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「異世界ファンタジー」の下位ジャンルの必要性――ゲーム的でない異世界ファンタジーを何と呼びますか?

 

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ハリー・ポッターと賢者の石

2019年8月30日追記:この「『異世界ファンタジー』の下位ジャンルの必要性」という記事に対して、「ファンタジーのジャンル論・再考」という下記記事を書いたのでぜひご覧ください! 下記記事はこの記事の訂正版のような形になっております。

irohat.hatenablog.com

以下、本来の記事へ――

 

 

皆さんは、ライトノベルの文脈において時折語られる異世界」系と「ファンタジー」系の違いは分かりますか? 正直、あまりよく分かってはいないのではないでしょうか? あるいは、自分なりに区別しているとしても、それはラノベ界隈で広くコンセンサスを得られているのでしょうか?

 

そんな疑問に対する回答の一助になればと思い、この記事では、ライトノベルの文脈における「ファンタジー」や「異世界」といったジャンル分けの方法について考察・提案を行いたいと思います。

 

とはいえ、まずは本論に入る前に、私のジャンル分け理解の全体像を見て頂ければと思います(下図参照)。

 

ファンタジー

 ├─本格ファンタジー

 │  ├─ハイ・ファンタジー

 │  └─ロー・ファンタジー

 └─異世界ファンタジー

    ├─ゲーム的異世界ファンタジー

    └─非ゲーム的異世界ファンタジー

 

 

(1)伝統的なファンタジーラノベ的な異世界ファンタジーの区別の必要性

 

最初に、「ファンタジー」の定義を確認しておかなければなりません。アカデミアの世界では歓迎されませんが、このブログはそういう場所ではないのでひとまずWikipediaの記載を引用しておきます。

 

ファンタジーとは、超自然的、幻想的、空想的な事象をプロットの主要な要素、あるいは主題や設定に用いるフィクション作品のジャンルである。

ファンタジー - Wikipedia

 

要するに、典型的には、魔法や魔物などが登場する物語をファンタジーと呼ぶのです。

そして、ファンタジーにはさらに下位ジャンルが存在します。様々な下位ジャンルがありますが、最も重要なものとして「ハイ・ファンタジー」と「ロー・ファンタジー」の区別を挙げなければなりません。

 

ファンタジー

 ├─ハイ・ファンタジー

 └─ロー・ファンタジー

 

両者の定義について、ここでもWikipediaを引用させてもらいます。

 

ハイ・ファンタジーとは、現実の世界ではなく、架空の世界のファンタジーとして定義される。その架空の世界は(架空世界内では)一貫しているが、現実の世界とは異なる「法則」で成り立っている。逆にロー・ファンタジーは、現実の世界に魔法の要素が含まれていたり、架空の世界であっても(現実の世界として)合理的で親しみのある世界に魔法の要素が含まれている。

ハイ・ファンタジー - Wikipedia

 

ハイ・ファンタジーの代表例としては、指輪物語』(ロード・オブ・ザ・リングが挙げられます。(両者の区別は時に難しいと言われていますが)ロー・ファンタジーの例としては、ハリー・ポッター」シリーズが挙げられるでしょう。たしかに作中の魔法世界は高度に完成されていますが、主人公のハリーは魔法学校に入学する前は魔法界があることを知りませんでしたし、作中世界の非魔法族(マグル)はこの世に魔法なんてものがあるとは信じていません。その意味で、この作品はロー・ファンタジーに位置づけられるでしょう。

 

しかし、同じく魔法や魔物が登場するファンタジーだとしても、指輪物語ハリー・ポッターなどの作品群と、ライトノベルにおいてよくある異世界ファンタジー作品群とを一緒くたにするのは直感的に違和感を覚えませんか?

 

それもそのはず、後者については、①ここ30年くらいに、②日本において、③ライトノベル小説投稿サイトという媒体を通じて発展した、④現実世界から異世界(ゲーム世界も含む)への転生・転移・(ゲームについては)没入を特徴とするジャンルなのです。

①~③については説明は不要でしょう。④については、ロー・ファンタジーとの共通性があります。しかし、このジャンルについては、ハリー・ポッターなどの伝統的なファンタジーとの違いを認識できるほどに「型」がある程度完成されているため、むしろ伝統的にロー・ファンタジーとして語られているジャンルからは切り離した方が適当でしょう

 

そこで、私としては、まず、ファンタジーの下位ジャンルとして、「本格ファンタジー異世界ファンタジーの区別を提案したいと思います(既に提案されているかもしれませんが)。

 

ファンタジー

 ├─本格ファンタジー

 └─異世界ファンタジー

 

ここでいう「本格ファンタジーとは、主にヨーロッパの作家によって、ヨーロッパの神話・歴史等に基づいて作られた伝統的なファンタジーのことを指します(もちろん、日本人作家であっても、その影響を強く受けていればこちらに分類されます。たとえば、ラノベですが、ハリポタの影響が見られる『七つの魔剣が支配する』は本格ファンタジーに分類されるでしょう)。ライトノベルを読まない層がファンタジーと聞いて思い浮かべる作品群が属するジャンルと言えば、分かりやすいでしょうか?

なお、「本格」という用語は、異世界ファンタジーは本格的な=一流のファンタジーではない」という意味が込められている訳ではありません。適当な用語が思いつかなく、(サスペンスや警察小説などを含む広い意味の)ミステリーの下位ジャンルの一つである本格ミステリ」(昔ながらの言い方では探偵小説)から「本格」という言葉を拝借しただけなのです。もしかしたら、「伝統的ファンタジー「世界標準的ファンタジーなどと呼んでも良いのかもしれません。

 

さて、「本格ファンタジーの対には異世界ファンタジーが据えられます。既に説明したように、異世界ファンタジーは、ここ30年くらいに日本において、ライトノベルや小説投稿サイトという媒体を通じて発展したジャンルで、現実世界から異世界(ゲーム世界も含む)への転生・転移・(ゲームについては)没入を特徴としています。

たしかに初期の異世界ファンタジーは本格ファンタジーから影響を受けていたかもしれませんが、日本の文芸界において一つの流行を作り出すほどに興隆しています。ここにおいては、一定の「型」が作られるほどジャンル内での相互影響が強いため、本格ファンタジーから異世界ファンタジーを分離独立させるべきでしょう。

ところで、この異世界ファンタジーの発展により、「異世界」という言葉はこのジャンルの特徴を表す言葉となったため、本格ファンタジーにおける作中世界を「異世界」と呼ぶことは混乱の元凶となってしまいます。無用な混乱を避けるために、本格ファンタジーにおける作中世界は、「架空世界」や「別世界」などと呼んだ方が良い気がします。

なお、異世界ファンタジーの下位ジャンルにおいては、「ハイ・ファンタジー」と「ロー・ファンタジー」の区別を導入する必要はないと思われます。というのも、このジャンルは、「現実世界から異世界(ゲーム世界も含む)への転生・転移・(ゲームについては)没入」を特徴としているので、いわばロー・ファンタジーであることが前提なのです。したがって、「ハイ・ファンタジー」と「ロー・ファンタジー」の区別は、もっぱら本格ファンタジーの下位ジャンルにおいて使われるべきでしょう。

 

ファンタジー

 ├─本格ファンタジー

 │  ├─ハイ・ファンタジー

 │  └─ロー・ファンタジー

 └─異世界ファンタジー

 

 

(2)異世界ファンタジーにおける下位ジャンルの必要性

 

以上のように本格ファンタジーラノベ的な異世界ファンタジーとを切り離したのですが、後者についてはさらなる下位ジャンルが必要だと思われます。

 

というのも、異世界ファンタジーにおいては、ゲーム的(ドラクエ的・MMORPG的)な要素が含まれているもの(ゲーム的異世界ファンタジーと、そういった要素が(ほとんど)ないもの(非ゲーム的異世界ファンタジーとがあるからです。

 

異世界ファンタジー

 ├─ゲーム的異世界ファンタジー

 └─非ゲーム的異世界ファンタジー

 

まったくの余談ですが、私がこの区分の必要性に思い至ったのは、非ゲーム的異世界ファンタジーの方に対して相対的に親しみを覚えているものの、このジャンルを探すための用語がないことに気が付いたからです。

実は私はコンピューターゲームを全くやったことがなく、ゲーム的異世界ファンタジーについてはは苦手意識みたいなものがあります。冒険者って何?」「勇者って職業なの?」「HPって何?これが無くなると死ぬの?というか何の略?」「クラスアップとは?」「スキルツリー?なにそれおいしいの?」みたいな感じなのです。

つまり、ゲーム的異世界ファンタジーにおいては、作者・読者の間で一定のゲーム的世界観が共有されているため、その前提を十分に理解できていない読者にとってはあまり「ライト」(手軽)に読めないのです。その一方で、非ゲーム的異世界ファンタジーにおいては、本格ファンタジーと同様に比較的丁寧に世界観の説明がなされる傾向にあると思われます。

 

さて、私の個人的事情は措いておくとしても、「ゲーム的異世界ファンタジー「非ゲーム的異世界ファンタジーの区別は必要だと思います。というのも、「異世界への転生・転移・没入」という一定の「型」を有する「異世界ファンタジー」のうち、「ゲーム的である」という点においてさらに強固な「型」を有する「ゲーム的異世界ファンタジーと、異世界転生・転移」という手法は使うものの、むしろその他の世界観設定は自由度が高かったり、あるいは本格ファンタジーに似通っていたりする「非ゲーム的異世界ファンタジーとは、明らかに異なる特徴を有しているからです。

 

ここで「ゲーム的異世界ファンタジーというジャンルへのラベリング方法を提案したいと思います。以下のいずれかの条件に該当すれば「ゲーム的異世界ファンタジーに分類されるということにします(かなり緩やかな条件なので、相当数の作品がこちらに分類されると思います)。

 

①その異世界がゲーム世界だと明言されている場合

②その異世界の様子を見て登場人物が「まるでゲームみたいだ」と言及する場合

③以下のように明らかにゲームに影響された要素が登場する場合

a)冒険者・勇者といった職業・名称。冒険者の仕事紹介所としてのギルドの存在。冒険者の仕事としてのクエストの存在。

b)HP、経験値、スキル、ランク、レベル、クラスなどのステータス制度の存在。ステータスを管理する上で便利すぎる(つまりコンピューター端末のような)カード、バーチャル画面、音声などの存在。

 

それでは、「非ゲーム的異世界ファンタジーには、どのような特徴があるのでしょうか?

上で「非ゲーム的異世界ファンタジーは「『異世界転生・転移』という手法は使うものの、むしろその他の世界観設定は自由度が高かったり、あるいは本格ファンタジーに似通っていたりする」と書きましたが、これは異世界ファンタジー」との比較の上での話です。

「ゲーム的異世界ファンタジー」は「ゲーム的である」という点において積極的に特徴を見出せますが、「非ゲーム的異世界ファンタジー」の場合はどうでしょうか? 積極的な形で特徴を見出すことができるのでしょうか?

しかし、私が考えた限りでは、そのジャンル名が示す通り、「ゲーム的でない」というように消極的・控除的にしか定義できないと思います。ですが、これでは可哀そうではありませんか!? このままではこのジャンルを盛り立てようがありません!

ここで、この記事のサブタイトル「ゲーム的でない異世界ファンタジーを何と呼びますか?」に話が戻るのです。皆さんであれば、このジャンルに何と名前を付けますか? あるいは何と呼ぶべきか知っていますか? これこそが私がこの記事で問いたかったことなのです。もし回答をお持ちの方がいるのなら、教えていただければ幸いです。

 

最後に、もう一度、ファンタジーの下位ジャンルについての私の理解の全体像を再掲しておきます。

 

ファンタジー

 ├─本格ファンタジー

 │  ├─ハイ・ファンタジー

 │  └─ロー・ファンタジー

 └─異世界ファンタジー

    ├─ゲーム的異世界ファンタジー

    └─非ゲーム的異世界ファンタジー

 

 

2019年8月29日追記:ジャンル論について別記事を書いたので是非ご参照ください!

irohat.hatenablog.com

 

2019年8月30日追記:この「『異世界ファンタジー』の下位ジャンルの必要性」という記事と、すぐ上に掲げた「『異世界転生しないのにゲーム的な要素が登場するファンタジー』はアリなのか?」という記事に対しては、「ファンタジーのジャンル論・再考」という下記記事を書いたのでぜひご覧ください! 下記記事はこの2つの記事の訂正版のような形になっております。 

irohat.hatenablog.com

 

 

(3)非ゲーム的異世界ファンタジーのおすすめ作品

 

ここまでの記述の節々から分かると思いますが、私のお気に入りジャンルは「非ゲーム的異世界ファンタジーです。そこで、このジャンルに分類される作品を2つ、ここでおすすめしておきたいと思います。どちらも「異世界転生」という手法を使っていますが、まったくゲーム的ではありません

 

1つ目は、私のいち推し、唐澤和希『転生少女の履歴書』(ヒーロー文庫、2019年8月現在既刊8巻)です。紹介記事を書いているので詳しくはそちらをご覧ください。

irohat.hatenablog.com

 

2つ目は、小山恭平『我が姫にささぐダーティープレイ』(講談社ラノベ文庫、2019年8月現在既刊2巻)です。こちらに至っては、亜人種こそ登場しますが、魔法や魔物はほとんど皆無と言って良いほど登場しません。まさに非ゲーム的異世界ファンタジーの設定の自由度の高さを示す作品です。この作品についても紹介記事を書いているので詳しくはこちらをご覧ください

irohat.hatenablog.com