アニメ「ランウェイで笑って」第2話の感想・考察――千雪の身勝手と育人の覚悟
この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」の第2話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。
見逃した方は、毎翌月曜深夜26:55から最新話がTVerで無料配信されていますので(https://tver.jp/anime)、是非ご覧ください!
第1話の感想記事はこちらから!
- 0.基本情報
- 1.OP初披露!
- 2.ED初披露!
- 3.テンポの速い展開
- 4.千雪の身勝手と高いプライド
- 5.育人の覚悟
- 6.手を振っている!
- 7.やっぱりカラー化!
- 8.厳しい現実・再び
- 9.背中合わせの二人
- 10.千雪の体型
- 11.プロの現場
0.基本情報
原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)
アニメーション制作:Ezo’la
監督:長山延好
TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/
ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#
原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175
アニメ第2話「プロの世界」
相当する原作のエピソード:第1巻第2話「これは僕の物語」、第3話「期待の逸材」、第4話「なりたがり」、第5話「何者でもない」、第2巻第6話「プロの現場」、第7話「得意でしょ?」の冒頭まで
ファッションデザイナーになる夢を秘めてきた育人。千雪の父で、ファッションブランド・ミルネージュ社長の研二から働き先を紹介され、新進気鋭のデザイナー・柳田一の職場を紹介される。アトリエを訪ねた育人は、柳田の厳しい態度と過酷すぎるプロの現場に驚くのだが……。
1.OP初披露!
(1)OP曲は坂口有望「LION」
第1話では挿入歌として使用されていましたが、シンガーソングライターの坂口有望さんによる「LION」がついにOP曲として使用されましたね! やっぱり良い曲ですね!!
TV Size版は既に配信中、フル版は2月5日発売だそうです!
(2)千雪の努力
飄々かつ勝気な面が目立つ千雪ですが、OPでしっかりと「努力の人」であることの描写がされていたのが、個人的にちょっと嬉しかったです。
(3)OP最後のカット
OP最後のカットは、やはりパリの描写なんですかね? エッフェル塔っぽい建物が見えますし。
2.ED初披露!
EDも初披露でしたね! ED曲は、ジェジュンさんによる「Ray of Light」です!
EDアニメーションは、アニメとしては珍しく、男性目線――育人の記録――でしたね!!
3.テンポの速い展開
第1話もテンポの速い展開だったのですが、第2話はそれ以上に速い展開でした。
どれくらい早い展開かと言うと、アニメ第1話が原作の1話分を消費したのに対し、アニメ第2話は原作の1巻分(第1巻第2話~第2巻第7話の冒頭)を消費しているのです!
しかもそれでいて、会話のやり取りの少々の省略はあるものの、エピソードの基本線はきっちりと押さえられているから見事な脚本構成と言うしかありません。
4.千雪の身勝手と高いプライド
第2話の冒頭、千雪は父親から、「千雪、復帰してプロ気取りかもしれないが、全部、都村君におんぶにだっこの結果だろう。そんなヤツが他人を軽んじてやっていけると思うな。自分に才能がないことを自覚しろ」と厳しい言葉を投げかけられます。
ハイパーモデルになる身としては、どうせ素人の作った服ならば格好がつく芸華大生の方が良いと、育人の身分を偽った千雪を叱っているのです。たしかに、ここでの千雪はプライドが高く身勝手でした。しかし、だからといって千雪を責める気になれないのが彼女の魅力です。
千雪は「私、素人が作った服、着るつもりないから」と言って、育人が作ってミルネージュのオーディションに合格したときの服を育人に返却しました。
その言葉に育人は、「藤戸さんは勝手ですよ! 作れって言ったんじゃないですか! なのにいらない? はあ!? 変に見栄張って、完全に僕、振り回されただけなのに、なのに、なんなんですか!? まるで僕が悪いみたいに!」と柄にもなくキレてしまいます。まったくの正論です。この点については、千雪も「悪いとは、思ってるってば。そりゃ身勝手でわがままな話だよ」と認めています。
しかし、ここで終わらないのが藤戸千雪です。「それでも、諦めてほしくない。私はね、自分で言った言葉を払拭したいの。私でもパリコレに出るのは無理じゃない、君でもデザイナーになるのは無理じゃないって、私のためにも証明したいんだよ」と言うのです。
そもそも、育人に「デザイナーになるのは無理なんじゃないの?」と言ったのは千雪ですし、彼の境遇に自分自身の境遇を重ね合わせたのも千雪です。つまり、これらは、まったくもって千雪の脳内で完結している出来事であって、おそらく「私のためにも証明したいんだよ」と言われるまでは、育人は彼女の心の中の激烈と葛藤を伺い知ってはいないはずです。その意味で、まさに「私のために」と、千雪は育人を身勝手に振り回しているのです。
しかしながら、千雪は、育人がファッションデザイナーになりたいことを確信しています。だからこそ、「私のためにも=あなたのために」と、彼女の身勝手は、育人を後押しして止まないのです。そして彼女の身勝手と高いプライドは、「僕がプロになれたら、また着てくれますか?」と、育人を間違いなく後押ししました。だからこそ、千雪を責める気になれず、むしろ身勝手と高いプライドは彼女の魅力とさえ言えるのです。
そして、藤戸社長と面前したとき、育人はこう宣言しました。
僕はモデルのことはよく分かりません。ただ、僕の服を着た千雪さんを見たとき、こんなにも着る人で変わるんだって思いました。今、こうして社長とお話しできているのも、千雪さんの写真が有名な人の目に留まって、話題になったからで、きっと着てくれたのが千雪さんじゃなければ、見向きもされなくて……。だから、きっと千雪さんは、すごいモデルになると思います!!
育人に「無理なんじゃないの?」と言い、その姿に自分自身の境遇を重ね合わせたときから、千雪にとって育人は運命の相手でした。しかし、育人にとって千雪が運命の相手になったのは、きっと藤戸社長にこのように宣言したときからだと思います。
最初に藤戸社長に会ったときは反論できなかったのに、また、自分がミルネージュに雇ってほしいことはまともに言えないのに、「きっと千雪さんは、すごいモデルになると思います!!」と千雪のために宣言したのは、育人が千雪を運命の相手であると認めたからこその行動だからではないでしょうか。
5.育人の覚悟
(1)蛮族の象徴
千雪との会話の中で、育人は「服は人を変えられる。僕が服作りを好きな理由の一つです。もう一度、藤戸社長に会うのは怖い。けど、そんな弱さが勇気に変わる服を作ります」と言っていました。
アニメでは省略されてしまいましたが、育人が藤戸社長に会うために作り着ていった服には、「育人の覚悟」が込められていました(原作第1巻第2話参照)。
この服にワンポイントで使用されている縞模様(ボーダー)は、「元々、囚人や道下が纏う忌み嫌われた模様」でした。これは、「蛮族の象徴」であり、育人にとっては、藤戸社長に対して「きっと千雪さんは、すごいモデルになると思います!!」とケンカ腰に宣言するための勇気をくれるための服でした。
(2)厳しい現実
藤戸社長は、「正直言うとね、高校生でこれだけのクオリティー、鳥肌が立ったよ。確実に才能がある」と育人のことを褒めつつも、「だが、君には学ぶべき知識と経験が足りてない」と厳しい言葉も投げつけます。
アニメでは省略されてしまったのですが、原作ではもっと厳しい言葉でした(原作第1巻第2話参照)。
確実に才能がある。だが、君くらいの力量、大学や専門〔学校〕を探せば、特別珍しくもない。学ぶべき知識と経験を得ていない分、こちらとしてはリスクが大きい。もう一つは単純に、すでに代わりのデザイナーを雇ってしまったんだ。わざわざ無い席を用意してまで雇いたいと思えるほど、君に価値を見出していないんだ。
(3)垣間見えた親子愛
しかし、続けざま、藤戸社長は「ただ、無理と言われても折れない心は、最高の資質だ」とも言います。このとき、一瞬だけ、モデルの練習に励む千雪を陰で見守る藤戸社長のカットが見られました。
原作では、「その点で言えば、俺も千雪はいいモデルになると思ってる」という藤戸社長の言葉でした(原作第1巻第2話参照)。
垣間見える直接的でない親子愛が、じれったくも最高です!
6.手を振っている!
育人を柳田さんのアトリエに案内した際の帰り際、原作では私は見逃してしまっていたのですが、「私も頑張るから、頑張りなよ。ありがと」と言いながら、右手で小さく手を振っていました! 千雪らしい仕草ですね!!
7.やっぱりカラー化!
原作漫画では特に意識していなかったのですが、柳田さんの服は赤系(深紅?緋色?スカーレット?クリムゾン?)だったんですね!
8.厳しい現実・再び
度々才能があることを指摘される育人ですが、現実はそう上手くいきません。育人は、「目立たないように星縫い」と指示されたところを、両星縫いではなく、普通の星縫いをしてしまったのです。まさに藤戸社長の予言していたとおり、「学ぶべき知識と経験が足りてない」ことが露呈したのです。まったくもって厳しい現実を突きつけられた育人でした。
9.背中合わせの二人
星縫いに失敗してアトリエを追い出されそうになったとき、育人は「私も頑張るから、頑張りなよ」と千雪の言葉を思い出し、柳田さんに食い下がりました。この背中合わせの二人の演出、最高じゃないですか? まさに育人と千雪は互いを支え合っていることがよく分かります。
10.千雪の体型
森山さんが千雪の体型を褒めていましたけど、ここで言いたいのはそれではありません。
この千雪の真横姿のカット(アニオリ)、女性の脚のスタイルや肉感をかなりリアルに描写しているように見えます。
思い返せば、アニメでは必ずしも正確に人の姿形が描かれるわけではないし、体型が分かりやすく出るパンツスタイルの真横姿のカットなんてあまりありません。
そこで思い至ったのですが、ファッションモデルを題材とするこの作品においては、頭身・体型のリアリティが大切にされています。意識的に見てみると原作漫画はもちろんそうですし、このカットでも分かるように、アニメでも大切にされています。
11.プロの現場
千雪が「ごめんなさい。急いで来たからブラ着けっぱなしで」と謝ったのは、おそらく、首元~肩を露出させる衣装の場合には、ブラの肩紐の跡が出てしまうため、モデルをする際には、直前でなくそれなりの余裕をもって事前にブラを外しておくべきことを意味しているのだと思われます。
また、アニメでは説明されていませんでしたが、原作によると、モデルは、上はニップレスを、下はTバックだそうです(原作第2巻第6話参照)。
いろいろ詰め込まれたあまりにもテンポの速い展開なので、まさか11項目にわたって感想を書き連ねることになるとは思いませんでした。
次回第3話「ランウェイで笑って」は、倒れた森山さんの代わりに育人が千雪の衣装を仕立て直すことになります。ショーの時刻が迫る中、果たして育人は上手く千雪のために仕立て直しできるのでしょうか? 千雪はランウェイを歩くことができるのでしょうか?
まるで最終話のようなサブタイトルですが、もちろん物語は続いて行きますよ!(ちなみに、1月17日に原作最新刊の第14巻が発売されました!)
第3話の感想記事はこちらから!