「星合の空」第10話の感想とソフトテニスの解説
この記事には、「星合の空」の第10話の感想とソフトテニスの解説を記しています(筆者がソフトテニスから離れてしばらく経っていることにご留意ください)。
第9話については以下の記事をどうぞ!
1.リストバンド
柊真と眞己がリストバンドについて話していました。
試合中は、チェンジサイズ時およびファイナルゲーム前の1分間以外には休憩がないので、タオルで汗をぬぐう暇はありません。また、個人差はありますが、発汗量によっては腕の汗がラケットを持つ腕に垂れてくるのでそれをリストバンドで食い止めるという役割もあります。
リストバンドを着ける場合は、それなりに違和感があるので、普段の練習のときから着用し試合までに慣れておく必要があると思います。
2.アンダーカットサーブ
柊真の回想で眞己がアンダーカットサーブをしていました。
アンダーカットサーブとは、膝くらいの高さでボールの下方を擦るようにスライス回転(横回転)をかけて打つサーブです。このとき、ラケットは一時的にイースタングリップまたはセミイースタングリップに持ち替えます。
スライス回転によって打球はバウンド時に大きく方向転換します。右利きの場合、サーバー視点では右方向にややカーブしつつ、地面着地時に右側にバウンドします。レシーバー視点では左側にややカーブしつつ、かつ左側にバウンドしますので、レシーバーが右利きの場合は窮屈な姿勢でレシーブすることになります。アンダーカットサーブは大きく方向転換する割に、意外とコントロールしやすいので、初級者~中級者のセカンドサービスに適しています。
3.個人戦におけるチームメイトの応援・観戦
部員でもない夏南子は言わずもがなですが、実は、個人戦においてチームメイトが仲間の応援・観戦のためにコート内(フェンスの内側)に入ることは禁止されています(競技規則38条2項)。応援・観戦したければ、コート外(フェンスの外側)から行う必要があります。
4.オムニコート
この地区予選の会場には、オムニコートが敷かれています。オムニコートとは、砂入り人工芝コートのことです。
学校などにある砂利のコートに比べて水はけが良いので、前日や当日朝に雨が降っても水たまりができにくく、またスポンジによる吸水・排水によって比較的短時間のうちにコートの機能を回復することができます(砂利のコートは水はけが良くないので吸水・排水に時間がかかります)。また、コートには砂がまかれており、砂利のコートと同じくボールのバウンド痕が残るため、際どい判定に際して役に立ちます。その反面、試合後にはシューズの中に大量の砂が入り込みます。
このようにメリットのたくさんあるオムニコートですが、敷設費用が高いため、強豪校を除けばほとんどの学校で砂利のコートが採用されています。
5.ゼッケン
公式試合においては試合中は、学校名と名前が書かれたゼッケンをユニフォームの背面につけます(もしくは直接印字されたユニフォームを着ます)。ゼッケンの固定方法は、縫い付け、ボタン、安全ピンなど色々です。
6.試合前の乱打
試合前(挨拶とコート・サイドの決定を済ませた後)、数分間だけ乱打の時間が設けられます。ここで相手の実力が分かったりもします。
7.審判の担当者
少なくとも地区予選や県大会では、審判(アンパイヤ―)は、選手(生徒)が行うのが通例です(決勝などは顧問やコーチなどの指導者が行う場合もあります)。
各コートの第一試合は、大会本部指定のペアが審判を務めます(通常は、シードとなっているペアが優先的に審判に指定されます)。第二試合の審判は、「負け審」と言って、そのコートの第一試合で負けたペアがそのまま同じコートに残り第二試合の審判を担当することになります。第三試合以降も、この「負け審」を繰り返します。
8.公式試合だけど5ゲームマッチ
ソフトテニスの公式試合は7ゲームマッチで行うのが通例ですが(競技規則17条1項)、中学生(特に地区予選)などは5ゲームマッチで行われることも多々あります。
9.1試合目の1球目はフォルトでは?
この樹・凜太郎ペアの1ゲーム目の1球目のシーンが気になりました。
樹・凜太郎のペアは、前後の流れからして、サービスエースを取られた(レシーブミスによる失点)ようですが、このサービスは明らかにサービスコートから外れてフォルトしています。制作上のミスでしょうね。
サービスのルールについては、第3話の記事の4をどうぞ!
10.機動的なダブル後衛の利点・弱点
ダブル後衛の直央・太洋ペアは、走り回るという戦術をとっていたようです。
ダブル後衛のペアが走り回り、どちらか一方もしくは両方がネット際に出きてスマッシュやボレーを決めるという機動的な戦術は、通常は決定力に欠けるダブル後衛に攻撃力を付加するという点においては、たしかに有効です。
しかし、初級者~中級者がこのような戦術を行うのは少々無理があると思われます。前衛ポジションに出た場合には頭上から足元までどこに来たボールでもノーバウンドで返球できる技術が必要になりますし、そもそも、走り回ることによって左右に振られてボールが取れないリスクの低減と体力の温存というダブル後衛のメリットを大きく損なうことになりかねません。
直央・太洋ペアの試合を俯瞰から終始連続的に見れるような描写はなかったので確定的なことは言えませんが、彼らは「二人ともコート後方に下がったままで、相手前衛を避けて相手後衛とラリーを続けてミスを待つ」というダブル後衛の基本的戦術を維持していた方が勝てたのではないでしょうか?
第10話の記事はこちらから!