アニメ「ランウェイで笑って」第1話の感想・考察ーーこれはどんな物語?
この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」の第1話の感想です。ネタバレにはご注意ください。
見逃した方については、1月13日深夜より毎週月曜深夜26:55からTVerで無料配信されていますので(https://tver.jp/anime)、是非ご覧ください!
0.基本情報
原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊12巻、週刊少年マガジンで連載中)
アニメーション制作:Ezo’la
監督:長山延好
TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/
ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#
アニメ第1話「これは君の物語」
相当する原作のエピソード:第1巻第1話「これは君の物語」
「パリ・コレ」を目指す藤戸千雪は、低身長というモデルにとって重大な欠点を抱えていた。周囲から「諦めろ」と言われ続けても千雪は折れない。ある日、千雪はクラスメイトの都村育人の進路調査を回収することになる。クラスメイトたちから「影が薄い」と言われている育人の意外な「将来の夢」を知った千雪は……。
1.これはどんな物語?
アニメ第1話の冒頭と末尾で明快に打ち出された通り、この「ランウェイで笑って」は、「藤戸千雪がトップモデルに至るまでの物語――そして、都村育人がトップデザイナーに至るまでの物語」なのです!
このような「夢を叶える物語」は大好きです! 夢に向かって努力する様は応援せずにはいられません!!
そしてこの物語の主人公は、千雪と育人の2人です。こうしで出会った2人はこれから、千雪はトップモデル、育人はトップデザイナーという夢のために、互いに切磋琢磨してゆく友、あるいはライバルになってゆきます。こういう「友でありライバルであり」みたいな関係、最高じゃないですか?
2.千雪に立ちはだかるファッション業界の厳しい現実
雫さんがパリコレで着ていたファッションを身に着けて面接に来た千雪に対して雫さんは以下のような言葉を放ちました。
身長をごまかすための履き方ほど醜いものはないわ。それに、服が似合うだけのモデルなんて、ごまんといるの。ショーモデルの仕事はあなたを見せるんじゃない。服を魅せるの。そのための身長、そのためのスタイル。うちはコネでどうにかできる大きな事務所じゃない。あなたにできるの? その恵まれない身長で。千雪、無理なの。諦めて。
この言葉は、モデル業界の厳しい現実を言い表しています。今後何度も言及されることになると思うのですが、モデル業界はとにかく身長がモノを言う世界であり、モデルの身長から生み出される存在感によってファッションを魅力的に見せることこそが至上命題とされるのです。
そのため、「ショーモデルの仕事はあなたを見せるんじゃない。服を魅せる」のです。アニメでは同音のセリフだったので気付かなかった人も少なくないと思いますが、ただ「服を見せる」のではなく「服を魅せる」=「服を魅力的に見せる」ことこそがモデルの仕事なのです。この「魅せる」という言葉にモデル業界の本髄が詰まっているように思われます(テレビの字幕は「見せる」でしたが、原作の通りに「魅せる」にしてほしかったところです)。
3.千雪の覚悟と情熱
育人のデザインしたファッションを着て面接に来たときの千雪の言葉です。
わたし、諦めないよ。パパがモデル事務所を立ち上げたこと、雫さんのステージを見たこと、わたしの人生全部があの場所に行きたいって叫ぶの。……だから、藤戸千雪(わたし)じゃいられないんだよ、諦めちゃったら。
そして、雫さんに「一生……叶わない夢を追いかけるつもり?」と問われた千雪はこう答えます。「叶える!一生あるんだもん!」と。
ここのセリフ、熱すぎませんか? 「わたしの人生全部があの場所に行きたいって叫ぶの」「藤戸千雪(わたし)じゃいられないんだよ、諦めちゃったら」と、自らの存在意義がパリコレモデルにあると宣言しているのです。こんな言葉、相当な覚悟と情熱がなければ言うことができません。自分自身に置き換えて考えてみると、こんな宣言をすることはかなり躊躇われます。この藤戸千雪の放つ覚悟と情熱には思わず惹きつけられ、応援せずにはいられません。
4.その名に込められた親子愛
千雪の父親が経営するモデル事務所は、彼の「人生で一番大切なもの」がその事務所名となっています。すなわち、「Mille neige=千の雪」です。
そして、千雪は千雪の方で、「スーパーモデル=パリコレで活躍するモデル」になるつもりはありません。彼女が目指すのは、「ハイパーモデル=父親の事務所『ミルネージュ』からパリコレに出て活躍するモデル」なのです!
このような、「身長=才能がない」と父親に突き放されつつも決して諦めない千雪と、千雪を出禁にせず彼女自身が諦めるまで待っている、言い換えれば娘の可能性を信じ続けている父親の不器用な関係、素敵じゃありませんか? 今後もドライかつ没交渉気味の父娘関係が続きますが、その節々に不器用ながらも親子愛を感じることができます。
5.アニメと言えば?
原作漫画は当然、白黒なので、千雪らが着るファッションがどんな色をしているのか、よく分かりません。その意味で、このようなファッション業界を描く漫画をアニメ化する意義の一つは、カラー化という点にあります。
そして、第1話ではまだ本格的には登場しませんでしたが、これから描かれるはずの千雪がランウェイを歩くシーンはまさにアニメーションの特性が活かされるはずです。期待しています!
6.原作漫画も是非読んでほしい!
アニメはカラーとアニメーションという点で優れていますが、しかし原作は原作の方で、横長長方形のいつまでたっても同じ大きさのテレビ画面とは打って変わって、コマ割りや文字の大きさなどで漫画ならではの工夫がなされた演出がなされています。ぜひ原作漫画もご覧になってください! 以下では原作漫画の秀逸な演出を紹介します!
試し読み↓(アニメ第1話に相当する部分が読めます)
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175
(1)158cm
まず、「そうしてわたしは――そこから1cmも身長が伸びることなく、高校3年生を迎えた」の箇所なんですが、原作漫画では、「――」の部分でページをめくることになり、「そうしてわたしは」の何気ない小さなコマから、「そこから1cmも~」の大きな見開きのコマになります。前後で差をつけるようなこのページ割り・コマ割りは、漫画ならではの効果的な手法です。
とはいえ、アニメの方もオリジナルの演出が行われていました。「そこから1cmも~」のところで画面がブラックアウトしたのも、そこから同じ高さに留まり続ける印のカットも、それを見る千雪の絶望的な表情も、アニオリでした。
(2)「無理なんじゃないの」
そして、やはり一番秀逸なのは、千雪が育人に「無理なんじゃないの」と言ったコマでした。
アニメではBGMとともに会話の中で自然に流れてゆくセリフでしたが(CV:花守ゆみりさんのセリフ運びが上手でしたね!)、漫画ではこれとは違った演出がなされていました。
それというのは、このセリフは、発言者の千雪さえ入り込んでいない小さなコマでなされたものなのです! このような小さなコマの何気ないセリフでしたので、特に気にも留めず流れるように読み進めてしまいました。
しかし、千雪が自身と育人の境遇を重ね合わることに思い至ったとき、千雪はつい先ほど育人に言った「無理なんじゃないの」というセリフを思い出します。このコマになって初めて、何気なく発された先ほどの小さなコマのセリフの意味に気付き驚きました。私が初読のときは、3回くらいこのコマに立ち返って読み直した記憶があります。この小さなコマに込められた細やかかつ効果的な演出は秀逸と言わざるを得ません。
さて、ここまでアニメ「ランウェイで笑って」の第1話の感想を長々と書いてきましたが、実は、アニメのまともな感想を第1話から書いたのは初めてです(技術的な解説に限定したものや、衝動的にワンイシュー的な感想を書いたことはありますが)。
ブログに書き綴るアニメの感想とはいかにあるべきか悩ましいところですが、何かしら書いて行ければと思っています。
次回第2話「プロの世界」は、育人を主軸としたエピソードになると思われます。ミルネージュにオファーされた育人ですが、果たして順調に事は進むのでしょうか?
第2話の感想記事はこちらから!