アニメ「ランウェイで笑って」第3話の感想・考察――服は人を変えられる
この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」の第3話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。
見逃した方は、毎翌月曜深夜26:55から最新話がTVerで無料配信されていますので(https://tver.jp/anime)、是非ご覧ください!
第2話の感想記事はこちらから!
- 0.基本情報
- 1.「私を見て」
- 2.「藤戸さんの緊張が解けるような服にしたいな」
- 3.「早くしてよね」
- 4.「都村君には負けたくないでしょ」
- 5.「ランウェイじゃ笑っちゃいけない」
- 6.三人目の主人公
- 7.最大限の誉め言葉
- 8.服が人生を変える
- 9.白と赤
0.基本情報
原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)
アニメーション制作:Ezo’la
監督:長山延好
TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/
ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#(新衣装登場!)
原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175
アニメ第3話「ランウェイで笑って」
相当する原作のエピソード:第2巻第7話「得意でしょ?」、第8話「東京コレクション@バックステージ/都村育人」、第9話「東京コレクション@オーディエンス/新沼文世」、第10話「東京コレクション@ランウェイ/藤戸千雪」、第11話「東京コレクション@ランウェイじゃ笑っちゃいけない」、第12話「東京コレクション@フィナーレ/都村育人&藤戸千雪」、第13話「今日が始まりの日」
育人は柳田に同行し、日本最大のファッションの祭典「東京コレクション」に参加することになる。急遽来られなくなったモデルの代わりとしてやってきたのは、千雪だった――。重なるトラブルの結果、育人が千雪の衣装を縫うことになる。緊張で焦る育人に、千雪は語りかける。二人の初めての「ショー」が、今始まる!
1.「私を見て」
仕立て直す衣装のアイデアが浮かばずパニックになる育人を振り向かせ、千雪は「私を見て。ねっ、得意でしょ? 私に似合う服作るの」と語りかけます。
この千雪の言動に二人の関係性が詰め込まれています。「信頼関係」、「相棒」、「ライバル」、「運命の相手」……この関係性を何と言うべきか迷いますが、とにかく、「私でもパリコレに出るのは無理じゃない、君でもデザイナーになるのは無理じゃないって、私のためにも証明したいんだよ」「きっと千雪さんは、すごいモデルになると思います!!」「私も頑張るから、頑張りなよ」と言い合った二人の関係性(第2話参照)が、この危機的な状況になって、千雪により育人を励ます言葉となって表出したのです。
そして、この「二人の関係性」が大事だからこそ、千雪はわざわざ育人を振り返らせて自分の方を見させたのではないでしょうか。育人ではない他の誰かだったら、千雪はその人の肩に手をかけて「頑張れ」と言っただけかもしれません。しかし、千雪は、育人が運命の相手であると確信しているからこそ、育人を振り返らせて、その顔に向かって言葉を掛けたのではないでしょうか。
さらにもう一つ特筆すべきは、そのように育人を励ました千雪の手が震えていたことです。千雪自身も追い詰められているのに、そんな状況下でも育人を励ませる千雪の強さは魅力的というほかはありません。そして格好いいことに、育人は、手を震えさせながらも励ましてくれた千雪の手を握り返して「もう大丈夫です。僕に任せてください」と言うのです。まさに互いが互いを支え合っている状況です。
2.「藤戸さんの緊張が解けるような服にしたいな」
千雪に励まされ持ち直した育人は、千雪の衣装を仕立て直しすべく色々と思案します。その際、最後に、ポツリと「藤戸さんの緊張が解けるような服にしたいな」と独白しています。
育人がどれだけ自覚的に言ったのかは分かりませんが、このセリフには育人の信条が表れています。つまり、第2話で育人は、「服は人を変えられる。僕が服作りを好きな理由の一つです。もう一度、藤戸社長に会うのは怖い。けど、そんな弱さが勇気に変わる服を作ります」と言っていたように、「服は人を変えられる」のです。
アニメ第2話では省略されてしまいましたが、原作ではこの点について育人は次のように言っています(原作第1巻第2話)。
藤戸さん、こんな経験ありませんか? 小学校の入学式の時、親が用意していくれたスーツを着た途端、少し大人になった気がして胸が自然に張れたり、ずっと恥ずかしかったのにドレスを着たら、本物のお姫様みたいに笑って動いて最後まで演じきれたり。そういう服が心を引っ張ってくれる感じ、僕が服を大好きな理由の一つなんです。服は人を変えられる。だから作ってるんです。この震えが止まるような、勇気が、根気が、負けん気が、湧いてくる服を。
このように、育人の服作りの根底には「服は人を変えられる」という信条があり、「藤戸さんの緊張が解けるような服にしたいな」というセリフにはこの想いが溢れているのです。
3.「早くしてよね」
衣装の仕立て直しが最終段階に入ったときの育人と千雪の会話です。
育人「藤戸さん、この前、僕が言った夢、叶っちゃいましたね」
千雪「えっ、何が?」
育人「藤戸さんにもう一度、僕の服を着てほしいってやつ」
千雪「はあ? 何言ってんの? 叶ってないでしょ? ここは都村君のブランドじゃないじゃん。早くしてよね。あんまり遅いと駆け出しのデザイナーじゃ雇えないくらいのハイパーモデルになっちゃってるから、私」
実はこの会話、育人の夢にとって重要なポイントになっています。もちろん、「プロのファッションデザイナーになる」ことは、既に育人自身も自覚しそのために努力しているところです。
とはいえ、実は、一口に「プロのファッションデザイナー」と言っても、いろいろな種類があるのです。アパレルメーカーに勤務しそのメーカーの製品をデザインする企業内デザイナー(多くのデザイナーはこれに該当する)、顧客一人ひとりに合わせてオーダーメイドでデザインし縫製を行うオートクチュールのデザイナーなどありますが、やはり花形は、自身の名を冠したブランドを立ち上げ自分自身で経営を行うブランド持ちのデザイナーです(柳田さんも「HAZIME YANAGIDA」という自身のブランドを持っています)。
育人自身は、ぼんやりと「プロのファッションデザイナーになりたい」としか考えていなかったようですが、千雪との会話によって、「自身のブランドを持つファッションデザイナーになりたい」と考えるようになったと思われます。そして、だからこそ、「次ここに来るときは拍手全部もらおうよ。半分じゃなくてさ」なのです。
それにしても、この「早くしてよね」というツンな感じなのにその内実すごくデレてるここの千雪、可愛いですよね。
4.「都村君には負けたくないでしょ」
千雪は、ランウェイを歩きながら、「都村君には負けたくないでしょ」と自信を励まします。ここでも千雪は、自身のライバルである育人のことを考えています。
第2話で柳田に追い出されそうになった時に育人が千雪のことを思い出して励まされたように、今度は、千雪が育人のことを思い出して励まされています。まさに、互いが互いを励まし合っています。
あと、原作におけるここの千雪はもっと色々なことを考えているのですが、アニメでは省略されているので、原作を是非読んでみてください!(原作第2巻第10話参照)
5.「ランウェイじゃ笑っちゃいけない」
千雪の衣装に込められた仕掛けが露わになった際、それについて育人は「ただ、緊張してたから、楽しい服にしたくて。途中で形が変わったら面白いかなって、最後の糸は止めなかったんです」と言います。
その仕掛けに気付いた千雪は「こんな仕掛けしちゃって。あいつめ、ヘタレのくせに。私が引っ張って助けなきゃ、心もとない男子のくせに」「都村君のくせに、君ってヤツは、ムカつくくらい私の窮地を救っちゃうんだ」と、再び立ち上がり、ランウェイで笑ったのです! ショーはあくまで服を見せるものであり顔に視線が行くのは好ましくないため、モデルはランウェイで笑っちゃいけないにもかかわらず、です。
それなのに、千雪がランウェイで笑ってしまったのは、育人のせい/おかげです。だって、育人は「楽しい服にしたくて」と想いを込めて、千雪の衣装に仕掛けを施したのですから。楽しい服だからこそ、千雪は思わず笑ってしまったのです。まさに「服は人を変えられる」という育人の服作りにかける想いが、ランウェイを歩く千雪の上で表れたというほかありません。
6.三人目の主人公
既にお気づきかもしれないが、この「東京コレクション編」には、育人・千雪のほかに、三人目の主人公がいました。東京コレクションの取材のために会場に来ていたファッション誌編集者の新沼文世です。
アニメでは省略されていたのですが、実は原作ではアニメ以上の出番がありました。アニメでも分かるように、彼女はファッションにあまり興味がなく、モデルやデザイナーばかりが登場するこの作品においては一般人代表的なポジションにいます。
原作では、彼女がファッションに対して思っている屈折した感情が、あるいはファッションに疎い一般人の感覚が新沼文世を通じて具に語られ、そしてそれが千雪のランウェイを見て変容する様をより詳しく感じることが出来ます(特に原作第2巻第9話~第12話)。ぜひ原作をご覧になることをお勧めします!
7.最大限の誉め言葉
ショーが無事に閉幕したことに感動している育人に向かって柳田さんはこう声を掛けました。
まあ、半分だな。この拍手の半分はお前にやる。ここは俺のブランドだ。やれても半分、二度は言わん。たしかに作りとしては簡素。丈を詰めて不格好になった部分を前掛けで覆い隠しただけ。だが、それでも形にした。拍手を誘った。何より、着るモデル……あいつのために作り上げた。まっ、かけらほどは向いているんじゃねぇか、デザイナー。
柳田さんには珍しい、だけど柳田さんらしい褒め言葉です。しかも最大限の褒め言葉ではないでしょうか? ベリーショートの女性フィッターが言ったように、育人が手掛けたのは、全40着のうちのたった1つです。それなのに、半分も拍手をくれると言ってくれたのです。最高の誉め言葉というしかありません。
8.服が人生を変える
ショーが終わった後、育人と千雪はこんな会話をしていました。
育人「藤戸さん、ありがとうございます。ここまで連れてきてくれて。出会ってから、いろんなことが起こって、変わって、まるで別の人の人生を歩いているような……。あっ、すみません、上手く言葉にできないんですけど」
千雪「ふ~ん。要は人生が変わったってことでしょ? 私のおかげで」
育人「そう……なんだとうけど、そう言われると気恥ずかしい」
千雪「何言ってんの? 誰かさんのせいで人生が変わった人がここにいるんだけど」
育人「えっ?」
千雪「服ってさ、いつでも着ているでしょ? だから人生の分岐点をいつも本人と一緒に迎えるんだよ。それで、その日着てた服に特別な思い入れができたり、それこそ服そのものに人生を変えられる人もいる。たしかに、お互いミスはあったし、あのフィッターさんが言うように力不足だったのかもしれない。それでもあのとき拍手は起きたんだよ? きっと都村君の服に、それを着た私に、感動してくれた人がいる。それこそ、人生を変えられた人いるかもよ!」
既にこの記事で書いてきたように、育人の服作りの根底には「服は人を変えられる」という想いがあります。これは「服の作り手が服を着る人の心を動かす」という意味でした。しかし、この千雪と育人の会話で明らかになったように、「服は人を変えられる」という育人の想いは、もっと広くてもっと豊かな意味を持っていることが明らかになります。
つまり、「服は人を変えられる」とは、「服の作り手が服を着る人の心を動かす」という「作り手→着る人」の一面的な関係のみに妥当するのではありません。
ある一面からすれば、「作り手」である育人がミルネージュのオーディションや東京コレクションのために千雪に衣装を作ったのは、「着る人」である千雪の人生を変えました。そして別の一面からすれば、育人はこれらの衣装を「着る人」である千雪のために作ったことによって、「作り手」である育人自身の人生が変わったのです。さらにまた別の一面からすれば、「作り手によって作られた服を着る人」を見て、新沼文世のような「見る人」が感動し、その人の人生が変わることもあるのです。
このようにして見ると、服というのは、「着る人」「作り手」「見る人」のそれぞれの人生の相互作用の中にあって、まさにあらゆる面から「服は人生を変える」のです。原作者の服に込める想いが伝わってくるシーンでした。
9.白と赤
千雪や育人の独白のシーン――心象風景――など、白を基調とする背景が多用されていました。特にランウェイにおける千雪の独白の場面では、赤色の衣装と相まって、かなり綺麗なシーンになっていませんでしたか?
さて、次回は、第4話「若き才能たち」です。サブタイトルからして、メインキャラクターである長谷川心や綾野遠がついに登場するのでしょうか?
第4話の記事はこちらから!
今さらながら映画「屍人荘の殺人」を観てきたので感想を
神紅大学のミステリー愛好会に所属する葉村譲(神木隆之介)と明智恭介(中村倫也)は学内の事件を推理する自称【ホームズ】と【ワトソン】。しかし葉村はミステリー小説オタクなのに全く推理が当たらない万年助手。事件の匂いを嗅ぎつけては首を突っ込む会長の明智に振り回される日々を送っていた。
そんなある日、2人の目の前に剣崎比留子(浜辺美波)という謎の美人女子大生探偵が現れ、ロックフェス研究会の合宿への参加を持ちかける。部員宛てに謎の脅迫状が届いたこと、去年の参加者の中に行方知れずの女子部員がいることを伝え、葉村と明智の興味を引く。
3人が向かった先は、山奥に佇むペンション【紫湛荘(しじんそう)】。そこに次々と現れるクセモノだらけの宿泊者。しかし葉村たちは想像を絶する異常事態に巻き込まれ、立て籠もりを余儀なくされる。一夜が明け、一人の惨殺死体が発見される。それは死因もトリックも全てが前代未聞の連続殺人の幕開けだった――
この記事は、映画「屍人荘の殺人」の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。ちなみに、2021年6月現在、この作品はAmazon Prime Videoで観られます(追記)。
原作未読・映画未観劇の方がいらっしゃれば、「1.はじめに」までで読み止めてください。その時点で興味が湧き、映画を見たくなったり原作やコミカライズを読みたくなったりした場合には、重大なネタバレを被ることになるので、「2.キャスティングとキャラクター設定」以降は読まないようお勧めしておきます。
1.はじめに
1)タイミングを逃したけれども
さて、この映画は、2019年12月13日が公開日なので、封切から1か月以上経ってから観るのはもちろん、わざわざ感想記事を書くのも時宜を逸した感はあります。
しかし、映画館に足を運んで映画を見たのは1年半ぶり(2018年夏の「カメラを止めるな!」以来)だったので、せっかくの機会ということで、記事を書く次第です。
2)原作小説について
映画「屍人荘の殺人」は、同名の小説(今村昌弘著、創元推理文庫)を原作としており、最近、書店でその帯を見かけたところによれば、シリーズ累計50万部が売れているらしいです。推理小説としては異例の売れ行きです。
そもそも、この作品は、原作小説の段階から非常に高い評価を受けていました。この原作小説は、本格ミステリ(トリックやロジックを主眼とする推理小説)を募集する鮎川哲也賞という新人賞の正賞受賞作で、刊行されるやいなや、その年の「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」「本格ミステリ大賞」の4つで第1位を獲得しました。
原作試し読み(PC版):https://binb.bricks.pub/contents/31ec98d6-8805-4fcc-95ce-c31d881bdefb_1568772888/reader
3)本格ミステリの映画化について
そもそも、本格ミステリは、広い意味のミステリー(サスペンスや警察小説などを含む)に比べると、映像化されにくい傾向にあると思われます。
というのも、本格ミステリは、トリック(謎)とロジック(謎解き)を主眼とするので、物語の序盤に殺人が起き、それ以降はずっと、あーでもないこーでもないと証拠探しと脳内思考による犯人捜しが行われることが少なくありません。つまり、アクションや冒険といった派手な動きや、ヒューマンドラマ・恋愛モノのように喜怒哀楽ある心の動きは重視されませんので、どうしても物語の大部分が「地味な画」かつ「ドライな印象」になりやすく、映像化に向いていないのです(たとえば、SPドラマ「がん消滅の罠」は映像化にあたり大幅に脚本に手が加えられ、文字通り「ドラマチック」な仕上がりになっていました。反対に、原作に忠実に、殺人などの重大事件が起こらず日常の謎をテーマとしたにもかかわらず、多大な人気を博したアニメ「氷菓」はその例外と言えるでしょうね。ドラマ「アリバイ崩し承ります」についても、原作小説では安楽椅子探偵でしたが、ドラマでは探偵(浜辺美波さん)が現場に出かけていました)。
しかし、本格ミステリであっても、ハラハラドキドキする緊張感が生まれるパターンがあります。その王道パターンは、ずばり「連続殺人」です。メインキャラクター(だと思っていた人物)が次に死ぬかもしれないという緊張感、そして繰り返される殺人それ自体は、まさに映像化向きです。この「屍人荘の殺人」も連続殺人が起きるので、この王道パターンに従っていると言えます。
とはいえ、この作品は、それ以外の「仕掛け」によっても「緊張感」と「映像映え」を生み出しています。この「仕掛け」が何なのかは、この作品の魅力の一つなのでここでネタバレする訳にはいきませんが、しかし、その「仕掛け」が作品に緊張感と映像映えを生み出し、また犯人の用いたトリックにも活用されています。
原作小説に対する高評価はもちろん、この「連続殺人」と「仕掛け」の映像映えという点も考慮されて映画化に至ったのではないかと思っています(もちろん、「映像映え」という点では、ルックスと人気に優れた役者を用意できるか否かというキャスティングの観点も重要なのですが)。
4)小説→映画
もう少しだけ個人的な話を。本当にどうでもよい話なので5)にスキップしても大丈夫です。
上述の通り、原作小説『屍人荘の殺人』は非常に評価の高い作品なので、本格ミステリファンの末席の端っこに小指を引っかけている身としては、原作小説は読まなければならないと思っていました。しかし、私は購入する本は文庫と決めているので、2017年の単行本の刊行から待つこと2年、2019年9月に文庫化されてようやく原作小説を手に入れました。
しかし、本業だったり、アニメだったり、漫画だったり、このブログが忙しくて、また何より心の余裕がなくて、ここしばらくは小説自体から離れており、『屍人荘の殺人』もその例外ではありませんでした。
そんな折、2019年12月13日に映画が公開されました。「公開初日、少なくとも公開から1週間以内には観に行きたい!」と思っていたのですが、原作小説を読んでいなかったので、どうしても観に行けませんでした。というのも、私は「原作小説より先に映画を観ると、その後に原作小説を読む気を失くす」病気(?)なのです。そのため、先に原作小説を読みたかった私は、ズルズルと原作小説を読まないまま、すなわち映画を観に行かないまま、年を越してしまいました。
しかし、先日、ようやく時間と気持ちに余裕ができた日ができました。そこで、朝に原作小説を読み、昼に映画を観に行くという計画を立て実行しました。今振り返れば強行日程だったなあと思うのですが、読んだ記憶が鮮明なうちに観に行けたのは面白い体験でした。
5)何を書く?
私は映画のレビュー記事は事前に見ない主義なので把握していませんが、公開直後から相当数の記事がネット上には溢れていると思われます。
そんな中、公開からしばらく経って何番煎じになるかは分かりませんが、原作と映画の比較を中心に感想を書いていきたいと思います。その際、原作原理主義者にならないことに注意しつつ、映画製作者の脚本構成や演出の意図を探ってみようと思います。
※ 映画は1回しか見ておらず記憶が朧気なので、誤りや不正確な記述があるかもしれませんので、ご注意ください。
※ 原作小説も1回しか通読しておらず、いちいちチェックできていないので、誤りや不正確な記述があるかもしれませんので、こちらもご注意ください。
*****以下、ネタバレ注意!!*****
2.キャスティングとキャラクター設定
1)メインキャラクターのキャスティング
葉村譲(演:神木隆之介)、明智恭介(演:中村倫也)、剣崎比留子(演:浜辺美波)のキャスティングについては、なんの違和感もありませんでした(強いて言えば、比留子の髪はもう10cmくらい長い方が原作に忠実だったと思いますが)。
違和感がなかった要因として一番大きのは、間違いなく、原作小説を読む前に既に映画のキャスティングを把握していたからだと思います。そのため、宛書のような状態で原作小説を読んでいました。とはいえ、仮に、原作小説を読む際にキャスティングを把握していなかったとしても、人気と実力を兼ね備えたこの3人のキャスティングには賛成です。
ところで、映画を観た人の一部には、中村さんの扱いに不満を感じた人がいるように見受けられます。たしかに、原作・あらすじや監督・脚本家ではなく、役者をきっかけとして映画を観に行くタイプの人たち(つまり俳優の熱心なファン)は、この映画の展開には不満を感じたに違いありません。しかし、私はそういう人ではないので、まったく問題ありませんでした。
2)メインキャラクターのキャラ設定
3人のキャラ設定については、少々指摘しておくべきことがあると思われます。
葉村譲(演:神木隆之介)
葉村は、原作に比べると、少々コミカルなキャラになっていました(『このミス』のインタビューか何かで神木さん本人も言及していました)。
葉村は、原作小説においては、キャラクターと言えるほどの強いキャラはないように見受けられましたが、それでも物語の語り手(一人称視点)として存在感があります。しかし、三人称視点の映画化に際しては、原作小説のままだとキャラが弱くなってしまいます。そのため、コミカルなキャラ設定になったのだと思います。
また、同様の理由から、映画の葉村は、ことあるごとに比留子を見て「可愛い」と心の中で連呼してたり、気絶中の比留子から唇を奪おうとしていました。語り手を葉村とする原作小説の書き方から見れば、妥当な方向へ膨らませたキャラ設定かと思われます。「死体を運んだらキスしてあげる」のフリにもなっていましたしね(しかし、映画では、意図せずエレベーターが1階に降りてしまった混乱のために、約束を果たしたにもかかわらずキスが有耶無耶にされてしまいました)。
そして、映画では「推理ベタな万年助手」というキャラ付けまでされていました。原作では葉村は、探偵をやりたいなんて言っていなかったと思います。
さらに、原作小説では葉村は経済学部でしたが、映画では毒(ウイルス)の説明をするために、理学部という設定になっていました(その分、原作でその役割を担っていた重元の出番が減りましたね笑)。
明智恭介(演:中村倫也)
この映画について個人的にベストアクター賞を贈呈するとしたら、中村さんに差し上げます。一番、原作に忠実な、そしてそれを適切に発展させたキャラ設定と演技だったと思います。
明智は葉村と同じく映画化に際してコミカルなキャラになっていたのですが、原則小説において既にコミカルな側面があったため、これはむしろ歓迎すべきことでした。
映画オリジナルで追加された、「事件はまだ起きていないのに犯人が分かった」という明智の最期の推理も、「いざ事件になるとこの人は鋭い閃きを発揮する――ことがある。発揮しないこともある」(文庫25頁)という彼の特質に沿ったものでした。
原作では3回生なのに、映画では7、8回生くらいとなっていたのは、中村さんの年齢(公開日時点で32歳)に近づけたからだと思います。それに、そうした方が、ミステリー愛好会なんて立ち上げて事件に首を突っ込むような変人には合っています。
剣崎比留子(演:浜辺美波)
メインキャラクターの中で一番評価に困ったのが、比留子です。
そもそも、原作小説においても、比留子のキャラは最後までフワフワと不安定で、掴みどころがないように見えました(公開前テレビ特番で浜辺さん自身もそのような旨を語っていました)。仮に原作小説に忠実に演じるとしても、役者は苦労するだろうなと思うキャラクターです。
そして、比留子は、映画化に際しては、より変人なキャラ設定になっていました。白目を向いたり、相撲の型をしたり……。原作のキャラは不安定でしたが、むしろ常人寄り、社会的に描かれていたので、思い切った方針転換です。
しかし、探偵役の典型的なキャラは、エキセントリックな変人というのがミステリの相場です。そのため、映画しか見ていない人は、「探偵とはこんなものだ」としか思わないでしょうし、原作既読者から見れば、映画の比留子は、妥当と言えばまあ妥当な、許容できる範囲内のキャラ設定だったのではないかと思います。
3)その他の主要登場人物のキャスティングとキャラ設定
その他の主要登場人物の設定については、大きな変更がありましたね。私自身は、メインキャストの3人とは違って、その他の主要登場人物のキャスティングについては、原作小説を読んだ時点では把握していませんでした。
進藤歩(演:葉山奨之)、星川麗花(演:福本莉子)
この2人については、ピッタリなキャスティングとキャラ設定だったと思います。
名張純江(演:佐久間由衣)、下松孝子(演:大関れいか)
この2人が最初に登場したときは、大変驚きました。だって、原作小説では、「俺は女性陣があまりにも美人に偏り過ぎているのが密かに気になった。今日は美人としか会っていないような気がする」(文庫61頁)、「〔名張について〕鋭い空気をまとった、理知的な印象の美人」(文庫48頁)、「下松もまた美人だった」(文庫65頁)なんですよ! もちろん、美醜に関する価値観は個人的なものですが、少なくとも下松については、映画上で明らかに七宮に邪険にされていたじゃないですか!?
とはいえ、映画では合宿参加者には(フリーの身の)美人がいないために、七宮と立浪がロックフェスにて女漁りをして静原に会うという流れになるので、彼らの行動を理由付けるためには、必要なキャスティングでしたが。
あと、名張については、たしか原作では眼鏡をかけていたという情報がなかったはずなので、映画オリジナルですよね?
重元充(演:矢本悠馬)
なんというべきか、もっと汚いオタクを想像していました(無精ヒゲを生やして汗を大量に流しているような……)。しかし、映画では中国の坊ちゃまみたいなぽっちゃり君(偏見)でした。とはいえ違和感はありませんでした。部屋に籠ってゾンビ映画を観ながら武器を振り回すシーンなんかは良かったです。
静原美冬(演:山田杏奈)
原作では同じサークル内の合宿参加者でしたが、映画では、ゾンビから逃れて偶然ペンションに留まることになったロックフェス参加者に改変されていました。
彼女は、原作では遠藤沙知の幼馴染という設定でしたが、映画では遠藤沙知の妹(高校生?大学生?)という設定でした。「沙知さんと私は近所に住んでいて、子供の頃から本当の妹のように可愛がってもらいました」(文庫350頁)という原作における関係性は、彼女の動機を基礎付けるには少し弱いかなと感じていました。
私にそのような関係の人物がいないだけでピンと来ないだけなのかもしれないですが、やはり一般的には、「幼馴染」よりも、「血肉を分けた姉妹」の方が、動機として共感を得やすいのではないかと思います。その意味で、良い方向の原作改変だったと思います(そして、彼女も含めたキャラ設定の変更とストーリー展開の変更は、すべてはこの改変に起因するとも言えるかもしれませんね)。
ところで、映画にて、ゾンビの発生を予期し得なかった静原は、ゾンビ発生による立て籠もりに乗じなくても事件を実行するために、ロックフェスにて七宮らにナンパされ、ペンションにお持ち帰りされる必要がありました。ここには、いくつかの前提条件が必要になります。とりあえず、①ロックフェス研究会が紫湛荘にて合宿を行うことを静原は把握していたこと、②合宿参加者の女性が魅力的でないまたは彼氏持ちなために、七宮らはロックフェスにて女漁りをすること、③静原は自身が七宮らにお持ち帰りされる自信があったこと、の3つが挙げられます。
①については、例年、ロックフェスが開催されるタイミングで同じペンションにて合宿が行われることを姉から聞いていたら十分予測が立てられます。②については運任せですが、③については、昨年「弄ばれた」遠藤沙知と姉妹関係にあるならば、静原冬美は七宮らの好みに適っている可能性が相当程度あります。もっと言えば、静原は自分自身の容姿に自信があったのかもしれませんし、一般的に言っても静原役の山田杏奈さんは優れた容姿を持っていると言えるでしょう。その意味で、山田さんのキャスティングについては、文句はありません。原作に照らしても、「清楚という表現がしっくりくる黒髪の少女」(文庫49頁)にピッタリです。
高木凛(演:ふせえり)、出目飛雄(演:塚地武雅)
この2人については、一番驚いたキャスティング(というかキャラ設定の変更)でした。
この2人が登場する前から、その兆しはありました。バーベキュー時の記念写真の撮影時に気付いたのですが、やはり原作に比べると人数が少ない。登場人物を減らす方向で改変したのかな?と思って見ていたら、なにやら合宿参加者とは別に、3人もペンションに逃げてきたではありませんか。自己紹介によれば、それぞれ、静原美冬、高木凛、出目飛雄と名乗るではありませんか!
静原は措くとしても、高木と出目はオバサン・オジサンじゃないですか! 思い切った原作改変です。……もちろん、ふせえりさんが「ボーイッシュなショートヘアとくっきりとした目鼻立ちが印象的な美女」(文庫49頁)かどうかについては、極めて主観的な事柄ですが。
ふと映画を観ながら思ったのですが、初登場時にたしかに2人は自己紹介をしたのですが、大学生ばかりのペンションに中年男女が飛び込んできた、という展開からすれば、まるで2人は夫婦のようでした。原作読者の私も映画を観ながらそう思ったので、原作未読の方もある程度の人が勘違いしたのではないのでしょうか?
ところで、出目は、原作小説では肝試し時にゾンビ化したとみられ、そこで物語から退場します。一方、映画では、ロックフェスから命からがら逃げてペンションに立て籠もることができたのですが、実はゾンビに噛まれていて、数時間後にペンション内にてゾンビ化し殺されてしまいます。(映画にて比留子や静原が言及していたかどうかは覚えていませんが)この出目のゾンビ化は、ゾンビ化するまでの時間の目安を彼女らに提供する役割を担っていますね。
七宮兼光(演:柄本時生)、立浪波流也(演:古川雄輝)
七宮については、ピッタリなキャスティングとキャラ設定だったと思います。「女漁りをする嫌なOB」という役どころが出来ていたと思います。ちなみに柄本さんは個人的に好きな役者さんです。
原作では幾分か爽やかな見た目だった七宮ですが(文庫57頁)、映画ではOBとしての出目が登場しなかった分、映画の七宮は、原作における七宮と出目の2人分のキャラを背負っていましたね。
立浪については、原作では日焼けしていたはずですが(文庫57頁)、映画ではそうなっていませんでした。ストーリー上必要のない設定なので、この点に不満はないのですが。
管野唯人(演:池田鉄洋)
管野については、原作よりもキッチリとした感じになっていましたね。原作では「30歳前後のペンション管理人」だったので、もっとラフな格好をしているのかなと想像していたのですが、映画では「50歳前後の執事服に身を包んだ執事」になっていました。とはいえ、この程度の変更も、特に目くじらを立てるべきものではないのですが。
3.ストーリー展開
1)原作小説におけるストーリー展開
「食堂における葉村と明智の推理合戦」→「喫茶店における比留子との出会いと取引」→「ペンションへの旅と到着」→「廃墟にて映画撮影」→「ペンションにてバーベキュー」→「肝試し、ゾンビとの遭遇、ペンションへの立て籠もり」→「事件と謎解き」→「脱出」
2)映画のストーリー展開
「葉村と明智による食堂での調査依頼遂行」→「試験問題盗難事件における比留子との出会い」→「喫茶店における比留子との取引」→「ペンションへの旅と到着」→「バーベキュー」→「ロックフェスへの参加、ゾンビとの遭遇、ペンションへの立て籠もり」→「事件と謎解き」→「脱出」
3)斑目機関
まず言及しておかなければならないのは、原作ではサブストーリーとして描かれ事件の原因を作った斑目機関は、映画では一切言及されていないことです。
映画の尺の都合上、斑目機関に関わる部分はカットされたのだと思います。
4)比留子との出会い
上記1)と2)を比べたときにまず目につくのは、「食堂における葉村と明智の推理合戦」→「喫茶店における比留子との出会いと取引」という原作の流れと、「葉村と明智の食堂での調査依頼遂行」→「試験問題盗難事件における比留子との出会い」→「喫茶店における比留子との取引」という映画の流れの違いです。
映画では、葉村・明智と比留子との出会いを印象的にすべく、比留子の登場シーンが増えています。
まず、どちらも食堂にて、「白い長袖を着た女子大生」を巡って推理合戦をしているのですが、原作ではこの女子大生が赤の他人なのに対し、映画ではその人物は比留子になっていました。
そして、映画オリジナルとして、葉村と明智は、この食堂である調査依頼を遂行、不振に終わったのち、大学の廊下で試験問題盗難事件に遭遇します。明智はこの事件を解決できなかったのですが、代わりにそこに現れた比留子によって事件は解決されます。
このような流れの変更は、比留子との出会いと彼女の能力を印象付けるものになっています。
ところで、試験問題盗難事件の犯人は、食堂のあの席に葉村と明智を座らせておくのは良いとしても、廊下の人通りが少ないからと言って10分間も錠を開けようとドアの前で格闘するというのは、あまりにも幸運に頼り過ぎで、犯行方法としてはお粗末な気がします。
5)「廃墟にて映画撮影」と「ロックフェスへの参加」
原作では廃墟にて映画撮影をした場面では、斑目機関の手帳が発見されるのですが、映画では斑目機関が一切言及されないことに伴い、このシーンは全カットでした。
そのため、原作では、ペンションに泊ったのは映画研究部だったのですが、映画では、廃墟にて映画撮影を行わない関係上、ロックフェス研究会の合宿という設定に変更されていました。そして、ロックフェス研究会なので、合宿参加者はロックフェスに参加していました(原作では参加していません)。
6)立て籠もりの経緯の相違
バーベキュー後からペンションへの立て籠もりまでの流れも、原作と映画は異なります。原作では、バーベキュー後、肝試しをしている最中にゾンビに遭遇し、命からがら逃げてペンションへ立て籠もった、という流れなのに対し、映画では、バーベキュー後、ロックフェスに参加したところ、ゾンビと遭遇し、命からがら逃げてペンションへ立て籠もった、という流れになっています。
原作では、主要登場人物は、合宿開始時からフルメンバーが揃っていたのに対し、映画では、ロックフェスに参加したところ、ゾンビに遭遇して命からがらペンションに逃げ込んできた静原・高木・出目が途中で揃うことになります。映画では、彼ら3人はもともとは合宿参加者ではありませんでした。
4.舞台
1)ロックフェス
既に指摘したとおり、原作における合宿参加者はロックフェスに参加しなかったのに対し、映画における合宿参加者はロックフェスに参加しています。そのため、映画ではロックフェスのシーンがそれなりに映されました。カラフルかつ派手な映像と音楽となり、まさに映画向きな脚本構成でした。
原作ではロックフェスの参加者は5万人でしたが、映画ではそこまでの人数はいないようでした(せいぜい数千人規模?)。たしかに、最低限、ペンションを囲むだけのゾンビ(200人程度?)だけがいれば良いので、大規模なロックフェスにする必要はないとは言えます。
2)ペンション
ペンションは、原作では3階建てなのに対し、映画では2階建てでした。たしかに、映画では1階はすぐにゾンビに占拠されてしまいますから、そもそも1階をないものとして、3階建てを2階建てに変更しても話は成り立ちます。
映画では、客室ベランダ側(南側)は、崖になっていたので、そちら側にはゾンビは近づけない構造になっていましたが、1階の廊下側(北側)はゾンビが窓を叩くような構図になっていました。1階の宿泊者は非常に不安なはずです。
ところで、映画を観るに際して注目すべきは、ペンションの内部です。なんと、実在するどこかの洋館を使ったのではなく、紫湛荘の特殊な形を再現すべく、スタジオにセットを組んで再現したそうなんです!(https://shijinsou.jp/productionnote.html)
こんな構造の洋館がよく見つかったな~と映画を観ながら思っていたのですが、まさか、わざわざ予算を掛けてセットが組まれているとは思いませんでした。嬉しい誤算でした。
紫湛荘の構造はもちろん、その内装にも力が入れられていました。ゾンビ撃退のために活躍する武具類はもちろん、家具・調度類も本格ミステリらしい大変雰囲気のあるものでした。
ペンションについて一つ指摘するとすれば、劇中にペンションの図面をもっと高頻度で映さないと、映画観劇者はどこがどうなっているのか分からないのではないでしょうか?(私は当日の朝に原作小説を読んでいたのでしっかりと頭に入っていましたが)
5.トリック&ロジック
トリック&ロジックは、多少の省略はあったものの、基本的に原作小説に忠実でした(下手に改変すると辻褄合わせが大変になりますからね……)。以下、気付いたことを何点か記したいと思います。
1)外界との遮断
これはむしろ原作小説の感想なのですが、この作品の提示した「クローズド・サークル」の作り方は新奇なものでした。各所で絶賛されているように、「ゾンビに囲まれて外界から隔離される」という手法は言うまでもありませんが、「テロの可能性を考慮した政府が通信事業者に要請して通信を遮断した」という現代的な情報的隔離手段はもしかしたら前例がないのではないでしょうか。
そういえば、原作ではペンションにテレビがあったのに、映画では代わりにラジオとなったのは、「外界からの隔離」感をより強く演出するためでしょうか。
2)猶予時間
以下は、原作をしっかり振り返れていないし、映画もうろ覚えなので、間違った指摘かもしれません。
原作小説では、「ウイルスが傷口や粘膜を介して感染した場合、通常の脳機能を破壊されいわゆる錯乱状態〔ゾンビ〕になるまで、3ないし5時間かかるものと思われます」とされています(文庫287頁)。つまり、ゾンビに噛まれても――傷痕こそできますが傷が深くなければ――しばらくの間は人間として通常の活動を行える訳です。
ところが、映画では、この猶予時間が曖昧になっていたように思えます。注射によりゾンビウイルスに感染させられたロックフェス参加者が、そのままロックフェスに参加し続けることなく、「体調不良」として救護スペースにて休養するのは変です(傷痕はせいぜい注射痕だけです)。注射後、しばらく経ってから「体調不良」になり、さらにしばらく経ってからゾンビ化したというのでしょうか? しかし、何より、映画では、下松はほとんど猶予時間もなくゾンビ化していました。出目がゾンビ化までにしばらく時間がかかり、その間通常の人間活動をしていたのと比べると、即時的すぎます。
ということは、映画では、ゾンビ化までの時間には即時~数時間の幅があると設定変更したのでしょうか? しかし、そのように幅があると、ゾンビ化までの時間を基に進藤殺害事件の謎を解いた推理(および立浪殺害事件、七宮殺害事件のトリック)が成り立たなくなってしまいます。映像映えを優先したため、トリック&ロジックの厳密さを後退させたのでしょうか?
3)星川の部屋の荷物
原作では、肝試しのときに行方不明になった星川の部屋は、1階の管理人室がゾンビに占拠されてしまった管野が使用するために、星川の荷物を移動させる必要があり、恋人の進藤がこれを自室に移動させました(文庫137頁)。
しかし、映画では、特に何の説明もなく、進藤はあっさりと星川の荷物を自室に移動させました。重要な伏線なのに、特に理由の説明のない荷物移動は、伏線の隠し方として荒かったと思います(し、「新たな宿泊客が使うから星川の荷物を移動させてほしい」という会話を少し挟むだけで済むはずです)。
4)扉の開閉
映像化に際して何気に感動したのが、ロックされた扉の施錠・開錠方法です。
錠とドアガードを扉の外から開閉する古典的な方法は、ミステリではよく登場するトリックですが、実は映像として見たのは初めてでした。今度どこかで試してみたい、と思いましたが、不審者に思われたくないので止めておきます……。
5)頭のキズと二度の殺人
エレベーターで見つかった立浪の遺体ですが、映画では、パッと見、頭部にゾンビとしての致命傷が見えませんでした(私が見逃していただけなのか、そういう演出だったのかは、うろ覚えなので分かりませんが)。映画では「原作改変の結果、あの立浪の遺体はゾンビとしてはまだ生きているのでは!?」と冷や冷やしながら見ていたのです。が、結局、額にしっかりとした致命傷がありましたね。
よくよく考えれば、立浪に対する「二度の殺人」は、立浪殺害事件の肝ですから、当然に頭部に致命傷がなければおかしいはずです。
そして、上手い改変だなあと思ったのが、七宮に対する二度の殺人です。原作小説では遠藤沙知は立浪だけに弄ばれたのですが、映画では、立浪と七宮の2人に弄ばれたことになっていました。原作小説では七宮には一度の殺人しか行われなかったのですが、映画では、七宮と立浪のバランスをとるために、犯人の手により七宮は二度殺されました。立浪の殺し方に比べると、七宮の二度目の殺人は、特にトリック的なものは何もなかったのですが、扉が突破されそうになりゾンビが迫ってくるという犯人自身も予測し得ない状況下なら、そうなっても仕方なかったのかと思います(より好意的に解釈すれば、「彼女は七宮の二度の殺人についてきちんと策を用意していたが、ゾンビに扉を突破されそうになったことにより、咄嗟の判断であのように殺した」とも考えられます)。
6)九偉人の像
立浪殺害事件に際して犯人に使われた九偉人の像ですが、原作小説では青みがかった鈍色のブロンズ製の全身像(文庫69頁)だったのに対し、映画では、白色の石膏製の胸像(土台は木製)でした。そのため、映画では分かりやすい形で血痕が見つかってしまいました。犯人の凡ミスということでしょうね。
ところで、像をエレベーターまで運ぶ方法は、映画ではまったく説明されていませんでした。原作の説明もあっさりとしたものでしたが(文庫328頁)、映画しか見ていない人の中には疑問に思った方もいるのではいのでしょうか。それに、1mほどの全身像(原作)と土台付きの1m60cmほどの胸像(映画)が原作小説と同じ方法で運べるのか疑問です(そもそも、映画では土台ごとエレベーターに運び込まれていましたっけ? 記憶が曖昧です)。
7)トリック&ロジックの省略・改変
映画化に際するトリック&ロジックの最も重大な省略・改変は、①立浪の遺体発見に際するゾンビ突破時の比留子と高木の部屋への電話の省略と、②立浪殺害事件の犯人絞り込み方法の省略・改変です。
①については、省略されても原作を読んでいない人は戸惑うことはありません。「犯人は、動機とは無関係の人物がゾンビに襲われたとしても、しょうがないと考える人――そもそも殺人鬼――だった」と納得できますから。
②については、原作では、㋐音楽が鳴りやんだ際のアリバイと、㋑自室カードキーの使用の二段階で犯人が絞り込まれましたが、映画では、㋑は省略して㋐のみで犯人絞り込みがなされました(この辺はちょっと記憶が曖昧ですが)。そのため、爆音で音楽が流されている(そして一旦止まる)シーンは、原作読者にとっては露骨な伏線の提示でした。カードキーが室内の電気のスイッチになっていることの伏線って、ちゃんと提示されていましたっけ?
いずれにせよ、②についても、トリック&ロジックを単純化させたのは、映画観劇者の理解のためだと思われます。原作は、小説なので何度も立ち返って自分のペースで読み直すことが出来ますが、映画では、物語は自動的・強制的に進んで行き、見直すのにもお金がかかりますからね。
これは原作小説の話なのですが、②の㋑について、比留子は「どちらが先に部屋に入ったのか?」と問うことによって犯人を絞り込んでいました(文庫337頁)。しかし、よくよく考えてみれば、この絞り込み方法は、回答者の正直さに依存し過ぎていて回答の客観性が確保できません。両者が「自分が先に部屋に入った」もしくは「自分が後に部屋に入った」と主張すれば、比留子はそれぞれの主張の真否を確認しようがないのです。
そこで、活用されるのが、葉村の腕時計です。葉村が別の動機をもって嘘をついたことを論証するために、腕時計に関するエピソード(重元によって拾われた手帳、バーベキュー時に紛失した腕時計、葉村が嘘をついた理由……)が挿入されたのではないでしょうか。勝手に勘繰ると、原作者は、腕時計に関するエピソードを最初から用意していたのではなく、比留子の論証の厳密さに対する不足を感じ、後になってこのエピソードを挿入したのではないでしょうか。
6. おわりに
……とまあ、ここまで1万4000字以上にわたって長々と映画「屍人荘の殺人」の感想を書いてきました。久しぶりに劇場で見た映画に興奮してしまって、こんなにも長くなってしまいました。
映画を観ていない人は映画を観ることを、原作小説を読んでいない人は原作小説を読むことを、それぞれお勧めします!!(原作は3作目まで刊行されています)
ところで、この映画のメインキャストの一人、浜辺美波さんはドラマ「アリバイ崩し承ります」で主役を演じています。さらに、七宮役を演じた柄本時生さんも、検視官役としてレギュラー出演しています。
この作品は、同名の小説(大山誠一郎著、実業之日本社文庫)を原作としており、原作小説は2019年の「本格ミステリ・ベスト10」で第1位を獲得しています(前年の第1位は『屍人荘の殺人』でした)。『アリバイ崩し承ります』も、本格ミステリとして高評価な作品ですので、ぜひドラマ/原作をご覧になってはいかがですか?(この作品もAmazon Prime Videoで観られます)
アニメ「ランウェイで笑って」第2話の感想・考察――千雪の身勝手と育人の覚悟
この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」の第2話の感想記事です。ネタバレにはご注意ください。
見逃した方は、毎翌月曜深夜26:55から最新話がTVerで無料配信されていますので(https://tver.jp/anime)、是非ご覧ください!
第1話の感想記事はこちらから!
- 0.基本情報
- 1.OP初披露!
- 2.ED初披露!
- 3.テンポの速い展開
- 4.千雪の身勝手と高いプライド
- 5.育人の覚悟
- 6.手を振っている!
- 7.やっぱりカラー化!
- 8.厳しい現実・再び
- 9.背中合わせの二人
- 10.千雪の体型
- 11.プロの現場
0.基本情報
原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊14巻、週刊少年マガジンで連載中)
アニメーション制作:Ezo’la
監督:長山延好
TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/
ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#
原作漫画試し読み:https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175
アニメ第2話「プロの世界」
相当する原作のエピソード:第1巻第2話「これは僕の物語」、第3話「期待の逸材」、第4話「なりたがり」、第5話「何者でもない」、第2巻第6話「プロの現場」、第7話「得意でしょ?」の冒頭まで
ファッションデザイナーになる夢を秘めてきた育人。千雪の父で、ファッションブランド・ミルネージュ社長の研二から働き先を紹介され、新進気鋭のデザイナー・柳田一の職場を紹介される。アトリエを訪ねた育人は、柳田の厳しい態度と過酷すぎるプロの現場に驚くのだが……。
1.OP初披露!
(1)OP曲は坂口有望「LION」
第1話では挿入歌として使用されていましたが、シンガーソングライターの坂口有望さんによる「LION」がついにOP曲として使用されましたね! やっぱり良い曲ですね!!
TV Size版は既に配信中、フル版は2月5日発売だそうです!
(2)千雪の努力
飄々かつ勝気な面が目立つ千雪ですが、OPでしっかりと「努力の人」であることの描写がされていたのが、個人的にちょっと嬉しかったです。
(3)OP最後のカット
OP最後のカットは、やはりパリの描写なんですかね? エッフェル塔っぽい建物が見えますし。
2.ED初披露!
EDも初披露でしたね! ED曲は、ジェジュンさんによる「Ray of Light」です!
EDアニメーションは、アニメとしては珍しく、男性目線――育人の記録――でしたね!!
3.テンポの速い展開
第1話もテンポの速い展開だったのですが、第2話はそれ以上に速い展開でした。
どれくらい早い展開かと言うと、アニメ第1話が原作の1話分を消費したのに対し、アニメ第2話は原作の1巻分(第1巻第2話~第2巻第7話の冒頭)を消費しているのです!
しかもそれでいて、会話のやり取りの少々の省略はあるものの、エピソードの基本線はきっちりと押さえられているから見事な脚本構成と言うしかありません。
4.千雪の身勝手と高いプライド
第2話の冒頭、千雪は父親から、「千雪、復帰してプロ気取りかもしれないが、全部、都村君におんぶにだっこの結果だろう。そんなヤツが他人を軽んじてやっていけると思うな。自分に才能がないことを自覚しろ」と厳しい言葉を投げかけられます。
ハイパーモデルになる身としては、どうせ素人の作った服ならば格好がつく芸華大生の方が良いと、育人の身分を偽った千雪を叱っているのです。たしかに、ここでの千雪はプライドが高く身勝手でした。しかし、だからといって千雪を責める気になれないのが彼女の魅力です。
千雪は「私、素人が作った服、着るつもりないから」と言って、育人が作ってミルネージュのオーディションに合格したときの服を育人に返却しました。
その言葉に育人は、「藤戸さんは勝手ですよ! 作れって言ったんじゃないですか! なのにいらない? はあ!? 変に見栄張って、完全に僕、振り回されただけなのに、なのに、なんなんですか!? まるで僕が悪いみたいに!」と柄にもなくキレてしまいます。まったくの正論です。この点については、千雪も「悪いとは、思ってるってば。そりゃ身勝手でわがままな話だよ」と認めています。
しかし、ここで終わらないのが藤戸千雪です。「それでも、諦めてほしくない。私はね、自分で言った言葉を払拭したいの。私でもパリコレに出るのは無理じゃない、君でもデザイナーになるのは無理じゃないって、私のためにも証明したいんだよ」と言うのです。
そもそも、育人に「デザイナーになるのは無理なんじゃないの?」と言ったのは千雪ですし、彼の境遇に自分自身の境遇を重ね合わせたのも千雪です。つまり、これらは、まったくもって千雪の脳内で完結している出来事であって、おそらく「私のためにも証明したいんだよ」と言われるまでは、育人は彼女の心の中の激烈と葛藤を伺い知ってはいないはずです。その意味で、まさに「私のために」と、千雪は育人を身勝手に振り回しているのです。
しかしながら、千雪は、育人がファッションデザイナーになりたいことを確信しています。だからこそ、「私のためにも=あなたのために」と、彼女の身勝手は、育人を後押しして止まないのです。そして彼女の身勝手と高いプライドは、「僕がプロになれたら、また着てくれますか?」と、育人を間違いなく後押ししました。だからこそ、千雪を責める気になれず、むしろ身勝手と高いプライドは彼女の魅力とさえ言えるのです。
そして、藤戸社長と面前したとき、育人はこう宣言しました。
僕はモデルのことはよく分かりません。ただ、僕の服を着た千雪さんを見たとき、こんなにも着る人で変わるんだって思いました。今、こうして社長とお話しできているのも、千雪さんの写真が有名な人の目に留まって、話題になったからで、きっと着てくれたのが千雪さんじゃなければ、見向きもされなくて……。だから、きっと千雪さんは、すごいモデルになると思います!!
育人に「無理なんじゃないの?」と言い、その姿に自分自身の境遇を重ね合わせたときから、千雪にとって育人は運命の相手でした。しかし、育人にとって千雪が運命の相手になったのは、きっと藤戸社長にこのように宣言したときからだと思います。
最初に藤戸社長に会ったときは反論できなかったのに、また、自分がミルネージュに雇ってほしいことはまともに言えないのに、「きっと千雪さんは、すごいモデルになると思います!!」と千雪のために宣言したのは、育人が千雪を運命の相手であると認めたからこその行動だからではないでしょうか。
5.育人の覚悟
(1)蛮族の象徴
千雪との会話の中で、育人は「服は人を変えられる。僕が服作りを好きな理由の一つです。もう一度、藤戸社長に会うのは怖い。けど、そんな弱さが勇気に変わる服を作ります」と言っていました。
アニメでは省略されてしまいましたが、育人が藤戸社長に会うために作り着ていった服には、「育人の覚悟」が込められていました(原作第1巻第2話参照)。
この服にワンポイントで使用されている縞模様(ボーダー)は、「元々、囚人や道下が纏う忌み嫌われた模様」でした。これは、「蛮族の象徴」であり、育人にとっては、藤戸社長に対して「きっと千雪さんは、すごいモデルになると思います!!」とケンカ腰に宣言するための勇気をくれるための服でした。
(2)厳しい現実
藤戸社長は、「正直言うとね、高校生でこれだけのクオリティー、鳥肌が立ったよ。確実に才能がある」と育人のことを褒めつつも、「だが、君には学ぶべき知識と経験が足りてない」と厳しい言葉も投げつけます。
アニメでは省略されてしまったのですが、原作ではもっと厳しい言葉でした(原作第1巻第2話参照)。
確実に才能がある。だが、君くらいの力量、大学や専門〔学校〕を探せば、特別珍しくもない。学ぶべき知識と経験を得ていない分、こちらとしてはリスクが大きい。もう一つは単純に、すでに代わりのデザイナーを雇ってしまったんだ。わざわざ無い席を用意してまで雇いたいと思えるほど、君に価値を見出していないんだ。
(3)垣間見えた親子愛
しかし、続けざま、藤戸社長は「ただ、無理と言われても折れない心は、最高の資質だ」とも言います。このとき、一瞬だけ、モデルの練習に励む千雪を陰で見守る藤戸社長のカットが見られました。
原作では、「その点で言えば、俺も千雪はいいモデルになると思ってる」という藤戸社長の言葉でした(原作第1巻第2話参照)。
垣間見える直接的でない親子愛が、じれったくも最高です!
6.手を振っている!
育人を柳田さんのアトリエに案内した際の帰り際、原作では私は見逃してしまっていたのですが、「私も頑張るから、頑張りなよ。ありがと」と言いながら、右手で小さく手を振っていました! 千雪らしい仕草ですね!!
7.やっぱりカラー化!
原作漫画では特に意識していなかったのですが、柳田さんの服は赤系(深紅?緋色?スカーレット?クリムゾン?)だったんですね!
8.厳しい現実・再び
度々才能があることを指摘される育人ですが、現実はそう上手くいきません。育人は、「目立たないように星縫い」と指示されたところを、両星縫いではなく、普通の星縫いをしてしまったのです。まさに藤戸社長の予言していたとおり、「学ぶべき知識と経験が足りてない」ことが露呈したのです。まったくもって厳しい現実を突きつけられた育人でした。
9.背中合わせの二人
星縫いに失敗してアトリエを追い出されそうになったとき、育人は「私も頑張るから、頑張りなよ」と千雪の言葉を思い出し、柳田さんに食い下がりました。この背中合わせの二人の演出、最高じゃないですか? まさに育人と千雪は互いを支え合っていることがよく分かります。
10.千雪の体型
森山さんが千雪の体型を褒めていましたけど、ここで言いたいのはそれではありません。
この千雪の真横姿のカット(アニオリ)、女性の脚のスタイルや肉感をかなりリアルに描写しているように見えます。
思い返せば、アニメでは必ずしも正確に人の姿形が描かれるわけではないし、体型が分かりやすく出るパンツスタイルの真横姿のカットなんてあまりありません。
そこで思い至ったのですが、ファッションモデルを題材とするこの作品においては、頭身・体型のリアリティが大切にされています。意識的に見てみると原作漫画はもちろんそうですし、このカットでも分かるように、アニメでも大切にされています。
11.プロの現場
千雪が「ごめんなさい。急いで来たからブラ着けっぱなしで」と謝ったのは、おそらく、首元~肩を露出させる衣装の場合には、ブラの肩紐の跡が出てしまうため、モデルをする際には、直前でなくそれなりの余裕をもって事前にブラを外しておくべきことを意味しているのだと思われます。
また、アニメでは説明されていませんでしたが、原作によると、モデルは、上はニップレスを、下はTバックだそうです(原作第2巻第6話参照)。
いろいろ詰め込まれたあまりにもテンポの速い展開なので、まさか11項目にわたって感想を書き連ねることになるとは思いませんでした。
次回第3話「ランウェイで笑って」は、倒れた森山さんの代わりに育人が千雪の衣装を仕立て直すことになります。ショーの時刻が迫る中、果たして育人は上手く千雪のために仕立て直しできるのでしょうか? 千雪はランウェイを歩くことができるのでしょうか?
まるで最終話のようなサブタイトルですが、もちろん物語は続いて行きますよ!(ちなみに、1月17日に原作最新刊の第14巻が発売されました!)
第3話の感想記事はこちらから!
2020冬アニメ1話目ひとことコメント
年が明けて、2020冬アニメのシーズンになりました。ということで、第1話を視聴したアニメについて一言ずつ、(感想未満の)コメントをしていきたいと思います(五十音順)。
※特に言及がない限り、筆者はすべて原作未読(未プレイ)です。
- 異種族レビュアーズ
- 痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。
- 映像研には手を出すな!
- 推しが武道館にいってくれたら死ぬ
- 虚構推理
- 空挺ドラゴンズ
- 恋する小惑星
- 地縛少年花子くん
- SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!
- ソマリと森の神様
- ダーウィンズゲーム
- 22/7(ナナブンノニジュウナナ)
- ねこパラ
- はてな☆イリュージョン
- プランダラ
- 群れなせ!シートン学園
- ランウェイで笑って
- 理系が恋に落ちたので証明してみた。
異種族レビュアーズ
五十音順なのでこの作品が一番になってしまいましたw
地上波でこんなテーマの作品を放送していいんですか!? ただ、ポップなキャラデザが生々しさを軽減させているのが、唯一の救いですかね。
痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。
フルダイブ型のVRMMOと言えばSAOを思い浮かべますが、それと比べるとこのアニメの優しい世界にホッとします。そもそも事件ばかり起きるSAOがおかしいんですよ。
私はこういうRPGをしたことがないので分からないのですが、ああいう誰も試しそうもない取得条件であっても、「ゲームバランスが崩れている」と言うのですかね?
映像研には手を出すな!
第1話ですでに「これから何が起こるんだろう?」とワクワクしています。作中で言及されている通り、テンションの上がるダンジョンが舞台となっており、映像を一時停止してその細やかな背景を仔細に観察したくなりました。
OP曲の「Easy Breezy」(chelmico)の購入はもう決まりです! 1月17日(金)から配信だそうです!
推しが武道館にいってくれたら死ぬ
ライブでアイドルの歌声とファンのコールで完成された感じになるのは面白いですよね!
虚構推理
河童の叙述トリックとか体目当てとか、2人の当意即妙なやり取りがグッときます。惚れている割にはドライな面もある琴子も素敵です。
あと、髪型といい、帽子といい、杖といい、ファッションセンスといい、琴子の全身としてのキャラデザの完成度が高くないですか?
空挺ドラゴンズ
まったくのノーチェックでしたが、かなり面白かったです! 最高の世界観です!!
CGキャラに飛行船と言えば、「荒野のコトブキ飛行隊」を思い出しますね!
恋する小惑星
副部長のキャラクターとキャラデザが好きなんですが。
地縛少年花子くん
線の太い作画と独特の色彩・演出が素敵なアニメーションです。第1話の最後の花子くん、格好良かったですね!
SHOW BY ROCK!! ましゅまいれっしゅ!!
旧シリーズがあるらしいのですが、それを見ていなくても楽しめますね! あと歌が普通に良曲!!
ソマリと森の神様
EDクレジットに表記のあった謎のNPO法人・スーパーダディ協会は実在しているみたいですねw
ダーウィンズゲーム
このアニメについては、すでに原作漫画を数巻読んでいて、面白そうな設定とゾクゾクする展開から楽しみにしていました。
アニメ第1話を見て最初に思ったのは、なぜかシュカがやけにセクシーになっていたことです。漫画ではただ可愛い印象だったんですが、CV:上田麗奈さんだからセクシーに見えたんでしょうかね。
22/7(ナナブンノニジュウナナ)
OP/EDともに秋元康さん作詞でしたが、OPは特に秋元さんっぽさ(欅坂46っぽさ?)がありましたね! 総合プロデューサーの秋元さんがどれほど企画方針・原案・脚本に関わっているかは知りませんが、みうのアイドルをする理由は、某革命児っぽいですし(中の人由来という話も?)
この言い回しは、秋元節っぽくないですか?
この時の私はまだ知らなかったんだ。2016年12月24日、この日を境に、寒気がするほどの光と眩しいほどの闇と狂おしいほどの温もりに、この身を焦がすことになるなんて。
一番やりたくないことをやりに来ました! やりたくないことをしなきゃ大人になれないっていうのなら、大切なものを守れないっていうのなら、世界一のアイドルだって、何にだってなってやる!
ねこパラ
「ねこ」の概念を狂わせてくるアニメです。何の説明もありませんでしたが、ああいう世界線のということなんでしょうか?
はてな☆イリュージョン
原作・松智洋×キャラクター原案・矢吹健太朗という豪華タッグ! はてなのキャラクターなんかは松智洋さんらしさが出ているし、キャラデザの可愛さは安定安心の矢吹健太朗さんですね!
プランダラ
秋アニメで「戦×恋(ヴァルラヴ)」を見ていたせいか、「プランダラ」の執拗な太もも描写であっても紳士的に思えました。
群れなせ!シートン学園
オスとメスとで獣人化の度合いが全く違いますね……もちろん大賛成ですが。
それにしても、獣耳と尻尾が生えた程度であとは人間の容姿をした獣人が四足歩行をする様子には、ある種の奇妙さ、あるいは背徳感を覚えませんでしたか?
ランウェイで笑って
原作を読んでいるので、ワクワクしながら見ています。やっぱり「夢を叶える物語」は大好きです!
感想記事も書いているので、興味があったらご覧ください!
理系が恋に落ちたので証明してみた。
実写化→アニメ化という珍しいパターン(といっても、私は実写ドラマを見ていませんでしたが)。
高校が舞台のラブコメが吹き荒れる中、大学院生がメインキャラクターという点でも珍しいパターン。でも面白い!!
異種族レビュアーズ、ましゅまいれっしゅ!!、ねこパラ、シートン学園…………ケモナーアニメ多くないですか?
今期も、6話が終わった時点と、12話(最終話)が終わった時点で、こういった形の一言コメントを書こうと思います。 「ランウェイで笑って」については、各話ごとに感想記事を書くように努めます!
アニメ「バビロン」第9話を見てちょっと興奮した件
この記事は、アニメ「バビロン」の第9話の感想記事です(1週間遅いのは悪しからず)。
記事のタイトルに「ちょっと興奮した」とありますが、「曲世愛の声に興奮した」という訳ではなく、アメリカ政治が舞台となっている点に興奮しただけなのです。
The White House bans the use of personal cell phones in the West Wing in the wake of damaging reports of a chaotic Trump administration detailed in a new book https://t.co/KKNp8RwL8k pic.twitter.com/OhTHR5WpHb
— CBS News (@CBSNews) 2018年1月4日
それというのも、私は政治をテーマとするアメリカのTVドラマが大好きで、たとえば「ハウス・オブ・カード」や「サバイバー」なんかを見ているのです。まさかアニメでアメリカ政治が見れるとは思っていなかったので、第9話のホワイトハウスのシーンにはテンションが上がりっぱなしでした!
以下、アニメで追求されているリアリティを振り返ってみたいと思います。
1.閣議室(Cabinet Room)
大統領以下、閣僚(副大統領、国務長官、国防長官など)が閣議を行う部屋です(閣議以外の会議に使われることもあるようですが)。
両端に丸みのある横長のテーブルが特徴的です。窓側中央の星条旗の前が大統領の定位置です。
White House press pool has now exited the cabinet room after roughly one hour and 45 minutes. pic.twitter.com/LCwFo20EY1
— Jeff Mason (@jeffmason1) 2019年1月2日
2.大統領執務室(Oval Office)
大統領の執務室で、その卵型の形から、英語ではOval Officeと呼ばれています。大統領が国民に向けてテレビ演説する際や法案に署名する際にこのオフィスが映されることがあります。
執務机は、レゾリュート・デスクと呼ばれており、伝統と格式あるものです(映画「ナショナル・トレジャー」にはこの説明があります。面白いので是非ご覧になってください!)
The @StLouisBlues amazing comeback reminds us to never give up – and never lose faith. When you work hard, support each other, believe in yourself, and give it everything you’ve got, victory is always within reach! #STLBlues pic.twitter.com/QeF54kqUak
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年10月15日
3.日本では見ない座り方
このような、(ソファーテーブルや会議用テーブルなどではなく)個人用の執務机を挟んで座り会議をするような様子は、アメリカのTVドラマではよく見られます。日本ではあまり見かけない座り方です。
Reporters Hit White House for Not Disclosing Meeting With Saudi Defense Minister. “A meeting with a foreign leader in the Oval Office should, at the very least, be on the public schedule with a read-out of the meeting released… https://t.co/SWMfVe0zFb pic.twitter.com/12GRxHBqTi
— Naijamoon (@ErhomwonZ) 2020年1月7日
4.アメリカに息づく憲法政治
アレキサンダー・W・ウッド大統領が、「合衆国憲法で委任されていない権限は、州と人民のものだ。ハートフォードの自殺法に関して、原則的に我々がとやかく言うことはできない」と言ったのは、アメリカ合衆国憲法修正第10条に基づく発言です。
Amendment X
The powers not delegated to the United States by the Constitution, nor prohibited by it to the States, are reserved to the States respectively, or to the people.
修正第10条
本憲法によって合衆国〔連邦政府〕に委任されていない権限または本憲法によって諸州に委任することが禁止されていない権限は、各州それぞれに、または人民に留保される。
この条文から明らかなように、上記の大統領の発言は、憲法に記された連邦制というアメリカの大原則を踏まえての発言です。リアリティが追求されています。
アメリカの政治ドラマと言えば、必ずと言ってよいほど、立法(連邦議会)・執行(大統領)・司法(連邦最高裁判所)の間の対立が描かれますが、同様に、連邦政府と州政府の間の対立が描かれることも多いのです。大統領が州兵を連邦の管轄下に置いて、州知事から州兵の指揮権を奪う展開なんてゾクゾクしませんか?
以降のエピソードでもホワイトハウスが登場することを期待しています!
アニメ「ランウェイで笑って」第1話の感想・考察ーーこれはどんな物語?
この記事は、アニメ「ランウェイで笑って」の第1話の感想です。ネタバレにはご注意ください。
見逃した方については、1月13日深夜より毎週月曜深夜26:55からTVerで無料配信されていますので(https://tver.jp/anime)、是非ご覧ください!
0.基本情報
原作:猪ノ谷言葉『ランウェイで笑って』(既刊12巻、週刊少年マガジンで連載中)
アニメーション制作:Ezo’la
監督:長山延好
TVアニメ公式HP:https://runway-anime.com/
ミルネージュ公式HP:https://milleneige.com/#
アニメ第1話「これは君の物語」
相当する原作のエピソード:第1巻第1話「これは君の物語」
「パリ・コレ」を目指す藤戸千雪は、低身長というモデルにとって重大な欠点を抱えていた。周囲から「諦めろ」と言われ続けても千雪は折れない。ある日、千雪はクラスメイトの都村育人の進路調査を回収することになる。クラスメイトたちから「影が薄い」と言われている育人の意外な「将来の夢」を知った千雪は……。
1.これはどんな物語?
アニメ第1話の冒頭と末尾で明快に打ち出された通り、この「ランウェイで笑って」は、「藤戸千雪がトップモデルに至るまでの物語――そして、都村育人がトップデザイナーに至るまでの物語」なのです!
このような「夢を叶える物語」は大好きです! 夢に向かって努力する様は応援せずにはいられません!!
そしてこの物語の主人公は、千雪と育人の2人です。こうしで出会った2人はこれから、千雪はトップモデル、育人はトップデザイナーという夢のために、互いに切磋琢磨してゆく友、あるいはライバルになってゆきます。こういう「友でありライバルであり」みたいな関係、最高じゃないですか?
2.千雪に立ちはだかるファッション業界の厳しい現実
雫さんがパリコレで着ていたファッションを身に着けて面接に来た千雪に対して雫さんは以下のような言葉を放ちました。
身長をごまかすための履き方ほど醜いものはないわ。それに、服が似合うだけのモデルなんて、ごまんといるの。ショーモデルの仕事はあなたを見せるんじゃない。服を魅せるの。そのための身長、そのためのスタイル。うちはコネでどうにかできる大きな事務所じゃない。あなたにできるの? その恵まれない身長で。千雪、無理なの。諦めて。
この言葉は、モデル業界の厳しい現実を言い表しています。今後何度も言及されることになると思うのですが、モデル業界はとにかく身長がモノを言う世界であり、モデルの身長から生み出される存在感によってファッションを魅力的に見せることこそが至上命題とされるのです。
そのため、「ショーモデルの仕事はあなたを見せるんじゃない。服を魅せる」のです。アニメでは同音のセリフだったので気付かなかった人も少なくないと思いますが、ただ「服を見せる」のではなく「服を魅せる」=「服を魅力的に見せる」ことこそがモデルの仕事なのです。この「魅せる」という言葉にモデル業界の本髄が詰まっているように思われます(テレビの字幕は「見せる」でしたが、原作の通りに「魅せる」にしてほしかったところです)。
3.千雪の覚悟と情熱
育人のデザインしたファッションを着て面接に来たときの千雪の言葉です。
わたし、諦めないよ。パパがモデル事務所を立ち上げたこと、雫さんのステージを見たこと、わたしの人生全部があの場所に行きたいって叫ぶの。……だから、藤戸千雪(わたし)じゃいられないんだよ、諦めちゃったら。
そして、雫さんに「一生……叶わない夢を追いかけるつもり?」と問われた千雪はこう答えます。「叶える!一生あるんだもん!」と。
ここのセリフ、熱すぎませんか? 「わたしの人生全部があの場所に行きたいって叫ぶの」「藤戸千雪(わたし)じゃいられないんだよ、諦めちゃったら」と、自らの存在意義がパリコレモデルにあると宣言しているのです。こんな言葉、相当な覚悟と情熱がなければ言うことができません。自分自身に置き換えて考えてみると、こんな宣言をすることはかなり躊躇われます。この藤戸千雪の放つ覚悟と情熱には思わず惹きつけられ、応援せずにはいられません。
4.その名に込められた親子愛
千雪の父親が経営するモデル事務所は、彼の「人生で一番大切なもの」がその事務所名となっています。すなわち、「Mille neige=千の雪」です。
そして、千雪は千雪の方で、「スーパーモデル=パリコレで活躍するモデル」になるつもりはありません。彼女が目指すのは、「ハイパーモデル=父親の事務所『ミルネージュ』からパリコレに出て活躍するモデル」なのです!
このような、「身長=才能がない」と父親に突き放されつつも決して諦めない千雪と、千雪を出禁にせず彼女自身が諦めるまで待っている、言い換えれば娘の可能性を信じ続けている父親の不器用な関係、素敵じゃありませんか? 今後もドライかつ没交渉気味の父娘関係が続きますが、その節々に不器用ながらも親子愛を感じることができます。
5.アニメと言えば?
原作漫画は当然、白黒なので、千雪らが着るファッションがどんな色をしているのか、よく分かりません。その意味で、このようなファッション業界を描く漫画をアニメ化する意義の一つは、カラー化という点にあります。
そして、第1話ではまだ本格的には登場しませんでしたが、これから描かれるはずの千雪がランウェイを歩くシーンはまさにアニメーションの特性が活かされるはずです。期待しています!
6.原作漫画も是非読んでほしい!
アニメはカラーとアニメーションという点で優れていますが、しかし原作は原作の方で、横長長方形のいつまでたっても同じ大きさのテレビ画面とは打って変わって、コマ割りや文字の大きさなどで漫画ならではの工夫がなされた演出がなされています。ぜひ原作漫画もご覧になってください! 以下では原作漫画の秀逸な演出を紹介します!
試し読み↓(アニメ第1話に相当する部分が読めます)
https://pocket.shonenmagazine.com/episode/13932016480029113175
(1)158cm
まず、「そうしてわたしは――そこから1cmも身長が伸びることなく、高校3年生を迎えた」の箇所なんですが、原作漫画では、「――」の部分でページをめくることになり、「そうしてわたしは」の何気ない小さなコマから、「そこから1cmも~」の大きな見開きのコマになります。前後で差をつけるようなこのページ割り・コマ割りは、漫画ならではの効果的な手法です。
とはいえ、アニメの方もオリジナルの演出が行われていました。「そこから1cmも~」のところで画面がブラックアウトしたのも、そこから同じ高さに留まり続ける印のカットも、それを見る千雪の絶望的な表情も、アニオリでした。
(2)「無理なんじゃないの」
そして、やはり一番秀逸なのは、千雪が育人に「無理なんじゃないの」と言ったコマでした。
アニメではBGMとともに会話の中で自然に流れてゆくセリフでしたが(CV:花守ゆみりさんのセリフ運びが上手でしたね!)、漫画ではこれとは違った演出がなされていました。
それというのは、このセリフは、発言者の千雪さえ入り込んでいない小さなコマでなされたものなのです! このような小さなコマの何気ないセリフでしたので、特に気にも留めず流れるように読み進めてしまいました。
しかし、千雪が自身と育人の境遇を重ね合わることに思い至ったとき、千雪はつい先ほど育人に言った「無理なんじゃないの」というセリフを思い出します。このコマになって初めて、何気なく発された先ほどの小さなコマのセリフの意味に気付き驚きました。私が初読のときは、3回くらいこのコマに立ち返って読み直した記憶があります。この小さなコマに込められた細やかかつ効果的な演出は秀逸と言わざるを得ません。
さて、ここまでアニメ「ランウェイで笑って」の第1話の感想を長々と書いてきましたが、実は、アニメのまともな感想を第1話から書いたのは初めてです(技術的な解説に限定したものや、衝動的にワンイシュー的な感想を書いたことはありますが)。
ブログに書き綴るアニメの感想とはいかにあるべきか悩ましいところですが、何かしら書いて行ければと思っています。
次回第2話「プロの世界」は、育人を主軸としたエピソードになると思われます。ミルネージュにオファーされた育人ですが、果たして順調に事は進むのでしょうか?
第2話の感想記事はこちらから!
私の好きなイラストレーター
この記事では、私の好きなイラストレーターを紹介したいと思います。
なお、先に断っておくと、このブログの読者にはラノベ読者の方が一定数いると思いますが、どちらかと言えば、ラノベで使われるようなイラストよりも、一般文芸やライト文芸(キャラクター小説)の表紙に使われるようなイラストの方が私の好みです。
それでは、私がイラストに出会った順にイラストレーターを紹介します(まったくの素人による論評が混ざっていますが悪しからず)。
田中寛崇(たなか・ひろたか)
https://twitter.com/tanakahirotaka
私が「好きなイラストレーター」を意識し始めたきっかけとなった方です。この方のイラストを初めて見たのは、青崎有吾『体育館の殺人』(創元推理文庫)の表紙でした。
『体育館の殺人』自体おもしろかったので、この「裏染天馬」シリーズを追っていたのですが、いつの間にかそのイラストにも魅了されていました。
このイラストレーターは、四肢のラインに定評のある方なのですが、やはり私として言及しておきたいイラストの特徴は、①髪の毛の描き方と、②背景の大胆な色づかいです。
まず、髪の毛の描き方についてです。
月ノ美兎さん1周年おめでとうございます!2年目も爆走してください!めでた〜い!https://t.co/VqyJwHaM5z #みとあーと #月ノ美兎1周年企画 #にじさんじ1期生出身1周年記念祭 pic.twitter.com/vbylJfMo50
— 田中 寛崇/ 3日目南3"ユ"34a (@tanakahirotaka) 2019年2月8日
new arrival... pic.twitter.com/vN4bAeYn1j
— 田中 寛崇/ 3日目南3"ユ"34a (@tanakahirotaka) 2018年5月3日
こういう髪の毛の描き方をなんと表現してよいのか分かりませんが、とにかく好みです。
そして背景の大胆な色づかいも私の好みです。
『夏の魔法』(マール社「制服少女」描き下ろし作品) pic.twitter.com/Og38xQ4xtd
— 田中 寛崇/ 3日目南3"ユ"34a (@tanakahirotaka) 2017年9月10日
【告知】12月28日〜31日まで、幕張メッセで開催されている「COUNTDOWN JAPAN 1718」にて、会場内装飾として私のイラストを高さ約2mの大きな壁面に使っていただいています!計8点で、内1点はCDJ1718のための描き下ろしイラストになっているので、是非探してみてくださ〜い! pic.twitter.com/vZfXaIZ2Xe
— 田中 寛崇/ 3日目南3"ユ"34a (@tanakahirotaka) 2017年12月29日
『シンギュラリティ』 pic.twitter.com/mES799f5Jw
— 田中 寛崇/ 3日目南3"ユ"34a (@tanakahirotaka) 2017年12月27日
そしてその色づかいにあっと驚くギミックが加えられた作品がこちらです。
【告知】『ちょっと一杯のはずだったのに』(志駕 晃 著/宝島社)の装画を担当しました!本日発売です。遠目にビールのように見えれば良いなと思いながら描きました。 pic.twitter.com/ZymYXNu7Sc
— 田中 寛崇/ 3日目南3"ユ"34a (@tanakahirotaka) 2018年6月6日
自身の作風にあわせて二色の色づかいを上手く使っていますよね?
uki
https://twitter.com/ukipenguin
私がこの方のイラストに初めて出会ったのは、青木裕子『これは経費で落ちません!』(集英社オレンジ文庫)でした。
その後もこのシリーズの続巻や、井上真偽『探偵が早すぎる(上下)』(講談社文庫タイガ)、秋保水菓『コンビニなしでは生きられない』(講談社ノベルズ)などで再会し、この方を認識するようになりました。
この作風をなんと言えばよいのか分かりませんが、この方の描く教科書のようなイラストが好きなようです。実際、教科書的な教材のイラストも描いていらっしゃいます。
毎年中高生向けの進研ゼミにイラスト描かせてもらってるのですが、今年度は通年で高校講座用の教材やDM用にかなり色々描いております。キャラデザもタッチもむしろバラバラで良いとのことで、普段やらない塗り方のもあったり、自由にやらせてもらっております✍ pic.twitter.com/FDw23wiCrS
— uki (@ukipenguin) 2019年4月24日
『新しい道徳』(東京書籍・平成31年度中学校道徳)の表紙イラストを担当しています。3学年分の教科書を縦に並べるとイラストがループするようにしました。https://t.co/Rjwk4h0m2F pic.twitter.com/wvHdbm3kMk
— uki (@ukipenguin) 2018年7月8日
引き続き、公務員試験『受験ジャーナル』の表紙イラストを担当しております。 29年度も大学生と動物を楽しい感じで描かせてもらっております。https://t.co/mJpFthdK9L pic.twitter.com/9IQCYeP1yQ
— uki (@ukipenguin) 2017年5月1日
ukiさんは最近、映像系のお仕事もされているそうです。
本日から放送の「約束のネバーランド」OP映像で、文字周りのデザインとモーション、色彩・エフェクトなどの最終コンポジットを担当しています。 ダリフラ以来のアニメOPお仕事で緊張しました🔥 みんな見てね#約ネバ pic.twitter.com/xsfYs5gtsi
— uki (@ukipenguin) 2019年1月10日
今放送中のTVアニメ「アサシンズプライド」OPのディレクション、コンテ演出させてもらいました。CG・モーションなど諸々はSIGNIFの荒牧さん、花坂君が頑張ってくれました。撮影は手分けしてます。よろしくお願いします🎃#アサシンズプライド pic.twitter.com/ht0ETZ8OkN
— uki (@ukipenguin) 2019年10月24日
江口寿史(えぐち・ひさし)
この方は漫画家としても有名な方ですが(『ストップ!! ひばりくん!』、『すすめ!!パイレーツ』など)、イラストレーター業もしておられます。
この方のイラストに初めて会ったのは、銀杏BOYS「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」(2005年)のCDジャケットです。どこで見たか忘れたのですが、とにかく印象に残って気になっていたため、なんとかしてイラストレーターを突き止めた記憶があります。
このCDジャケットから分かるように、この方のイラストには、線は多用されていませんし、色づかいも浮世絵的です。しかし、それでも魅力的な人物像に仕上がっている様に惹かれずにはいられません。
高校生の頃から大好きなEDWINとコラボします。今日から毎週(?)月曜日にEDWINの公式インスタグラムにて江口寿史×EDWIN ジーパン女子がアップされていきますよ。お楽しみにー。https://t.co/j5oTumT9JG pic.twitter.com/DpGxHRhDhT
— 江口寿史 (@Eguchinn) 2019年5月6日
吉祥寺サンロードで今日から掛かってる絵だよ。 pic.twitter.com/TgtgT9HFm5
— 江口寿史 (@Eguchinn) 2019年6月30日
今夏のセゾンカード池袋の絵はこれなー。 pic.twitter.com/XAnSM6MiDg
— 江口寿史 (@Eguchinn) 2017年7月19日
この記事に挙げた5人のイラストレーターは作風に共通点がある(ように素人目には見える)ので、もしかしたら一番年上の江口さんに他の4人も影響を受けているかもしれませんね(マツオヒロミさんはそのようです)。
明石市の江口寿史先生の展覧会に行ってきました。私は結構描き込んだ絵を描いてますが、本当は江口先生の様な引き算された画面にすごく憧れてまして、今回観に行ってとても勉強になりました。…と、それはともかく!女の子が!めちゃくちゃ可愛いの!分かってたことだけど!囲まれるとほんとにヤバイ… pic.twitter.com/B472FxZGQD
— マツオヒロミ (@matuo) 2019年5月16日
引き算されてるけど、すごい情報量が詰まってるな、と改めてびっくりしました。首の傾げ方、重心の乗せ方、髪の毛のボリューム感、構造、柔らかさ。それが全部線で表現されてるので、すごい情報量だけど非常にシンプルにダイレクトに美しいですよね。。神業すぎてクラクラしました。 pic.twitter.com/6JkPiu2jET
— マツオヒロミ (@matuo) 2019年5月16日
かとうれい
私がこの方のイラストに初めて出会ったのは、2019夏仕様の「カルピスウォーター」「カルピスソーダ」のイラストです。青・白・肌色を基調とする爽やかなイラストに惹かれ、イラストレーターを検索した記憶があります。もしかしたら、読者の皆さんも昨夏にこのイラストを手に取っていたのかもしれません。
カルピス100周年スペシャルパッケージ『カルピスウォーター』『カルピスソーダ』のイラストを担当させていただきました。https://t.co/pv4R42Ij4V
— かとうれい rei kato (@katorei_) 2019年6月4日
こちらのサイトにて全体イラストが見れます☝︎
6/11より発売されるそうなので、お見かけの際は是非よろしくお願い致しますー!🔵
#カルピス100周年 pic.twitter.com/mnJLpDCZJN
この人の作風の最大の特徴は、必ずと言って良いほど使われている海や空の青色です。そして、この青色は、波やシャツの白色、人の肌色とあわさって、爽やかな青春模様を描き出します。
#2019年自分が選ぶ今年上半期の4枚 pic.twitter.com/2DyQlYXAJG
— かとうれい rei kato (@katorei_) 2019年7月3日
#暑い夏がやって来たので青色か水色の画像を流してTLをひんやりさせる pic.twitter.com/lUES3nxhKJ
— かとうれい rei kato (@katorei_) 2019年7月17日
2019年もあとすこしですね、今年もたくさんお世話になりました!
— かとうれい rei kato (@katorei_) 2019年12月31日
来年もより一層精進していきますので、どうぞよろしくお願いいたします🔵#2019年自分が選ぶ今年の4枚 pic.twitter.com/tr5q6TfNuI
また、この方は毎月、自身のイラストを使ったカレンダーを作成しておられるので、ぜひ皆さんも使ってみてはいかがでしょうか?
合わせて、1月のカレンダー壁紙になります!
— かとうれい rei kato (@katorei_) 2020年1月2日
是非ご自由にお使いください〜🌅 pic.twitter.com/r6kYVKoF0J
マツオヒロミ
私がこの方のイラストに初めて会ったのは、彩藤アザミ『昭和少女探偵團』(新潮文庫NEX)および同シリーズ第2巻の『謎が解けたら、ごきげんよう』です。私にとって2019年ナンバーワンのライト文芸でした。
そして最寄りの大型書店がマツオヒロミさんのイラスト集やカレンダーをプッシュしていたこともあり、帰宅してからこの方について調べた記憶があります。
マツオヒロミさんと言えば、①華奢な女性像、②クリクリした瞳、③和装・レトロな服装がその特徴に挙げられると思います。
華奢な女性像については、このランジェリーイラスト集が分かりやすいと思います。
既刊その1
— マツオヒロミ (@matuo) 2019年5月8日
CHANSON SECRET
ランジェリー本です。
ランジェリーのイラストと、20世紀のランジェリーの歴史を描き起こしてみたものです。
通販はこちらhttps://t.co/9XYQNBlo9l pic.twitter.com/ZnZh4oul7B
また、クリクリした瞳は女性の可愛らしさを際立たせます。
#平成最後に自分の代表作を貼る
— マツオヒロミ (@matuo) 2019年4月30日
令和も変わらずコツコツやるぞー。 pic.twitter.com/nJqTwtnPAe
マツオヒロミさんは和装を描くことを得意とされているのですが、個人的に胸に刺さったのは、先に挙げた本の表紙のセーラーワンピース型の制服のほか、この「浴衣×学帽」など和装・レトロな服装です(もしかしたら、ショートカットヘアも重要な要素なのかもしれません)。
high noon pic.twitter.com/Tb40BUKNYp
— マツオヒロミ (@matuo) 2019年7月31日
7日に雅星本店https://t.co/jn1HZrmBfYさんが開催されている「ホシノイチ」にお邪魔したんですが、最高にかっこよくて麗しい店員さんがおられた!という絵です。ちょっと勝手にアレンジして描いてるんですが、赤の着物と黒い帯、黒い裾除け、という赤黒コーデにピンヒール。ボブも麗しかった…! pic.twitter.com/TOVTIG1eCD
— マツオヒロミ (@matuo) 2019年3月10日
暑いですねー。今年の7月のカレンダーより。 pic.twitter.com/S1I6DTSX5o
— マツオヒロミ (@matuo) 2018年7月16日
あと、鮮やかな色づかいも素敵ですね。
枚数の少ない一年でしたが、一枚一枚思い出深いです。来年もよろしくお願いします。#今年の4枚 pic.twitter.com/XQmT7iV11S
— マツオヒロミ (@matuo) 2017年12月31日
今年は展覧会出来たし、ずっと休んでた同人誌も再開できたし、カレンダーも可愛いのできた。新しい種を蒔く、をテーマに動いて、色んな発見もあって、よく頑張った一年でした。
— マツオヒロミ (@matuo) 2019年12月30日
#2019年自分が選ぶ今年の4枚 pic.twitter.com/QM11NnkekO
これを描いたイラストレーターは誰?
下のイラストは、「キズパワーパッド スポットタイプ」(ジョンソン・エンド・ジョンソン)の外装箱に描かれていたものなのですが、誰が描いたものなのでしょうか? ざっと調べてみましたが分かりませんでした。かなり好みです!
各イラストレーターのイラストを見比べてみればわかると思いますが、私の好みには一定の傾向があるように見えます。その傾向が何なのかは、イラストに詳しくないのでどう表現すればよいか分かりませんが、とにかく、この5人のようなイラストが好みなのです!! 皆さんはこの5人の中に気に入ったイラストレーターはいましたか?
漫画『ヤンキー君と白杖ガール』が下野紘&鬼頭明里でボイスコミックに!
この記事で紹介する、うおやま『ヤンキー君と白杖ガール』(メディアファクトリーコミックス、2021年7月21日第6巻発売予定)については、以前、紹介記事を書いたことがあります。ざっくりと内容を紹介すると、「最恐ヤンキー」と「視覚障害者の女子高生」のラブコメディです。
さて、既に紹介した漫画の何を改めて紹介するかと言うと、それはすなわちボイスコミックです!! つまり、漫画動画に声があてられて、紙芝居風に見ることができるのです! しかも、そのCVは、人気声優の下野紘さんと鬼頭明里さんが担当しています!
ボイスコミックには、①通常版と、②音声ガイド風ナレーション付版の2種類があります。どちらも内容は同じ(第1巻第1話~第5話)ですが、後者には音声ガイド風ナレーションが付いています。
1.通常版ボイスコミック
通常版のこちらは、この漫画を読んだことがない人にお勧めです。黒川森生役を下野紘さん、赤座ユキコ役を鬼頭明里さんが担当されています。
2.音声ガイド風ナレーション付ボイスコミック
こちらは、この漫画のテーマに沿って、視覚障害者の人でも漫画を楽しめるように、音声ガイド風ナレーションがついています。つまり、漫画で描かれている登場人物の動きや周りの様子などの視覚的情報が音声ガイド風ナレーションで説明されるのです。
こちらの動画は、黒川森生役を下野紘さん、赤座ユキコ役を鬼頭明里さん、そしてナレーションを同じく鬼頭さんが担当されています。視覚障害者の方にはもちろん、鬼頭さんの声をより長く楽しみたい方にもお勧めです。動画を見ずにラジオのようにして聴くのも良いものですよ!
第2弾のボイスコミックも公開中!
このボイスコミックを見て続きが気になった方は、コミックス(2021年7月21日第6巻発売予定)を購入してみてはいかがでしょうか?
また、2021年10月からはドラマも放送されます!
「ヤンキー君と白杖ガール」が10月スタートの連続ドラマになります。
— うおやま🐟ヤンキー君と白杖(はくじょう)ガール⑥7/21発売 (@uoyamangamanga) 2021年7月12日
主人公のユキコ役は杉咲花さんです。す、スゴイ!😂
ドラマについての情報は、公式Twitter(@koidesu_ntv )や、公式サイト(https://t.co/vhbkWZdsqr )でチェックしてくださいませー! #ヤンガル pic.twitter.com/jG8ttdbL0A
2020年のうちに映像化が決定されるのではないかと期待している5作品
新年ということで(?)、この記事では、2020年のうちに映像化が決定(さらには2020年のうちに放送)されても良いのではないか、その可能性があるのではないか、という作品5つを紹介します。
もっとも、「映像化の可能性がある作品」というよりも、むしろ、「映像化を非常に期待している作品」という側面が強いですが……
※願望&妄想&憶測が入り混じっているのでご注意を!
1.宇野朴人『七つの魔剣が支配する』(電撃文庫、2020年2月10日第5巻発売予定)
「このライトノベルがすごい!2020」の文庫部門総合&新作で第1位を獲得したダークな魔法学園ファンタジーです。メディアミックスを十八番とするKADOKAWAがアニメ化を見逃すはずがありません。高い確率でアニメ化の話が進められていると思われます。
もちろん、ラノベの映像化の定番といえばアニメ化ですが、「ハリー・ポッター」「ロード・オブ・ザ・リング」「ゲーム・オブ・スローンズ」くらいの映像美で実写化されるのも良いと思いませんか? この想い、ハリウッドに届け!!
この作品については、紹介記事を書いていますのでよければご覧ください!
ラノベ第1巻の試し読みはこちらから↓
コミカライズの試し読みはこちらから↓
https://comic-walker.com/viewer/?tw=2&dlcl=ja&cid=KDCW_KS01201140010001_68
2.日向夏『薬屋のひとりごと』(ヒーロー文庫、2020年2月2日第9巻発売予定)
こちらの作品もそろそろアニメ化されてもよい頃合いかと思います。
中華宮廷ミステリーのこの作品は、おそらくヒーロー文庫の中で一番の人気シリーズであり、(いろいろありましたが)日本赤十字社とコラボしたり、コミカライズが2誌で並行していたり、そのうちの一つが「次にくるマンガ大賞2019」コミックス部門で第1位を獲得するなど、機は熟してきたと思います。シリーズ累計400万部だそうです!!
ラノベの映像化と言えばやはりアニメ化ですが、ファンタジーではない=魔法が登場しない中華風という作品の特性上、NHKあたりが潤沢な予算をもって実写ドラマ化しても良いのではないでしょうか?
この作品(のコミカライズ)についても、紹介記事を書いていますのでよければご覧ください!
ラノベ第1巻の試し読みはこちらから↓
https://comicawa.com/Viewer/00001-0000023362/00001-0000023362-0000000001#
コミカライズ第1巻の試し読みはこちらから↓
https://viewer-trial.bookwalker.jp/03/8/viewer.html?cid=078491d3-6782-4650-a524-c22f33c3bc9d&cty=1
3.米澤穂信「小市民」シリーズ(創元推理文庫)
人気アニメ「氷菓」(「古典部」シリーズ)の原作者として知られる米澤穂信氏のもう一つ代表的シリーズである「小市民」シリーズは、一般文芸レーベルながら(挿絵こそありませんが)内容はまさにラノベ的でアニメ化に向いた青春ミステリー作品です。「古典部」シリーズが好きな人には強くおすすめしておきます。
しかし、『春期限定いちごタルト事件』、『夏期限定トロピカルパフェ事件』、『秋期限定栗きんとん事件(上下)』、『巴里マカロンの謎(短編集)』が既に刊行されているのですが(最後者については2020年1月30日発売)、アニメ化されるとしたら、さらに何の音沙汰もないシリーズ完結編『冬期限定~』の発売が決定してからではないかと勝手に考えています。人気シリーズを複数抱えている作家はシリーズの新作が待ち遠しいですね!
小説『春期限定いちごタルト事件』の試し読み(PC版)はこちらから↓
https://binb.bricks.pub/contents/b94d328a-d5e7-4605-9068-350a1f4e563b/reader
コミカライズ『春期限定いちごタルト事件』の試し読みはこちらから↓
https://magazine.jp.square-enix.com/gfantasy/tcym/ichigo_01/
4.米澤穂信「ベルーフ」シリーズ(創元推理文庫)
人気作家の米澤穂信氏ですから、映像化の引く手は数多のはずです(既に、『インシテミル』が実写映画化、『満願』が実写ドラマ化、「古典部」シリーズがTVアニメ化されています)。
そして、まだ映像化されていないシリーズとして、先述の「小市民」シリーズのほかに挙げられるのは、「ベルーフ」シリーズなのです。こちらもミステリー作品です。
このシリーズの既刊は、『さよなら妖精』(シリーズ前日譚)、『王とサーカス』、『真実の10メートル手前』の3作品なのですが、『王とサーカス』については、2015年週刊文春ミステリーベスト10第1位、2016年このミステリーがすごい!第1位、2016年本格ミステリ・ベスト10第3位、2016年ミステリが読みたい!第1位であり、また、『真実の10メートル手前』については、2016年週刊文春ミステリーベスト10第2位、2017年このミステリーがすごい!第3位、2017年本格ミステリ・ベスト10第7位、2017年ミステリが読みたい!第1位と、各種ミステリランキングの上位にランキングするほどの人気シリーズなのです! きっと映像化のオファーは既に来ているはず!
『さよなら妖精』の試し読み(PC版)はこちらから↓
https://binb.bricks.pub/contents/5bc9bb94-3fc1-419a-8ef4-328254bd62ff/reader
5.綾辻行人『十角館の殺人』(講談社文庫)
『十角館の殺人 <新装改訂版>』(綾辻 行人):講談社文庫|講談社BOOK倶楽部
『十角館の殺人(1)』(綾辻 行人,清原 紘)|講談社コミックプラス
新本格ミステリの金字塔『十角館の殺人』が、「月刊アフタヌーン」にて驚くべきことに漫画化されていますよね!(2020年1月現在既刊1巻) この大人気大傑作が上手く漫画化されるとなれば、映像化(アニメ化・実写化)の機運も高まる!?
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『十角館の殺人〈新装改訂版〉』試し読み|講談社BOOK倶楽部
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皆さんには、2020年のうちに映像化が決定しそうな(決定してほしい)小説・ラノベ・漫画はありますか?
「星合の空」第12話の感想とソフトテニスの解説
遅くなりましたが、「星合の空」の第12話の感想とソフトテニスの解説を記しています(筆者がソフトテニスから離れてしばらく経っていることにご留意ください)。
第11話については以下の記事をどうぞ!
1.ダブル後衛への対策
五瀬兄弟との試合の2ゲーム目の2ポイント目において、柊真と眞己はダブル後衛の戦術をとりました。柊真と眞己ふたりともが後衛ポジションになり、相手前衛を避けてボールを打ち、相手後衛を走らせてミスを待つという作戦です。この戦術は、相手前衛の頭上を越えるロブを打って相手後衛を左右に走らせてこそ役に立ちます。
しかし、2ポイント目の失点シーンのように、そのまま相手後衛のいるところに返球してしまっては意味がありません。しかも、ダブル後衛はロブを多用するという想定を働かせることができますから、このシーンのように、相手前衛は自身の守備範囲から出て積極的にラリーにインターセプトしてボレーを決めることができたのです。
2.走り回る作戦の有効性について
3ゲーム目、柊真と眞己は走り回るという戦術をとっていましたが、これは、アニメ的であり、あまり有効な作戦とは言えないと思います。
もちろん、初めて見たとき相手は少なからず戸惑いますが、上のキャプチャ画像のように、前後に走り回るという戦術においていは、コート後方に後退する際、ボールに背を向けなければならないのです。そうすると、どこにボールがあるのかを把握できないので、振り向いたときに上手く構えることができないのです。ボールに背を向けてしまえば、フォアハンド側にボールが来るのかバックハンド側にボールが来るのかさえ分からないのです(もっと言えば、コート後方にバックする必要がある場合には、ボールを見ながら半身の姿勢で後退する方が良いです)。
さらに、ボールを目で追っていても、後退しながらボールを打つというのは難しいのです。振り向いたところに都合よくボールが来れば良いのですが、そんな事態はなかなかありません。この場面では、五瀬兄弟は、柊真と眞己の後衛ポジションに下がった方へ丁寧に返球していましたが、これはなんとも優しい世界です。普通は、ネット際に前進してくる前衛の足元に強打するか、後方に後退する後衛が取れないようなショートボールを打ちます。
この走り回る作戦が通用するのは、せいぜい最初の1回だけではないでしょうか? むしろ1回くらいにしておかないと、体力を著しく消費することになります。
3.ポンポン禁止!
3ゲーム目2ポイント目のシーンですが、審判が「ゼロ―ワン」とコールした後、サーブを打つ前にラケットでボールをポンポンついていました。
しかし、前にも書きましたが、審判のコール後にポンポンボールをつく行為は、ルール違反となります(http://www.jsta.or.jp/wp-content/uploads/rule/lesson12-11.pdf)。この硬式テニスでよく見る行為は、ソフトテニスでは許容されていないのです。
4.体勢を崩しながらのレシーブ
同じく3ゲーム目2ポイント目のシーンにおける眞己のレシーブですが、ボールが思ったより遠くに飛んできて、体勢を崩しながら打つときはまさにこのような格好になります。うまくアニメで再現されています。
5.レット
3ゲーム目の3ポイント目のシーンですが、サービスがネットに当たってサービスコートに入ることを「レット」と言います。この場合、サービスはやり直しになります。サーバーはボールを拾った後、審判が「ツーモアサービス(またはワンモアサービス)」とコールしてから再度サーブします。
6.細かいけれど「チェンジサイズ」と「チェンジサービス」は違う
ファイナルゲームの2ポイント目の得点直後、審判が「チェンジサービス」とコールしましたが、このときにコールすべきは「チェンジサイズ」です。
ファイナルゲームでは、2ポイントごとに「チェンジサービス」(サービスサイド/レシーブサイドの交代)するのですが、最初の2ポイント終了後と以後4ポイント終了後ごとに「チェンジサイズ」(サービスサイド/レシーブサイドもコートも交代)もするのです(競技規則32条2項)。
7.ゲーム中の話し合いは禁止!
既に何度も指摘していますが、チェンジサービス時およびファイナルゲーム前以外は、上のキャプチャ画像のように長々と話し合う時間はありません。遅延行為として審判に注意されてしかるべき行為です(競技規則15条2号)。もちろん、アニメ的には必要なシーンなのですが。
8.後逸姿勢
ファイナルゲームの4ポイント目(五瀬兄弟が殴り合った直後)のシーンで、柊真は後逸姿勢で返球し、これをネットに引っかけて失点してしまいました。後逸姿勢になるということは、思ったよりもボールが伸びてきた=球速が速いということなのです! 上手くアニメで表現されていますね!
9.作画ミス?
ファイナルゲームの9ポイント目(カウント3-5の直後)の柊真がレシーブするシーン(レシーブしたボールはアウトとなりカウントは3-6に)ですが、上のキャプチャ画像の地点で着地したサービスはフォルト(失敗)です。
この画像ではセンターラインの左側に着地していますが、柊真がレシーブの場合は常に、センターラインより右側のサービスコートにサーブが入らなければフォルトになります。
さて、この第12話をもってオリジナルアニメ「星合の空」は、「いったん」終了だそうです。
「星合の空」は今日の12話でテレビでの放送は終わりとなりました。しかし物語にはまだ続きがあり、キャラクターたちのドラマはこの後更に動いていきます。本来は全24話の物語で、3ヶ月後にもう1クールを放送して完結する予定でしたので12話に直結する13話が存在します(続く↓
— 赤根和樹 Akane Kazuki (@Akane2514af) 2019年12月26日
今年の春に急遽全12話の放送に変更となりましたが、この作品は2年以上かけて構成を作った経緯もあるし、本編の作画作業も進んでいたので今から12話構成にするのは無理があると判断し、24話構成のまま12話まで作ることにしました(続く↓
— 赤根和樹 Akane Kazuki (@Akane2514af) 2019年12月26日
この作品は通常のアニメとは違う物にしたいとの思いもありましたので、これもまた「星合の空」らしい放送の終わり方かも知れません。自分としては後12話分のお話を作り、眞己や柊真達の未来を皆さんにお見せする機会を与えて欲しいと思っています(続く↓
— 赤根和樹 Akane Kazuki (@Akane2514af) 2019年12月26日
今はメディア自体も変化の真っ只中にあると思うので、星合の空がどのようになるかを見ていただければ面白いかとも思います。今まで星合の空を見ていただいた皆さんに続編が実現できるように応援していただけると嬉しいです
— 赤根和樹 Akane Kazuki (@Akane2514af) 2019年12月26日
筆者がソフトテニス経験者ということで、このブログでは、ストーリーには立ち入らず、もっぱらソフトテニスについての解説を書いてきました。アニメ的な演出もありましたが、基本的にはセオリーやルールに忠実でした。こんなマイナースポーツがアニメ化されるなんて思ってもいなかったので、楽しんで視聴・執筆させてもらいました!
第12話は衝撃の幕切れでしたね。「続きは未定」ということのようですが、楽しみにしています!!
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