2020年3月に読んだ小説・ライト文芸・ライトノベルのおすすめ
この記事では、2020年3月に読んだ小説(一般文芸)・ライト文芸(キャラクター小説)・ライトノベルを、あらすじと一言コメントを付して紹介します。
※女性が主人公(語り手)の作品には「★」を付しています。
- 一般文芸
- ライト文芸
- ライトノベル
- 『プロペラオペラ1~2』(犬村小六)
- 『最低皇子たちによる皇位争「譲」戦』(榎本快晴)
- 『デスニードラウンド1~3』(アサウラ)★
- 『王女殿下はお怒りのようです1~3』(八ツ橋皓)★
- 『最強の傭兵少女の学園生活 少女と少女、邂逅する』(笹塔五郎)★
- 『転生特典でコミュ力に全振りしたわたし最強でかわいい!』(神庭武敏)★
- 『転生従者の悪政改革録1~3』(語部マサユキ)
- 『所持金ゼロの彼が資産家令嬢から求められるようになった理由』(五木友人)
- 『姫ゴトノ色』(界達かたる)
- 『世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)1~2』(黒留ハガネ)
- 『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』(みかみてれん)★
- 『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』(みかみてれん)★
- 『こわれたせかいの むこうがわ 少女たちのディストピア生存術』(陸道烈火)★
- 『住職探偵』(建待吉作)
一般文芸
『ヅカメン!お父ちゃんたちの宝塚』(宮津大蔵)
「女なのに男の格好をして…一体どこがいいんやろ?」鉄道員一筋だった多々良源蔵は定年直前、それまで全く関心のなかった宝塚歌劇団の“生徒監”に任命された。突如娘たちの“お父ちゃん”となったことに戸惑いつつも真摯に向き合ううち、その眼差しに変化が―。大道具、プロデューサー、演出、父兄…タカラヅカを支える男たち=ヅカメンが織りなす、七つの奮闘物語。
当ブログ激推し漫画『かげきしょうじょ!!』の読者ならきっと楽しめる小説です。
『臨床探偵と消えた脳病変』(浅ノ宮遼)
医科大学の脳外科臨床講義初日、初老の講師は意外な課題を学生に投げかける。患者の脳にあった病変が消えた、その理由を正解できた者には試験で50点を加点するという。正解に辿り着けない学生たちの中でただ一人、西丸豊が真相を導き出す―。第11回ミステリーズ! 新人賞受賞作「消えた脳病変」他、臨床医師として活躍する後の西丸を描いた連作集。
表題作「消えた脳病変」は、新人賞受賞作なだけあって質の高いミステリとなっています。医師の責務・倫理が説かれているところも良かったですね。
『高校入試』(湊かなえ)
県下有数の公立進学校・橘第一高校の入試前日。新任教師・春山杏子は教室の黒板に「入試をぶっつぶす!」と書かれた貼り紙を見つける。迎えた入試当日。試験内容がネット掲示板に次々と実況中継されていく。遅れる学校側の対応、保護者からの糾弾、受験生たちの疑心。杏子たち教員が事件解明のため奔走するが……。誰が嘘をついているのか? 入試にかかわる全員が容疑者? 人間の本性をえぐり出した、湊ミステリの真骨頂!
元々は湊かなえ氏脚本のドラマを小説化したものです。ドラマ化が前提のためか、小説版では登場人物が覚えにくいので、ドラマを見た方が良いかもしれません。
『宝の地図をみつけたら』(大崎梢)
小学生の頃、祖母からこっそり手に入れた「金塊が眠る幻の村」の地図。それは晶良と伯斗の友情の証、そして秘密の冒険の始まりだった。「探しに行かないか、昔みたいにふたりで」。渋々と宝探しを再開する晶良だったが、直後、伯斗の消息が途絶えてしまう。代わりに“お宝”を狙うヤバイ連中が次々に現れて…!? 手に汗握る“埋蔵金”ミステリー!
いわゆる冒険小説です。「埋蔵金」「隠れ里」「冒険」などがお好きな場合にはお勧めします。
『盤上の敵』(北村薫)
我が家に猟銃を持った殺人犯が立てこもり、妻・友貴子が人質にされた。警察とワイドショーのカメラに包囲され、「公然の密室」と化したマイホーム!末永純一は妻を無事に救出するため、警察を出し抜き犯人と交渉を始める。はたして純一は犯人に王手をかけることができるのか? 誰もが驚く北村マジック。
終盤の二転三転する真相の展開には驚きました。北村ミステリーの真骨頂の一つです。
『復讐教室 連鎖』(山崎烏)
ある晩、中学3年生の愛川広樹は、目の前で恋人の中野美幸をレイプされた。数日後、美幸は自殺する。周囲から“恋人を売った”と責められ、失意のまま高校に入学した広樹は、美幸をレイプした犯人が元クラスメイトだと知る。高校で出会った少女・赤嶺由奈とともに、広樹は元クラスメイトへの復讐を開始した―。
第1作『復讐教室』に引き続き、どちらかというと画面映えする作品です。実際、コミカライズもなされているようです。
『彼女は死んでも治らない』(大澤めぐみ)★
沙紀ちゃんはいつも殺されがちな最高にかわいい女の子。わたしは普通じゃないレベルで彼女のことが好きだから、凶悪な犯人をなんどでも見つけ出してやる!と、四六時中息巻く神野羊子は、高校に入学早々、校内で蓮見沙紀の死体を発見。彼女の命を救うため、すかさずお得意の推理を巡らせる―。個性的なキャラクターと唯一無二の文体が織りなす超絶コージーミステリー!
軽妙な語り口は癖になります。
「マツリカ」シリーズ(相沢沙呼)
柴山祐希、高校1年。クラスに居場所を見付けられず、冴えない学校生活を送っていた。そんな彼の毎日が、学校近くの廃墟に住む女子高生マツリカとの出会いで一変する。「柴犬」と呼ばれパシリ扱いされつつも、学校の謎を解明するため、他人と関わることになる祐希。逃げないでいるのは難しいが、本当は逃げる必要なんてないのかもしれない…何かが変わり始めたとき、新たな事件が起こり!?やみつき必至の青春ミステリ。
※上記あらすじは第1作『マツリカ・マジョルカ』のもの。第2作『マツリカ・マハリタ』、第3作『マツリカ・マトリョシカ』と続く。
ドS女子高生探偵・マツリカとその飼い犬のドM男子高校生・柴山祐希による「日常の謎」学園ミステリーです。祐希が物語の語り手なのですが、かなり深く内面描写がなされていて、少し耽美的です。エスっ気のある女性、エムっ気のある男性、女の子の太腿が好きな人は読むべきでしょうね。
第1作・第2作は連作短編集でしたが、第3作は「日常の謎」にもかかわらず長編、しかも第18回本格ミステリ大賞候補作にノミネートされるほどの完成度を誇っています。
ライト文芸
『レールアテンダントガール 車内販売にまいりました!』(豊田巧)★
念願叶って、新幹線の車内販売を担当するJCS(ジャパンカフェテリアサービス)に就職した木古内七海。彼女の夢は、特別車両であるグランクラスの専属アテンダントになること! とはいえ、新米アテンダントの七海にとってそれはまだまだ遠い先の話で、先輩や同期、周囲の人たちに支えられつつ、なんとか日々の業務をこなすのに精一杯。車内で出会うお客様も千差万別で、修学旅行生、出張する会社員、そして何やら怪しい集団――!? 業務にハプニングはつきもの……だけど事件はご勘弁ください! 鉄道エンタメ小説の第一人者が贈る、読むと元気になるお仕事小説。
新幹線の車内販売のお仕事小説です。この本を読んだら、新幹線の車内販売を利用したくなりました。
ライトノベル
『プロペラオペラ1~2』(犬村小六)
極東の島国・日之雄。その皇家第一王女イザヤ18歳。彼女は、重雷装飛行駆逐艦「井吹」の艦長である。もちろん乗組員全員彼女の大ファン! そんな「井吹」に突然部下として乗り込んできたのは、主人公クロト。皇族傍系黒之家の息子クロトはイザヤとは幼なじみだったが、ある日、彼女に対し最っ低の事件を起こして皇籍剥奪、敵国ガメリア合衆国へと逃亡したのであった。お前、どの面下げて!? しかしクロトは言い切る、「俺はガメリアを牛耳る怪物から日之雄を守りに帰ってきた!」犬村小六の「恋と空戦のファンタジー」堂々開幕!!
空戦スチームパンク作品です。飛行艦による空戦が見どころの一つなので、是非映像化して欲しいですね!
『最低皇子たちによる皇位争「譲」戦』(榎本快晴)
望みはただ一つ、働きたくない。皇位の『譲り合い』勃発!ニート気質の第四皇子・四玄は、ある日いきなり次期皇帝の指名を受けてしまう。やる気のない彼に指名が回ってきた理由はごく単純―他の皇子たちもまた、クズ揃いだったのである。街頭露出行為に走る者、売国行為を仄めかす者、仮病で血を吐く者。卑劣な策略に出し抜かれ、四玄はあれよあれよという間に次期皇帝の筆頭候補へと追い込まれてしまう。そんな中で四玄が打った逆転の秘策は『城下で拾ってきた少女を第五皇子にでっち上げる』というもので―!?バカしかいない新感覚異世界コメディ、開幕!
同時期に同レーベルから出版された「皇位争奪戦を裏から操ってます」系の方は、「いかにも」な感じがして手が伸びなかったのですが、こういうコメディ路線だと嬉しいですね。期待に違わず面白かったです! 続編期待!!
『デスニードラウンド1~3』(アサウラ)★
多額の借金を持つ女子高生のユリは返済のために、銃を持ち、己の命をリスクに晒す……そんな危険な傭兵稼業に手を出した。彼女は合法・非合法を問わず危険な仕事を請け負う「死に損ない」ばかりの松倉チームで仕事を始めるが、なぜか連れて行かれたのは都内のバーガーショップ。「こ、これ、ヤバくないですか!? 超ヤバイですよね!?」 ユリの初仕事は、なんとバーガーショップのマスコットキャラクターを襲撃することだった…! 不可思議な仕事依頼をきっかけに、銃弾と血と笑い声が飛び交う常軌を逸した夜が始まる──ユリは未来を切り開くために戦い抜けるのか!?
作者の銃火器好きが伝わってきます。ファンタジーでも、(たぶん)異能モノでもなく、銃火器と肉体で戦うのは好きですね。あと、訴えられるかもしれないレベルのキャラクターをモチーフにした敵役が登場するのも良いですね!
『王女殿下はお怒りのようです1~3』(八ツ橋皓)★
王女であり最強の魔術師のレティシエルは、戦争によって命を落とし、千年後の世界へと転生した。彼女は魔力がないため周囲から無能令嬢扱いされるが、レティシエルの“魔術”は使えて拍子抜け。その後学園でレティシエルは、千年後の“魔術”を目の当たりにし―そのお粗末さに激怒した!我慢ならないレティシエルが見せた“魔術”は学園を震撼させ、やがて国王の知るところとなるが、レティシエルは“魔術”の研究に夢中で全く気付かず―!? 前世の伴侶によく似た少年・ジークと落ちこぼれの令嬢・ミランダレットを巻き込んで、生まれ変わった王女殿下は我が道を突き進む!常識外れの最強魔術譚、開幕!!
女性主人公モノの学園魔法ファンタジーが読みたい方にはお勧めです。
『最強の傭兵少女の学園生活 少女と少女、邂逅する』(笹塔五郎)★
伝説の傭兵エインズ・ワーカー。彼には、拾い育てた娘同然の傭兵少女―シエラという子がいた。…なのだが―、「俺は傭兵を引退する」エインズの突然の引退宣言。戦場以外の世界を知らないシエラは、エインズの言いつけで王都の学園に単身通うことになる。傭兵の経歴を隠す生活は窮屈だったが、シエラは孤独な貴族令嬢のアルナと出会い、友情を育む。しかし王位継承争いにアルナが巻き込まれ、暗殺者の手が迫ったことで事態は一変。アルナを守るため、シエラはエインズ譲りの最強の力を振るうことを決意する。世間知らずの最強傭兵少女が繰り広げる、ガールズバトルファンタジー!堂々開幕!!
百合に分類されるガール・ミーツ・ガール作品です。
『転生特典でコミュ力に全振りしたわたし最強でかわいい!』(神庭武敏)★
―今度こそ友達を作りたい!そんな想いを胸に命を落とした超コミュ障は、異世界で死にかけの美少女・エリシアとして転生!そして選んだ転生特典は、天下無敵のコミュニケーション能力。えっ、コミュ力って魔道具や大気中の魔素とも仲良くなれんの?魔法の才能を認められ王都の魔法学園に通ったら、すったもんだの末に良家のお嬢様たちとも仲良しになれました。念願のリア充ライフを謳歌するもくだらない貴族学校から逃げて今度は冒険者生活スタート!? これは、心から友達が欲しいと願った女の子が、二度目の人生を頑張る物語―。第6回集英社ライトノベル新人賞・特別賞受賞作品!
ハイテンションな筆致がクセになる、女性主人公モノの異世界転生ファンタジーです。アニメ化もされた『私、能力は平均値でって言ったよね!?』が好きな人はこの作品も気に入ると思います。
『転生従者の悪政改革録1~3』(語部マサユキ)
大好きな七海先輩との下校中、異世界転生してしまった勇利。没落貴族の跡取りとして、仕えるワガママ令嬢に会いに行くと―「申し訳ありませんでした!」と華麗な土下座をキメられた。普段と様子の違う令嬢に戸惑う勇利は、ふとした仕草から彼女が同じく転生した七海先輩だと気づく。元の世界に戻るには令嬢(=先輩)が婚約or悪徳貴族がはびこる王宮での成り上がり!? 先輩の婚約回避のため、悪役令嬢とはじめる異世界改革!!
残念ながら第3巻で打ち切りのようです。
『所持金ゼロの彼が資産家令嬢から求められるようになった理由』(五木友人)
貧乏生活を送る高校生・天満清太郎が出会ったのはお金持ちJKの美少女探偵!? ひょんなことから美少女の助手となった清太郎は、彼女のお屋敷に居候することに。お嬢様と一つ屋根の下、二人の仲は急接近していくかと思いきや―彼女が求めているのは、彼の貧乏に隠された力だった!? しかし二人で事件を追ううちに、いつしか清太郎自身もお嬢様に求められていくようになって―! 「アンタの貧乏全部ひっくるめて、好きよ、清太郎!」所持金ゼロの高校生が資産家令嬢に愛されまくる!貧乏を幸せに変えていく新感覚の身分差ラブコメディ! 第24回スニーカー大賞金賞受賞作。
あらすじでは触れられていませんが、主人公・天満清太郎の家には貧乏神が憑りついており、その貧乏神というのが、いわゆる「ロリババア」に分類される属性を持っています。
この作品の語り手は、清太郎とこの貧乏神なのですが、やや古風な語り口がクセになります(もちろん読みやすさは失われていません)。私が大好きなタイプです。続編希望!!
『姫ゴトノ色』(界達かたる)
高校入学を機に、豪奢な屋敷・姫裏家にて住み込みのアルバイトを始めた僕。和服メイドのイグルミさんによると、屋敷には三姉妹のお嬢様たちがいるらしい。でも長女は不在で次女はなぜか行方不明、三女の姫裏ねむは天使のような見た目なのにわがまま放題。だがのちに、ねむが自分の部屋から出ることができない少女であると知る。その理由は――彼女の視界が、"血色"に染まっているから……?
魔法も異能も登場しない、現代日本を舞台とするミステリーです。
『世界の闇と戦う秘密結社が無いから作った(半ギレ)1~2』(黒留ハガネ)
ある日突然、超能力に目覚めた佐護杵光。そしてその力を狙う悪の組織が、突如彼の前に現れ―なかった。隣の家の幼馴染が実は退魔師の子孫だと発覚し―なかった! 謎の美少女が転入し―なかった!! 平和過ぎる日常に逆ギレした佐護は、自分自身が秘密結社になる事を決意する。日本中を探して見つけた有能美女・鏑木栞を副官に引き入れ秘密結社「天照」を創設、資金調達事業も成功。蓮見燈華、高橋翔太という新メンバーも加えたところ、ついに世界を滅ぼす魔王が現れ―なかった! そこで佐護は、とある計画を思いつくことになり…? ひとりの最強能力者が紡ぐ、圧倒的マッチポンプギャグコメディ、開幕!!
超能力に目覚めたにもかかわらずそれを使って活躍する舞台がないから、自分自身で秘密結社のボス(ヒーロー役)と世界の闇(悪役)を兼ねて、非日常を望む少年少女を秘密結社に引き入れて裏事情を知らせないままヒーローになってもらう、というマッチポンプコメディ作品です。超面白いにもかかわらず、第2巻で打ち切りとなってしまったのは非常に残念です。
『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』(みかみてれん)★
ぼっちな中学時代を捨て、高校デビューしたわたし・甘織れな子。でも、根が陰キャだから憧れの陽キャ生活に馴染めず、窒息寸前! そんなとき、我が校のスーパースター・王塚真唯とひょんなことからお互いの悩みを共有してヒミツの友達に。真唯がいれば毎日がんばれそう―と思ったはずが! 「君に、恋をしてしまったんだ」「待って!友達どこいった?」恋人なんて不安定な関係、ムリ!わたしは最高の友達を作って高校生活を楽しみたいの! でも真唯も恋心を諦めきれないようで―。「恋人と親友のどちらが私たちにふさわしいか、勝負で決めよう」こうして、ふたりの在り方を懸けたノンストップ・ラブコメディが幕を開けたのだった!
濃厚な百合作品です。真唯のキャラにクセはありますが、真正面から女の子同士の恋愛が描かれている王道百合作品です。
『女同士とかありえないでしょと言い張る女の子を、百日間で徹底的に落とす百合のお話』(みかみてれん)★
「女同士なんてありえない!…はずなのに!!」 モテ系JKの榊原鞠佳は、ある日、クラスのクールな美少女・不破絢に、突然百万円を突きつけられた。その日から始まる、放課後の○○タイム。頭を優しく撫でたり手を握ったりするところから始まる絢の行動は、日に日にエスカレート!! 果たして鞠佳は、百日目まで絢に「ありえない」と言い張ることができるのか―(できない)。屈服確定!?敗北必至!?鞠佳の百日を巡るガールズラブコメディ!!
同じくみかみてれん氏による濃厚な百合作品です。「わたなれ」に比べると、わりと身体的接触を伴う甘美な描写がありますので、ご注意ください(?)
『こわれたせかいの むこうがわ 少女たちのディストピア生存術』(陸道烈火)★
“フウ”―最下層の孤独少女。友は小鳥のアサと、ジャンク屋の片隅で見つけた、古いラジオのみ。“カザクラ”―マイペースな腹ぺこガール。出会った瞬間からフウを「お兄ちゃん」と慕い、陽気な笑顔でつきまとう。そんな二人が出会ったここは、世界にただ一つ残るヒトの国。異形の怪物たちが支配する果てなき砂漠の真ん中で、ヒトビトは日々の貧苦を喜びとし、神の化身たる王のために生きねばならない―。だが、彼女たちが知る世界は、全部大ウソだった。たくさんの知恵と一握りの勇気を胸に。今、“世界一ヘヴィな脱出劇”が始まる。第26回電撃小説大賞“銀賞”受賞作。風の名を持つ、二人の少女の物語。
やや近未来SFの要素もあるディストピア百合作品です。第26回電撃小説大賞で大賞を受賞した二月公『声優ラジオのウラオモテ』(電撃文庫)と同じく、ラジオが物語の重要なツールになっているのが嬉しいですね。続編希望!!
『住職探偵』(建待吉作)
探偵・笹峰誓之助は住職の不貞を暴き別れるよう警告するが、逆に自身の過去をバラまかれ、探偵会社から自主退職を促されてしまう。さらに住職は本山に手を回し、依頼人であった妻・受海を隔絶された山奥の寺に異動するよう辞令を出させた。受海には難病を抱えた一人息子がおり、大きな病院もない山奥での生活は困難だった。妻と実の息子への非情な仕打ちに憤った笹峰は、僧籍に入っていた過去の立場から、受海の代務者として奥世郷に向かうことになる。そこで笹峰は、独自の信仰を持つ「厖蔵宗」の存在を知らされる。笹峰は信仰深い郷に紛れ込む異分子、厖蔵宗の正体を暴こうとするのだが―。限界集落で起こる連続猟奇殺人の真相とは!?
ラノベレーベルから刊行されていますが、どちらかというと一般文芸やライト文芸に分類されるべき作品かもしれません(挿絵もありません)。
独自の宗派が信仰されている隠れ里を舞台とするサスペンス・ミステリーです。ワクワクする設定ではないですか? 作者が現役住職という異色の作品で、作中で語られる宗教観も見どころです(説教臭くはないですよ!)。あと、あのラストは作者の性癖でしょうか?
というわけで、先月は読んだ本の数が多かったので気まぐれに紹介してみました。気が向いたらまたするかもしれません。
追記:4月に読んだ本の報告記事はこちらから↓