小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

小説・ラノベ・アニメ・漫画について感想を語り、おすすめを紹介するブログです。

唐澤和希『転生少女の履歴書』――女性主人公の異世界転生ファンタジーの決定版!

f:id:irohat:20190810012257j:plain

転生少女の履歴書

(1)基本情報

 

『転生少女の履歴書』(ヒーロー文庫、2019年8月現在既刊8巻)

著者:唐澤和希

イラスト:桑島黎音

ジャンル:「女性主人公」「異世界転生ファンタジー」「魔法」「学園」

herobunko.com

 ―――――――――――――――――

優秀な成績を収めていた少女は、親の愛に恵まれずに不慮の事故でその人生を終える。転生先は、ろくに畑の知識もなく、魚を捕まえる術さえ知らない農民たちが暮らす開拓村。その村の6人兄弟の末娘としてリョウと名付けられる。あまりにも極貧な生活のなか、身売りされないため、飢え死にしないため、また、前世では得られなかった親の愛を求めて、村の改革に奔走する。リョウの活躍で、とりあえず、飢え死には免れたと思ったところに、魔法使いたちがやってくる。魔法使いが絶対の支配階級である異世界で、リョウは前世の知識や技術を役立たせながら、農家、貴族の小間使い、山賊……居場所を転々としていく――――。

――――――第1巻裏表紙より―――

 

 

 (2)あらすじ

 

まずは登場人物を3人だけ紹介します。

 

リョウ:主人公の少女。

アラン:魔法使いの少年。レインフォレスト伯爵家の次期領主。

カイン:アランの兄。非魔法使い。優秀な剣の使い手。

 

主人公の少女は、学芸・家柄・容姿に優れたハイスペック女子高生でしたが、親の愛に恵まれぬまま不慮の事故で命を落とし、極貧村の娘のリョウとして転生します。

 

転生先の異世界では魔法が存在し、魔法使いが非魔法使いを支配・庇護する体制となっています。しかし、リョウは魔法使いではありません。なので、前世の知識を駆使し、魔法なしでも農村を成り立たせていくべく奔走します(読後の方なら、この知識が意外な広まり方をして後にリョウを困らせてしまうようになったのにはクスっとしましたよね!)

 

ところが、ある事情によりリョウは村を離れ、レインフォレスト伯爵家という魔法使い貴族の家で小間使いとして働くことになります。

 

そこで出会うのが、リョウと同年の貴族アランとその兄カイン。魔法使いが絶対視されるこの世界では、兄のカインは非魔法使いのため成人後は貴族の資格を失いますが、弟のアランは魔法使いのため次期レインフォレスト領主の地位が約束されています。

 

リョウと出会った頃のアランは、多忙な父母から愛を得られず、相当やさぐれていました。非魔法使いの使用人たちをいびっては次々と交代させていたのです。

 

そんな折、リョウがアランの小間使いに就くことになります。出会っていきなり魔法で泥水をぶっかけられたリョウは、彼女の生意気さに腹を立てたアランからの決闘の要求に応じます――――そしてアランを叩きのめしたリョウは彼の親分となりました

 

リョウの子分となってから、彼女に影響されたアランの素行は良くなってゆきます。ところが、ある日、リョウはレインフォレスト伯爵家から去ることになります。

 

そして紆余曲折あって、リョウはルビーフォルン伯爵家の養女となり、王都の貴族学校でアランやカインと再会します。……とまあ、ここまでが第2巻冒頭までのダイジェストです。ここから以後数巻、魔法学園での生活が描かれることになります。

 

 

 

(3)おすすめポイント――魅力的な女性主人公とハイテンションな筆致

 

「魔法使いと非魔法使いの支配・被支配関係のあり方」「魔法の仕組み」「二つ名」「ウ・ヨーリの教え」など、他にも紹介したい魅力は数多くあるのですが、本作品の一番の魅力は、女性を主人公にすえたライトノベルという点でしょう!!!

 

ライトノベルの主人公の圧倒的多数は男性ですが、本書は珍しくリョウという少女が主人公です。しかも、ただ女性が主人公というだけではありません!

 

男性主人公のライトノベルは概して、「やれやれ」とか「オレ何かやっちゃいました?」みたいな、なんというか冷めた筆致です(熱血キャラのラノベ主人公なんてあまりいないですよね?)。女性が主人公のラノベであっても、あるいは男性主人公のラノベにおいて女性の視点で語られる箇所であっても、このような冷めた筆致はよくあります。

 

しかし、『転生少女の履歴書』は、主人公の少女リョウの視点からハイテンションな筆致で物語が綴られます。試しに以下の一節を読んでみてください。アレンの親分となったリョウが、父母と一緒に過ごす時間の少ないアレンに同情した場面です。

 

―――――――――――――――――

 私は家庭教師の先生が来るまでの短い時間に、そう考えをまとめて、極力優しく接してあげようと、天使のように優しい輝きを放つ温かい眼差しをクソガキアランに向けてあげた。強く生きろよ、子分。

「な、なんだよ! カエルが死んだような目をこっちに向けてきやがって! 牛乳買ってこいって言われたって、もう時間もないから無理だからな!」

 ちょっと、私の天使な眼差しを死んだカエルにたとえないで! 失敬な! あと、その言い方だと私がしょっちゅう君をパシらせているみたいじゃないか。私が子供相手に、しかも貴族をパシらせるなんて、そんなこと……1、2回しかしていないでしょう!

 思わず眉間にしわを寄せてクソガキのほうへ目を向ければ、蛇ににらまれたカエルのようにびくっとなって、彼は視線を逸らした。

 あらいけない、子供相手に私ったら、おほほ。

――――――第1巻112頁より―――

 

どうですか? お手元の適当な男性主人公のラノベを手に取って『転生少女の履歴書』と比べてみてください。全然違いますよね? 

 

たしかに最初は慣れていないため違和感があるかもしれませんが、この軽妙さ、ハイテンションさはクセになりますし、そこから主人公の魅力があふれ出ていて、いつのまにか愛すべきキャラクターになっているはずです!! というかこの一節だけでリョウに惚れてしまいませんか??

 

下記記事では、「なぜ女性が主人公のライトノベルはおもしろいのか?」という問題について考察しています。気になった方はご覧ください。

irohat.hatenablog.com

 

ところで、リョウ以外にも、魅力的なキャラはたくさんいます。カインとアレンの好対照なキャラを紹介しましょう。次のセリフは、ドレス姿でおめかししたリョウを見たときのカインの反応です。

 

―――――――――――――――――

「リョウ! 見違えたよ! 普段のリョウも可愛いけれど、今日のリョウは一段と美しいね。淡い緑色のドレスにリョウの金色の髪が輝いて、まるで野に咲く可憐な花のようだよ。リョウ、お願いだからその姿で外に出てはいけないよ。花達が自分達よりも美しく咲くリョウを見たら、恥ずかしくなって萎れてしまうかもしれない」

――――――第2巻234頁より―――

 

ここだけ抜粋すると、カインはチャラ男のように見えてしまいますが、彼は誠実な人間です。ただ、ちょっとポエマーなだけなんです!

 

未読の方は、ここでリョウとカインの恋愛関係を想像するかもしれませんが、二人の関係はむしろ、友愛・親愛と呼ぶべきものです(ついでに言えば、この作品では「逆ハーレム」なんてことにはなりませんからね。ただ、第6巻126頁以降は、「絶対そうではない」とは言い切れませんが……。既読の方は分かってくれますよね?)。

 

さて、既読の方はご存知の通り、怪しむべき関係と言ったらリョウとアレンの関係です。次の一節は、先ほどと同じ場面でリョウがアランに自身のドレス姿の感想を尋ねたシーンです。

 

―――――――――――――――――

「アラン、どうですか?」

「え?」

「だから、この私の格好ですよ」

 そう言って、私はドレスをつまみ上げた。

「あ、うん。……いいんじゃないか」

 アランは視線を落として、小声でそう言った。

 そっけない! もっと褒めてくれたっていいじゃないか! 気の利かない子分め! と思った私はおそらく不満の色を顔に出していたのだろう。

 私の顔を見たアランが慌てた様子で目を泳がせた。視線はカイン様がいる辺りを見て止まり、そして、私のほうに戻った。

「は、花が、枯れるのは、リョウのせいだと思う!」

 やめてよ! どういう意味!? 花が枯れるのを私のせいにしないで! 自然の摂理! レディを満足させる一言も言えないなんて、子分はまだまだね。先が思いやられるよ。

――――――第2巻235頁より―――

 

リョウの方は、アレンとの関係を親分と子分だと解釈しています。しかし、アレンの方は明らかに……なんですよね。頑張れ、アレン!

 

 

 

(4)関連おすすめ作品

 

最後に、『転生少女の履歴書』の既刊をすべて読み終わり、続刊を待てないあなたに女性が主人公のおすすめ作品を2つ紹介します。

 

1つ目は、日向夏薬屋のひとりごと』(ヒーロー文庫、2019年8月現在既刊8巻)です。ジャンルを一言でいえば、中華宮中ミステリです。主人公の少女、猫猫(マオマオ)が毒好きの知識を活かして宮中で起こる不思議な謎を解き明かしていく物語です。ミステリファンからの支持も厚い作品です。宮中の女性から大人気のイケメン宦官(!)と猫猫の関係も気になりますね!

herobunko.com

 

2つ目の関連おすすめ作品は、山田彩人『眼鏡屋は消えた』(創元推理文庫、第21回鮎川哲也賞受賞作)です。この作品は、分類上はライトノベルではなく、本格ミステリにカテゴライズされる一般文庫の作品です。が、「女性が主人公」「ハイテンションな筆致」ということで挙げさせて頂きました。その分、ミステリ初心者の方でもとっつきやすくなっていると思います!

www.tsogen.co.jp

 

みなさんも同ジャンルのおすすめ作品があれば是非教えてください!