小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ

小説・ラノベ・アニメ・漫画・ドラマ・映画などについて感想を語ったり、おすすめを紹介したり、その他いろいろ書き記すブログです。

2020春アニメ1話目の感想――17作品の一言コメント

 

 

4月になり、2020年春アニメがスタートしました。ということで、第1話を視聴したアニメについて一言ずつ(感想未満の)コメントをしていきたいと思います(五十音順)。

※特に言及がない限り、筆者はすべて原作未読(未プレイ)です。

 

 

アルテ

中世ヨーロッパ風の異世界ファンタジーアニメが幅を利かせる中、ついにファンタジーではない(つまり、魔法も超常現象も登場しない)中近世ヨーロッパを舞台とするアニメが登場しました。OPクレジットには時代考証の文字もありましたね。

それにしても、ルネサンス期のイタリアの状況はよく知らないのですが、貴族令嬢であっても平民の職人からぞんざいな扱いを受けるんですかね?

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ショートにしてしまったけどロングも捨てがたい

 

 

イエスタデイをうたって

原作未読ですが、有名な作品らしくタイトルだけは聞いたことがあります。第1話から早くも雰囲気が最高です。ストーリーの方向性がまだよく分からないんですけど、名作の匂いがしますね!

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「リ~クオ! とうとう現場を押さえたわ! 酷い! ずっと私を騙していたのね!」

 

 

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…

原作ラノベ・コミカライズともに全巻読破しています。アニメ第1話の質も評判も上々のようで嬉しい限りです。

最近、本好きの下剋上」「私、能力は平均値でって言ったよね!」「慎重勇者」「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」など、女性が主人公の異世界ファンタジーが評判良いので、この波に乗りたいところです。気が早いですが、第2期の制作を期待しています!!

キャッチーなOPも素敵ですね! 購入しました!

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かくしごと

第2話まで見ました。ギャグ路線かと思いきや、シリアス要素が度々ぶち込まれてきますね

あと、画風・色彩が素敵ですよね!

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名曲の雰囲気がするなと思ったら、やはり往年の名曲だったんですね

 

 

かぐや様は告らせたい

相変わらず面白いですね。2期になってかぐや様の表情がより豊かになったように見えます。

 

 

神之塔

第2話まで見ました。いまだ世界観が把握できていないんですけど、面白くなっていきそうですね。

 

 

グレイプニル

デスゲーム系でしょうか? 着ぐるみの怪物を見ると、最近読んだアサウラ『デスニードラウンド』(オーバーラップ文庫を思い出します。

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戻してから帰れよ!って思いましたよね?

 

 

社長、バトルの時間です!

相も変わらずゲームファンタジーが流行っているなあと思ったら、ゲームが原作なんですね。

キャラデザの全体的な方針もありそうですが、頭身、丸顔あるいは髪型のせいか男主人公(ミナト)が少しふっくらした印象の容姿なのはファンタジー作品にしては珍しいですよね。

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主人公のミナト

 

 

球詠

半袖半ズボンは譲るとしても、流石に膝当ては必要じゃないですか? ソフトボール並の格好をしないと、スライディングも満足にできませんよね。

一部では作画がヘタっているという評判ですが、好意的に見ればなんとなくの一貫性はあるのでキャラデザの方針と言えるのでは……(少なくとも今のところは)。

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案の定、膝を擦りむいてる……

 

 

波よ聞いてくれ

私は(声優ラジオではなく芸人系のラジオですが)毎週10本のラジオ番組を聴いているので、ラジオアニメが嬉しいです。

ミナレみたいなキャラと喋りのパーソナリティがいたら普通に聴きたいものです。CV:杉山里穂さんも達者ですよね。

 

 

八男って、それはないでしょう!

第2話まで見ました。異世界転生ファンタジーにしては、珍しく2話分も使って丁寧に幼少期を描いているなあという印象です。

第3話以降、他の異世界転生ファンタジーどう差別化を図るのか見物です。

 

 

BNA ビー・エヌ・エー

正直に言うとあまり期待していなかったのですが、第1話を見て裏切られました。普通に面白いですね!!

あと、OP曲もED曲も良いですね! 購入しました!

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富豪刑事 Balance:UNLIMITED

アニメというよりは、ドラマ向きな作品のような気がします。

しかし、あの筒井康隆氏が原作なんですね!

 

 

プリンセスコネクト!Re:Dive

原作ゲームは未プレイなので、第1話の時点ではあまり世界観を把握できていません。ただ、流石はCygames Picturesといったところでしょうか。

それにしても、ユウキのあの斬新なキャラ設定は賛否が分かれるのではないでしょうか?

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ちょっと甲斐甲斐し過ぎるコッコロ。でも皆さんはこういうキャラが好きなんですよね。

 

 

放課後ていぼう日誌

メインキャラなんですが、4人とも珍しいキャラデザ&キャラクターではないけれど、こういうキャラデザ&キャラクターがメインで4人揃うのは珍しい気がします。

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ツンデレが足りないのか……?

 

 

本好きの下剋上 第2部

待望の第2期です。「本好き」というよりはずっと「商人」していますが、そろそろ本を読めるのでしょうか?

 

 

LISTENERS

主人公、ヒロインともに丸顔太眉という珍しいキャラデザのアニメです。

音楽が好きな人とかロボットが好きな人には刺さるアニメですよね!

 

 

 

このほか、視聴予定ですがまだ第1話を見られていないものが数本あります。いくつか放送延期になりましたが、なお面白いタイトルが揃っていますね!

 

 

2020冬アニメの感想――16作品ひとことコメント

 

 

少し遅くなってしまいましたが、この記事では、2020冬アニメについて一言ずつ感想コメントを書きたいと思います!(五十音順)

 

 

異種族レビュアーズ

例によって五十音順なのでこの作品から(笑)。アニメ史に残る挑戦的な作品であることは言うに及びません。

しかし、エロ以外にも注目すべき点はあります。ファンタジー作品(特にアニメ・漫画・ラノベ)は相当数ありますが、この作品は他のどの作品よりも様々な種族に深い考察が加えられていたのです。各種族についてその特性をここまで掘り下げたファンタジー作品は珍しいのではないかと思います(もちろん、掘り下げた方向性はアレですが)。

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アイキャッチが毎回オシャレ&セクシーでしたね!


 

痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。

正直なところ、最初の数話で見るのを止めようかと思っていました。俺TUEEEならぬ私TUEEEは、女の子が主人公であってもキツいものがあるからです。2019秋アニメの「私、能力は平均値でって言ったよね!」みたいにギャグ要素がなければ主人公の男女を問わず厳しいのかなあと思っていました。

だけど、中盤まで見てみると普通に楽しめるようになってきました。その理由は明確には説明できないんですけど……。ともかく、制作決定された第2期が楽しみです!

 

 

映像研には手を出すな!

第3話、第7話の水崎氏のアニメーションにかける想いに溢れた回は心動かされました!

あと、金森氏のようなキャラは今まで出会ったことがなかったので新鮮でしたね。

 

 

推しが武道館いってくれたら死ぬ

第1話を見たときは「クセのあるキャラデザだなあ~」と思っていたのですが、慣れてくると普通に可愛いですね!

原作者がいうように「アイドルとオタクの理想的な関係」が描かれていて素敵でした。良作アニメではおじさんキャラが活躍すると言いますが、この作品でもクマサさんが最高のオタクでよかったです。

アニメを通して個人的に応援したくなったのは、空音文(あや)です。私自身はアイドルと握手したことはないのですが、天性のアイドル性をもつ空音に神対応されたらきっと基さんのようにガチ恋してしまうかもしれないですね。文のあのキャラはかなり好きなんですが、現実のアイドルとしては一番いないタイプのキャラなんですよね~。だからますます好きになるというか。

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玲奈ちゃんにもアイドルやってほしいですね!

 

 

虚構推理

全12話中9.5話ほどが鋼人七瀬編に費やされましたね。ミステリーですから伏線を張るために省略はできないとはいえ、テンポ感に欠けざるを得ない挑戦的な脚本構成と言えそうです。しかし、岩永琴子の手によって虚構が放たれ出すと、加速度的に面白くなってゆきました

そもそも、ミステリー(特に解決編)は映像映えに欠けるシーンばかり続くのがネックなのですが、この作品は見事にこれを克服していましたね(「氷菓」を思い出します)。ミステリーなだけあって、岩永琴子のセリフ量が半端なかったです。

さて、鋼人七瀬編は、多重解決モノに分類されるミステリーでした。本格ミステリとしての完成度が異常に高いな~」なんて思っていたら、原作小説は本格ミステリ大賞受賞作なんですね! 本格ミステリとしてのこの作品の位置づけは下記記事参照(筆者は私ではありません)。

anond.hatelabo.jp

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生前の七瀬かりん

 

 

空挺ドラゴンズ

ジローとカーチャの恋模様が好きでした。カーチャが街に残ったのにはもの悲しさが残りましたね……

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ジローとカーチャ

 

 

ゲゲゲの鬼太郎(6期)

深夜アニメではないのですが、今年3月をもって2年間にわたる放送が終了したのでここで感想を。

個人的な話をすると、記憶のある限り(少なくとも小学生以降は)、私は日曜日の朝にテレビアニメ(や特撮)を見るという習慣はありませんでした。そんな中で2年前から見始めたこの作品ですが、大いに楽しませてもらいました。子供向けの枠にもかかわらず、むしろ深夜アニメ的な現代社会への風刺にあふれた作風はかなり好みでした。

個人的なベストエピソードは、ねこ娘のバレンタインループ回です。30分という短い枠で見事にループものを描き切った脚本構成は見事です。他には、学校の怪談目玉おやじの肉体復活妖怪漫画家子ねこ娘外国人労働者チンさんなどが印象に残っていますね。第7期は2030年? 期待しています。

 

 

恋する小惑星(アステロイド

容赦なく時間が進んで3年生が卒業してしまうスピード感は、小惑星を見つける」というテーマに対して真摯さを感じました。

桜先輩が好きだったので、主人公かと紛うくらいのエピソードがいくつかあったのは嬉しかったですね!

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ツンデレキャラの笑顔の破壊力……!!

 

 

SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!

4人の仲が深まってきて、ルフユに対して他の3人が「何でもかんでもルナティック」でいじる展開が好きでした。

結局、この作品の曲を4つも購入してしまいました。OP曲「ヒロメネス」、ED曲「キミのラプソディー」、第1話挿入歌「エールアンドレスポンス」、第6話挿入歌十六夜ゐ雪洞唄(マシマヒメコ ver.)」の4つです!

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照れるヒメコ

 

 

スター☆トゥインクル プリキュア

こちらも深夜アニメではないのですが、今年2月をもって1年間にわたる放送が終了したのでここで感想を。

個人的な話になりますが、プリキュアシリーズを見たのは本作が初めてでした。前作の「HUGっと!プリキュア」がネット上で度々話題になっていて気になっていたので本作を見始めた次第です。

女児向けアニメということは、未就学児~小学生あたりを対象としているはずですが、存外に難しい要素が出てきたような気がします。カッパードの「プリミティブ(原始的な)」という言葉は大人でも分かる人は少数派な気がしますし、最終話の夢オチ的な展開は子供には難しいと思います。やっぱり大きなお友達向けでは……?

ちなみに、現在放送中の「ヒーリングっど♡プリキュア」も見ています。

 

 

ソマリと森の神様

当初は父親と娘のほんわかストーリーかと思っていましたが、「人間が捕食対象」という設定を知ってからは、何気ないシーンにも緊張感が出てきましたね。

原作がどうなっているのかは把握していませんが、どうせなら来るべき「最期」を見たかったところです。

 

 

ダーウィンズゲーム

媒体の種別を問わず一時期は大いに流行ったデスゲームジャンルですが、最近では落ち着いてきたところにこの作品が登場しました。やっぱりデスゲームは面白いですね!

でも相変わらず主人公は(強過ぎるというよりは)運が良過ぎではありませんか? なんであんなに銃弾が当たらないんですかね。やっぱり最強シギルはシュカの「クイーン・オブ・スローン」じゃないですか?

 

 

ネコぱら

今期アニメの中で一番ED映像が好きでした。ネコたちの成長記録は微笑ましいかったです。

あと、「ネコ」概念、ひいては「人間」概念を考えさせられるアニメでしたね!

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現場ネコのパロネタ

 

 

群れなせ!シートン学園

ジンの獣に対する容赦のない姿勢は好きでした。あと、ED曲も含めてランカの声(CV:木野日菜)はハマリ役でしたね!

個人的には、ネアンデルタール人は現世人類との生存競争に敗れた」だけでなく、「最新の研究では現生人類にはネアンデルタール人の遺伝子が混じっていることが判明している」という要素を盛り込んでほしかったです!

 

 

ランウェイで笑って

この作品は今期の私の贔屓作品ということで、各話ごとに感想記事を書きました(ランウェイで笑って カテゴリーの記事一覧 - 小説・ラノベ・アニメ・漫画の感想・おすすめブログ )。育人も千雪も心も応援したくなる作品でした。それだけに、最終話の結果発表は心苦しいものがありました。

テンポが非常に良かったため原作9巻までがアニメ化されましたね。原作漫画は15巻まで出ているので是非手に取ってみてください!

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千雪にとっての育人、育人にとっての千雪がいるような青春を送りたかったものです……

 

 

理系が恋に落ちたので証明してみた。

どんなイロモノかと思っていたら、上質なラブコメでした。高校生のラブコメ作品ばかり溢れていますが、(ラブコメに限らず)大学が舞台の作品をもっと見たいですね!

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個人的には奏が雪村に惚れて三角関係になって欲しかった……

 


さて、以上が2020冬アニメの感想です。春アニメも楽しみですね!

ちなみに、私の春アニメ の贔屓作品は、乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」です! 第1話が既に放送されましたが、質も評判も上々ですよ!!

irohat.hatenablog.com

 

 

 

 

2020年3月に読んだ小説・ライト文芸・ライトノベルのおすすめ

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相沢沙呼『マツリカ・マジョルカ』(角川文庫)

 

この記事では、2020年3月に読んだ小説(一般文芸)・ライト文芸(キャラクター小説)・ライトノベルを、あらすじと一言コメントを付して紹介します。

※女性が主人公(語り手)の作品には「★」を付しています。

 

 

一般文芸

 

『ヅカメン!お父ちゃんたちの宝塚』(宮津大蔵)

「女なのに男の格好をして…一体どこがいいんやろ?」鉄道員一筋だった多々良源蔵は定年直前、それまで全く関心のなかった宝塚歌劇団の“生徒監”に任命された。突如娘たちの“お父ちゃん”となったことに戸惑いつつも真摯に向き合ううち、その眼差しに変化が―。大道具、プロデューサー、演出、父兄…タカラヅカを支える男たち=ヅカメンが織りなす、七つの奮闘物語。

当ブログ激推し漫画『かげきしょうじょ!!』の読者ならきっと楽しめる小説です。

ヅカメン!  お父ちゃんたちの宝塚 (祥伝社文庫)

ヅカメン! お父ちゃんたちの宝塚 (祥伝社文庫)

  • 作者:宮津大蔵
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: 文庫
 

 

『臨床探偵と消えた脳病変』(浅ノ宮遼)

医科大学の脳外科臨床講義初日、初老の講師は意外な課題を学生に投げかける。患者の脳にあった病変が消えた、その理由を正解できた者には試験で50点を加点するという。正解に辿り着けない学生たちの中でただ一人、西丸豊が真相を導き出す―。第11回ミステリーズ! 新人賞受賞作「消えた脳病変」他、臨床医師として活躍する後の西丸を描いた連作集。

表題作「消えた脳病変」は、新人賞受賞作なだけあって質の高いミステリとなっています。医師の責務・倫理が説かれているところも良かったですね。

臨床探偵と消えた脳病変 (創元推理文庫)

臨床探偵と消えた脳病変 (創元推理文庫)

  • 作者:浅ノ宮 遼
  • 発売日: 2020/02/19
  • メディア: 文庫
 

 

『高校入試』(湊かなえ

県下有数の公立進学校・橘第一高校の入試前日。新任教師・春山杏子は教室の黒板に「入試をぶっつぶす!」と書かれた貼り紙を見つける。迎えた入試当日。試験内容がネット掲示板に次々と実況中継されていく。遅れる学校側の対応、保護者からの糾弾、受験生たちの疑心。杏子たち教員が事件解明のため奔走するが……。誰が嘘をついているのか? 入試にかかわる全員が容疑者? 人間の本性をえぐり出した、湊ミステリの真骨頂!

元々は湊かなえ氏脚本のドラマを小説化したものです。ドラマ化が前提のためか、小説版では登場人物が覚えにくいので、ドラマを見た方が良いかもしれません。

高校入試 (角川文庫)

高校入試 (角川文庫)

  • 作者:湊 かなえ
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 文庫
 
高校入試 シナリオコンプリート版 DVD-BOX

高校入試 シナリオコンプリート版 DVD-BOX

  • 発売日: 2013/04/17
  • メディア: DVD
 

 

『宝の地図をみつけたら』(大崎梢

小学生の頃、祖母からこっそり手に入れた「金塊が眠る幻の村」の地図。それは晶良と伯斗の友情の証、そして秘密の冒険の始まりだった。「探しに行かないか、昔みたいにふたりで」。渋々と宝探しを再開する晶良だったが、直後、伯斗の消息が途絶えてしまう。代わりに“お宝”を狙うヤバイ連中が次々に現れて…!? 手に汗握る“埋蔵金”ミステリー!

いわゆる冒険小説です。「埋蔵金」「隠れ里」「冒険」などがお好きな場合にはお勧めします。

宝の地図をみつけたら (幻冬舎文庫)

宝の地図をみつけたら (幻冬舎文庫)

  • 作者:大崎 梢
  • 発売日: 2019/04/10
  • メディア: 文庫
 

 

『盤上の敵』(北村薫

我が家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻・友貴子が人質にされた。警察とワイドショーのカメラに包囲され、「公然の密室」と化したマイホーム!末永純一は妻を無事に救出するため、警察を出し抜き犯人と交渉を始める。はたして純一は犯人に王手をかけることができるのか? 誰もが驚く北村マジック。

終盤の二転三転する真相の展開には驚きました。北村ミステリーの真骨頂の一つです。

盤上の敵 (講談社文庫)

盤上の敵 (講談社文庫)

  • 作者:北村 薫
  • 発売日: 2002/10/16
  • メディア: 文庫
 

 

『復讐教室 連鎖』(山崎烏)

ある晩、中学3年生の愛川広樹は、目の前で恋人の中野美幸をレイプされた。数日後、美幸は自殺する。周囲から“恋人を売った”と責められ、失意のまま高校に入学した広樹は、美幸をレイプした犯人が元クラスメイトだと知る。高校で出会った少女・赤嶺由奈とともに、広樹は元クラスメイトへの復讐を開始した―。

第1作『復讐教室』に引き続き、どちらかというと画面映えする作品です。実際、コミカライズもなされているようです。

復讐教室 連鎖 (双葉文庫)

復讐教室 連鎖 (双葉文庫)

  • 作者:山崎 烏
  • 発売日: 2014/05/15
  • メディア: 文庫
 
復讐教室 : 1 (アクションコミックス)

復讐教室 : 1 (アクションコミックス)

 

 

『彼女は死んでも治らない』(大澤めぐみ)★

沙紀ちゃんはいつも殺されがちな最高にかわいい女の子。わたしは普通じゃないレベルで彼女のことが好きだから、凶悪な犯人をなんどでも見つけ出してやる!と、四六時中息巻く神野羊子は、高校に入学早々、校内で蓮見沙紀の死体を発見。彼女の命を救うため、すかさずお得意の推理を巡らせる―。個性的なキャラクターと唯一無二の文体が織りなす超絶コージーミステリー!

軽妙な語り口は癖になります。

彼女は死んでも治らない (光文社文庫)

彼女は死んでも治らない (光文社文庫)

 

 

「マツリカ」シリーズ(相沢沙呼

柴山祐希、高校1年。クラスに居場所を見付けられず、冴えない学校生活を送っていた。そんな彼の毎日が、学校近くの廃墟に住む女子高生マツリカとの出会いで一変する。「柴犬」と呼ばれパシリ扱いされつつも、学校の謎を解明するため、他人と関わることになる祐希。逃げないでいるのは難しいが、本当は逃げる必要なんてないのかもしれない…何かが変わり始めたとき、新たな事件が起こり!?やみつき必至の青春ミステリ。

※上記あらすじは第1作『マツリカ・マジョルカのもの。第2作『マツリカ・マハリタ』第3作『マツリカ・マトリョシカと続く。

ドS女子高生探偵・マツリカとその飼い犬のドM男子高校生・柴山祐希による「日常の謎」学園ミステリーです。祐希が物語の語り手なのですが、かなり深く内面描写がなされていて、少し耽美的です。エスっ気のある女性、エムっ気のある男性、女の子の太腿が好きな人は読むべきでしょうね。

第1作・第2作は連作短編集でしたが、第3作は「日常の謎」にもかかわらず長編、しかも第18回本格ミステリ大賞候補作にノミネートされるほどの完成度を誇っています。

 

 

ライト文芸

 

『レールアテンダントガール 車内販売にまいりました!』(豊田巧)★

念願叶って、新幹線の車内販売を担当するJCS(ジャパンカフェテリアサービス)に就職した木古内七海。彼女の夢は、特別車両であるグランクラスの専属アテンダントになること! とはいえ、新米アテンダントの七海にとってそれはまだまだ遠い先の話で、先輩や同期、周囲の人たちに支えられつつ、なんとか日々の業務をこなすのに精一杯。車内で出会うお客様も千差万別で、修学旅行生、出張する会社員、そして何やら怪しい集団――!? 業務にハプニングはつきもの……だけど事件はご勘弁ください! 鉄道エンタメ小説の第一人者が贈る、読むと元気になるお仕事小説。

新幹線の車内販売のお仕事小説です。この本を読んだら、新幹線の車内販売を利用したくなりました。

 

 

ライトノベル

 

『プロペラオペラ1~2』(犬村小六

極東の島国・日之雄。その皇家第一王女イザヤ18歳。彼女は、重雷装飛行駆逐艦「井吹」の艦長である。もちろん乗組員全員彼女の大ファン! そんな「井吹」に突然部下として乗り込んできたのは、主人公クロト。皇族傍系黒之家の息子クロトはイザヤとは幼なじみだったが、ある日、彼女に対し最っ低の事件を起こして皇籍剥奪、敵国ガメリア合衆国へと逃亡したのであった。お前、どの面下げて!? しかしクロトは言い切る、「俺はガメリアを牛耳る怪物から日之雄を守りに帰ってきた!」犬村小六の「恋と空戦のファンタジー」堂々開幕!!

空戦スチームパンク作品です。飛行艦による空戦が見どころの一つなので、是非映像化して欲しいですね!

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

プロペラオペラ (ガガガ文庫)

 

 

『最低皇子たちによる皇位争「譲」戦』(榎本快晴)

望みはただ一つ、働きたくない。皇位の『譲り合い』勃発!ニート気質の第四皇子・四玄は、ある日いきなり次期皇帝の指名を受けてしまう。やる気のない彼に指名が回ってきた理由はごく単純―他の皇子たちもまた、クズ揃いだったのである。街頭露出行為に走る者、売国行為を仄めかす者、仮病で血を吐く者。卑劣な策略に出し抜かれ、四玄はあれよあれよという間に次期皇帝の筆頭候補へと追い込まれてしまう。そんな中で四玄が打った逆転の秘策は『城下で拾ってきた少女を第五皇子にでっち上げる』というもので―!?バカしかいない新感覚異世界コメディ、開幕!

同時期に同レーベルから出版された「皇位争奪戦を裏から操ってます」系の方は、「いかにも」な感じがして手が伸びなかったのですが、こういうコメディ路線だと嬉しいですね。期待に違わず面白かったです! 続編期待!!

 

『デスニードラウンド1~3』(アサウラ)★

多額の借金を持つ女子高生のユリは返済のために、銃を持ち、己の命をリスクに晒す……そんな危険な傭兵稼業に手を出した。彼女は合法・非合法を問わず危険な仕事を請け負う「死に損ない」ばかりの松倉チームで仕事を始めるが、なぜか連れて行かれたのは都内のバーガーショップ。「こ、これ、ヤバくないですか!? 超ヤバイですよね!?」 ユリの初仕事は、なんとバーガーショップのマスコットキャラクターを襲撃することだった…! 不可思議な仕事依頼をきっかけに、銃弾と血と笑い声が飛び交う常軌を逸した夜が始まる──ユリは未来を切り開くために戦い抜けるのか!?

作者の銃火器好きが伝わってきます。ファンタジーでも、(たぶん)異能モノでもなく、銃火器と肉体で戦うのは好きですね。あと、訴えられるかもしれないレベルのキャラクターをモチーフにした敵役が登場するのも良いですね!

 

『王女殿下はお怒りのようです1~3』(八ツ橋皓)★

王女であり最強の魔術師のレティシエルは、戦争によって命を落とし、千年後の世界へと転生した。彼女は魔力がないため周囲から無能令嬢扱いされるが、レティシエルの“魔術”は使えて拍子抜け。その後学園でレティシエルは、千年後の“魔術”を目の当たりにし―そのお粗末さに激怒した!我慢ならないレティシエルが見せた“魔術”は学園を震撼させ、やがて国王の知るところとなるが、レティシエルは“魔術”の研究に夢中で全く気付かず―!? 前世の伴侶によく似た少年・ジークと落ちこぼれの令嬢・ミランダレットを巻き込んで、生まれ変わった王女殿下は我が道を突き進む!常識外れの最強魔術譚、開幕!!

女性主人公モノの学園魔法ファンタジーが読みたい方にはお勧めです。

 

『最強の傭兵少女の学園生活 少女と少女、邂逅する』(笹塔五郎)★

伝説の傭兵エインズ・ワーカー。彼には、拾い育てた娘同然の傭兵少女―シエラという子がいた。…なのだが―、「俺は傭兵を引退する」エインズの突然の引退宣言。戦場以外の世界を知らないシエラは、エインズの言いつけで王都の学園に単身通うことになる。傭兵の経歴を隠す生活は窮屈だったが、シエラは孤独な貴族令嬢のアルナと出会い、友情を育む。しかし王位継承争いにアルナが巻き込まれ、暗殺者の手が迫ったことで事態は一変。アルナを守るため、シエラはエインズ譲りの最強の力を振るうことを決意する。世間知らずの最強傭兵少女が繰り広げる、ガールズバトルファンジー!堂々開幕!!

百合に分類されるガール・ミーツ・ガール作品です。

 

『転生特典でコミュ力に全振りしたわたし最強でかわいい!』(神庭武敏)★

―今度こそ友達を作りたい!そんな想いを胸に命を落とした超コミュ障は、異世界で死にかけの美少女・エリシアとして転生!そして選んだ転生特典は、天下無敵のコミュニケーション能力。えっ、コミュ力って魔道具や大気中の魔素とも仲良くなれんの?魔法の才能を認められ王都の魔法学園に通ったら、すったもんだの末に良家のお嬢様たちとも仲良しになれました。念願のリア充ライフを謳歌するもくだらない貴族学校から逃げて今度は冒険者生活スタート!? これは、心から友達が欲しいと願った女の子が、二度目の人生を頑張る物語―。第6回集英社ライトノベル新人賞・特別賞受賞作品!

ハイテンションな筆致がクセになる、女性主人公モノの異世界転生ファンタジーです。アニメ化もされた『私、能力は平均値でって言ったよね!?』が好きな人はこの作品も気に入ると思います。

 

『転生従者の悪政改革録1~3』(語部マサユキ)

大好きな七海先輩との下校中、異世界転生してしまった勇利。没落貴族の跡取りとして、仕えるワガママ令嬢に会いに行くと―「申し訳ありませんでした!」と華麗な土下座をキメられた。普段と様子の違う令嬢に戸惑う勇利は、ふとした仕草から彼女が同じく転生した七海先輩だと気づく。元の世界に戻るには令嬢(=先輩)が婚約or悪徳貴族がはびこる王宮での成り上がり!? 先輩の婚約回避のため、悪役令嬢とはじめる異世界改革!!

残念ながら第3巻で打ち切りのようです。

 

『所持金ゼロの彼が資産家令嬢から求められるようになった理由』(五木友人)

貧乏生活を送る高校生・天満清太郎が出会ったのはお金持ちJKの美少女探偵!? ひょんなことから美少女の助手となった清太郎は、彼女のお屋敷に居候することに。お嬢様と一つ屋根の下、二人の仲は急接近していくかと思いきや―彼女が求めているのは、彼の貧乏に隠された力だった!? しかし二人で事件を追ううちに、いつしか清太郎自身もお嬢様に求められていくようになって―! 「アンタの貧乏全部ひっくるめて、好きよ、清太郎!」所持金ゼロの高校生が資産家令嬢に愛されまくる!貧乏を幸せに変えていく新感覚の身分差ラブコメディ! 第24回スニーカー大賞金賞受賞作。

あらすじでは触れられていませんが、主人公・天満清太郎の家には貧乏神が憑りついており、その貧乏神というのが、いわゆる「ロリババア」に分類される属性を持っています。

この作品の語り手は、清太郎とこの貧乏神なのですが、やや古風な語り口がクセになります(もちろん読みやすさは失われていません)。私が大好きなタイプです。続編希望!!

 

『姫ゴトノ色』(界達かたる)

高校入学を機に、豪奢な屋敷・姫裏家にて住み込みのアルバイトを始めた僕。和服メイドのイグルミさんによると、屋敷には三姉妹のお嬢様たちがいるらしい。でも長女は不在で次女はなぜか行方不明、三女の姫裏ねむは天使のような見た目なのにわがまま放題。だがのちに、ねむが自分の部屋から出ることができない少女であると知る。その理由は――彼女の視界が、"血色"に染まっているから……?

魔法も異能も登場しない、現代日本を舞台とするミステリーです。

 

『世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)1~2』(黒留ハガネ)

ある日突然、超能力に目覚めた佐護杵光。そしてその力を狙う悪の組織が、突如彼の前に現れ―なかった。隣の家の幼馴染が実は退魔師の子孫だと発覚し―なかった! 謎の美少女が転入し―なかった!! 平和過ぎる日常に逆ギレした佐護は、自分自身が秘密結社になる事を決意する。日本中を探して見つけた有能美女・鏑木栞を副官に引き入れ秘密結社「天照」を創設、資金調達事業も成功。蓮見燈華、高橋翔太という新メンバーも加えたところ、ついに世界を滅ぼす魔王が現れ―なかった! そこで佐護は、とある計画を思いつくことになり…? ひとりの最強能力者が紡ぐ、圧倒的マッチポンプギャグコメディ、開幕!!

超能力に目覚めたにもかかわらずそれを使って活躍する舞台がないから、自分自身で秘密結社のボス(ヒーロー役)と世界の闇(悪役)を兼ねて、非日常を望む少年少女を秘密結社に引き入れて裏事情を知らせないままヒーローになってもらう、というマッチポンプコメディ作品です。超面白いにもかかわらず、第2巻で打ち切りとなってしまったのは非常に残念です。

 

『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』(みかみてれん)★

ぼっちな中学時代を捨て、高校デビューしたわたし・甘織れな子。でも、根が陰キャだから憧れの陽キャ生活に馴染めず、窒息寸前! そんなとき、我が校のスーパースター・王塚真唯とひょんなことからお互いの悩みを共有してヒミツの友達に。真唯がいれば毎日がんばれそう―と思ったはずが! 「君に、恋をしてしまったんだ」「待って!友達どこいった?」恋人なんて不安定な関係、ムリ!わたしは最高の友達を作って高校生活を楽しみたいの! でも真唯も恋心を諦めきれないようで―。「恋人と親友のどちらが私たちにふさわしいか、勝負で決めよう」こうして、ふたりの在り方を懸けたノンストップ・ラブコメディが幕を開けたのだった!

濃厚な百合作品です。真唯のキャラにクセはありますが、真正面から女の子同士の恋愛が描かれている王道百合作品です。

 

『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』(みかみてれん)★

「女同士なんてありえない!…はずなのに!!」 モテ系JKの榊原鞠佳は、ある日、クラスのクールな美少女・不破絢に、突然百万円を突きつけられた。その日から始まる、放課後の○○タイム。頭を優しく撫でたり手を握ったりするところから始まる絢の行動は、日に日にエスカレート!! 果たして鞠佳は、百日目まで絢に「ありえない」と言い張ることができるのか―(できない)。屈服確定!?敗北必至!?鞠佳の百日を巡るガールズラブコメディ!!

同じくみかみてれん氏による濃厚な百合作品です。「わたなれ」に比べると、わりと身体的接触を伴う甘美な描写がありますので、ご注意ください(?)

 

『こわれたせかいの むこうがわ 少女たちのディストピア生存術』(陸道烈火)★

“フウ”―最下層の孤独少女。友は小鳥のアサと、ジャンク屋の片隅で見つけた、古いラジオのみ。“カザクラ”―マイペースな腹ぺこガール。出会った瞬間からフウを「お兄ちゃん」と慕い、陽気な笑顔でつきまとう。そんな二人が出会ったここは、世界にただ一つ残るヒトの国。異形の怪物たちが支配する果てなき砂漠の真ん中で、ヒトビトは日々の貧苦を喜びとし、神の化身たる王のために生きねばならない―。だが、彼女たちが知る世界は、全部大ウソだった。たくさんの知恵と一握りの勇気を胸に。今、“世界一ヘヴィな脱出劇”が始まる。第26回電撃小説大賞“銀賞”受賞作。風の名を持つ、二人の少女の物語。

やや近未来SFの要素もあるディストピア百合作品です。第26回電撃小説大賞で大賞を受賞した二月公『声優ラジオのウラオモテ』(電撃文庫)と同じく、ラジオが物語の重要なツールになっているのが嬉しいですね。続編希望!!

 

『住職探偵』(建待吉作)

探偵・笹峰誓之助は住職の不貞を暴き別れるよう警告するが、逆に自身の過去をバラまかれ、探偵会社から自主退職を促されてしまう。さらに住職は本山に手を回し、依頼人であった妻・受海を隔絶された山奥の寺に異動するよう辞令を出させた。受海には難病を抱えた一人息子がおり、大きな病院もない山奥での生活は困難だった。妻と実の息子への非情な仕打ちに憤った笹峰は、僧籍に入っていた過去の立場から、受海の代務者として奥世郷に向かうことになる。そこで笹峰は、独自の信仰を持つ「厖蔵宗」の存在を知らされる。笹峰は信仰深い郷に紛れ込む異分子、厖蔵宗の正体を暴こうとするのだが―。限界集落で起こる連続猟奇殺人の真相とは!?

ラノベレーベルから刊行されていますが、どちらかというと一般文芸やライト文芸に分類されるべき作品かもしれません(挿絵もありません)。

独自の宗派が信仰されている隠れ里を舞台とするサスペンス・ミステリーです。ワクワクする設定ではないですか? 作者が現役住職という異色の作品で、作中で語られる宗教観も見どころです(説教臭くはないですよ!)。あと、あのラストは作者の性癖でしょうか?

住職探偵 (ヒーロー文庫)

住職探偵 (ヒーロー文庫)

  • 作者:建待 吉作
  • 発売日: 2020/02/28
  • メディア: 文庫
 

 

 

というわけで、先月は読んだ本の数が多かったので気まぐれに紹介してみました。気が向いたらまたするかもしれません。

追記:4月に読んだ本の報告記事はこちらから↓ 

irohat.hatenablog.com

 

 

 

アニメ「はたらく細胞」の特別編が無料公開されているのはご存知ですか?

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はたらく細胞

 

hataraku-saibou.com

先日、第2期2021年1月に放送されると発表された人気アニメはたらく細胞ですが、2019年7月より特別編YouTube上で無料公開されているのはご存知でしたか?

 

この特別編は、ポカリスエット」(大塚製薬)とコラボした熱中症対策のための啓発動画で、半ばポカリスエットの宣伝となっているのですが、これまでと同じく勉強になるアニメとなっています。

pocarisweat.jp

 

テレビ放送を見ていない人でも十分理解できて楽しめる内容となっています! ぜひご覧ください!(尺は約10分)

 

第11.5話「熱中症~もしもポカリスエットがあったら~」

www.youtube.com

 

 

まだまだ先ですが、第2期の放送が楽しみですね!

 

2020冬アニメで購入したOP・ED曲

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Mashumairesh!!「ヒロメネス/キミのラプソディー」

 

2020冬アニメもそろそろ終わりが近づいてきましたが、この記事では、冬アニメのOP曲・ED曲・挿入歌のうち、私が購入した曲、購入する予定の曲(全10曲)を紹介したいと思います。

※動画サイトへのリンクは公式のものしか貼っていません。

 

 

1.「映像研には手を出すな!」OP曲

曲名:Easy Breezy

歌手:chelmico

アニメのPVのBGMとして使われているのを聴いて、放送が始まる前から購入を決意していました。どうやらこの曲をきっかけにchelmicoが売れ始めているようで、MUSIC STATIONにも出演していましたね!

OP映像↓

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MV↓

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2.「ランウェイで笑って」OP曲

曲名:LION

歌手:坂口有望

シンガーソングライターの坂口有望による曲です。主人公の藤戸千雪や都村育人の境遇に寄り添った歌詞です。

MV↓

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3.「理系が恋に落ちたので証明してみた。」OP曲

曲名:PARADOX

歌手:雨宮天

氷室菖蒲のCVを担当する雨宮天さんが歌う曲です。「ルート」「0か1か」「グラフの右肩上がり続けて」などの理系用語が盛り込まれつつも、良質なラブソングになっています。

OP映像↓

www.youtube.com

MV↓

www.youtube.com

 

 

4.「理系が恋に落ちたので証明してみた。」ED曲

曲名:チューリングラブ feat. Sou

歌手:ナナヲアカリ

OP曲と同様にこちらも、「なんでか教えてオイラー」「感想きかせてフェルマーなどの科学史の偉人の名前を織り込むなど理系要素満載ですが、良質なラブソングになっていますよ。

ED映像↓

www.youtube.com

MV↓

www.youtube.com

 

 

5.「空挺ドラゴンズ」OP曲

曲名:群青

歌手:神山羊

シンガーソングライターの神山羊さんによる曲です。ボカロ出身らしくメロディーがよく練られている感じがします。最後の「いつかこの人生の秘密を暴いたら迎えに行くから」という歌詞が頭に残ります。

MV↓

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6.「空挺ドラゴンズ」ED曲

曲名:絶対零度

歌手:赤い公園

Aメロの「泳いでみせてきやしゃんせ」という言葉遣いと、最後の「天と地を裏返してやれ」という歌詞が頭に残ります。サビはもちろん全編にわたってメロディーが癖になりますね。

ED↓

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7.「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」OP曲

曲名:ヒロメネス

歌手:Mashumairesh!!

第6話「ヒロメネス」を見た後だと、いろいろと考えますね。

試聴動画↓

www.youtube.com

 

 

8.「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」ED曲

曲名:キミのラプソディー

歌手:Mashumairesh!!

第1話を見終わった後、直ちに購入を決意した曲です。メロディーがかなり好きです。

ED映像↓

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9.「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」第6話挿入歌

曲名:十六夜ゐ雪洞唄(徒然なる操り霧幻庵)

歌手:マシマヒメコ(CV:夏吉ゆうこ)

Mashumairesh!!の中ではマシマヒメコの声質が一番好きなのですが、そんな彼女の歌唱力を堪能できる一曲です。こういう和テイストな曲は好みです。

試聴動画(1:49あたりから)↓

www.youtube.com

 

 

10.「SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!」第1話挿入歌(4月1日発売)

曲名:エールアンドレスポンス

歌手:Mashumairesh!!

「キミのラプソディー」と同様に、第1話を見終わった後、直ちに購入を決意した曲です。リリース版でどうなるかは分かりませんが、アニメ第1話で披露された1番のヒメコのリードボーカルの声が好きです。

ゲームプレイ動画↓

www.youtube.com

 

 

 

これらの他にも、追加で購入するかもしれません!

 

 

 

アニメ「ランウェイで笑って」第9話の感想・考察――千雪流の本気の実行方法と育人の本気

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第9話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。

見逃した方は、毎翌月曜深夜26:55から最新話がTVer無料配信されています(https://tver.jp/anime)。その他の配信情報は公式HPを!

第8話の感想記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第9話「好敵手(ライバル)」

相当する原作のエピソード:第6巻第49話「まるで台風」、第50話「今日から君は」、第7巻第51話「本気でやらなきゃ」、第52話「嫌な性格」、第53話「ぶっ潰す」、第54話「タイムフライズ」

パリから帰国した千雪に「芸華祭で自分のショーに出てほしい」と誘う育人だったが、柳田との関係を修復するため、アトリエに連行されてしまう。そこで、モデルの仕事に向かおうとしていた心に出くわす。心が本気でデザイナーを目指していると知った千雪は、マネージャーの五十嵐と対峙するのだった。

 

 

1.弱っている千雪

第9話の冒頭は、育人が自分のショーに出てくださいと千雪を誘うシーンから始まります。第8話の記事でも書きましたが、ここの千雪の独白からの流れが良かったですよね!

「藤戸千雪というモデルを必要としてくれる場所はない。現場も、実の父親も、憧れの人からだって、一度見放された。それなのにどうして、どうして君は、いつだって……いてほしいときにそこに現れて……私はそんな君の言葉に救われちゃうんだ」の流れからの育人のオファーは最高です!

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涙を流す千雪

そんなことがあったものですから、千雪は思わず涙を流し、弱音をこぼしてしまいます。そんな千雪を育人は「しおらしくて可愛い」と形容します。アニメではここで千雪がビンタをしてこのシーンは終わったのですが、原作では千雪のもっと「調子が狂う」様子が見られます(第6巻第49話)。ここは是非読んでみてほしいところです!

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「しおらしくて可愛い……」

 

 

2.相変わらずの育人

育人にショーに出てほしいと言われた千雪ですが、他のモデルとのバランスを心配し、「他のモデルはどうするの?」と問いかけます。

これに対して育人は、「風ってコンセプトは千雪さんから連想したんですよ。台風の風は中心気圧の数字が小さいほど、強く吹くらしいんです。台風みたいに人の迷惑を考えずに突き進んだり、ときには背中を押されたり、暖かくて心地よかったり。ねっ? 千雪さんっぽくないですか? 僕のショーのメインは千雪さんです」と答えました。

100点満点の回答です。もちろん、ここには育人と千雪の支え合ってきた関係が基礎にあります。でも、この言葉は、相変わらずの女たらしです。

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「ねっ? 千雪さんっぽくないですか?」

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「僕のショーのメインは千雪さんです」

 

 

3.千雪流の本気の実行方法

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 修羅場……?

育人とともに柳田のスタジオに訪れた千雪は、長谷川心と出会い、育人が話していた人物は千雪が既に会っていたあのモデルであることが判明します。修羅場にこそなりませんでしたが、双方とても驚いたようです。

さて、再会したのも束の間、心は撮影の予定があるためすぐに出発しました。が、千雪は心を追いかけ、「本気なら、今、抵抗しろー!」と叫びます。

原作ではここに千雪の独白がありました(第6巻第50話)。

ムカつくな。わたしが望んでも手に入らないもの全部持つ才能も、それを全部捨てようとしている浅はかさも、本気とか言いながら中途半端に従ってるところも。……ただ、わたしも大概、たったひとつのために全てを捨ててる人間だからね。浅はかなバカは嫌いじゃないんだ。

ここから、千雪が自分と心と重ね合わせていることが分かります。

心は、初めて千雪に出会った撮影の帰りに、千雪のモデルに対する本気に触発され、「五十嵐さん、モデルを辞めさせてください!」「私は本気で服を作る人になりたいんです!」デザイナーになりたいという夢に対する本気を宣言しました。このときから千雪は、心が自分と同じく、本人の意思に反して境遇が夢を許してくれない状況にいることに気付いていたはずです。

千雪は、自分と同じ状況にいる心が五十嵐に押し流されて中途半端にモデルとデザイナーの両立をしていることにムカつきます。そして、そんな心に対して千雪は、「モデルに必要ないことはほとんど切り捨てちゃう」(第6話)という千雪流の本気を実行する方法を教えたのです。

そんな千雪の言葉に触発された心は、「低身長モデルの千雪というハンデを背負ってショーでトップを獲れば心はモデルを辞める、トップを獲れなければ心は大学を辞めてモデルに専念する」ことを五十嵐と約束しました。まさに千雪流の本気を実行する方法です。

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「私は、長谷川心のショーに出る!」

 

 

4.千雪と育人の関係――「好敵手(ライバル)」

同じ場面なんですが、千雪が「育人、いい?」と、心のショーに出ることについて育人にきちんと尋ねているのが何か良いですよね。千雪のキャラならこういうシーンなしに押し切れることもできたはずですが、きちんと描かれているのが嬉しいところです。

そして、心や五十嵐と別れた後、育人は千雪から「育人、負けてあげようとか変なこと考えてないよね。私は、本気の育人と戦いたい。育人は私の中で一番の好敵手(ライバル)だから。遠慮しないで」と言われます。

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「ありがとう、育人。次はライバルだ」

千雪が育人との関係性を育人に伝えたのは(たぶん)初めてです。今までは、独白であったり育人以外の人には言っていたりしていましたが、今度は本人に伝えました。

「都村君には負けたくないでしょ」(第3話)

「こんな仕掛けしちゃって。あいつめ、ヘタレのくせに。私が引っ張って助けなきゃ、心もとない男子のくせに」「都村君のくせに、君ってヤツは、ムカつくくらい私の窮地を救っちゃうんだ」(第3話)

「育人のこと、結構、尊敬してるんだ」(第6話)

「友達が作ってくれました」(第6話)

「どうして君は、いつだって……いてほしいときにそこに現れて……私はそんな君の言葉に救われちゃうんだ」(第9話)

「育人は私の中で一番の好敵手(ライバル)だから」(第9話)

千雪が育人に対して「好敵手(ライバル)」と伝えたのは、育人に手を抜いてほしくなかったためです。もちろん、育人のことを「友達」だと思っていない訳ではありません(実際そうであると言っていますし)。しかし、仮に2人の関係性が「友達」であると育人に伝えていれば、そこに馴れ合いが生じかねないからこそ、千雪は「好敵手(ライバル)」だと伝えたのです。千雪も心も夢に向かって本気だからこそ、「私は、本気の育人と戦いたい」からこそ、「好敵手(ライバル)」だと伝えたのです。

 

 

5.育人の本気

しかし、千雪が「好敵手(ライバル)」だと伝えたにもかかわらず――むしろ伝えた理由がそこにあったと言うべきですが――育人は(ある種良い意味で)本気でショーに挑めるような心理状態になっていませんでした。育人はこんなことを独り言ちていました。

「遠慮なんかじゃないんですよ。僕は最初から心さんに、千雪さんに、報われてほしいんです」

「綾野さんに才能ないって言われて、悔しいって思った。デザインを買わせてほしいの言葉に、もっともっとデザイナーになりたいって思った。『見返したい人いる?』『じゃあやってやろうよ』って問いかけに、ワクワクした。でもそのどれもが、心さんの将来と天秤にかけるには軽すぎる。だって今は無事にショーに出られるだけでこんなにも嬉しい」

 このように、ショーに挑むには優しすぎる、あるいは闘争心に欠ける育人は、母親から遺書を見せられます。そこには母が死ぬまでにしたいこととして、「育人のファッションショーを見に行きたい」と書いてありました。

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「家族みんな育人の応援に行くから」

これを見て、育人は「負けられないな。本気でやらなきゃ」と覚悟を決めました。この母親の言葉によって、育人は千雪や心の「好敵手(ライバル)」として戦う気持ちになれましたし、また、綾野遠に対して「僕は綾野さんにも勝つつもりでいますよ」と遠を見返す旨の宣言をし、さらには、遠とショーのテーマが被っても真っ向勝負する気になれたのでした。

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「負けられないな。本気でやらなきゃ」

 

 

6.育人の才能

実は、第9話では育人の非凡な才能が描かれていましたが、気付きましたか?

ファッションショーまでの流れは、以下のようになっています(原作第6巻第49話171頁以下参照)。

① テーマ決め

② 本番までの制作スケジュールの策定

③ デザイン画の作成

④ パターン作成、素材・付属物の考案

⑤ サンプル作成

(④~⑤の繰り返し)

⑥ 素材手配

⑦ 服完成

という感じになります。

しかし、育人は、江田龍之介に対して「僕とチームは組んでくれないんですよね?」と確認した上で、「一人で作るからデザイン画なんていらないっか!」とデザイン画を作らない旨の発言をしたのです。

普通なら、④デザイン画を基にパターンを作成し、⑤それに沿ってサンプルを作成する、を繰り返す試行錯誤が必要なはずです。しかし、育人は、このような試行錯誤は必要なく、あとは脳内デザイン/脳内パターンを基に、⑥素材を手配し、⑦服を完成させるだけだと言っているのです。試行錯誤に人手と時間を取られる必要が無いからこそ、育人はチームメイトがいなくても一人でショーに挑むことができたのです。とんでもない才能です。

 

 

 

さて、次回第10話「負けられない」は、いよいよ芸華祭ファッションショーの本番です。いったいどのようなショーになるのでしょうか?

 

 

 

『かげきしょうじょ!!』第9巻の感想・考察――渡辺さらさの因縁、奈良田愛の方針

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『かげきしょうじょ!!』第9巻

 

この記事は、斉木久美子『かげきしょうじょ!!』第9巻(2020年3月5日発売)感想・考察を書き連ねた記事です。ネタバレにはご注意ください!

 

『かげきしょうじょ!!』に関するその他の記事については、以下をご参照ください!

 

 

101期生が登場!

 

伊賀エレナ

 

運命の出会い?

注目すべき101期生の一人目は、財閥令嬢の伊賀エレナです。

初登場時、遅刻して焦るエレナは階段を踏み外し、あわや大怪我というところをさらさに助けてもらいました。あんな助けられ方されたら、異性同性問わず惚れてしまいますよね!

エレナとの別れ際、さらさは「それじゃっ、次に落ちる時は飛行石を忘れないで下さいね!」ラピュタネタを言いウインクして別れました(15頁)。さらさだけではありませんが、紅華乙女の生態なのか、彼女たちには日常にドラマtチック(歌劇的)な要素を取り入れたがるキザな部分がありますよね。しかし、一般人だったら似合わないようなキザな言動も、紅華歌劇音楽学校に入学できるような彼女たちがすると、また特に高身長に恵まれたさらさがすると、絵になります

というか、さらさはラピュタがかなり好きなようです。その後、伊賀エレナのことを「シータちゃん」と呼んだり(28幕43頁)、以前にはバルス並の眩しさでムスカっちゃいましたよ~!」なんて意味の分からないことを考えていたりもしていました(3巻9幕24頁)。もしかしたら、他のところにもラピュタネタがあるかもしれませんね。

 

遅刻した理由

エレナ初登場時の場面をよくよく振り返ってみると、エレナが遅刻した理由を不思議に思わなければなりません

紅華歌劇音楽学校の寮は基本的に相部屋のはずです。すべて二人部屋だと仮定すれば、101期生は全40名で余りが出ないので、エレナにもルームメイトがいるはずです。そうだとすれば、(ルームメイトと共に遅刻するのではなくエレナだけが遅刻したということは)エレナはルームメイトに起こしてもらえなかった、ということになります。

ルームメイトがエレナを起こさなかった理由としては、まず、財閥令嬢に気後れしてしまい起こせなかった、という可能性が考えられます。しかし、他人に興味がないルームメイトがわざわざエレナを起こさなかった、という可能性も考えられます。

前者の可能性については、むしろ、起こさなかったことに対する財閥令嬢の報復(?)を恐れるのが人の心理であるため、こちらはなさそうな気がします。その一方で、後者の可能性については、これにピッタリと当てはまりそうな101期生がいます。そうです。エレナのルームメイトは澄栖杏ではないでしょうか杏であれば、財閥令嬢であっても我関せずといった態度を貫き通しそうではありませんか? ただ、28幕36-37頁の伊賀エレナと澄栖杏の会話は、初対面のような感じで、あまりルームメイトっぽくないんですよね……。いずれにせよ、ルームメイトの情報は、第10巻以降で明らかになるかもしれません。

 

スリードには引っかかりましたか?

(キャラクター一覧は読み飛ばして)第28幕を初めて読んだとき、「こっちが伊賀エレナだったのか!」って思いませんでしたか?

28-29頁や36-37頁の凛とした雰囲気や周りの人に興味なさそうな様子の澄栖杏は「お嬢様然り」といった感じで、彼女こそが伊賀エレナだとスリードされてしまいました

でも、よくよく考えてみれば、伊賀エレナの丁寧な言葉遣いは、まさに良家のお嬢様として教育された感じがしますよね(ちなみに、さらさの丁寧な言葉遣いは、オスカル様になるためです〔8巻26幕100頁参照〕)。

 

澄栖杏

もう一人の注目すべき101期生は、澄栖杏(すみす・あん)です。

第28幕28頁以下の杏の様子を見れば、さらさとは過去に因縁があるようです。

たしかにさらさは100周年運動会で目立ったり文化祭のパンフレットに名前は載ったりしましたが、青田買いするファンや100期生の名前を全員覚えたエレナのように、先輩の名前をチェックするほど熱心ではない性格のようです。

だとすると、この場面で杏が「渡辺さらさ」とつぶやいたのは、やはり過去に何か因縁があったと見るべきではないでしょうか。もちろん、さらさの方は何も知らない様子ですが。

さて、第9巻の本編はいいところで幕切れとなってしまいましたね。年下の先輩、可愛らしいふわふわのツインテール、「さらさ」という一人称から、杏はさらさに幼さを感じてなれなれしい口のきき方をしいてしまったと弁明していました。

もちろん、先輩である以上は敬語を使うべきなのですが、本科生としては痛いところを突かれてしまったようです。でも、さらさのキャラクターだと、杏と親しくなりたいためにタメ口を許してしまいそうなんですよね~

ところで、本科生になった沢田姉妹は風紀委員キャラになってましたね笑(29幕82頁、30幕103頁)

 

指導担当の組み合わせ

 

嬉しい演出

第9巻ではついに101期生の予科生が登場し、100期生の本科生がそれぞれ指導担当につくことになりました。

本科生と予科生が指導担当を決めるときに顔合わせする場面の構図になんだか見覚えがありませんか? 実は、100期生が予科生だったときの『エピソード0』4幕105頁と、100期生が本科生になったときの9巻28幕29頁構図が一緒なのです! 嬉しい演出ですね!

 

組み合わせや如何に

気になる指導担当の組み合わせは、伊賀エレナには奈良田愛が、澄栖杏には渡辺さらさが担当することになりました。

キャラクターの系統でいえば、エレナとさらさ愛と杏という組み合わせが同系統でベストマッチな気がします。特にエレナは早い時期からさらさのことを慕っているようですから。それに、本科生と予科生が顔合わせをする前のガイダンスにおいて遅刻したのは、エレナだけではなく、一年前のさらさもでした(『エピソード0』3幕73頁、9巻28幕9頁)。

とはいえ、エレナと愛、杏とさらさという組み合わせは、今後間違いなく面白くなると言えます。対照的なさらさと愛がルームメイトで当初は上手くいかなかったけれど、今ではすっかり親友なのを見ると、過去の愛と同系統の杏がさらさと出会ってどのように変化するのか楽しみです! もちろん、杏とさらさの間には過去に因縁がありそうなので、そっちも楽しみですね!

 

 

奈良田愛の方針

 

男役か娘役か

文化祭後に安道先生から進路として男役も考えてみるよう提案された愛は悩んだ末、「男役も視野に入れてみる」ことにして(30幕99頁)、「オルフェウスとエウリュディケ」では、オルフェウス(男役)にもエウリュディケ(娘役)にも挑戦しようとします。

ところで、愛がショートカットに髪を切ってきて帰ってきたシーンの各々の反応が面白かったですね! ショートカットの愛を見た途端、誰もが「愛は男役を目指すのでは?」と考えたはずです。伏線はありました。文化祭でさらさの代役として愛が演じたのはティボルト(男役)だったのですから(8巻24幕)。

9巻30幕86頁以下において、男役志望の杉本紗和や星野薫は、真剣な眼差しでショートカットの愛を見つめていました。同期の男役のライバル(それも知名度抜群)が増えるので当然の反応です。それとは対照的に、娘役志望の山田彩子や沢田姉妹は、一瞬驚きはしたものの、すぐに立ち直って愛と会話していました

そして、おそらく他の誰よりも「ショック」を受けていたのは、さらさでした。

「さらさは嫌なの? 私が男役を目指す事」と愛に問われたさらさは、「……嫌っていうか……なんだかショックで……。でも、ごめんなさい愛ちゃん。さらさは、何がショックなんだか自分でもよく解らないんです」と答えました。

この「ショック」は、決してネガティブな意味ではありません。ショック(shock)は、時にネガティブな意味で使われることがありますが、もともとは「衝撃を受ける、驚く、動揺する」くらいの意味しか持っていない中立的な言葉です。

きっとさらさは愛が男役をするなんて微塵も想定していなかったのでしょう。「さらさ達〔さらさと愛〕はお互い男役と娘役を極めますので!」なんて無邪気に宣言もしていましたから(8巻27幕154頁)。

そもそも、愛は、紅華音楽学校に入学した理由が極めて消極的で(『エピソード0』6幕186頁以下)、特に演じてみたい役なんて本科生になってからも見つけられていません(9巻29幕58-59頁)。実技の授業(1巻)やオーディション(5巻)で、愛が娘役を演じてきたのだって、周りから「未来の娘役トップの有望株」などと言われ続けてきたのに流されていた節があります。

そのため、男役を提案する安道先生の言葉は、間違いなく愛にとって転機になりました。9巻30幕は、澄栖杏の問題発言で幕切れとなってしまいましたが、男役も視野に入れるようになった愛に対して、これからさらさは何を思い、何を語るのでしょうか? 気になりますね!

 

小園桃との関係性

愛とさらさの関係も要注目ですが、もう一つ注目すべきは愛と小園桃の関係です。小園桃はJPX48の現役メンバーにしてトップアイドル(グルーブで一番人気?)であり、愛はかつてこのグルーブに所属していたのでした。

小園桃の初出は、『エピソード0』4幕116頁でした。愛の指導担当であった野島聖の推しメンは、小園桃だったのでした(ちなみに、聖が桃を応援する様子は、第5巻スピンオフ「愛の指導役・野島聖編」123頁以下に描かれています)。

さて、9巻29幕における愛の様子を見る限り、愛はかなり小園桃のことを意識しているように見えます。実際、母親の奈良田君子から演技中の小園桃について「本番で全部、今の自分が持ってる物、全部出してぶつかって来たの」と聞いたり、インタビューされている小園桃が「イメージダウンになるって言われても、今はできる役は何でもやってみたいです。ダメでも次があるって信じます。失敗したら、またそこから考えればいいんだって、そう思ったんです」と語っているのを聞いたりして、その直後に、愛は男役への布石として髪を切ったのですから。つまり、愛は小園桃の言葉を聞いて、たとえ失敗したって今の自分が持っている物すべてを出して男役に挑戦してみようと思ったのです。

上記のように愛が小園桃を意識した理由は、小園桃の演技の迫力2人の間の過去の因縁の可能性も考えられますが、このほかに2つほど挙げられます。

理由の第一は、小園桃の「失敗したら、またそこから考えればいいんだって、そう思ったんです」というセリフ(9巻29幕80頁)が過去のさらさのセリフと似ていたことです。さらさは、文化祭で失敗した愛に対して、「失敗したって、何度でも、また蘇りましょう!」と励ましの言葉を送っていました(8巻27幕142頁)。この2つのセリフ、似ていませんか? 親友であるさらさの言葉と似ていたからこそ、小園桃の言葉は愛に響いたのかもしれません。

理由の第二は、小園桃の役どころです。小園桃の役どころは、主役男性の娘役で、この男性の愛人役である奈良田君子をトラブルから殺すというものでした。

よくよく考えてみると、この小園桃の役どころは、愛の幼少期と似通っているように見えませんか? この頃の奈良田君子には恋人がいて、幼少期の愛はこの男からわいせつ行為を受けているのです(『エピソード0』7幕参照)。

幼少期の愛は、母の恋人の男に対して特に反撃はできませんでした。それに対して、映画の中の小園桃は、父親の愛人役を殺しているのです。もしかしたら愛は幼少期の自分と小園桃を重ね合わせ比較し、それに触発された可能性があります。似通った境遇(役どころ)の小園桃の言葉だからこそ、愛の心に刺さったのだと思われます。

 

 

白川煌三郎は「計算高い

 

第9巻には「白川宗家の娘・丁嵐志織」と題された番外編が収録されていました。そこには白川家にまつわる興味深いエピソードが盛り込まれていましたね。

まずは、いろいろと書き連ねる前に、白川家・渡辺家の家系図を示しておきます。今までの情報を総合すれば、以下のような家系図が出来上がります。

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白川家・渡辺家の家系図

この番外編では、白川福二郎と志織の間で興味深い会話が交わされました(125-126頁)。

志織「そうだ、それでさ。煌三郎が居たんだよね。慣れた感じでチビ〔さらさ〕の相手しててさ。あれはさぁ、もしかしてウチの父さん〔白川歌鷗〕のスケープゴートになってんのかなぁ」

福二郎「やれやれ。お嬢は勘だけはいいんだね。あれ(煌三郎)は芸があっても血筋がないからね。計算高いんだよ。自分の欲望に忠実で、それをおくびにも出さず、いつもすました顔している抜け目のない男だよ」

さらさは、実際は15代目白川歌鷗の娘(隠し子)であるにもかかわらず、白川煌三郎の娘(隠し子)だと噂されています(2巻6幕69頁)。このような噂が立ったのは、単に煌三郎がイケメンでモテモテだからという訳だけではありません。上記の会話からすれば、煌三郎が意図的にさらさと親しくすることで自らの隠し子のように周りに見せていたこともあってそのような噂が立ったのです。

そして、上記の会話によれば、煌三郎がさらさと親しくしたのは、16代目白川歌鷗になるためです。煌三郎は、娘婿であっても白川宗家の15代目白川歌鷗とは血縁関係が薄いために16代目になれそうになく、16代目の最有力候補は15代目白川歌鷗のイトコの息子である白川暁也だと言われています(『エピソード0』5幕135頁、6幕171頁)。つまり、煌三郎は、スケープゴートになる(自らがさらさの父親だと噂される)ことで白川歌鷗に恩を売り、16代目を継ごうとしているのです。

福二郎や志織の見立てが正しいとすれば、煌三郎はかなり狡猾な男です。

さて、丁嵐志織の番外編は、「また次の機会に」と幕切れになってしまいました。志織とさらさの関係は次巻以降に持ち越しのようです。

しかし、第8巻の記事で書いた突飛な仮説が明確に肯定も否定もされませんでしたね。

 

 

第8巻・第10巻・第11巻・第12巻の記事はこちら!

 

 

 

追記

最近文庫化された小説が面白かったのでおすすめします。宮津大蔵『ヅカメン! お父ちゃんたちの宝塚』(祥伝社文庫は、宝塚歌劇団の男性関係者を主人公にした連作短編集です。

それまでは宝塚には興味のなかった男性たちが、生徒監、大道具、プロデューサー、演出、受験生の父兄という立場でそれぞれ宝塚に関わってゆくストーリーで、もちろん彼らが主人公なのですが、同時にタカラジェンヌの成長の物語でもあります。

宝塚ファンや『かげきしょうじょ!!』読者にはおすすの一冊です。

ヅカメン!  お父ちゃんたちの宝塚 (祥伝社文庫)

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  • 作者:宮津大蔵
  • 発売日: 2020/03/13
  • メディア: 文庫
 

 

 

 

 

劇場版SHIROBAKOを観てきたので感想を!【ネタバレ注意】

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劇場版SHIROBAKO

2020年2月29日に公開された「劇場版SHIROBAKOを観てきましたので、その感想を書き連ねたいと思います。ネタバレにはご注意ください。

とはいえ、メモを取りながら観た訳でも、何度も劇場に足を運んだ訳でも、手元に脚本がある訳でもないので、「この作品が伝えたかったのは~」「この作品のテーマは~」「あのシーンが象徴しているのは~」のようウェットな感想は止めておきます(というか、難しいので諦めました)。

こういった優れた感想については、たとえば、以下の記事を紹介しておきます。

www.club-typhoon.com

blog.monogatarukame.net

その代わり(?)と言っては何ですか、このブログでは、つまみ食い的な感想を述べてゆきたいと思います。

 

 

1.ストーリーの感想

 

1)全体的な感想

陰鬱、とまでは言いませんが、悲壮感の漂う前半でした。TVシリーズではお馴染みだったメンバーがムサニから離れていった状況はショックでした。

TVシリーズは前半も後半も「大変だけど何とかやってます!」感があってワクワクしながら観ていたのですが、劇場版は何とかできないレベルの悲壮感・不安感からスタートしました。

が、社長の渡辺から相談されたあおいの決断により「空中強襲揚陸艦SIVA」の制作が決まり、TVシリーズでお馴染みの人物たちがムサニに戻ってくる展開にはホッとしましたね

120分という枠内で新しいキャラを登場させる時間はないという理由から、新キャラの登場は最小限に抑えられ、TVシリーズでお馴染みの人物が再登場したという制作陣の裏話を目にしましたが、やはりこれで大正解だったと思います。

 

2)TVシリーズのオマージュが嬉しい

劇場版では数々のTVシリーズのオマージュがありましたが、印象に残ったものについて感想を述べておきます。

 

ア.カーレースと鑑賞会

劇場版の冒頭では、信号待ちしていたムサニの車が、TVシリーズと同じくカーレースをするかと思いきや、エンストしてしまいました。しかも、その車から降りてきたのは佐藤さんでした。

その直後は、TVシリーズと同じく会議室での鑑賞会のシーンでしたが、「やっぱりお馴染みの人たちがいる!」と思いきや、これはあおいの幻覚・妄想で、少人数しかいませんでした。

しかも、そこで放送されているのは、ムサニが制作した第1作とは似ても似つかぬお色気シーンたっぷりの「第三少女飛行隊2」のグロス請けエピソードでした(というか、あの気難しそうな野亀先生がお色気路線を認めたことは信じがたいのですが!)

 

イ.ミュージカルシーン

個人的な話をすれば、私は基本的にアニメでも実写でもミュージカルシーンは苦手です(スベっているようにしか見えないので)。

しかし、前半のハイライトである「アニメーションを作りましょう」のミュージカルシーンについては、キマりにキマったあおいの脳内での出来事だと理解できているので、むしろ楽しく見られました。エンゼル体操やプルテンもまさかここで登場しましたしね(笑)

 

ウ.ファンタジーなバトルシーン

あおいと宮井さんがげ~ぺ~う~(げ~べ~う~だったかも)に乗り込んだシーンは、TVシリーズにて夜鷹書房に木下監督が乗り込んだシーンのオマージュでしたね。

しかも劇場版なだけあって、作画に気合が入っていましたね。畳が抜ける和室を駆け抜けるシーンはかなり動いていました。

 

エ.制作陣は動物がお好き?

ムサニもP.A.WORKSもですが、制作陣は動物アニメがお好きなんでしょうか?

TVシリーズの劇中作「アンデスチャッキー」も、劇場版の劇中作「空中強襲揚陸艦SIVA」もですが、子供向けのようなキャラデザの動物がメインキャラとして登場していましたSHIROBAKOの視聴者の大半が大人であることを考えれば、制作陣が子供向けの動物キャラクターを好んで登場させるはやや不思議です。やっぱり人間より動き回る動物の方がアニメーションの醍醐味を引き出しやすいのでしょうか?

 

3)アニメ業界的なストーリー展開の振り返り

アニメ業界には詳しくないので、私自身のためにもアニメ業界的な観点からストーリーの振り返りをしておきます(間違っていたらごめんなさい)。

葛城さんや宮井さんの所属するエスタンエンターテインメントは、アニメメーカーです(現実の例としては、アニプレックスエイベックス・ピクチャーズハピネットブシロードポニーキャニオンなど。番組提供やCMで見かける企業ばかり!)。

アニメメーカーは、原作出版社や放送局と並んで製作委員会に参加してその企画に出資ししたり作品を販売・配給したりする立場にあり、アニメーション制作会社にアニメ制作を発注します(アニメメーカーとは異なりアニメーション制作会社の提供やCMは見ません。見かけるのはOPやEDのクレジット表記だけです)。

「空中強襲揚陸艦SIVA」を企画したウエスタンエンターテインメントは、この制作を当初はアニメーション制作会社「げ~ぺ~う~」に発注しましたが、公開予定10か月前になっても絵コンテが数枚しかできていないことが発覚しました

そこで葛城さんは、げ~ぺ~う~から、同じくアニメーション制作会社の武蔵野アニメーションに発注先を切り替えようとムサニに泣きつきました

社長の渡辺やあおいの決断によってムサニが「空中強襲揚陸艦SIVA」を元請けとして制作することになり、ムサニに人が戻ってきました。

しかし、ムサニが「空中強襲揚陸艦SIVA」を制作していることを知ったげ~ぺ~う~は、エスタンエンターテインメントとの契約関係は継続したままであるとして、げ~ぺ~う~が元請けムサニはその下請けとなるべきことを主張します。元請けの制作会社だけがアニメOP/EDやポスターや公式HPなどの各種クレジットで表記されます(あるいは下請けは表記されるとしても目立ちません)から、げ~ぺ~う~の主張は、ムサニへの評価はもちろんプライドにも関わる問題です。

そこであおいと宮井がげ~ぺ~う~に乗り込み、げ~ぺ~う~がウエスタンエンターテインメントと交わした契約書の解除条項に該当する行為を行ったとして、元請けの立場を主張するげ~ぺ~う~を黙らせた、という訳なのです。

 

 

2.キャラクターごとの感想

 

1)メインキャラクター

 

宮森あおい(制作デスク/チーフプロデューサー)

劇場版における設定は、制作デスクチーフプロデューサーということだったらしいのですが、やはりチーフプロデューサーとしての仕事が目立っていました。

社長の渡辺から相談されたあおいが「空中強襲揚陸艦SIVA」の元請け制作を決定したことは、ナベPの下で降りかかってくる仕事をこなしていたTVシリーズの頃とは異なり、あおいが責任と決定権のある立場になったことを意味しています。チーフプロデューサーとしてキャラデザ、作監、演出などのメインスタッフを決定する立場になったことにもこれは表れていましたね。

 

安原絵麻(アニメーター/作画監督

まさかの久乃木愛との同居生活でしたね。それなりの築年数の畳敷きの物件から、綺麗な物件への引っ越しが叶ったようで何よりです。「2人での同居じゃなかったら風呂トイレ別は無理だった」旨の発言が心に染みました。実力はあるはずなのに、やっぱりアニメーターの待遇ってあまり良くないんですね。

 

 

坂木しずか(声優)

TVシリーズでは最も不遇な境遇にいた人物でしたが、劇場版ではそれなりに仕事が貰えて、後輩もできていました。あの居酒屋のバイトを辞めているってことは、声優業(芸能の仕事)だけで食べていけるくらいにはなったってことですよね?

 

藤堂美沙(3DCG)

劇場版では頼れる先輩ポジションになっていました。先輩として後輩への指導方法に葛藤していました。信頼できる後輩に頼めるっていう環境は素晴らしいですよね。

 

今井みどり(脚本家)

初の脚本作品は上手くいかなかったようです。が、劇場版の最後の方で、「師匠」と仰いでいた舞茸さんから「商売敵」と呼ばれた展開にはゾクゾクしました。

 

宮井楓(アシスタントプロデューサー)

あおいの相棒的なポジションの人物でした。初登場時のおしとやかで凛とした雰囲気から一変して、あおいとサシ飲みしたときにはそれが崩れていましたね(笑)

 

 

2)劇場版で印象に残ったキャラクター

120分という短い尺にもかかわらず、劇場版で特に印象に残ったキャラクターの感想を述べてゆきます。

 

木下誠一(監督)

なよなよした気弱な部分情熱的でクリエイティブな部分とを併せ持ったあのキャラは健在でした。矢野さんにはモンブランを、佐藤さんには元嫁の飼い犬の写真を、安道さんには唐揚げを示されて、絵コンテを描き上げるよう誘導された様は、なんかもう飼い慣らされたオジサンと言うしかありません(笑)

 

葛城剛太郎(メーカープロデューサー)

たしかTVシリーズではこれといった見せ場はなかったはずですが、劇場版ではトラブルの発生源にいたために出番が多くありましたね。

 

山田昌志(演出/売れっ子?監督)

同じく演出の円さんはTVシリーズでは平岡とガチ喧嘩をしたために、よく印象に残っているのですが、山田さんは個人としての見せ場がなかった印象です。それとは対照的に、劇場版の山田さんはもしかしたら一番印象に残ったキャラかもしれません。

監督として「俺の名は。」などのヒット作を飛ばして売れっ子になったにもかかわらず、劇中後半ではスキャンダルによってムサニに舞い戻ってきて、ある意味ホッとしました(新海監督に許可はとっているのでしょうか?笑)

 

井口祐未(アニメーター/キャラデザ)

頼れる姐さんキャラは健在でした。初挑戦のキャラデザに苦戦したTVシリーズから4年が経って、ますます頼りがいが出てきましたね。

 

小笠原綸子(アニメーター/原画マン

出演時間は決して多くないのに、最も印象に残った人物の一人です。ジャージ姿を見られた際にすごく動揺している様子には、まさにあのゴスロリ服は戦闘服なんだなあと思いました。

小笠原さんは作画監督を固辞していましたが、やはりベテランのアニメーターといっても、作画監督やキャラデザといったメインスタッフになりたい人と、原画マンとしてアニメーションを作り続けたい人がいるんだなあと気付かされました。

 

遠藤亮介(アニメーター/メカデザ)

TVシリーズに引き続き劇場版でも、意固地なところは相変わらずでした。

Twitter上でP.A.WORKSの堀川社長らが、遠藤さんの妻について評価が分かれると語っていました。

 堀川社長は男性と女性とで評価が分かれると言っていますが、私はむしろ、「夫が大変な時には妻は黙って献身的に支える」といった夫婦像を理想とする昭和生まれ的な古い価値観と、必ずしもこのような夫婦像には賛同できない平成生まれ的な最近の価値観とで評価が分かれるのかなあと思います。たぶん、この脚本にGOサインを出した人は全員昭和生まれじゃないでしょうか?

 

瀬川美里(アニメーター/作画監督

TVシリーズでは遠藤は瀬川さんを苦手にしていましたが、劇場版では既に苦手意識はなくなっていたようですね。むしろ瀬川さんに気を遣わせていました(笑)

 

杉江茂(アニメーター)

やっぱり杉江さんのような年配の人が活躍できる作品は素敵です。劇場版では杉Gとして子供たち向けにアニメ教室を開催し、あおい達5人は子供たちから大きな触発を受けたようです。

 

佐藤沙羅(制作進行)

TVシリーズから4年を経てムサニから多くのお馴染みの人物が去っていましたが、佐藤さんが残っていたのには彼女の義理堅さを感じ、嬉しく思いました(義理堅いというよりも、自宅から近いためムサニに残っているという実利的な面もあるかもしれませんが)。劇場版では新人っぽさはなくなり、反対に頼れる制作進行になっていました。

 

安藤つばさ(制作進行)

ムサニから転職してしまっていたのは残念でしたが、SIVA制作ではムサニに出向してきてくれましたね。しかし、TVシリーズでも毒舌でグイグイしていたキャラが、劇場版ではさらに進化していましたね

 

高梨太郎(演出)

まさかタローがムサニから離れるとは! しかも演出!? タローがきちんと演出をこなせるのか、にわかには信じられません。監督と大喧嘩したらしいことは、すんなりと信じられたのですが。

 

平岡大輔(制作進行?)

タローと同じ職場に移籍したようですが、平岡のポジションは何なのでしょうか? 見逃してしまいました。が、演出である太郎の担当、と言っていたことからすれば、制作進行のままなのでしょうか?

それにしても、ムサニを離れてもタロー平岡コンビが健在なのは嬉しいですね!

 

渡辺隼(社長)

ナベPがまさかの社長に昇進です。TVシリーズ後半でも夜鷹書房の担当編集に変な話、振り回されて疲弊していましたが、劇場版ではさらにお疲れのようでした。

ちょっとグッときたのは、あおいと宮井さんがげ~ぺ~う~から契約解除を勝ち取ってきた際に、渡辺さんが葛城さんとともに頭を下げてお辞儀をして出迎えたシーンです。柄にもなく部下のあおいにお辞儀をするなんて、本当にあおいのことを信頼しているんだなあと感じました

 

丸川正人(元社長)

渡辺さんが社長になっていると知ったとき、最初は丸川さんは年齢を理由に円満に引退したのかなと想像していただけに、まさかの引責辞任には驚きました。

TVシリーズでは、丸川さんはアニメ制作に直接には関わらず、どういうポジションなのか分かりにくかったのですが、責任ある地位にいたことが劇場版で劇的に示されましたね。クリエイターたちがアニメを作る前提として、法的・社会的な責任を負う者が必要なことを痛感しました。

 

 

 

以上が劇場版SHIROBAKOの感想です。総じて大満足です。が、やはり良作なだけに観終わった後の喪失感は否めません。

そんなことを感じていたら、なんだか、同じくP.A.WORKSお仕事シリーズ第3弾のサクラクエストを見たくなりました(Amazon prime videoで見られるみたいです)。宮森あおいと木春由乃のキャラデザが似ているせいでしょうか?――――と思ったら、キャラデザは両方とも関口可奈味さんが担当しているようです。

P.A.WORKSには、SHIROBAKOも含めて、お仕事シリーズの新作(続編でも新シリーズでも)を作って欲しいですね!!

 

 

 

アニメ「ランウェイで笑って」第8話の感想・考察――本気が大事なものを奪う

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第8話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。

第7話の感想記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第8話「デザイナーの器」

相当する原作のエピソード:第6巻第45話「母からの手紙」、第46話「天秤」、第47話「最適解」、第48話「当然の報い」

母親の容態が悪化したという報せを受け、病院に駆けつける育人。さらには滞納していた治療費がのしかかり、育人はバイトを増やすため苦渋の思いで柳田と遠に「仕事を辞めさせてほしい」と伝える。そんな育人の元に、心のマネージャー・五十嵐がやってきてある提案を持ちかけるのだが……。

 

 

1.手術の先延ばしの理由

育人の母親は、手術の先延ばしを希望していました。これは、デザイナーになりたいという夢を持つ育人のためにほかありません。

もし、芸華祭までに手術をすれば、その時点で手術費用が発生します。そうすれば、育人は金策に走らなければならなくなり、デザイナーになるための好機として逃せない芸華祭に集中できません(それどころか辞退さえもあり得ます)。母親は、息子の夢を応援するからこそ、手術を先延ばしにしていたのです。

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「母さん、僕、ファッションデザイナーになりたいんだ」

しかし、現実は非情で、芸華祭まで2か月前ほどのタイミングで緊急手術という結果になってしまいました。

 

 

2.長男としての責任

病院に駆け付けた育人は、取り乱すほのかをなだめ、今後の対応を示しました。しかし、彼女が帰宅した後は、深く自省し、母親の遺書を読んで動揺して涙まで流してしまいます。

若干高校生に過ぎない育人ですが、ほのかの前では、ギリギリのところで長男(長子)としての責任を果たした、というのが伝わってきます。

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ほのかを抱きしめる育人

 

 

3.育人が辞めた理由

育人は、結局、柳田のスタジオも綾野遠のスタジオも辞めてしまいました。どちらも給料がもらえるにもかかわらず、わざわざ辞めたのは、割りの良いバイトをするためです(原作第6巻110頁)。

これを踏まえ、少々無駄な勘繰りをしてみます(読み飛ばし推奨)。

そもそも育人は高校生なので、どこで働いても一般的には、アルバイトの時給は最低賃金かそれを少し上回る程度しかもらえないと思われます(時給の良い深夜帯については18歳未満が働くことは法律で禁止されています)。

となると、高校生でも雇ってくれる時給の良いバイトを探すのは困難なはずです。実際、育人が行ったバイトは、引っ越し、コンビニ、清掃、工場、新聞配達と、ありふれたバイト先でした。これらの業種は外資系ではないと思われるので、時給は最低賃金程度だと思われます。

すると、ここで一つ疑問が浮かびます。割りの良いバイトを探すために柳田や遠のスタジオを辞めたということは、育人はここで最低賃金を下回る時給しかもらえていなかったのではないのでしょうか?

しかし、それでは雇用主である柳田や遠が法律違反をしていることになってしまいます。そうでない可能性を考えるとなると、そもそも育人は雇用契約を結んでいなかった、という仮説が立てられます。つまり、柳田や遠とは雇用関係にない育人は、最低賃金の適用対象たる労働者の地位にいなかったのです。

それでは、育人はどのような身分で柳田や遠の「お手伝い」をしてお金をおもらっていたのでしょうか? 考えられるのは、育人は徒弟制度類似の発想の下で「お手伝い」し、「お給金」としてお金をもらっていた可能性です。

そもそも、育人は、労働力提供(とその対価の獲得)という目的もありましたが、デザイナーになるための技能習得という目的を持って柳田や遠のスタジオで働いていました。このような専門職においては、弟子が師匠に技を教えてもらうことを目的とした徒弟制度がよく似合いますし、師匠の側も弟子の側もその発想になっていてもおかしくありません。弟子の側からすれば、「師匠に迷惑をかけながら弟子にしてらっている」という考えなのでしょう。

このような徒弟制度の下では、「労働力提供の当然の対価として使用者は労働者に給料を支払わなければならない」という労使関係の原則が通用しません。むしろ、「弟子は当然にタダ働き」が原則で、「師匠からの恩恵として弟子にお給金が支給される」ことが例外なのです(そもそも、私は詳しくないので確定的なことは言えないのですが、現在の日本において無給や最低賃金以下の徒弟制度が合法なのかは相当に疑わしいです)。

とまあ、色々述べてきましたが、要するに、柳田や遠のところで「お手伝い」をしていた育人は、それなりに安いお給金しかもらえていなかった可能性があるのです。

 

 

4.本気が大事なものを奪う

 

(1)綾野遠の本気

スタジオを辞めたいと言ってきた育人から事情を聞き出した遠は、育人に対してパタンナーとして遠のチームに入れば、母親の入院費用は遠が負担する」ことを提案します。

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「育人、悪いことは言わない。僕のチームに入りなよ。そしたら、育人の親御さんの入院費は僕が払うから」

しかし、遠のチームに入って芸華祭のショーに出場するということは、育人は自分自身の出場を辞退しなければならないことを意味します。

入院費を捻出するために多数のバイトをこなしながら芸華祭に出場しようとする育人に対して、遠は「24時間、頭も身体も全て作品に捧げている人間の前で、あんまり舐めたこと言わないでよ」と厳しい言葉を投げかけます。さらには、育人にはデザイナーになれるほどの才能はない、とまで言います。

このように遠の言動を振り返って見ると、彼が嫌なヤツに見えるかもしれません。が、遠は“本気”なのです「24時間、頭も身体も全て作品に捧げている」綾野遠は、芸華祭のショーで綾野麻衣を超えるために本気なのです

そのためには、彼は手段を選ばない人間のようです。ベストな布陣で芸華祭に挑みたいからこそ、育人のパタンナーのとしての才能を評価しているからこそ、遠は育人を自分のチームに引き入れたいのです。たとえそれが育人のデザイナーになりたいという夢を壊すようなことがあっても

前回第7話にてモデルに対して本気な千雪が心に怒ったのと同様に、綾野遠もデザイナーに対して本気なのです。

 

(2)五十嵐優の本気

綾野遠から厳しい選択を突き付けられた育人に、今度は長谷川心のマネージャーの五十嵐が襲来します。五十嵐は、育人に対し、「心にデザイナーを諦めるよう説得すれば、お金(100万円程?)をあげる」と提案します。

遠と同じく、五十嵐もただの嫌なヤツではありません。五十嵐も“本気”なのです五十嵐は「長谷川の将来に責任を持つ立場にある」からこそ本気なのです

そして、五十嵐もそのためには手段を選ばない人間のようです。「人は才のある場所で活躍すれば幸せになれる」(第7話)という信条を持つからこそ、心のモデルとしての才能を評価しているからこそ、五十嵐は心にデザイナーを諦めさせたいのです。たとえそれが本心とは裏腹に心にデザイナーを諦めるよう説得させるような状況に育人を追い込んだとしても

デザイナーに対して本気な綾野遠と同じく、五十嵐も心のマネージャーとして本気なのです。

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「こう言えば全員幸せだ。『僕のショーにモデルとして出てください』って」

 

(3)理想主義と現実主義

母親の入院・手術のために金欠の育人には、これ幸いとばかりに手段を選ばない遠と五十嵐の“本気”が襲ってきました。

育人はこの状況を「なんで、みんなそうやって、僕の大事なものと大事なものを天秤にかけて奪おうとするんだ」と憤っていました。

遠は、「育人の母親(入院費)」「育人のデザイナーになりたいという夢」を天秤にかけました。五十嵐は、「育人の母親(入院費)」「心のデザイナーになりたいという夢」を天秤にかけました。いずれも育人にとっては大事なものです。大事なものだからこそ、奪われるわけにはいかないのです。

ところで、この状況は第6話における千雪による育人の評価を思い出します。

育人のこと、結構、尊敬してるんだ。

私はさ、本気でハイパーモデルになるつもりだから、モデルに必要ないことはほとんど切り捨てちゃうの。でもね、育人は違う。捨てない。全部捨てないの。

きっと私の方が夢に向き合っている時間は長い。それでも育人が頑張っていないって、欠片も思えないのは、きっとそこに何も捨てない、両立するって覚悟があるから。

千雪が尊敬していた育人の「全部捨てない」という努力手法が、危機に晒されているのです。

しかし、こうして育人の心情を慮ってみると、彼は多分に理想主義的です。「全部捨てない」という生き方は、おそらく誰もが目指すところですが、簡単には実現できません。実際、育人には母親の入院・手術による金欠という非情な現実が襲い、育人はそれに上手く対処できませんでした。

そんな育人に対して、遠や五十嵐は現実主義的です。遠は育人に対してデザイナーよりもパタンナーとしての方が将来性があると説き、五十嵐は心にはデザイナーなんかよりもモデルとしての才能があると確信しています。遠や五十嵐からしてみれば、育人や心(それに千雪)の夢は子供っぽい理想に過ぎず、大人として現実的な方向に進路を転換して欲しいのです

しかも、遠や五十嵐は現実主義的なだけでなく、狡猾でもありました。遠は、厳しい言葉も言いましたが、育人のパタンナーとしての才能を評価し、そこに逃げ道(進路転換の余地)を用意しているのです。五十嵐は、育人に対して、心にデザイナーを諦めるよう説得する際には、心の育人に対する信頼を利用して、「僕のショーにモデルとして出てください」と言うように提案するのです。「こう言えば全員幸せだ」と。

育人の窮地を利用して自らの利益を最大化しつつ、育人も母親も心もそれなりの幸せを掴める余地を提案する手法は、狡猾というほかはありません。

 

 

5.長谷川心の支え

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「先輩が……カラメル?」

育人がスタジオを辞めることを柳田から聞いた心は、「私で先輩の力になれるの?」「助けられてばっかなのに」「あんなに強い先輩が辞めたがるってことは、それくらい大きな問題で」と躊躇します。

しかし、今度は心が育人を支える番であると心は決心しました。芸華祭のショーに出ると決心したとき(第5話)、柳田のスタジオを追い出されそうになったとき(第7話)など、育人は心を支えてくれたのでした。

今の育人には支えてくれる人はいません(千雪はパリです)。だからこそ、心は柳田や遠に働きかけ、ひいては藤戸社長にまで心の想いが届いたのです。

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「千雪に作った服のデザインを買い取らせてほしい」

 

 

6.育人に対する評価

第8話ではファッションデザイナーを目指す育人に対して2人の人物から評価が下されました。

一方では、綾野遠は、「育人にそこまでの才能はない。この際だから勘違いしないように事実を告げるけど、育人のデザイナーとしての才能は、並か、並以下だよ。デザイナーになれたところで、食っていける器じゃない。これを機に諦めてパタンナーを目指した方がいい」と言いました。

他方では、「僕、ファッションデザイナーになれると思いますか?」と育人に問われた藤戸社長は「私からしたら、ならない方が驚きだよ」と答えました。

この2人の発言をどう評価するのかは難しいところです。

一見すると、遠の言葉の厳しさと藤戸社長の言葉の優しさが対比されます。しかし、藤戸社長の言葉も、「並程度のデザイナーにならなれる」というように解釈すれば、遠の言葉と変わりません。

とはいえ、2人の言葉は相当に文脈依存的です。つまり、遠には育人にパタンナーとして自分のチームに入って欲しいという下心があったので、わざと厳しい言葉を言ったという可能性も考えられますし、藤戸社長には息子ほどの年代の少年が涙を流しているのを見て同情で優しい言葉を言ったという可能性も考えられるのです。

しかし、いずれにせよ育人が藤戸社長の言葉に救われたのは間違いありません。

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「私からしたら、ならない方が驚きだよ」

 

 

7.ラストの千雪の独白がグッとくる

この部分はもしかしたら次回第9話の冒頭に使われるかもしれないのでネタバレみたいになってしまうかもしれないのですが、第8話のラストシーンで、育人に「僕のショーに出てくれませんか?」と聞かれた千雪が「もう、しょうがないなぁ」と言った場面のことです。

この千雪のセリフの前には、原作では独白があって、これがグッときたので以下に引用します(原作第6巻第48話)。

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パリでのオーディションが上手くいかず失意の表情の千雪

ファッションウィークは、パリだろうがミラノだろうが、誰でも受けられるオーディションを開くブランドが多い。極端なことを言えば、デザイナーに認められれば素人だって出られる。でも、それが重要なのは“身長(スタイル)”だから。

オーディションは10mくらいの距離をデザイナーの前で往復するだけ。私は数十社受けて、結局1mも歩かせてもらえなかった。

藤戸千雪というモデルを必要としてくれる場所はない。現場も、実の父親も、憧れの人からだって、一度見放された。

それなのにどうして、どうして君は、いつだって、いてほしい時に現れて、わたしは君の言葉に救われちゃうんだ。

 このような独白があってからの、「僕のショーに出てくれませんか?」「もう、しょうがないなぁ」なのです。最高の流れじゃないですか?

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「もう、しょうがないなぁ」

 

 

 

第9話の記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

アニメ「ランウェイで笑って」第7話の感想・考察――千雪の本気、心の本気

 

 

この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」第7話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。

第6話の感想記事はこちらから!

irohat.hatenablog.com

 

 

0.基本情報

原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)

アニメーション制作:Ezo’la

監督:長山延好

TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/

ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#新衣装登場!)

原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175

アニメ第7話「存在感(オーラ)」

相当する原作のエピソード:第4巻第25話「心の支え」、第26話「弱虫の決意」、第5巻第37話「存在感(オーラ)」、第38話「業界の宝」、第39話「大人の仕事」、第40話「憧れと才能と手段と」、第6巻第41話「忍び寄る魔の手」、第42話「君は何になりたいの?」、第43話「頑張り屋さん」、第44話「優先順位のお話」

ようやく勝ち取った雑誌撮影の仕事に訪れた千雪は、そこで出会った高身長のモデルの存在感に圧倒されてしまう。それは、本当はデザイナー志望であり、嫌々ながらモデルの仕事をこなす心だった。打ちひしがれた千雪は帰り道、マネージャーに「モデルを辞めたい」と訴える心の姿を見てしまい……。

 

 

1.「存在感(オーラ)」について

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心に挨拶をする千雪

ついに、藤戸千雪と長谷川心が邂逅しました。初見こそ圧倒された千雪は、すぐに立ち直り自信を持って撮影に臨むことになります。しかし、撮影衣装に着替えた心に千雪は再び圧倒されたのでした。

アニメではやや足りないところがあったので、ここでは原作ベースで「存在感(オーラ)」について解説してゆきたいと思います。

まず、千雪の回想場面にて雫さんは千雪とこのような会話をします。

「胸を張りなさい。千雪、モデルに必要なものって何?」

千雪「身ちょ――」

「違う。〔モデルに必要なのは〕『存在感(オーラ)』。身長はあくまで“オーラ”を放つ最大のツールでしかない。だから千雪、胸を張って! 手の先、足の先まで神経集中! 瞳に魂込めなさい! 腑抜けたオーラで相手できるほど高身長モデルは甘くないわよ!」

 これを思い出した千雪は、雫さんの教え通りに姿勢を正して心に挨拶を行い、細かなところまで気を配って撮影の準備に取り掛かります。

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爪を磨く千雪

そんな中、他のモデルたちが心に対する妬み嫉みを話しているのが千雪の耳に入ります(モデルにしては肉が多いとか、事務所社長と枕営業してるとか……)。ここで千雪はもう一度雫さんの言葉を思い出します。

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「“存在感(オーラ)”が出る2つの場所、どこか分かる?」

「千雪……じゃあ“存在感(オーラ)”が出る2つの場所、どこか分かる? ひとつは身体(スタイル)。姿勢、仕草、身長から放出される」

千雪「もうひとつって何……雫さん?」

「もうひとつは……ね、〔胸に手をあてながら〕“ここ”。自信っていう“気持ち(ハート)”から滲み出るの。心から溢れ出るの。だからね、千雪。当たり前だけど、何かに挑戦してたら悔しいことも辛いこともある。ましてやモデルの世界。いじめや足の引っ張り合いだって珍しくない。だからこそ相手を貶めない。相手をけなすことで安心する、そんな自分を正当化するための貶めからは自信は生まれない。そんなモデルの心からは存在感(オーラ)は出ない」

雫さんの言葉を胸に、千雪は「自信」を持って、つまり心を貶めていた周りのモデルとは違うんだという気概を持って撮影に臨みました。ところが……長谷川心の登場で場の空気は一変しました

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オーラを出そうとする千雪に降りかかる長谷川心のオーラ

撮影後に千雪は長谷川心のオーラについてこう振り返っています(原作第5巻第38話)。

すごいモデルっているもんだなぁ。今まで何人か見てきたけど……でも、あの人は異質……。目が、何というか……冷たい。心を閉ざしているみたいな、魂が宿らない瞳。逆にそれが異質な空気になってる。

また、カメラマンの美和さんは、長谷川心についてこう表現しています(原作第5巻第39話)。

長谷川心ちゃんは、スイッチが入ると、空気が止まるんだよね。喉元に刃物を突き付けられて、「今、この瞬間は音を立てるな。動くな。」って言われてる気分に私はなった。バチバチの激しい存在感(オーラ)を出す子は結構いるんだけどね、ああいう静かで鋭いのは初めてだったかも。

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長谷川心のオーラ

この2人の感想からは次のことが言えそうです。すなわち、他人を貶めることではオーラは生まれないが、しかし、長谷川心は自分自身を貶めることによってオーラを生み出している、と。デザイナーになりたいという夢を持ったままモデルの仕事をしている負い目が彼女のオーラを生み出しているのです。まさに「負のオーラ」です。

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他を圧するオーラ

そして、高身長と負のオーラを持った長谷川心の強い存在感に、低身長かつ長谷川心のような独特のオーラも出せなかった千雪は圧倒されてしまった上、撮影から外されたのです。

そんな失意の千雪は、「貶めからは自信は生まれない」という雫さんの教えにもかかわらず、思わず「わたしは心のどこかでまだ――思ってたんだ。同じ舞台に立ちさえすれば戦えるって。東京ファッションウィークで拍手をもらえたから、相手がどれだけスタイルが良かろうが勝負はできるって。――ちがった。わたしじゃ――同じ舞台にすら上げてもらえない」「身体に傷を作らないのはモデルの初歩の初歩でしょ。本気でやってよ。真面目にやってよ。あなたの場所に立ちたいモデルは山ほどいるのに、立ちたくても立てないモデルがいるのに、立たせて……もらえないモデル……だって。なのに、なんで、なんで、なんで――」と泣きそうになってしまいました。

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涙をこらえる千雪

 

 

2.千雪の本気、心の本気

撮影後、心はマネージャーの五十嵐にお願いをしました。

「こういうの、もうやめてください」

五十嵐「気にしなくていい。才能あるやつが勝って、ないやつが負ける」

「嫌なんです。私のせいで辛い思いする人がいるの。お願いします! モデルを辞めさせてください!」

五十嵐「それは、『自分のせいで蹴落とされる人間がいる』ということに耐えられないって意味か?」

「そういう……わけじゃ……」

ここで2人の会話を聞いていた千雪が心を問い質します。

千雪「それって、私のせい? 私を見て可哀そうだと思ったってこと? ふざけないでよ! あなたに同情される筋合いはない! あなたがどんな思いでモデルをやってるかなんて知らないけど、こっちは本気でやってる! なのに、私の覚悟をなんだと……!」

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涙をこぼしてしまった千雪

「私のせいで辛い思いする人がいるのが嫌」という心の言葉は、たしかに千雪の本気を軽んじる発言でした。千雪は本気でモデルをやっているからこそ、“落とされる”ことも“外される”ことも、覚悟しているのです。本気でモデルをやっているなら自身の責任として千雪が背負うべきことを、心がまるで自分の責任のように感じ、モデルを辞めるための口実に使うのは、千雪としては許せないのです。

そんな「千雪の本気」に触発された心は、五十嵐にこう宣言します。「五十嵐さん、モデルを辞めさせてください!」「私は本気で服を作る人になりたいんです!」と。「千雪の本気」によって、心は「デザイナーになるという夢」についての本気を思い起こしたのです。しかし、五十嵐はそれを認めず……。

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「五十嵐さん、モデルを辞めさせてください」

 

 

3.五十嵐優について

ここでは、原作を織り交ぜながら、心のマネージャーである五十嵐優について掘り下げてゆきたいと思います。

さて、長谷川心の決意にもかかわらず、五十嵐は「ダメだ。人は才のある場所で活躍すれば幸せになれる。何度だって言う。お前の体はモデル界の宝。服飾界で腐らせるのは私が許さん」と返します。

その後、五十嵐はバーにて過去を振り返ります。

向いていない人間が選べる選択肢は3つだけ。諦めるか、正々堂々ぶつかって砕け散るか、しがみついて手段を選ばず夢をつかむか。〔私は〕そうして手に入れた。

嬉しい……。あこがれ続けたラーレフォーン〔イギリスの老舗ブランド〕のショーなんだ。嬉しいに決まってる。そのはずだったのに……

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「そのはずだったのに……」

モデル時代に168cmまでしか身長が伸びなかった五十嵐は、後ろ暗い手段で憧れのショーに出ましたが、そこの景色は奇麗だとは思えませんでした。結局、彼女は、「“向いている場所”で居場所を見つけるしか幸せはなかったんだよ」と結論づけ、マネージャーに転職しました。

そして五十嵐は、現在の長谷川心が選択の分岐に立っていると吐露します。「妥協して服飾界の小さなところに収まる……なら、もっと早い段階で妥協してモデル界に来るべきだ」「だってヤツはモデルとして天才だ。同じ不幸なら最も幸せなところで不幸になればいい」とまで言うのです。

それに比して千雪については、「千雪の向いていない世界でかむしゃらに頑張ってる姿が、昔の自分とかぶる?」と問われると、五十嵐は「あれは向いていないんじゃない、終わってるんだ! 私は、手段を選ばず夢をつかんで幸せになれなかった。結局、自分が向いている場所で居場所を見つけるしかなかったんだよ」「人はやれることしかやれないんだ。お前もあのチビに引導を渡してやれ」と雫に言うのです。

以上のことから五十嵐優の人生観が分かります。要約すれば、「人が幸せになれるのは向いている場所だけ。向いていない人は早々に諦め、別のところで向いている場所を見つけるべきだ」というものです。五十嵐はこの人生観に従って、マネージャーとして彼女に厳しく接し、また千雪はモデルを諦めるべきだと雫に言うのです。彼女の人生観は、一理あるどころか現実主義的で説得力があります。五十嵐はただの嫌な人なんかではありません。

ちなみに、アニメでは省略された五十嵐と雫の過去(モデル時代)については、原作第5巻第40話をご覧ください。

 

 

4.支えてくれる人

柳田に最終チェックを頼まれた心は、失敗をしてしまいました。チェックしたにもかかわらず、まち針が2本も残っていたのです。「こんなガキでもできるような作業でミスりやがって」「さっさと帰れ! 迷惑だ!」と柳田に言われた心は玄関に向かいます。

しかし、そんな心を育人は引き止めます。ここで育人が行動を起こしたのは、自分にも同じ経験があったからです。

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心を引き止める育人

初めて柳田のアトリエに訪れた際、育人も柳田に追い出されそうになりました(第2話)。そこで帰りそうになった育人を引き止め背中を押してくれたのは千雪でした。育人には支えてくれる人がいたのです。

しかし、今回の心には支えてくれる人はいません。育人を除いていないのです。だから、今度は自分が支える番だと気付いた育人は心を引き止めたのです(原作第4巻第25話参照)。

育人に支えられて戻ってきた心による謝罪と、育人による説得によって、柳田はようやく許してくれました。それどころか、「実力がない人間がやらなきゃいけないことは2つだけだ。実力を上げることと、できる仕事を全力でやること。それと2次予選ちゃんと通過しろ。じゃなきゃお前を使ってる俺が恥をかく」と、アドレスと激励までくれたのです。オジサンのツンデレも良いものです。

ちなみに、柳田がデザイン専門で自分では縫えず、厚手の手袋をしてまち針を抜いたのは、初めてのミシンで指に縫い目ができたトラウマからです(笑)

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わざわざ厚手の手袋をしてまち針を抜いた柳田

 

 

5.デザイナーとパタンナー

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「僕のチームに入らないか? パタンナーとして」

綾野遠は、芸華祭のショーに挑む自身のチームに、パタンナーとして育人を招こうとしました。

ここで、柳田の言葉を借りながら、パタンナーの仕事について振り返りをしておきます(原作第6巻第41話)。

パタンナーは、簡単に言うと“デザインを作れる服にする”仕事だ。

デザイナーのデザインは基本的に“絵”で上がってくる。作り方なんか考えずにな。コレクションに出すようなブランドだと、「は? これどうやって作んだ」なんてもんもザラだ。それをパタンナーは自身の経験と知識をフル活用し、素材選び、縫い方、糸の種類、アイロンのかけ方、ひとつでもずれれば再現できない独創的なデザインを、パズルのようにひとつひとつ繋ぎ合わせて現物化する。一流のパタンナーは一流のデザイナーよりも貴重。そう言われるほど価値がある存在だ。

ただ、おかっぱ。パタンナーはどこまで行ってもパタンナーだ。デザイナー主導は変わらん。お前が前に言った野望、その野望を果たせるのはどっちだ? ブレるな。

 こうした柳田の教えのおかげもあってか、育人はきちんと遠の誘いを断ることができました。

ちなみに、育人のパタンナーとしての才能は既に第4話にて言及されていましたね。

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6.長谷川心の2次予選の合否について

実は、原作では、長谷川心は2次予選に通過できませんでした(第6巻第43話~第44話)。

こう書くと、「まさかここに来てオリジナル展開か?」と思われるかもしれませんが、そういう訳ではありません

心が2次予選で落ちたことを知った後、彼女の頑張りが報われてほしいと思った育人は心に対して、自分のチームに加わって一緒に本選に出ないかと提案します。

このとき2人は、「2次予選に合格しても別の予選通過者とチームを組む人が何人かいるため、その人が辞退した分だけ枠が余り、心にも追加合格の可能性がある」と遠から教えられます。

育人の誘いと追加合格の可能性の間で揺れる心でしたが、彼女の下した結論は厳しい方でした。育人と一緒ではマネージャーは自分の“本気”を認めてくれないと考え、育人の誘いを断ったのです。そしてその後、心はその枠に見事追加合格したのです!

このような原作の流れを見ると、なんとも迂遠なような気がするかもしれませんが、しかし長谷川心の“本気”が試された展開だったのです。

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共に本選に進むことになった育人と心

 

 

 

さて、次回は、第8話「デザイナーの器」です。容体の悪化した育人の母親はいったいどうなるのでしょうか? 育人は手術費用を工面できるのでしょうか?

 

第8話の記事はこちらからどうぞ!

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