の観点に基づくものではありません。異世界転生と宗教との関連性を指摘する声は既にあります。たとえば、以下のサイトで言及されています。

p-shirokuma.hatenadiary.com

sinkingdays.blog.fc2.com

 

しかし、彼らはそれをテーマとして小説化しようとする気はないようです。とすれば、ここが狙い目ではないでしょうか?

 

もっとも、実は「異世界転生ファンタジーを宗教視する現実世界」のアイデアは、小説投稿サイトでいくつか小説化されています(私がリサーチした限りでは、書籍化出版されているものはないと思います)。しかし、ざっと読む限り(2本しか見つけられなかったのですが)、ショートショート程度の分量で、しかもあまり設定が作り込まれていませんでした。

 

そこで、異世界転生ファンタジーを宗教視する現実世界」を舞台として、設定をきちんと作り込めば、面白いものができるのではないかと思ったのです(と、言うより、私自身がそういった小説を読みたいだけなのですが)。

 

それでは、ここにおける「作り込んだ設定」とは何か。それというのは、異世界転生ファンタジーにおける『型』『お約束』『あるある』を宗教化・教義化・体系化すること」です。

 

試みに具体的に掘り下げてアイデアを出してみます(【注意!】ここから管理人の妄想が爆発します!ご笑覧ください!

 

①宗教化されるようになった経緯について

身近にありすぎると神聖さや特別さが薄れるため、異世界ファンタジーが現に小説化され続けている状況での宗教化は難しいと思います。ですので、異世界ファンタジーの興隆が終わってその書き手が絶滅して以降、つまり今から50~100年後くらいが舞台としては良いのではないでしょうか(しかし、こうなると少し近未来SF小説っぽくもなりますね)。

その時代においては、かつて興隆した異世界転生ファンタジーが見直されるようになり、実はこれは死後の世界を記録したものではないかと再解釈されます。そして、その異世界への転生を望む者たちがこれを宗教化し信仰するようになります

 

②宗教名について

いささか安直ですが、便宜上、異世界転生教(異転教)」と仮に名付けておきます。小説化するとすれば、もっと中二病方面でこだわった方が良いのかもしれません(たとえば、ゾロアスター教拝火教とも呼ばれています)。

 

聖典について

宗教であれば、「聖典」が必要になります。しかし、「ハイ・ファンタジーといえば『指輪物語』」「魔法学園ファンタジーといえば『ハリー・ポッター』」と言えるように、異世界転生ファンタジーというジャンルにおいて、唯一無二、空前絶後と言えるほどのカリスマ作品はないように思われます。

そこで取り得る策は二つあると思います。一つは、最初期の人気作品である川原礫ソードアート・オンライン』を聖典とする方法。もう一つは、聖典は存在するはずだが未だ発見されていない」という方法

小説化するにあたっては、このどちらかを選ばなければならないという訳ではありません。むしろ、それぞれを宗派として並存させた方が良いでしょう。すなわち、前者は「最初期の人気作品=聖典(第一聖典)」「生殺与奪の権が握られ現実世界への無事な帰還の可能性が制限された世界ならゲームであっても異世界と言って構わない」とする宗派(SAO派)とラベリングすることができます。それに対して後者は、「SAOは『ゲーム世界』を異世界としておりむしろ異端である。その一方で、聖典とすべき作品が発見されている訳でもない。ひとまずは、第二聖典を読解しこれの教義化を深めるべきである」と主張します(第一聖典の発見を目指すと同時に、第二聖典を通じて教義を研究することから、仮に「探究派」と名付けておきます)。

さて、何の断りもなしに「第一聖典」「第二聖典という言葉を使ってきましたが、これはイスラム教における「コーラン」と「ハーディス」の関係と同様です。つまり、第一聖典を教義の基礎としつつ、その解釈の補助として第二聖典が用いられるのです。SAO派においては、SAOが第一聖典、その影響を受けた後続の他作品が第二聖典と見なされます。反対に、探究派においては、SAOもその他の作品も等しく第二聖典に位置づけられ、第一聖典は未だ発見されていないという立場です。

ここまで、SAO派、探究派という二大宗派を作ってきましたが、他にも中堅宗派として「転スラ派」「賢孫派」などもあってよいと思います。また、探究派が第二聖典とみなす作品群を第一聖典とする宗派もありだと思います(複数の第一聖典を崇拝することから「複典派」と名付けておきます)。

 

④宗派対立、正統と異端について

③で挙げた聖典を巡る宗派対立のほか、細かいところではもっと「正統」と「異端」の紛争を繰り広げ得ると思います。たとえば、以下のような点において対立があるのではないでしょうか。

  • 転生(人格を維持した別の人物への生まれ変わり)だけでなく転移(人格も外見も維持する)も転生に含めるのか。
  • 最上の転生方法は何か(トラック事故か、通り魔か、など)。
  • 事故や他殺ではなく、自殺や老衰や病死で異世界に転生することはできるのか。
  • ゲーム世界も異世界に含めるのか。
  • 転生先は人間が正統にして最上なのか、魔王や魔物や剣などは異端なのか。
  • たとえ転生時にチート能力を授けられなくとも、少なくとも現世の知識でチートするために現世で研鑽を積んでおくべきか。
  • 異世界に転生して最強の能力を手に入れたのに、世界を救うことなくスローライフを送ることは許されるのか。
  • 主人公に惚れるべきヒロインは一人か複数か。

とりあえずいくつか挙げてみましたが、異世界転生ファンタジーには一定の「型」を基本として様々なバリエーションがありますので、上記以外にも数多くの論点を設定できると思います。

いずれにせよ、小説化するに際しては、③の宗派対立や④の正統と異端の対立をストーリーの軸にした方が書きやすいと思われます。

 

⑤主人公の立場について

その小説における主人公の立場は、様々なパターンが考えられると思います。たとえば、そもそも異転教の教徒か否か(教徒でない場合、他教徒か無宗教か)、教団の幹部なのか下っ端教徒なのか、一般社会で働いているのか聖職者として教団の中で働いているのか、家族や友人と同じ宗派か否か、などです。

 

⑥その他の点について

以上のアイデアを小説化するには、このほかに具体的なストーリー展開キャラ設定などについても詰めていく必要があります。しかし、これらの点については、思いつきませんでしたこの記事を読んでこのアイデアを小説化しようと思った奇特な方にお任せします。また、上記のアイデアはあくまでたたき台なので、改善の余地は大いにあると思います(特にSAOの位置づけが難しそうです)。

 

 

(4)おわりに

 

最後に、いくつか付言(もとい言い訳)させていただきます。

 

第一に、プロの作家でも編集者でも評論家でもないのに、ここまで偉そうに語ってきましたが(申し訳ございませんm(_ _)m)、もしかしたら私のリサーチ能力不足により、既に世に出されている同種の発案や小説を見落としているかもしれません(!)。その場合にはご容赦頂ければと思います。。。そのときにはお知らせ頂ければ助かります!

 

第二に、「独自性を出すには?」みたいなことを書きつつ、そのためのアイデアをこのような形でインターネットに公開するという、この矛盾する姿勢について違和感があるかもしれません。しかし、当ブログのアクセス数は(謙遜などではなく本当に)微々たるものですのでご安心ください。また、そもそも、これから小説を書こうとする人がこの記事を読んでこのアイデアを小説化させようと思うような事態が発生することに対しては、むしろ私自身が懐疑的です(その意味で、この記事は利他的なものと言うより、自分のアイデアを開陳して終わるだけの自己満足的なものです)。

 

第三に、私がこのアイデアを公開したのは、こんな小説を読みたい!という気持ちがあったからです。つまるところ、悪く言えば、この種の小説が新人賞をとったり人気になったりすることを(無責任かもしれませんが)私自身は保証しかねます。再び申し訳ございませんm(_ _)m その一方で、良く言えば、少なくとも私自身が既にファンなのでご安心(?)ください!!

 

 

この後編の記事を読んで、前編の記事を読みたくなった方は以下のリンクから読めます。

irohat.hatenablog.com

 

 2019年8月17日修正:SAOの位置づけに関する記述の趣旨をより明快にするため、一部加筆を行いました。