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『あおざくら 防衛大学校物語』第14巻の感想

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あおざくら 防衛大学校物語』第14巻


この記事は、二階堂ヒカルあおざくら 防衛大学校物語』第14巻(2019年11月18日発売)の感想記事です(TVドラマの記事ではなく、原作マンガの記事です)。ネタバレにご注意ください!

www.shogakukan.co.jp

 

なお、第14巻巻末に、TVドラマ&舞台に出演する高崎翔太さん(役:坂木龍也)と小澤廉さん(役:沖田蒼司)の対談が収録されています。撮影現場での裏話などを知ることができます! ドラマ版の視聴者の方も是非手に取ってみてください!

 

 

第14巻のあらすじ

冬休みでつかの間の休暇…と思いきや事件続発!!

長かった中期が終わり、冬休みに突入。

初日を「部屋会」で過ごすと先輩から聞いていた近藤と土方だったが、その会場はまさかの温泉宿! 上級生たちに学ぶ「オフの過ごし方」とは――!?

部屋会の後も、犬猿の仲であるはずの土方が実家に来たり、クリスマスダンスパーティーで色々あった松井と年末年始を一緒に過ごしたりと、近藤にとっては重大イベント満載のようで…!?

新年、新キャラ、新展開!! 勢いを増す青春“防大”物語!!!

〔裏表紙より〕

 

第14巻は、おおよそ、部屋会(127話~128話)、実家で年末年始(129話~132話)、坂木らの新年会(133話)、後期スタート(134話~136話)という構成です。

 

第14巻の感想としては書くべきことはたくさんあるのでしょうが、ブコメの側面に注目して感想を書きたいと思います。

 

 

(1)松井常代との関係

第14巻における近藤と松井常代の関係を語る前に、まずは第13巻第123話での出来事を振り返っておかなければなりません。クリスマスダンスパーティーの後、二人の別れ際、常代は駅の構内で近藤に向かってこう叫びました。

こっ…近藤君!! 本当はもっと話がしたかった! ドレス姿かわいいねって言ってほしかった!! 素敵な場所で会えて嬉しかったのに!! 年末年始の予定もっといろいろ立てたかった! アンタと一緒に踊りたかった!!! 

と言って、常代は近藤に駆け寄りその頬にキスをして、「おせち作って、待ってるから!!」と帰って行きました。

「大胆な告白は女の子の特権」なんて格言がありますが、常代の告白はまさにそれでした(それにしても、赤面して「おせち作って、待ってるから!!」というダメ押しのセリフには作者のセンスしか感じません)。ダンスパーティーの後は両者の間にメールなどのやり取りはなく、近藤が帰省するまで二人の関係は宙ぶらりんでした。

 

そして第14巻。近藤が実家に帰ると、そこには常代が待っていたのです!! そこで二人はきちんと話をすることになりました(129話)。

近藤「えっと…その、いやオレ…オマエのこと…ずっとそういう風に思ってなくて。だってさ…家族みたいにやってきたわけじゃんか。いきなりそんな、キ…スとか…」

常代(近藤の手を握って)「ねえ。私の…初めてだったんだよ…どう責任取ってくれるの…!?」

近藤(赤面して絶句)

常代「あはははっ、おっかしー!! アンタのそんなリアクション初めて見た… 自業自得! 女の子達に期待させた罰よ。苦しみました?」

近藤「なんだよ。それ…じゃあ、まさかあのとき言った事も冗談だったのか!?」

常代「……ううん。それは違うよ。あれは私の、本当の、気持ち。」

近藤「変だって思われると思うけど、一応、その…答えを考えてきたから最後までちゃんと聞いてほしい」

常代「はい」

近藤「……オレ、正直に言って、今の松井の気持ちに、真剣に向き合ってやれないと思う。今のオレは防大の生活だけでいっぱいいっぱいで、とても恋愛のことなんて考えられる状況じゃない。やっと摑めてきた今の生活を、疎かにしたくないんだ。ただ、あの日、松井に言われて気づいたよ…オレはずっと松井のこと、家族同然の幼馴染だと思ってたけど、松井は違ったんだな。…あのとき叫んでたことを、ずっと考えてくれてたんだよな。お前の気持ち邪険にしてて…本当にごめん…」

常代(ちゃんと伝わってる…私の気持ち…)「ど、どうせ…アンタが器用な人間じゃないってことは私が一番知ってんだから。変わらないわね、近藤くんは。今向き合えないなら向き合ってくれるその時まで、私はいつでもここにいるから」

 

宙ぶらりんの状態がなんとか丸く収まったのは良かったのですが、常代の告白は近藤に断られる形となってしまいました

近藤の「今は忙しい」的な返事は、ラブコメ作品でも現実でも、気持ちがない相手の告白を断るための方便として使われる例が少なくありません。しかし、常代は、近藤の言葉が真摯な気持ちに裏打ちされたものだと確信しています。まさに近藤勇美という人物をよく理解している幼馴染だからこそのなせる業です。

それに、「今は忙しい」的な返事への分かりやすい常代への伏線は第13巻第123話で既に用意されていました。ダンスパーティーの後、近藤に告白する前、常代は、15股騒動への解決策として彼女を作ることを近藤に提案しますが、「交際費がバカにならないし、割く時間も正直惜しい」と言い切られています。

 

このように近藤という人間を理解しているからこそ近藤との信頼関係があるからこそ、常代は「今向き合えないなら向き合ってくれるその時まで、私はいつでもここにいるから」「…簡単に気移りしないでよね」と言ったりするなど、引き続き近藤に対して積極的・前向きに接することができたのではないでしょうか。

また、儀仗隊の写真を見て近藤と岡上乙女の関係を疑ったり、防衛大に行ってからすっかり変わった様子の近藤を見て心配する母親に対して、「大丈夫ですよ、おばさん…大事なことはキッパリ言い切って誤魔化せない…根本の部分は何も変わらない、勇美君ですから!」と言い切ったりもしています(130話)。もはや正妻といっても過言ではありませんよね!?

 

さて、近藤は近藤の方で、思った通りのことを発言するという性格は変わっていませんが、しかし、恋愛スキルは確実にアップしています。ダンスパーティーの際の常代の気持ちを理解したり(129話)、常代の振り袖姿を褒めたりするなんて(131話)、第3巻で「原宿でカワイイ娘に声をかけて一緒に写メ100人斬り」のときに常代に遭遇し、その後わけも分からず謝罪したときとは大違いです。

そして、第131話で近藤は、常代が大学の先輩である佐々木にターゲットにされていることを知ります。近藤は佐々木のゲスな発言にムカついたようですが、なぜムカついたのでしょうか――? その気持ちは? また、真剣な顔で口を開けたまま何も言わなかった近藤は、常代に向けて何を言おうとしたのでしょうか――?

 

 

(2)妹・理絵がいい味を出している!!

近藤と常代の関係性において、近藤の妹・理絵はいい味を出しています。個人的には第14巻のMVPを授けたいと思います。

特に良かったのが、実家に帰った近藤と常代の再開のシーンです(129話48頁)。赤面してどこか気まずそうな様子の二人を見て、「妹は悟った…」のシーンは最高でした。

また、近藤が常代の振り袖姿を褒めたとき(131話91頁)、左下のコマで理絵はとんでもない顔でニヤついていますw

さらに、実家に土方が来たときには(132話96頁)、近藤が常代の告白を断った理由について、近藤の性的指向に原因があるのではないかと大興奮してしまいましたw

出番が少ないのにいいキャラしてますよね!

 

 

(3)岡上乙女との関係

さて、正ヒロインレースにおいて常代に遅れをとってしまったのは、岡上乙女です。第14巻において彼女の出番は多くありませんでした。しかし、乙女は乙女で獲得したものがあるようです(134話)。

近藤と原田の「告白を断った」「目標を達成するまでは恋愛を考えられない」という会話を聞いていた乙女が、少なからず好印象を持っている近藤の「告白を断った」という話を聞いて安心したのは間違いないはずです。

しかし、それ以上に乙女の心に響いたのは、「目標を達成するまでは恋愛を考えられない」という方でしょう。近藤と乙女は、同じく坂木部屋長/兄を目標の人物とすることで一致しています(第11巻第105話)。近藤のその信念が揺らいでおらず、二人で同じ目標を追いかけることができるというのは、乙女にとって心強かったはずです

 

ところで、近藤と乙女の関係は、「同じ目標を持つもの同士」という関係のみに解消・発展されたわけではありません。近藤は「今の松井の気持ちに、真剣に向き合ってやれないと思う」と言って常代の告白は断ったものの、「オレはオマエ以外の女とは付き合う気はないから、待っててくれ!」みたいなセリフは一度も言っていません。つまり、まだ言質は取られていないのです! 乙女にはまだチャンスがあるのです!!

 

 

さて、第15巻の発売は、2020年2月18日の予定だそうです。続きが楽しみですね!