小山恭平『我が姫にささぐダーティープレイ』――ダメダメお嬢様×ダーティー執事!
(1)基本情報
『我が姫にささぐダーティープレイ』(講談社ラノベ文庫、2019年8月現在既刊2巻)
著者:小山恭平
イラスト:ファルまろ
ジャンル:「異世界転生ファンタジー」「執事」「暗躍」「学園」
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文武両道なエリート少年・鎧塚貝斗は、生徒会副会長として『王』たる存在を支えることに喜びを見出していた。だがある日、彼は異世界に転生してしまう。そこで出会ったのは、騎士公爵家の一人娘、ラライ・アッフィードだった。名門王立女学園に通う彼女は、家柄だけは優秀なものの、学問ダメ武芸ダメ努力なんて大嫌い、さらには性格も悪くて友達もゼロな問題児。それでも生徒会長になりたいという彼女。そんな彼女が執事となった貝斗に下した命令は――「執事くんが私のライバルみーんなの足を引っ張ればいいんだよ!」 そして貝斗は、ダメお嬢様のためのライバル少女たちを篭絡し……!? いずれ王とならんとする少女のために執事が暗躍する物語、開幕!
――――――第1巻裏表紙より―――
(2)あらすじ
さて、ざっくりあらすじを説明すると、ダメ人間のお嬢様のラライが生徒会長になるために、執事の貝斗が暗躍する物語です。
ラライの通う名門王立女学園には国中から優秀な少女が集い、その生徒会長の座を射止めた者は「学徒の王」と呼ばれ、国で最も将来有望な人材の一人と見なされます。
アホの子のラライがそんな生徒会長になりたいなんて言い出しますが、会長候補に選出されるには、武芸、学問、芸術のすべての分野で秀でた成績を修める必要があります。
しかもラライは努力してその座を勝ち取りたいという訳ではありません。
「武芸も、学問も、芸術も、あらゆる競争は相対評価なんだよ? 私がダメでも、みんながもっとダメなら私の勝利! 私がマイナス99でもみんながマイナス100になれば私が1番! だから私が努力する必要なんてこれっぽっちもないんだよ!」(第1巻69頁)
どうですか? ダメ人間の発想でしょう? とにかく、こう言い放ったラライは、自身が生徒会長になるために貝斗に工作をするよう命じます(あくまでもラライ自身が工作するわけではないのです!)
第1巻では、武芸の栄誉を得るために、「剣姫祭」に出場しラライを勝たせるために貝斗は暗躍します。第2巻では、芸術の栄誉を得るために、「芸麗祭」文芸部門に出場し、ラライを勝たせるために暗躍します。
(3)おすすめポイント――二重の意味で「ダーティープレイ」
貝斗が行う工作の基本的手法は、「対戦相手に八百長をさせてラライを勝たせる」という意味で「ダーティープレイ」です(手元の英和辞典でも「dirty play:反則」とあります)。
しかし、「ダーティー(dirty)」に、もう一つの意味があるのはご存知ですか?
「下品な」「卑猥な」「みだらな」という意味もあるのです。この意味でも貝斗はダーティープレイを行うのです。
対戦相手に八百長をさせるためには、その人を自分の意のままに操る必要があります。そのためには、1つ目の意味でのダーティープレイも行いますが、貝斗はためらいもなく2つ目の意味でのダーティープレイも行って相手を篭絡させてゆきます。
ラノベの大半は、中高生をまず第一の読者層として想定しているため、「着替えをのぞいちゃった!」「おっぱいタッチしてしまった!」「風でめくれたスカートの中を見てしまった!」的なラッキースケベは頻繁に描かれますが、官能小説的なエロ描写は避けられる傾向にあります。しかし、本作品は、それをやっているのです!! (ちなみに、巻頭カラーページや挿絵では、そんなことをやっている場面が描かれていますよ!)
しかも、ラライお嬢様の方もかなりダーティーなキャラクターをしています。
普通(というか私の偏見ですが)、「お嬢様×執事」モノといえば、「執事に何だかんだ惚れてしまったお嬢様が執事のモテっぷりに嫉妬する」、みたいな感じが王道ではないでしょうか?
しかし、ラライは貝斗にこう囁きます。
「――さあ執事くん、夢を叶えるチャンスだよ。君の見果てぬ夢を私の中に見ていいよ。私を君の理想の王様にしちゃいなよ。そのためには、いっぱい悪いことをしていいよ。人を陥れていい。女の子と寝ちゃっていい。――私がちゃーんと全部許してあげる」(第1巻76頁)
ラノベのお嬢様ヒロインとしては異例のお言葉です。まるで悪魔のようではないですか?しかし彼女は悪魔ではありません。むしろ……。
(既読の方ならわかってくれると思いますが、このようなラライたとえる比喩にはなるほどと思ってしまいました!)
(4)関連おすすめ作品
最後に、『我が姫にささぐダーティープレイ』を読んで、「お嬢様×執事」モノにはまったあなたに同ジャンルのおすすめ作品を紹介します(と言っても、1作品だけです。むしろ私に紹介して欲しいくらいです……)。
桜目禅斗『上流学園の暗躍執事』(角川スニーカー文庫、2019年8月現在既刊1巻)は、2019年7月に第1巻が発売されたニューフェイスです。舞台となる星人学園では、良家エリートの子女が「主人」となり、一般生徒が彼らの「執事」として仕える制度となっています。主人公・片平遊鷹は、大財閥令嬢の三神黒露に見初められ彼女に仕えることになるのですが、同じ学級内には現役総理大臣の娘と彼女に仕えるトップ入学の執事がいて……!
さて、管理人は「お嬢様×執事」「執事が暗躍する」系のラノベが好きなんですけど、あまり読めていないので、おすすめ作品があれば教えてください!