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2020年4月に読んだ小説・ライト文芸・ラノベ

 

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馬路まんじ『底辺領主の勘違い英雄譚』(オーバーラップ文庫

 

 

2020年4月に読んだ小説(一般文芸・ライト文芸ライトノベルを、あらすじと一言コメントを付して紹介します(ネタバレなし)。

※初読の作品のみ列挙しています。再読したものは含まれていません。

※女性が主人公(物語の語り手)の作品には「★」を付しています。

 

 

一般文芸

 

『幽霊たちの不在証明』(朝永理人)

羊毛高校文化祭の二日目の午後、二年二組のお化け屋敷で、首吊り幽霊に扮していたクラス委員・旭川明日葉の絞殺死体が発見された。彼女に想いを寄せていた「僕」こと閑寺尚は、打ちひしがれながらもその仇を討つべく、クラスメイトの甲森瑠璃子とともに調査に乗り出す。幽霊役の彼女はいつ本物の死体になったのか。分刻みの“時間当て”で犯人を絞り込む本格フーダニット・パズラーの傑作! 2020年第18回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。

上述の通り、この作品はこのミス受賞作で、正統派の本格ミステリ(トリック(謎)とロジック(謎解き)に重点が置かれているミステリー)です。

ラノベライト文芸に負けず劣らず主人公・閑寺尚や探偵役・甲森瑠璃子キャラが立っていました。主人公の想い人である旭川明日葉が殺されてからは、その死に対するショックと甲森の生来の陰気さと人見知りで、物語は暗めの雰囲気です。しかし、それでも2人とも何らかの形で青春しているし、随所にギャグ要素が散りばめられているんだから、上手い構成というほかはありません。青春本格ミステリの一級品です。

 

 

『機長、事件です!』(秋吉理香子)

若きパイロット間宮治郎は、国際線デビューに胸を膨らませていた。だが初フライトを共にすることになったのは、厳しくて毒舌、変わり者で有名な美貌の女性機長、氷室翼だった。成田・パリ間の旅程ではトラブルが続発。往路では婚約指輪の消失事件が起こり、ステイ先では怪しげな連中に迫られ、ついには殺人事件にまで遭遇してしまう。氷室は持ち前の頭脳と観察力で事件の真相に迫るが!? ポップなトラベル&お仕事ミステリ!

著者の秋吉理香子氏といえば陰鬱な雰囲気のミステリーばかりを書いているイメージだったのですが、こんなポップなキャラクター重視のミステリーも書いているとは思いませんでした。

この作品は旅客機パイロットのお仕事小説でもあるのですが、なんと言ってもそのディティールに説得力がありました。小説末尾の謝辞を見てみれば、著者の両親と姉がパイロットでそこから取材していたようで、飛行機を操縦する様にはリアリティが溢れていました

機長、事件です! (角川文庫)

機長、事件です! (角川文庫)

 

 

 

『私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました』(日向奈くらら)

二年C組の問題の多さには、呆れますね―教頭の言葉が突き刺さる。また私のクラスの生徒が行方不明になった。これでもう4人だ。私はその失踪にあの子が関係しているのではないかと恐れている。宮田知江。ある時から急に暗い目をするようになった女生徒だ。私は彼女の目が恐い。でもそんなことは、これから始まる惨劇に比べれば些細なこと。なぜなら私は、夜の教室で生徒24人が死ぬ光景を目にすることになるのだから…。

定期的にホラー小説が読みたくなり、贔屓のイラストレーターである田中寛崇氏が表紙イラストを担当していたこともあってこの作品を手に取りました。

ジャンルとしては、24人の死にざまを見ればスプラッターですし、後半の展開を見ればサイコホラーになるのでしょうか。

 

 

『震える教室』(近藤史恵)★

歴史あるお嬢様学校、凰西学園に入学した真矢は、マイペースな花音と友達になる。ある日、「幽霊が出る」という噂のあるピアノ練習室で、二人は宙に浮かぶ血まみれの手を見てしまうのだが……。

こちらもホラー小説(連作短編集)です。ジャンルとしては、ミステリー要素のあるオカルトホラーです。主人公の真矢と友人の花音はなぜか触れ合うと幽霊が見えてしまうという設定のため、百合作品でもあるのですが。

それにしても、それぞれの幽霊についてその存在理由を解き明かすというミステリー仕立てなのが嬉しい作品でした。

震える教室 (角川文庫)

震える教室 (角川文庫)

 

 

 

 

ライト文芸

 

『いのしかちょうをこっそり視ている卯月ちゃん』(鳳乃一真)★

逆槻卯月は奇妙な女子高生である。クラスメイトとは交流せず、放課後になっても一時間は席から動かない。バレないように廊下をひょこひょこ移動し、使われていない部室に侵入。そこで卯月が一人でしていることは、隠し持っているスマホの中に残った、ある3人のLINE記録を読み返し、クスクスしながら観察日記をつけること。卯月がそんなことをするのには理由があって———他人が決めた当たり前なんて受け入れない。これは逆槻卯月という少女がたった一人でこっそりと繰り広げる反逆の物語である。

LINE文庫ならではと言うべきか、本文の一部はLINEのトーク画面を読む仕様になっています(そのため横読み作品です)。

読み始めの序盤は、主人公はなぜか他人のスマホのLINEのトークを読み返していて、「なんだこれ?」状態なのですが、主人公の事情が徐々に明かされてくると続きが気になってしょうがなくなります

 

 

『横濱SIKTH』(ニリツ)★

これは、横濱で暮らす一人の『異能力者』の少女と、『掃除屋』達の物語。横濱――巷では表立ってはいないが『SIKTH=シックス』と呼ばれる異能力者達が確認され、事件が多発。最近では行方不明者まで出ているという荒様だ。そこには横濱の裏案件を「掃除」する元刑事を始め、蹴殺脳筋マシーンの男、カタコトの褐色ムスメ、詐称と女装が得意な美少年とそのメンヘラ保護者。そんな癖の強い奴らが揃う街で、女子校生の城黒セカイは今日も普通に生きている。たとえ自身が異能のシックスだとしても……。果たしてセカイが備える正しさは、この狂った世界の中で正しい武器となるのか、あるいは――

ライト文芸レーベルにもかかわらずラノベかと紛うほどに巻頭にカラーページがありますが、著者もイラストレーターもニリツ氏が担当している作品です。ジャンルとしては、異能バトルものです。

 

 

ミウ -skeleton in the closet-』(乙野四方字)★

就職を前に何も変わらない灰色の日々。あたしは何気なく中学の卒業文集を開き、『母校のとある教室にいじめの告発ノートが隠されている』という作文を見つける。それを書いた元同級生が自殺したと知ったあたしは、その子のSNSのパスワードを暴いてログインし、その子の名でSNSを再開した。数日後、別の元同級生が謎の死を遂げる。灰色の日々に、何かが始まった――。

ジャンルとしては、百合要素のあるミステリーです。元同級生の作文を見つけてから始まってしまった怒涛のミステリー展開には引き込まれました

 

 

 

ライトノベル

 

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…9』(山口悟)★

乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私。魔法学園を卒業し魔法省で地道に働きはじめたはずが、最悪な未来が待つゲーム続編は進行中!? 回避方法がわからないまま、子供の誘拐事件の捜査のため、港街の食堂で給仕係として働くことになったのだけど…。任務では攻略対象のソラとマリアとの3人行動で、2人のお邪魔虫的立場に――って、ゲームの悪役と同じ立ち位置では!? これってまずくない!? 大人気破滅回避ラブコメディ★第9弾!!

現在放送中のアニメの原作ラノベ最新刊です。カタリナが魔法学園を卒業し魔法省で働き始めてからは、カタリナの傍にいるのはいつもマリア。やはり悪役令嬢モノでは「ヒロイン×悪役令嬢」の組み合わせがベストですよね。ゲーム1作目の登場人物も、2作目の攻略対象たちの勢いに押され気味です。そういえば、Twitter上で見つけたこのファンアート、素敵じゃないですか?

 

 

スイレン・グラフティ1~2』(世津路章)★

はじめまして!  わたしは、池野彗花。この春から、高校一年生です。お母さんが働いてるから、おうちの中のことと弟・妹のお世話はわたしの仕事なんだ。今一番気になっているのは隣の席の庭上蓮さんのコト。クラスじゃ不良だヤンキーだって怖がられてるけど、なーんかそうは思えなくて……。だけどある日、偶然彼女の秘密を知って一緒に住むことになっちゃって!? 「誰にもアタシが漫画描いてるってバラすなよ。バラしたらコロス」 わたしの家を作業場にして、新人賞を目指して頑張る彼女を、ささやかながら応援してます。ちょっぴり怖いけど、悪い人じゃないって知ってるから。そんなこんなで、わたしとあの娘のナイショな青春グラフティ、はじまります!

少なくともここ半年の中で一番の百合作品です。あと、クリエイター系のラノベは初めて読んだのでその点も楽しめました。

それにしても、この作品の中で一番良かったのは主人公の彗花のキャラクターです。ラノベや漫画やアニメでは珍しいお節介長女キャラなのですが、非常に魅力的でした。はめふらのマリアを彷彿させるクセっ毛なのも可愛いですよね。続刊を非常に期待しています!

  

 

『超高度かわいい諜報戦』(方波見咲)

「凡田君と、もっと仲良くなりたいの!」 高校生にして秘密諜報機関を指揮する天才少女、橘黒姫は初恋の真っ最中。好きな人のために組織の力を濫用し、超高度な諜報技術で接触を図る。「……誰かに監視されている?」それに勘づいたのは初恋相手・凡田純一。一見影の薄い平凡な男子生徒の彼は、実はある秘密を持っていて……? 「私が……凡田君と友達になるの!?」 そんな中、組織の命令で凡田と接触することになった暗殺少女・芹沢明希星。友達の作り方なんて知らない彼女の行動は、とんでもない波乱を巻き起こす! 高校生の三角関係に裏社会の命運が揺るがされていく超本格学園スパイ・ラブコメ、開幕。

面白かった……のですが、タイトルもイラスト(特にヒロイン)も基本コンセプトも、やはりかぐや様は告らせたい 天才達の恋愛頭脳戦」を想起せずにはいられませんでした。とは言っても、もちろんストーリーやキャラ設定は異なりますので、十分楽しめます。

凡田くんの持っている秘密については、これがなかった方が良いと感じた読者もいるかもしれませんね。

 

 

『転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?』(紙城境介)

高校卒業から5年間、妹に監禁されていた俺は、やっとの思いで逃げ出した矢先にトラックに轢かれ、異世界に転生。悪魔のごとき妹からようやく解放された……。新しい、自由な世界での名はジャック。貴族の一人息子として、愛に溢れた両親と優しいメイドのアネリに囲まれ、幸せに満ちた、新たな人生が始まった――はずだった。そう、一緒に死んだ妹も、この世界に転生しているのだ。名前も容姿も変えたあいつが、どこに潜んでいるかはわからない。だが、今の俺には神様にもらった、世界最強クラスの力がある。この能力であいつを退け、俺は今度こそ、俺の幸せと、周りの人たちを守ってみせる――!

ヤンデレヒロインのラノベは初めて読んだ気がしますが、なんだかハマリそうです。が、前半の緊張感のまま後半を読了すると肩すかしを食らったような気分になりました。次巻以降に期待せよ、ということなのでしょうか。

 

 

『私、聖女様じゃありませんよ!?』(月島秀一)★

平凡な村娘として幸せに暮らしていた少女ティア。純朴な彼女はある日、異世界に召喚されてしまう。なんとティアは異世界の覇権を争う戦い『聖女大戦』に『聖女』として召喚されたのだった!「私、聖女様じゃありません!」と必死に訴えるティアだったが、実は彼女はレベル9999の最強少女であり、レベル上限が100しかない異世界では、正真正銘の無敵聖女様だった……! 襲い来る他国の聖女を圧倒的パワーで退けるどころか、規格外のスキルで仲間にしたり、自分を召喚した皇帝ユフィと仲良くなって異世界を満喫していって……! 目指すは聖女大戦の完全勝利! そしてお家に帰ること! 純朴聖女様のほっこり無双、開幕です!

百合ファンタジーです。聖女大戦のさなかのまったりとした日常描写には緊張感がないとは思ったものの、百合が優先されたようですね。

 

 

『底辺領主の勘違い英雄譚』(馬路まんじ)

犯罪者や異教徒が跋扈する荒廃した最悪の土地・ベイバロン領。若くして家督を継いで領主となったリゼは、凶悪な領民に殺されないため、一つの決断を下す。それは――領民に媚びへつらうこと! “王族や貴族にのみ与えられた神の力”とされる魔法を領民のために使いまくれば、幸せな暮らしを手に入れられる! ……はずが、いつの間にか領民に「国家への反逆者」だと祭り上げられ――!? 「「「さぁリゼ様、邪悪なる国王を討ち取りましょう!」」」 「(どうしてこうなった!?)」 浅慮さで右に出るものはいない、考えなし領主による最悪の領地運営譚、開幕!

主人公は領民に媚びへつらうために魔法を領民のために使用するのですが、それがなぜか変な方向に転がって行き、領民からは救世主だとか国王への反旗を翻すリーダーだとか勘違いされてゆきます。非常に楽しめる勘違いコメディ・ファンタジーで、本編32話構成なのでテンポ良く読み進められます。続刊希望!

 

 

以上が2020年4月に読んだ本です。

そういえば、3月くらいから、Twitter上で読了報告をするようになりました。作家は結構な割合でエゴサーチしているみたいなので(著者から♡が付けられることがあります)、感想までは書かなくともタイトル・著者名を読了報告するだけでも作家にポジティブな影響があるのではないかなぁと思っているところです。

 

ちなみに、3月に読んだ本はこちらから。

irohat.hatenablog.com